« 北朝鮮竜川駅爆破とシリアの関連 | トップページ | 中国の近未来にどう向き合うか »

2004.05.20

在韓米軍縮小が意味すること

 どうも無粋な話が連日続くことになるが、政局だの年金だのは特に言及することもない。私が気になるのは、在韓米軍の問題だ。そして、その根は日本の問題でもある。
 今回の在韓米軍縮小の件で韓国が泡を食ったようすは、東亜日報「在韓米軍イラク派遣、韓米同盟の『緩み』に懸念の声」(参照)がわかりやすい。


 米国が、韓国との十分な事前協議もなく、在韓米軍の第2歩兵師団兵力のイラク派遣を電撃的に決定したことで、韓米間に意見調整や協議のための外交チャンネルが十分に稼動していないのではないかという懸念が高まっている。
 米国は、在韓米軍兵力の派遣を14日に一方的に通告してきたが、政府は何の対案も示さないまま4日後の17日、盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領とブッシュ米大統領の電話会談で事実上これを受け入れた。
 また、イラク派遣の兵力が韓国に戻るかどうかについても、両国の立場が明確に整理されていないなど、意見調整に異常な兆候が見て取れる。

 「意見調整に異常な兆候が見て取れる」という表現が面白いが、実際はこの兵力はもう韓国には戻らない。なので、これを機に、在韓米軍は従来にない規模の削減になる。つまり、第二歩兵師団第二旅団の4000人弱が今後一年間イラクに駐留し米国に帰る。現状では、この削減が在韓米軍の一割だが、これが五割くらいまで削減されるだろうとみられている。朝鮮日報「米、最近在韓米軍の完全撤退を検討」(参照)などによれば、全面撤退という話もある。
 当然、韓国での米軍の力は落ちるのだが、とりあえず米軍側はそんなことはないと説明しているのだが、これが笑えるお話だ。

 潘基文(バン・ギムン)外交通商部長官は18日、内外信記者会見で「米国はGPRを通じて、迅速に対応できる統合軍の配置構想を講じてきた」とし、「このため、作戦上の追加負担なく在韓米軍派兵が可能になったと、韓国側に説明した」と話した。
 潘長官はさらに、「米国は、今後3年間に渡って(韓半島に)110億ドルを軍事戦力強化費用として出費することをすでに決めた」とし、「米軍は、パトリオット・ミサイルの配置や、海・空軍力の強化、近隣地域の戦略爆撃機の増強配置など、必要なすべての補完措置を取る」と説明した。

 後半部分から言えば、これは、例の日本が荷担するミサイル防衛システムである。この実現に向けてこの秋からイージス艦が日本海に常駐する。のだが、以前にも触れたようにミサイル防衛システムなんか実用にならない。ただ、日本のカネをじゃぶじゃぶ米国企業に垂れ流すだけ。そんなもので韓国が守れるわけもない。
 というか、ちょっと失言めくが米国はどうやら韓国を守る気がないようだ。そんなことでは北朝鮮から国境は破られるはミサイルぶち込まれるぞとちと不安にもなる人もいるだろうが、多分北朝鮮はそんな自滅をする気はないだろう。実質的には北朝鮮の軍はすでに解体しているのかもしれない。
 その意味で、実際的には北朝鮮には軍事的な危機はなく、むしろ北朝鮮の現体制の存続は、韓国と米国にも利益になる。韓国はこんなものを背負い込みたくはないし、米国にとっても実質リスクはないのに軍産業に日本のカネを投入できる。では、日本にとっては利益になるのか? それがよくわからないが、半世紀くらい後に統一朝鮮ができることをリスクと考えれば利益なのか(皮肉です)。
 冗談はさておき、従来の軍事の観点から考えれば、韓国が従来米軍がしていたことを肩替わりすることになる。当然、それには計画が必要になる。中央日報「『安心しろ』ではなく対策を」(参照)では簡単にその計画について言及している。

もっと大きな問題は、米軍撤収が本格的に始まった場合、どう対処するかだ。特に、北朝鮮の長距離放射砲を無力化するための対砲兵作戦など、米第2師団が担当してきた「特定任務」をすでに引き継いだのなら、これに必要な多連装ロケットなどを購入するのに途方もない予算が必要となる。北朝鮮の事前徴候を探るための情報体系を構築する金額は計算できない。

 実際旧来の枠組みのまま、この計画を実施するかどうかはわからない。が、いずれ、韓国に軍の負担はのしかかるだろう。これも言い方が悪いが、詰まるところ、この問題は韓国の国民が決めればいいことだ。
 日本に関わる問題は、海外駐留米軍再配置(GPR)のほうだ。今回の在韓米軍の縮小はGPRの一環だからだ。これがどうなるのか。中央日報「在韓米軍が在日米軍の支持受ける」(参照)に興味深い指摘がある。

米国が地上軍中心の駐韓米軍と海・空軍主軸の在日米軍の水平的分業関係を終え、日本側に戦力と指揮部を集めようという動きを見せているからだ。

 単純に読むと在日米軍が強化されるようにも読める。しかし、そう単純に考えて済む問題でもない。

 在韓米軍と在日米軍の変化は、米国が日米同盟を太平洋版米英同盟に位置づけようという点とかみ合っている、という分析だ。ここには、米軍が推進する軍の機動化にも日本の方が有利だという判断があるとみられる。
 米陸軍第1軍団司令部の日本移動計画も注目される。第1軍団は配下に米第2師団を置いている。在韓米軍の主力部隊を在日米軍が指揮する可能性が高まったというのは、象徴的な意味を持つ。これに伴い、米国は韓半島防衛については、有事の際の迅速配置軍投入や、危機高調時の戦闘爆撃機、母艦などの隣接配置を主軸と考える可能性が高い。

 まずわかるのは、ようやく冷戦が終わるということだ。それで「北」にフロントする在韓米軍が整理されるわけだ。また、日本も、冷戦用の基地ではなくなる。ここでも、では何向けの基地なのかと考えやすい。端的には中国ではあるのだろう。が、その問題はここでは扱わない。
 いずれにせよ、GPRは日本を基軸に推進されるのだが、ここで重要なのは、このアイディアの主人公はとりあえずラムズフェルドであることだ。彼は、現代戦のIT要素を強化し、地上兵力を削減し、手の汚れない航空戦力を重視していこうとしている。余談だが、米国でも日本でも現代において徴兵の復活があるぞと馬鹿なことを言うやつがいるが、現代の戦争にトーシロは要らない。毛沢東率いる人民の力とか人海戦術の時代ではないのだ。
 だが、このラムズフェルドのアイディアは、イラクで役に立たないことがほぼ証明されてしまった。しかも、この戦争ではクロートの傭兵をがばがば入れることになった。当然、構想の見直しは出てくるだろう。どうなるのかわからない。
 もう一面、GPRで重要なのは、米国の4軍の体制をなんとしたいというのがある。この問題は、米国の内政問題なのであまり見えてこないのだが、日本の場合は、もろに米軍の不利益を受けている地域、沖縄があるので、そこから透けて見えてくる部分が多い。例えば、普天間飛行場返還のすたったもんだは、米国4軍の利権が根にある。米国家側に強い指導力があれば、あんな小さな居住区内の海兵隊の飛行場など、基本的には空軍である嘉手納基地に統合できる。というか、沖縄を来訪したラムズフェルドもなぜこんな問題が解決できないのかいぶかしがってすらいる。万一、住民被害が起きれば、在沖米軍全体が崩壊する危険性もあるからだ。
 現状は、米国連邦議会では、海外駐留米軍再編計画を大統領に提言する「海外基地見直し委員会」の設置を計画し、その公聴会に稲嶺恵一沖縄知事の出席を求めている。沖縄タイムス「米議会海外基地見直し委」(参照)によれば、この計画が、うまくいっていない。

 八人で構成する「海外基地見直し委」の人選は遅れ、議会が指名を公表しているのは、空軍系シンクタンク「ランド研究所」のトンプソン所長、いずれも退役軍人のコーネラ(海軍)、カーティス(空軍)、テイラー(陸軍)の四氏。軍の既得権益が主張されるのがほぼ間違いない顔ぶれだ。

 繰り返すが、GPRで重要なのは、こうした4軍の体制を近代化したいという思いが米国の中枢にあるのだ。
 こうした状況に対して私はどう考えているのか? かなりの部分が、イラクの今後とラムズフェルドの去就にかかっているとは言える。それでも、はっきりしていることは、どのような体制であれ、日本は重視されるだろうということだ。日本は、いわば、米軍のための最大のスペシャリストとなるのだろう。これだけのIT技術とその製造能力を持っていること自体、米軍にとって最大のメリットになるのだ。
 これから米軍の世界展開に日本の国全体が組み込まれていくのだろうと思う。これは、従来のように自衛隊が米軍の末端や兵站として機能するというのはわけが違う。鬱になってきそうだ。
 もちろん、そんなこと妄想かもしれない。そうだといいなと思う。

|

« 北朝鮮竜川駅爆破とシリアの関連 | トップページ | 中国の近未来にどう向き合うか »

「時事」カテゴリの記事

コメント

空気読めない結果が意外と早く訪れましたなあ

投稿: (anonymous) | 2004.05.21 11:25

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 在韓米軍縮小が意味すること:

« 北朝鮮竜川駅爆破とシリアの関連 | トップページ | 中国の近未来にどう向き合うか »