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2004.05.06

キプロス問題雑感

 キプロス問題について詳しいことはわからないので、上っ面を滑るような話になるかとは思うが、簡単に触れておきたい。
 まず、ベースとなるキプロス問題だが、知らない方がいるなら、これは、Wikipediaに簡素によくまとまっているので参照しておくといいだろう(参照)。
 今回の事態については、朝日系「キプロス国民投票、統合を否決 分断固定化へ」(参照)がわかりすくまとまっている。


 24日に行われたキプロス統合の賛否を問う国民投票の開票結果は、ギリシャ系のキプロス共和国(南キプロス)が賛成24%、反対76%、トルコだけが承認するトルコ系の北キプロス・トルコ共和国は賛成65%、反対35%だった。双方で賛成が上回った場合に限って可決となるため、統合案は否決された。改めて統合案が示される可能性は低く、30年続く分断状況がほぼ固定化されることになった。
 国民投票は、連邦制による統合を打ち出した国連案への賛否を問う形で行われた。賛成が過半数に達した北キプロスは今後、国際社会の承認を求めていくとみられる。北キプロスの後ろ盾のトルコは、この結果をテコに、欧州連合(EU)加盟への動きを強めそうだ。一方、南キプロスは5月1日、単独でEUに加盟する。

 今回の国民投票は、あとでもう一度触れるが、やる前から結果は分かり切っていたので、実際にはまるで意味がなかった。むしろ、事後の確認のほうが重要になる。それは、これで分断は固定化したということと、逆に国際世論に憐れみを買った北キプロスを対EUの関係でトルコが利用するということだ。国際政治というのは実に香ばしい。
 トルコ側はこの機に、北キプロス・トルコ共和国が同案を可決したことを盾に、外交勝利を宣言した。ロイター「キプロス再統合案否決、EU加盟目指すトルコに有利な展開か
」(参照)をひく。

 キプロス共和国が国際的に批判されるなか、トルコは25日、欧州連合(EU)加盟に向けて外交的勝利を収めたとの認識を示した。
 住民投票の結果に基づき、キプロス共和国のみが来週EUに加盟し、北キプロス・トルコ共和国は孤立を余儀なくされることになったが、国際社会の信用を得たのはむしろ北キプロス側とされる。

 EUもすぐに対応せざるを得なくなった。産経系「キプロス再統合 否決にEU「遺憾」 2億5900万ユーロ支援勧告」(参照)をひく。

欧州連合(EU)は二十六日、二日間の日程でルクセンブルクで開幕した外相理事会で共同声明を発表、キプロス再統合が住民投票で否決された結果、「北キプロス・トルコ共和国」(トルコ系)がEU加盟から取り残されることに対し「遺憾」を表明すると同時に、二億五千九百万ユーロの支援を勧告した。

 EU、ざまー見ろ、自業自得だと言いたいところだ。もともと、今回の投票をおじゃんにしてくれた戦犯はEUである。南キプロスがEUに単独加盟を申請した時点で、その加盟の前提として、統合を提示しておけば、キプロス問題は大枠で解決していたのだ。なのに、早々に南キプロスの単独EU加盟を是認している。もとから南北で貧富の差が4倍もある。民族的にも宥和する下地はない。これじゃ統合するメリットなどなにもない。
 EU、汚ねーな。だから支援金は自業自得だと言いたいところだが、これでEUがトルコ除けできるなら、高くもないかというのがEUの腹づもりだろう。ますます、黒いなEUという感じだ。EUがそこまでトルコを嫌う理由については、クルド問題とかもあるが、端的に言えば、「イヤなものはイヤ」ということではないのか。
 今回の件でロシアも香ばしかった。共同・日経系「国連安保理、キプロス決議案否決」(参照)のように、ロシアが早々にキプロス再統合を後押しするための決議案を拒否権行使でつぶしてくれた。表向きの理由は、「再統合が決まった段階で採択すべきで、住民投票直前の駆け込み的な決議は結果に影響を与える」というわけで、EUを制しているようにも理解できるが、私は、これは、ギリシア側へのエールではないかと思う。ちょっとやばい発言になるかもしれないが、私は現代ギリシア人というのはスラブ人なのではないかという印象を持っている。もちろん、学問的にそう言えないのでヤバイ発言の域内なのだが、それでも、正教の親和感は強いとは言えるだろう。
 キプロス問題を、EUとトルコを巡る駆け引きのなかで解消するのではなく、実際にキプロスの問題としてみると、アナンの悲願でもあると思うのだが、北キプロスの関税緩和、通商制裁解除、民間航路再開など事実上の国際社会への復帰を促すべきだろう。だが、そう行かないのだろう。ギリシアが障害になってくるからだ。
 ここは、なんとかアテネ・オリンピックを成功させ、ギリシアの大国欲を適当に満たして、ずるっと実質上北キプロスを緩和させることができればと思うが、それを采配する気のある大国はない。日本ならできるのだが、やる気もないだろうし、国益からすると、こっそりトルコと通じていたほうがいいのだろう。日本もまた黒く立ち回るしかないわけだ。

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コメント

はじめまして、ロシアの件ですが未だにトルコを敵対視しているのでしょうか。質問みたいですみません。このニュースで19世紀の関係を想像してしまいました。

投稿: うらぢ | 2004.05.06 22:27

久しぶりに書き込みます。
私はロシアの動きは、トルコに対する敵視と言うよりはギリシャに対する親和性の表れなのかなと思いました。ともに宗教の基盤が聖教だと言う点はすでにfinalventさんが書かれましたが、他にも第二次大戦後ギリシャは共産党主体のパルチザンの手によって、解放が進んだのをソビエトに対抗するために無理矢理西側陣営に組み込んだ歴史があります。
これも今では笑い話になるくらい大昔の話になってしまいましたが、19世紀のトルコとの因縁よりはまだ影響が残っているのかもしれません。

投稿: エフ | 2004.05.07 01:02

うらぢさん、エフさん、ども。

現在のロシアは大国志向なので、トルコなんか目じゃない、むしろ石油ラインなんかでうまくやりたいということかなとは思いますが、ベースはどっちも敵対心だろうなと思います。

エフさんのその話は面白いですね。パンドレウも共産主義が嫌いということだったように思い出します。

投稿: finalvent | 2004.05.07 08:16

いちおう張っときます。
http://www2.diary.ne.jp/user/61663/

投稿: a watcher | 2004.05.08 07:33

a watcherさん、ども。参照ページは興味深かったです。そういう見方もあるのだなと思います。ただ率直に言うと「キプロスはギリシャ神話アフロディティの生誕地です。」という前提だとちょっと話が通じないだろうなという感じがします(私の、「ギリシアってスラブじゃないの?」みたいな)。

投稿: finalvent | 2004.05.08 08:45

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