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2004.05.13

若者の労働状況に思う

 昨日のNHKクローズアップ現代「働く意味は何ですか」は、たるい内容だった。問題は、現在新卒者の5人に1人が就職できないということとだが、これについて、次の視点を立てていた。


学生達の就職に対する意識も変わってきているのだ。自分のやりたいことがわからないなど、就職活動の入り口から悩み、つまずいて就職から身を遠ざけてしまっている学生が増えつつあり、大学でもカウンセリングや個人指導などの対策を始めている。

 番組中キャスターの国谷裕子も、自分たちも若い頃、何をやりたいかわかってませんでしたが…というようにコメントを挟み、顔のシンメトリーを崩して微笑していたが、若い人の労働意識が現代において変わったわけでもない。番組でも、一応、そのあたりは含めてはいた。むしろ、会社が若者に就労意識を求めるようになったという線を強調していた。確かに会社側としても就職しても3人に1人は短期で辞めてしまうのだから、しかたがない面はある。
 しかし、この状況をもたらした大きな要因は、番組でも紹介していたが、「親が積極的に就職をすすめない54%」だろう。親が子供に働けとは言わない、あるいは、子供も親から自立したいと希望しない、しなければいけないという理由もない、ということだ。
 考えようによっては困ったことでもない。もともと先進諸国における大学の社会的な意味など、余剰な雇用を隠蔽する装置でもある。それがさらに家庭に延長されても、どうというわけでもない。実際のところ、日本社会は明確に、若い人の労働を必要としていないとうメッセージすら出しているに等しい。雇用問題でも、オヤジたちや老人の雇用維持が優先課題になっている。それは当然ながら、彼らが子供もだらっと養えよな、という意味でしかない。
 30代になって未婚の人口が増えているのも、これとまったく同じ構造だ。30代の未婚女性が多いというが、小倉千加子が解いたように、親が結婚を引き留めているのだ。端的に言えば、これだけ手間をかけた娘をそんな若造にやれるか、である。まさに、雇用も同じで、親がフォローできるのに、低賃金のバイトやパシリなどしなくてもいいだろうということだ。
 この問題はどっかで構造的にカタストロフして、いわゆる3K的な労働力の社会ニーズから海外労働者の導入になるようにも思える。若者や女性の労働力と対外労働力の、比較優位論のような状態になるわけだ。恐らく、日本の潜在的な生産力からすれば、このバランスが内部の労働力を活かす方向には向かないだろう。つまり、現状の延長に3Kを外人に任せる、日本の若者は仕事しない、という未来になるのだろう。
 話は少し逸れるのだが、今朝のVOAの"Child Labor Still a Concern in Industrialized Countries"(参照)が興味深かった。テーマは児童労働なのだが、これが北米でも問題だというのだ。私など、児童労働というとすぐ第三世界問題、搾取、じゃ左翼さんにお任せ、みたいに思うのだが、どうもそれだけではない。

Child labor is mostly identified with the developing world. However, an international congress on child labor heard this week industrialized countries, including the United States and Canada, are not immune to the problem, which affects sectors of the economy as varied as agriculture and the sex industry.

 VOAの英文はやさしいのでその先も読んでいただくといいのだが、ようは、米国の性産業にどっと海外の児童が「労働者」と流し込まれているということだ。つまり、貧困、帝国主義的搾取、世界システムってな気の利いた左翼の洒落で済む問題ではない。メディアや高度資本主義の世界システムが、どうやらまさにシステム的にこの問題を起こしているようだ。
 もう一点、VOAのニュースでほほぉと思ったのだが、北米の児童労働は農業分野にも顕著だ。考えてみれば、米国は農業国である。

Ms. Adkins said that agriculture is also a sector in which abuses are taking place. “Agriculture is one of the most dangerous industries in the United States and we have as many as 800,000 children under the age of 18 who are actively working, harvesting fruit and vegetables,” she said. “These children are dropping out of school at very young ages to assist their families.”

 まいったな、そうかと蒙を啓かされる思いだ。
 ただ、VOAでは触れていないが、英国でも状況はやや似ていて、親が子供を学校にやらずに労働させている。が、これは階級的な意識から来ているようだ。このため、英国では親を処罰する法律も作って規制を始めた。おそらく、英国だけはなく、広く欧州の社会構造だと言ってもいいのだろう。
 違う2つの話を洒落でミックスしたみたいなことになったが、日本の若い世代の労働の状況が、まさに、国際的にはハイパーな状況にあるとはいえるだろう。このハイパーな状況からとんでもない人たちがボランティアとして海外に出て行くのか、と言いたくもなるが、ま、言わないでおく。

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コメント

若いときの苦労は買ってでもせにゃ!

また、当然だけどボランティアは「苦労」じゃない
だって自分の人生じゃないんだもの

投稿: i | 2004.05.13 22:38

錯覚させてほしい。決定権を持つ層が自己保身に走っているからでは。

投稿: (anonymous) | 2004.05.14 08:39

 昔、児童労働が一般的だった時代は子どもは生産財だったが、社会が豊かになるにつれて子育てが一種の消費(顕示的消費)になったという議論を耳にしますが、生産財としての子どもは決して消えたわけではないし、さらにいえばグローバル化のなかで国境を越えて流通するようになったということなのですね(なんだかやるせない話ですが)。生産財/消費財としての子どもが同居する社会はこれまでもあったわけですが、国境を越えた格差構造と結びついている点、社会経済階層上の棲み分けが先鋭化しつつある点などが新しい?ように思いました。

投稿: ebony | 2004.05.14 08:53

オートメイション化が進めば、労働力は必要なくなります。

働け働けと言うよりは「働くこと以外に何をするのか」というモデルケースとして見る方が良いと思いますけど・・・

私は毎月残業100時間越えですけれど(トホホ)。

投稿: 幸司 | 2004.05.14 10:17

私も昨年まで残業100時間やってました(トホホ)。
かといってこれが美しい、次代の子供たちにそうしてほしいとも思いません。かく言う私もまだまだ若造ですが。
神話崩壊とともに1億総中産階級の日本に突然訪れた自由な世界。何の手段ももたない大人の下に生まれた子供たちは未知の世界に放たれ、生産財とされる要求もないし、何でも好きなことができる。こういうときにやっぱり思想というのか何というのかわかりませんが、そういうものがないからいけないのかな。私も含めて。戦後の高度成長経済の中でそういったものが失われてしまったんでしょうか。必然だったのかもしれないが。それとも1億総中産階級が二極化していく単なる過渡期なのかな。。。
 子供への投資という構造は先進国において必然なのでしょうが、何に投資をするかってことだと思います。ひどい学校教育システムの中でいくら金投資してもなぁ、国も親もこれではな。

投稿: (いちげんさん) | 2004.05.14 15:31

↑名前抜けてしまいました。

投稿: いちげんさん | 2004.05.14 15:33

いちげんさん、ども。名前、補っておきました。

幸司さん、どもです。

本題ではないですが、残業100時間はすごいですね。って、来ますよ、身体に、後から。ご注意。労組があると、こういう点は強制的に残業させないのですが…。

投稿: finalvent | 2004.05.14 16:21

「階層化日本と教育危機(苅谷 剛彦)」という書籍を彷彿とさせるお話かなと。

投稿: ひが | 2004.05.14 17:07

あちこちすいません。
なんとなく、2008年前後の団塊の世代の大量退職の頃、分野によっては人材不足が起き、企業・社会ともそれなりに、ひまな若いモンの尻を叩いて使うが、ミスマッチもまた多いような予感があるのですが。

投稿: akiller | 2004.05.14 20:09

残業100時間と言う話題に釣られてまたコメントを付けさせてもらいます。
私も今まさに残業100時間に迫りつつある状態で働いていますが、私の働いている所も含めて最近よくやられているのは、労組を無効化するためにスタッフの多くを外注や契約社員などにすると言う手です。

投稿: エフ | 2004.05.14 23:46

tempに切り替えちまえってやつですね。まあ切り替えられる範囲は限られますが。
finalventさん、私の会社にも労組あるんですよ~。通称御用組合と巷では呼ばれてます。だめぽ、です。労組も業界によって様々のようですよ。
現在は田舎っぺの国アメリカに居りますが、ギャップに驚かされております。家の補修のために休みをとったり、家族のもとへいち早く帰っていく彼らを見ると、ん~、これは何なんだ、と。

投稿: いちげんさん | 2004.05.15 11:26

いちげんさん、ども。「家の補修のために休みをとったり」これがけっこう米人男性の洒落にならない苦労だったりします。とほほ比べみたいですが。

投稿: finalvent | 2004.05.15 11:35

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