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2004.05.09

なぜ米軍の虐待はお変態写真で出てくるのか?

 続々と米軍による捕虜(民間人も含む)虐待のニュースが続く。過去の戦闘を想起すれば、これまで騒がなかっただけで当たり前のことではないかとも言える。が、言ったからといってこんな非道は擁護にもならない。それは前提事項だ。
 なんでこの機に出てくるのかというのも、やや疑問だが、その後の報道を見るかぎり、現状それほど政治的な裏があってのことでもないようだ。
 また、現状では、この事態を引き起こしたかなりの部分が、またしても正規軍ではなく、米傭兵のようだ。組織的に見るなら、今回の戦争では米傭兵のコントロールががかなりまずい。率直に言えば、米軍は自分の手を汚さず、汚れ役を傭兵と分担しているだろう。いずれにせよ、最終的には米軍に責任があるのは確かなのだが、組織がテロ戦争には対応していないということでもあるのだろう。
 それにしても、出てきたのは、なぜ、こうも、お変態写真なのか? もちろん、続々と出てくるものや証言からは、お変態ではすまないものも多い。というか、いわゆる暴力的な虐待が出てくるのは、先にも触れたが過去の戦闘などから考えれば、言い方は悪いが、普通だろう。そういうわけで、日本社会では、「虐待」という一括でくくってニュースとしているのだが、その割には、あのお変態写真をマスメディアはばらまいている。ちょっと言い過ぎなのだが、マスメディアのコードからすればそれほどの虐待でもなく、「おいこれって変態じゃん」ということで、逆に猥褻のコードで検討して出しているのではないか。
 同じことは多分、米国でもそうだろう。9.11の時は早々に、事件の映像を流すまいという動きがあったが、今回はどちらかという垂れ流しだ。米国のメディアの常識からすれば、レーティングがかかりそうなものだが、出ている。そのあたりがわからない。私の感じからすると、米国南部の福音派クリスチャンは、こうしたものを嫌悪するだろうと思うし、ブッシュなどまさにその南部オヤジなので、かなりむかついているだろうと察する。
 話を戻す。なぜ、お変態写真なのか? 答えがあるわけではないが、そのあたりの言及というのが、当然ながらマスメディアにはないようだ。言わずもがなというのもあるのかもしれない、つまり「あいつら、根が変態だからな」といった印象かもしれない。確かに、ネットを見ると、この手のお変態映像は山ほどある。虐待映像に紛らわしいポルノが混じったりもする。「なんだ、こいつら」という感じもするが、逆に米国でうけている日本のヘンタイアニメや少女モノなどは、あいつらから見れば、「なんだこいつら」なのだろう。中国人などもけっこうポルノを見るのだが、そうして見られているのは大半が日本人なんで、日本人って…という印象を持っているに違いない。ま、言い悪いは抜きにして、本音の部分はそんなところだ。品のいい話ではないが、しかたがない面はある。こうした愚行が、どうやら我々の自由の本質的な一部でもあるのだろうから。と、話がそれてしまい、かつ、変態ならいいんじゃないのと誤解されそうだ。そうではない。
 7日のワシントンポストにこの問題に関連するコラム"Abu Ghraib as Symbol"が掲載された(参照・要登録)。率直にいうと何が言いたいのかわからないし、コラムニストも文中に"Let's be clear"とか洒落を書いているように、曖昧なこと書いちまったなという意識はあるのだろう。たしかに、ちょっとこのテーマはあからさまには書けない。ただ、問題の切り口としては重要であるだろう。


On Sept. 11, 2001, America awoke to the great jihad, wondering: What is this about? We have come to agree on the obvious answers: religion, ideology, political power and territory. But there is one fundamental issue at stake that dares not speak its name. This war is also about -- deeply about -- sex.

 つまり、西洋社会からのテロ戦争のテーマの一つは「性」だというのだ。

For the jihadists, at stake in the war against the infidels is the control of women. Western freedom means the end of women's mastery by men, and the end of dictatorial clerical control over all aspects of sexuality -- in dress, behavior, education, the arts.

 つまり、西洋文明の自由とは、アラブ社会における女性の従属の終わりを意味するというわけだ。それはそうだ。で、今回のお変態写真がそのためのドカンと一発になったろうという悪い洒落にするという話ではない。コラムは曖昧に書いてあるのだが、ようするに、今回のお変態写真こそ、イスラム原理主義者にとってまさに戦うべき悪の象徴として見えるだろう、ということだ。2ch用語でいうところの燃料投下であるって、2ch用語でいう必要はないのだが。
 ちょっと補足すると、「虐待」が問題だというより、そういうふうに相手の文化から見えるのだよという指摘をこのコラムがしている。たぶん、その含みには、「虐待」という点でなら、アラブ社会の民衆は慣れっこかもということがあるのかもしれない。
 余談めくが、コラムの途中にはヘンテコなエピソードが入っている。

The most famous example occurred in the late 1990s, when Egyptian newspapers claimed that chewing gum Israel was selling in Egypt was laced with sexual hormones that aroused insatiable lust in young Arab women. Palestinian officials later followed with charges that Israeli chewing gum was a Zionist plot for turning Palestinian women into prostitutes, and "completely destroying the genetic system of young boys" to boot.

 コラム中にこんな変なエピソードを挟むのもなんだかなだが、話としては、え?マジかよ?っぽい。日本も含めて西洋化された社会から見れば、洒落でしかないのだが、どうやら、現地では洒落ではないようだ。つまり、イスラエル製のガムには女性を扇情的にさせるホルモンが含まれており、これはシオニストがパレスチナ女性を売春婦にさせるための陰謀だというのだ。
 「アラブ政治の今を読む(池内恵)」でも思ったのだが、主にエジプトが中心ということかもしれないが、こうしたしょーもないデマがデマというより、ある種の世界の意味としてアラブ圏に広がっているというのは、確かと見ていいのだろう。今回のお変態写真もそういう文脈で理解されるに違いない。
 日本も含めて西洋化された社会から見れば、この手の変態エピソードは、笑い事ととりあえず言えるのだが、それは真偽判定の手順を社会に原理的に組み込んでいるからで、逆にいえば、だから、今回のお変態写真は、場所がそこではなく、出演者にペイが出ているなら、ただのありがちなお変態写真になる。が、アラブ社会なり文化圏にはそうした真偽判定の手順は組み込めない。
 悪い冗談を書いているようだが、今回の虐待写真が示す事実は断じて許せるものではないが、そして、私も曖昧に言うのだが、あの変態性というのは我々の社会のある本質的な部分でもあるのだろう。

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コメント

傭兵や米兵が自由意志で変態な虐待をしているのではなく、
CIA等の米中央からの命令で行なっているのではないのでしょうか?

私は残酷な拷問
(手足を切り取ったりのような肉体破損の拷問・
薬物(自白剤)で廃人化してしまう拷問)
を行なうと、その後の肉体そのものが拷問の証拠になるので、
後に証拠にならない性的な拷問を軍全体が採用しているのかなと
考えるので、合理的なサディズムというのが米軍内部で
システム化されていて、米兵はそれに従っている…、
と思うのですが…。
軍事評論家の神浦氏が、「殴る蹴るの暴行よりも、
こういった(性的な)尋問方法が効果があります」
と書いておりますし。今回の件は自由よりも、合理性に導かれた
変態虐待であり、自由に対しての脅威である変態性
(自由な変態性、意志でペイされている変態性に対する
必然性からの冒涜)
と言えるのではないかなと…。

今回の暴露が何を意味しているかが、
凄く見えにくいですが、
自由に対する一種の攻撃としてのメッセージなのかなとも
思います…。

「政治的な裏」がない可能性も、勿論あると思うのですが。

投稿: kagami | 2004.05.09 11:51

kagamiさん、ども。

そうですね、「合理的なサディズム」というkagamiさんの考え方のほうがスジが通っているという感じはします。

あと、政治問題としてのポイントは指揮系ですね。私は軍の指揮系ではないような気がします。マジで徹底的に解明して欲しいです。

投稿: finalvent | 2004.05.09 12:14

例のお変態写真に出演した米人の多くが女性であるという事は、イスラム原理主義者にとって良質な燃料であるかもしれませんね。

投稿: あのにます | 2004.05.09 22:55

田中宇さんのメールマガで虐待の話しが詳細に報告されています。お読みになりましたか?
イラクの話しは田中さんのWebでも沢山の記事が紹介されていて参考になります。
http://tanakanews.com/

田中さんのアメリカ以後という本を読みましたが、世界の動きの裏、今後の世界・日本への心配も増してしまいました。

投稿: maida01 | 2004.05.11 23:40

maida01さん、ども。「田中宇の国際ニュース解説」の該当記事読みました。私も、この件については、Washington PostやNew York Timesなどを追っているので、今回の記事は大筋でハズシはないなと思いました。徴兵制云々からの部分については田中さんらしい想像力です。おそらくそれ以前に州兵と傭兵がどう新しい軍配備に関連するか、また、日本を含めた有志連合の関わりが問題だろうと思います。このあたりは、フォーリンアフェアーズあたりになにかきちんとした論考が出てくると期待しています。

投稿: finalvent | 2004.05.12 09:13

アメリカも何だかなぁ~。私としても、さすがにこの虐待は群の指揮系統ではないだろうと思っていたんですけど、今日のニュースでこんなの出ちゃいましたよ。

http://www2.asahi.com/special/iraqrecovery/TKY200405160176.html

まあネタ元が朝日ですから、って考えたくはありますが。
私は今でも、アメリカのイラク戦争を基本的に支持したいところなのですが、ホント、finalventさんの言うとおり、やってることのトホホさ加減がねぇ。
自分の周りもイラク戦争反対派ばかりになってきちゃったし、そんな朝日のプロパガンダにのせられてるやつは極東ブログでも見ろと言っているんですが(笑)。

取り敢えずアメリカさん、日本の「良心的」サヨクさんたちにこれまた「良質の」燃料投下するのはやめてくださいよ、って言いたいですな。

投稿: スパイス | 2004.05.16 21:22

スパイスさん、ども。↓がオリジナルでしょう。

THE GRAY ZONE
http://www.newyorker.com/fact/content/?040524fa_fact

米国もラムズフェルドも到底弁護できないのですが、ニューヨーカーらしい陰影もあります。

それでも、このお変態は、ある意味、規格化された対処だった臭いですね。よく考えたものです(呆れる)。

投稿: finalvent | 2004.05.16 21:49

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