ご苦労様、福田康夫さん
福田康夫(参照)が官房長官を退いた。感慨深い。嫌なやつだなと思っていたがやっていることは政治家として、真っ当だったと思う。もともと政治家なんて毀誉褒貶があってしかるべきだが、問題はなにをやったかということだ。よく仕事をしたと思う。ふとオヤジ福田赳夫の年表(参照)を見ると、さらに感慨深いものがある。今回の辞任も考えてみれば、オヤジの気性と似ているのではないか。上州人気質と言いたいところだが、それではくくれない醜悪な老害もいる。
社説では、朝日新聞社説「重し失う小泉政権」がよかった。朝日的な部分が強調されているが、こうしてみると、福田には信念というより原則があったのだろう。
イラク問題では、日米関係を重視する首相や与党に表立って反対はしなかった。しかし、自衛隊の派遣には慎重な姿勢をにじませることもあった。米軍を支援するために自衛隊の活動範囲や内容を広げることにも批判的だった。
ふんばりを見せたこともある。昨年末の予算編成で、石破防衛庁長官がミサイル防衛システム導入のため防衛庁の予算の増額を求めたときだ。福田氏が石破長官を厳しく批判し、逆に戦車や護衛艦などの正面装備を削減する結果になった。
確かにそうだと思う。もう一点引きたい。
首相の靖国神社参拝のあと首脳外交が途絶えた中国へ、自ら出かけて行った。異例のことである。国立の追悼施設建設に意欲を見せていたのも福田氏だが、実現の見通しは立っていない。
これも無念な感じがする。先の防衛システムについても、この国立追悼施設建設についても、批判は多いだろう。朝日は好意的だが、それでも制度化した左翼陣営は福田の信念を理解しているわけでもない。そういえば、2chでも、福田はある意味、ヒーローだったが、印象で言うだけなのだが、福田は大人だったからだろう。社会は大人を必要としている。
福田の辞任の理由については、メディアでは表向きの説明で終始しているように思う。なにか裏があるようにも思うが、とりわけ裏を真相として強調することでもないのだろう。週刊文春の記事も読んだが、福田の言葉の含みのほうが重く、記事自体はトンチンカンなものに思えた。ちょっと勇み足でいうなら、福田は仕掛けられたというところだろう。防戦もできただろうが、嫌になったのではないか。率直にいうとニヒリズムも感じる。
福田康夫の履歴を見ながら、ちょっとうかつだったなと思ったのは、この人は東大卒ではないのだな。いわゆる、古き時代のおぼちゃん育ちのようだが、ある意味、若いころは挫折と実務の人だったのではないだろうか。20代での米国暮らしも強い影響を与えているだろう。実務をきちんとこなすという感覚というか実力のある人というのが経歴から伺える。
これで自民党の屋台骨が崩れるのかと思うが、代わりの民主党が情けないこと限りない。私は政策をもって政党を評価するので、依然、民主党を支持するのだが、あまりに阿呆臭いどたばたをよくやってくれる。もちろん、そのどたばたが重要なのかもしれない。さっさと菅のようなぬるい首をすげ替える機運を盛り上げるのは正しい手順なのかもしない。
余談のように世相に触れたい。福田康夫官房長官辞任に表向き関わる年金問題だが、唖然とする展開を見せていて、正直唖然としている。極東ブログでは匙を投げて5五年後に蒸し返せとしたが、それが2年前倒しになるのだろうか。年金問題は基本的に一元化しか解決はない。その障害の理由が自営者の所得把握というのだから、なにか根幹が間違っている。筋道がまるで違う。サラリーマンも申告制にするべきなのだ。つまり、所得把握全体を個人ベースの一元化にすべきだ。そのためにITがあるのだが、まるでそういう議論の展開はない。ま、ないのだ。
以上の話と関係ないが、米軍のイラク捕虜虐待もさらにトホホな展開まっしぐらである。このまま趨勢に押されてラムズフェルドの首を切るということになるのだろうか。そんなことが可能なのだろうか。
三菱ふそうの件でもそうだが、議論以前のこのトホホな状態はなんなのだろう。言葉に詰まるというか、言葉が不要にすら思える。
ただ、陰謀論めきたいわけではないが、閣僚の年金暴露や米軍捕虜虐待暴露も問題の浮上の仕方がきな臭い感じはする。
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コメント
>社会は大人を必要としている。
海よりも深く同意
投稿: ひとことくん | 2004.05.08 18:04
http://deztec.jp/site/tips/other/o0025.html
「ご苦労様」の使い方が違いますヨ。恥をかく前に正しい用法を勉強しましょう。
投稿: jack | 2004.05.10 20:47
jackさん、ご指摘ありがとうございました。
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ご苦労様 は、目上の人が部下の苦労をねぎらう時の言葉。上司や友人にはお疲れ様と言っておきましょう。
理由は、 「苦労」をするのは未熟な者で、目上の人は熟達してるからそんなことはない。しかし人間である以上、多少とも仕事をすれば誰しも「疲れ」るのは免れない。よって目上には「ご苦労さま」でなく「お疲れさま」を使用する──ということだそうで。
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ということですね。
ただ、この件については、自分の言葉の感覚からして、このままでもいいかなと思っています。
投稿: finalvent | 2004.05.10 20:56
年寄りに何が出来るんだ!
結局自民党の人事なんて内容の無いものでしかない。
このままじゃ日本もおわりだよねー。
ふざけるな!
投稿: | 2007.09.13 22:13
私は福田康夫君と同じ同郷の71歳なので敢えて福田君と申し上げる。
9月16日の日経に福田君の談話として、71~75歳の医療費自己負担金を1割から2割にすることを、中止するよう再検討したいとの記事
がありました。
自民党の内に、こういう発言者がいるとは夢にも思いませんでした。
数多くの問題を抱えた今国会のなかで、既に決定している医療費問題に
異論を唱えるとは、さすが福田君です。大賛成だね。
ただ、この件はテレビや演説等で常時発言するべきです。年老いた国民
は介護保険料、国保料、住民税、所得税、等など全ての増税になんの抵抗もできず、ただただ度重なる不安を沈黙している以外に術がありません。それだけに福田君の発言は神様、仏様でした。
よくこの問題に言及してくれました。庶民の実態を知る総理大臣として
この年代また近くの年代に歓迎されるでしょう。
若し実現するならば、やがて来る解散総選挙後の福田内閣が維持される
ための一助となるでしょう。
言ってみれば、それだけ低年金生活者が多くいると言う事です。早速に
演説内容に組み入れて反響を試してみてください。
庶民の実態を知っても、アピールしなくては意味がありません。福田君を取り巻く参謀の皆さんご一考下さい
1割が2割になるということは、100%アップなんですよわかりますよね。このことを実行すれば支持政党の如何を問わず全国民からの支持が得られること必定です。もっとアピールすることを期待します。
投稿: 群馬一郎 | 2007.09.17 16:10