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2004.05.18

イラクに主権は委譲されてもお金はダメ

 イラク情勢について、目につきやすい戦闘の状況に加えて、このところどうも主権委譲に関連して、米軍と国連の間で香ばしいやりとりが進んでいるようだ。ただ、この国連が旧来の意味での国連だけではなく、ケリー支持やその他の反ブッシュ勢力(ソロスとか)も噛んでいるようなので複雑。というか、複雑極まりない。
 しかし、ある意味では単純とも言える。要するに主権委譲後に誰が石油の利権を握るかということだ。国連か米国か。もっとも、そう言うと単純すぎるし、よくある陰謀論のように聞こえるかもしれない。そこが難しいところだ。極東ブログでは、できるだけ、難しい面を扱いたいと思うのだが、単純な反米論者などに誤解されやすい(っていうか理解されないのだろう)。
 話の切り出しにSalon.comの"Raiding Iraq's piggy bank"(参照・要登録)を借りる。問題提起はこうだ。


As the occupation of Iraq dissolves further into bloody chaos, the colonial overseers in Baghdad are keeping their eyes fixed on what is really important: Iraq's money and how to keep it. Whatever apology for a "sovereign" Iraqi government is permitted to take office after June 30 -- and U.N. envoy Lakhdar Brahimi admits in private that he "has to do" whatever the Americans tell him to do -- the United States is making sure that the Iraqis do not get their hands on their country's oil revenues.

 つまり、"hands on their country's oil revenues"ということであり、米国はその手を離す気はないよということだ。主権はイラク国民に返すが、石油収入益は渡さないよ、と。しかし、それって主権委譲になるのか?と考えれば、日本人の感覚からすれば、なるわけないでしょと言いたい。が、日本国の立場はと再考すれば、暗澹たる結論を言わなくてなるまい。
 もともとこの戦争は石油利権だという言い方もある。が、とりあえずそれは今回は扱わない。「世界を動かす石油戦略」も理解していない初歩的な誤解が含まれている可能性が高いからだ。
 話を続ける。

We are talking about big money here: Iraq's oil exports are slated to top $16 billion this year alone. U.N. Security Resolution 1483, rammed through by the United States a year ago, gives total control of the money from oil sales -- currently the only source of revenue in Iraq -- to the occupying power, i.e., the United States. The actual repository for the money is an entity called the Development Fund for Iraq, which in effect functions as a private piggy bank for Paul Bremer's Coalition Provisional Authority. The DFI is directed by a Program Review Board of 11 members, just one of whom is Iraqi.

 問題は、DFI(the Development Fund for Iraq)のありかただとも言える。本来なら、石油収入益は国連管理下であるはずだ。しかし、そう簡単に話が進まないのは、国連が善なのに、アメリカが力でごり押しというだけではない。やっかいなのは、これが、極東ブログ「石油・食糧交換プログラム不正疑惑における仏露」(参照)でも触れた国連疑惑に関連していることだ。

The development fund is not solely dependent on oil money -- of which it had collected $6.9 billion by March. Under the terms of 1483 the DFI also took over all funds -- $8.1 billion so far -- in the U.N.'s oil-for-food program accounts (Russian and Chinese support for the resolution was bought by agreeing to keep the oil-for-food racket running for a few more months); various caches of Saddam Hussein's frozen assets around the world, amounting to $2.5 billion; and further cash left behind by Saddam inside Iraq, estimated at about $1.3 billion. The money is kept in an account at the Federal Reserve Bank in New York.

 アナンがヴォルカーを選んだのは現状では最善かとも言えるが、アナン自身がいつ吹っ飛ぶとも限らないし、疑惑のリストにはシラクも載っているので、どこまで火がつくかもわからない。
 Salon.comの"Raiding Iraq's piggy bank"ではこの先、Halliburton社への支出について議会の歯止めがないことも問題にしている。このあたりは、明白過ぎるのだが、だからHalliburtonが悪玉だと簡単に陰謀論にして済むことでもない。むしろ、この金を制御せよ、が当面の課題であるべきだ。
 ソロス(George Soros)は、早々にこの問題に首を突っ込み、"Iraq Revenue Watch"(参照)で、この金の制御が米国に回らないように活動を始めている。ソロスの真意がどこにあるか、どう評価していいのか正直なところわからない。気になるのは、むしろ、わかりやすい図式が広まりつつあることだ。日経系「イラク泥沼化、それでも ブッシュ大統領再選へ」(参照)ではソロスの最近の活動についてこう図式化している。

 ブッシュ再選に待ったをかける動きはある。選挙資金集めではブッシュ陣営が民主党の諸候補を圧倒しているが、最近になって投機王のジョージ・ソロス氏が500万ドル以上の巨額の資金を集めて反ブッシュ、民主党候補支持のキャンペーンを始める、と宣言した。ソロス氏は、共和党新保守派(いわゆるネオコン)を自身に従わないものを淘汰する「至上主義」として決めつけている。ソロス氏が出身国ハンガリーでナチス・ドイツに占領された当時の体験を引き合いに出しながら、ネオコンのイデオロギーの影響を強く受けているブッシュ大統領の対外強硬策を厳しく批判している。ユダヤ系ハンガリー移民であるソロス氏が、同じくユダヤ系政治専門家が占めるネオコンに対抗することの政治的意味は興味深い。というのは、ブッシュ政権は親イスラエル路線をとり、アメリカ政治に大きな影響力をもつユダヤ系の支持を広範にとりつけていた。ソロス氏のような動きがユダヤ系社会に広がると、民主党候補には大きなプラスになる。経済トレンドと同じように今後はこうしたイスラエル・ユダヤ系社会の支持動向も見逃せない。

 こうした、ある意味で日本人にわかりやすい図式は緻密に論駁しなくてはいけないのだろうと思うが、率直なところ今の私には難しい。
 いずれにせよ、"Iraq Revenue Watch"で公開されている文書は、この問題を考えるうえで重要であるはずだ。できることなら、左翼といった旧来のバイアスがかっていない視点で、これらのソースを精緻に読み解いている論者はいないのだろうかと思う。
 余談めくが、「アラブ政治の今を読む(池内恵)」で啓発されたことでもあるが、イラクという国のアイデンティティは結局のところ、この石油という利権の配分権の意識とも言い換えていいようだ。冗談みたいだが、主権とはこの石油収入益の権利を実質指しかねない。

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コメント

イラク戦争が始まるかも知れないと言う時点で爆弾の増産ラインを組んだり,戦争が終わるか終わらない内から復興事業の入札が何度か行われ,自分たちの攻撃で壊れた施設の改修を米国ゼネコンが始めたり,本当に恐ろしい国である.現役大統領が再選するためには戦争が必須になりつつあることも,どこかおかしい.一時,軍需産業が構造不況業種と呼ばれ戦争が公共工事と言われていたが,今は石油の....

投稿: s | 2004.05.18 20:47

大統領選挙のたびに戦争されたんじゃたまったもんじゃないですぜ。
愛知上空は戦闘機がガンガン飛んでますな。厚木みたい。

投稿: (anonymous) | 2004.05.19 10:24

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