« ジェンキンスさん問題は難しい | トップページ | イラクに主権は委譲されてもお金はダメ »

2004.05.17

最近のイラク情勢について

 米国での報道から見ていると、イラクの戦闘ではかなりの動きがあるのだが、あまり日本国内では報道されていないようだ。特に、新聞社系のニュースが弱い。朝日新聞はほとんど沈黙しているようにすら見える。朝日は、れいの虐待がラムズフェルドの承認だったか、というニューヨーカーの記事"THE GRAY ZONE"(参照)を早々にネタにして「収容者への威圧、『国防長官が承認』米誌報道」(参照)という記事を書き飛ばしているが、これもどうやらAP経由臭い(参照)。朝日に報道能力がなくなっているようにすら見える。
 他紙も似たようなものだが、読売はやや奇妙だ。カイロ特派員からのニュースがあるのだが、これが米ソースやアラブ系のニュースの伝聞を書いているだけだ。例えば、「イラク各地でサドル派と交戦続く、爆弾テロも」(参照)にはこうある。


中部カルバラでも16日、米軍と交戦したマフディ軍兵1人が死亡。南部バスラでは16日、英軍駐屯地近くの住宅に迫撃砲が着弾、2歳の双子女児と母親、祖母の4人が死亡した。

 というのだが、ニュースのトーンが感情的であり、ソースが不明だ。非難する意味ではないが、他も参考がてらに示しておこう。「モスルに迫撃砲攻撃、イラク人4人死亡・17人負傷」(参照)より。

【カイロ=柳沢亨之】ロイター通信によると、イラク北部モスルのイラク軍関連施設に15日午前、迫撃砲による攻撃があり、イラク軍への志願手続きのため施設入り口で並んでいたイラク人4人が死亡、17人が負傷した。

 また、同記事ではこうある。

 AP通信によると、バグダッド北東部にあるサドル師派の拠点「サドルシティー」で14日夜から15日未明にかけ、米軍と交戦したマフディ軍兵2人が死亡した。

 皮肉に聞こえるかもしれないが、ロイターとAPをまとめるなら、カイロで書く必要はない。
 以上、ちょっとしつこい感じだが、日本でのイラク報道がどうも奇妙なことになりつつある。
 事態について話を移す。共同系ニュース「イラク聖地などで衝突続く 米兵死者、776人に」をひく。

 【バグダッド16日共同】イラク中部のイスラム教シーア派聖地カルバラなどで15日から16日にかけ、米軍と反米武装勢力の衝突が続き、バグダッドでは15日夜、道路に仕掛けられた爆弾が爆発し米兵1人が死亡、1人が負傷した。

 詳細は日本時間で14日時点だが、New York Times "Battles in Najaf and Karbala Near Shiites' Religious Sites"(参照)がわかりやすい。

BAGHDAD, Iraq, May 14 - Fighting erupted Friday in Najaf when American tank troops and soldiers battled militiamen loyal to the rebel Shiite cleric Moktada al-Sadr in a centuries-old cemetery near the revered Shrine of Imam Ali.
 Amid plumes of smoke and explosions that echoed around the narrow streets, the shrine itself was reportedly hit by gunfire, pitting its golden dome with four small holes.
 The damage, however slight, marked a moment that the American military has been straining to avoid in its five-week standoff with Mr. Sadr: any violation of the holy sites of Najaf and Karbala, held sacred by Shiites around the world, that could inflame Shiites here into a broader uprising against American forces.
 But many moderate Shiites have called for Mr. Sadr and his militia to leave Najaf, and there were no signs of wider unrest on Friday. Despite the damage, the United States military said it was taking extraordinary pains to convince Shiites that it was doing everything to keep the violence away from the shrines.

 米軍によるサドル潰しが進行していると言っていいのだろうと思う。戦闘は続いているがファルージャ掃討とはかなり違うようだ。
 事態はどうなっているのか。考察の一例として、神浦元彰軍事アナリストでは、日本ソースだけから、次のように印象を書いている(参照)。

サドル師が提示した停戦協定を米軍は拒否をした。あくまでサドル師の殺害か拘束を目指すという。またサドル師も徹底的に占領軍と戦うことを宣言した。そこで比較的安全と言われてきたサマワにも戦火が飛び火した。アメリカとしてはサドル師の抵抗勢力を徹底して鎮圧し、反米に傾くシーア派に見せつけたい狙いもあるようだ。そのため本丸のサドル師は当分は生かしておいて、その間に各地のサドル派の武装勢力(マファディ軍)を、一人でも多く殺害する作戦のようである。
 米軍はそのようなやり方しかできないが、果たしてそれでイラクは安定した国になるのだろうか。私はイラクの治安がさらに悪化していき、駐留米軍を苦しめることになると思う。

 この見解は軍事的というより、日本人にとって一般的な見解ではないだろうか。いずれにせよ、イラクの米軍は混迷を深めているというあたりだろう。
 そうなのだろうか?
 少し古いが、4月6日のWashington Post "A Necessary Fight"(参照)では、この時点で、明確にサドル側との妥協を否定し、サドル側を徹底的に壊滅するように示唆している。恐らく、現時点では、この視点は米軍のそれを代弁していると見ていいだろう。

U.S. officials wouldn't say when they might seek to arrest the cleric, who reportedly has taken refuge in a mosque surrounded by his heavily armed militiamen. But now that the conflict with the Mahdi Army has begun, U.S. commanders should not hesitate to act quickly and with overwhelming force.

 the clericはサドルを意味する。ご覧のとおり、早急に殲滅するように主張されている。むしろ、このアクションが、れいの虐待関連のごたごたで1か月近く延期されたのではないだろうか。つまり、軍はけっこうシナリオ通り動いているようにも見える。

The Marine action represents a return to more aggressive tactics against an enemy that appears not to have weakened as much as U.S. commanders believed. Such offensive operations have a cost, in Iraqi and American lives, and in new televised images of violence from Iraq. Yet the alternative -- to step back from confrontation with Iraq's extremists -- would invite even worse trouble.

 ここでサドルを徹底的に叩くことが、むしろ被害を食い止めるというのだ。
 この問題は、このWashington Postの記事が書かれた事態から変化し、すでに国連委譲が背景になっていることだ。ファルージャについては、どうやら旧フセイン派との妥協はできたようでもある。そこにシーア派の焦りもあるのかもしれない。ただ、シーア派とはいえ、サドルはシーア派を代表しているわけでもない。
 それでも、マファディ軍のような安易な武装勢力はいずれつんでおかないと内乱の芽にはなるだろう。
 以上、米軍を擁護したいわけではないが、米軍がなんとなく言われているほどアノマリーな状態ではないようには思える。

|

« ジェンキンスさん問題は難しい | トップページ | イラクに主権は委譲されてもお金はダメ »

「時事」カテゴリの記事

コメント

TVBrosの太田光@爆笑問題氏のコラムがおもしろかった。

投稿: (anonymous) | 2004.05.17 10:12

現地に、邦人のジャーナリストが2人のみ、しかも自衛隊は現地紙で散々に叩かれていますから…

投稿: (anonymous) | 2004.05.17 15:38

まぁ、自衛隊はもっとハデに活動しないとね。

投稿: (anonymous) | 2004.05.17 21:48

このブログ、もうアメリカ擁護で必死でちゅなw。管理人たん、吉本信者だったわりに、いつからこんなアメリカ大スキーになっちゃったの。
カンボジア大虐殺でポル・ポト擁護したチョムスキーそっくりとか言ったら、何人くらいに通じるかねw。

投稿: すっぴん | 2004.05.18 07:01

えっアメリカ擁護?????
反米の人たち(なのかな?)ってホントに大丈夫なのか?
むしろ極東のエントリから、アメリカを叩く
強い論理が生み出せると思うんだが

投稿: (anonymous) | 2004.05.18 18:27

別に、このサイトが反米か親米かなんてどうでもいいんですけど。

http://blog.livedoor.jp/awtbrigade/archives/587671.html

こういう証言がある。そのことについて、ここのとても頭がよさそうな管理人さんの意見を、聞いてみたいとは思います。
最近のニュースは、この証言を裏付けてますよね。

投稿: ベラドンナ | 2004.05.18 22:06

ベラドンナさん、ども(そろそろコテハンにしてね)。この件の意見はすでに書いたかと思ったのですが、この場ではなかったかもしれません。今回のイラク戦では、米兵の自殺者・鬱病がある意味顕著です。その点には関心を持っています。

ご指摘の記事については、率直に言うと昔からあるタイプの記事に思えました。パティキュラな指揮系の指摘があると情報としては面白いです。

こうしたティピカルな記事を読むより、ベラドンナさんの知人には米海兵隊のかたはいますか? いたら、直接海兵隊というものについて訊いてみるといいですよ。彼らがなぜ海兵隊に入り、実際にどのような経験をしたのか。自分でその人間に向き合うといろいろ学ぶことが多いものです。

ベラドンナさんは日本籍ではないとのことですから、自身の徴兵経験をお持ちではないですか。あるいは、親族に参戦経験者がいるのでは?

投稿: finalvent | 2004.05.19 07:32

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 最近のイラク情勢について:

« ジェンキンスさん問題は難しい | トップページ | イラクに主権は委譲されてもお金はダメ »