« アラウィ首相指名の黒いゲームも悪くはない | トップページ | IP電話のダウンはコモンキャリアの恥 »

2004.05.31

サウジのテロは新しい危機の始まりか?

 サウジアラビア東部アルコバールで、29日、武装集団が外国の石油関連企業の入るビルや外国人居住区などを襲って銃を乱射する事件が起きた。犯行声明ではアルカイダを名乗っているのだが、アルカイダのような洗練されたテロではない。しかし、今回の事件で特徴的なのは、ハリバートン(米国エネルギー企業グループ)傘下企業を明確に狙った点だ。ハリバートンは、石油メジャー系の陰謀論が阿呆臭くなってからなにかと陰謀論の主役に出てくる。しかも、以前から言われていたチェイニー米副大統領との関連も取りざたされている。朝日新聞系「米副大統領がイラク石油事業発注に関与? タイム誌報道」(参照)では、次のようにうきうきと語られている。


 31日発売の米タイム誌(電子版)は、チェイニー米副大統領が最高経営責任者(CEO)を務めていたエネルギー大手ハリバートン社が米国防総省からイラクの石油関連事業の発注を受けた際、チェイニー氏が関与していたことを疑わせる電子メールを入手したと報じた。同社のイラク復興事業受注にからんでは不正疑惑が相次いで浮上しており、副大統領の関与も指摘されてきた。今回の報道が事実とすれば政治問題になりそうだ。

 復興事業を米国だけに閉ざせばハリバートンが出てくるのは当然なので、そのレベルで稚拙な陰謀論を展開してもなんだかなとは思うし、ここで一気にネオコン退治という米国内の政争ということかもしれない。
 話を戻して、今回のサウジの事件だが、同じく朝日新聞系「米企業を名指し非難 サウジのテロで犯行声明」(参照)では、さもテロの裏付け理論があるように、親切にニュースを仕立てている。

 今回の襲撃の直前、アラビア語のインターネットでイスラム過激派の論文集のサイトの最新版に、アルカイダのサウジでの最高指導者とされるアブドルアジズ・ムクリン氏の「作戦実施計画」とする論文が掲載されていた。
 (1)標的を注意深く選定(2)標的についての情報収集(3)殺害方法や作戦実施時期の決定(4)作戦実施のために類似した場所での訓練など7段階の手順が解説されていた。アルカイダ系の武装勢力が外国企業へのテロ活動を準備していた可能性を示している。

 このまとめを鵜呑みにすると、冗談のように稚拙だ。もしかすると、今回の事件もそうした稚拙な暴発なのかもしれない。
 問題はむしろサウジの側にある。あれま、というほど断固にかつ強行に事件をねじ伏せてしまった。それ以外の手もありようもないのだが、日本人にしてみるとその手つきはあまり理解しやすいものではないだろう。サウジの態度の背景だが、これも朝日新聞系「石油産業がテロ標的に、投資リスク増す サウジ襲撃」(参照)が詳しい。

 だがサウジが過激派対策に本腰を入れたのは、イラク戦争で米国が世界2位の石油埋蔵量を持つイラクを押さえ、サウジ離れの姿勢を見せてからだ。米国を頼みとするサウジ王家にとって、米国が求める過激派撲滅を実施できるかどうかが、政権存続にかかわる問題となった。リヤドやメディナなど大都市で、治安部隊による過激派拠点の摘発や、過激派グループと治安部隊の銃撃戦が頻発するようになった。

 このあたりの解説は悪くない。米国の中長期の戦略としては、イラクを安定化させることができれば、サウジを切ることも可能になるからだ。その思想をもつ勢力は米国に根強い。が、現状、サウジのお友だちであるブッシュ家の長男が米国の棟梁をしているうちはそう過激な動きにはでないだろう、というのがサウジの読みだが、サウジとしても内情ややこしい問題を抱えており、今回の事件はそう単純ではないこともありうる。
 もともと、アルカイダはサウド家が育てたようなものだし、であれば、アメリカもグルだというあたりは、「裏切りの同盟 ~アメリカとサウジアラビアの危険な友好関係」またはPBS"Saudi Time Bomb?"(参照)を読んどいてくれ。また、サウド家とワハブ派(ワッハーブ派)については、ちょっと情報が散漫だが、Wikipdiaの「ワッハーブ派」(参照)を参照のこと。
 気になるのは、当然、今後の動向だ。本気でアルカイダが親元のサウジを攻撃し始めるかだ。「裏切りの同盟」のBob Baerは昨年の夏時点でこの懸念を、salonのインタビュー"Terror in the Saudi kingdom"(参照)強く表明していた。The regimeとはサウド家である。サウジ・アラビアとはサウド家の所有物である。

The regime is plenty vulnerable. I think the fact that we've been seeing running gun battles all around Saudi Arabia since May 12 [when suicide bombers struck a residential compound in Riyadh] is indication enough there are deep problems in the kingdom.

 動向がマジかどうかは、同じく、Bob Baer のコメントが示唆深い。

Do you agree that the May 12 suicide bombings in Riyadh had a big impact on the Saudi regime? They've announced a number of al-Qaida arrests in the last two months, but is it real progress or just window dressing?
 I think it is window dressing -- just compare Saudi Arabia to Pakistan. The Pakistanis finally understood they had to arrest these people who were behind 9/11. They've been there on the street with us, some getting killed while trying to make arrests, and they've turned them over to us. It's very clear-cut that Pakistan, or at least Musharraf, is helping to a large degree.
 But you look at Saudi Arabia, and as far as I know, there hasn't been a single arrest inside the Kingdom of anybody implicated in Sept. 11. And the Interior Minister, Prince Nayef, said yesterday they're not going to turn anybody over to the United States. To really do a thorough, complete investigation we need to take these people [like al-Bayoumi] into our custody as material witnesses.

 つまり、これまでは各種事件があっても、サウド家は動いていなかったのだ。
 とすれば、逆に、この事件をサウド家がどう見ているか、つまり、マジかよを計るには、今後の取り締まりの動向を見ていけばいい。
 ただ、どうも皮肉な見方になっていけないのだが、アルカイダっていうのは、かなり賢いのではないか。ちょっくら原油市場を脅したり、サウド家を弱体させるようなことをすれば、中長期的に自分らの首を絞めることを知っているのではないか。

|

« アラウィ首相指名の黒いゲームも悪くはない | トップページ | IP電話のダウンはコモンキャリアの恥 »

「時事」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: サウジのテロは新しい危機の始まりか?:

« アラウィ首相指名の黒いゲームも悪くはない | トップページ | IP電話のダウンはコモンキャリアの恥 »