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2004.05.07

鉄人28号

 リメークの鉄人28号(参照)を毎週見ている。5回が終わった。前回あたりから話がちとたるくなってきたかなというのと、今回に顕著なのだが、見え見えのオチをひっぱるひっぱるの脚本はなんだろと思う。だが、ふと考えてみると、このプロットのノリも、作画と同じでレトロのパロディなんだろう。アレだ、黄金バットを思い出してもらいたい、って、思い出せるやつなんか、いねーって。かく言う私もその世代ではない、が、その雰囲気はわかるぞ、ローンブロゾー!
 そういえば、ショタコンという言葉の元になった正太郎だが、今回の作画はかなり正太郎にリキが入っている感じだ。基本的にオリジナルを踏襲しているわけだが、この作画の美観っていうのは、アレだ^2、赤胴鈴之助を思い出してもらいたい、って、思い出せるやつなんか、いねーって。かく言う私もその世代ではない、が、その雰囲気はわかるぞ、剣を取ったらニッポンイチ…そういえば、トリビアの泉の日本刀とピストル勝負ネタは不覚にも感動してしまった。物理屋的に考えればわかりきった結果ではあるが、技術屋的に言えば、個別の日本刀の構造が理論どうりであるとは限らない。タモリも不覚にも熱くなっていたあたりが、笑えた。日本刀の精度について、も一度考え直してみたくはなった。と、余談ついでに言えば、日本刀っていうのは、魚包丁が原型で、あれは和冦の武器なのではないかと思うが…と話、それまくり。
 今回の鉄人28号を見ていると、なーんでもないシーンで、自分が熱くなり、そして泣けてしまうことがある。なんつうか、戦前の科学っていうあたりだろうか。死んだ父の兄、私の叔父伯父は、二十二、三歳くらいでインパールで殺されたのだが、彼は無線技士だった。私の父もエンジニア志向の青年だった。そうしたせいか、なにか、ああいう戦前の科学を想起させるものは無意識にズンとくる。
 このリメークの鉄人28号がどういうふうに今の日本社会に受け止められているか気になる。そうだ、はてなダイアリーには言及が多いだろうと思って、みると、うーむ、多いといえば多い(参照)んだけど、なんつうか、アニメ世界にヲタ過ぎ。かく言う私だって、元版の鉄人28号を見ていた口で、つい、グリコグリコグリコーとか口をつくくらいだから、ヲタ話もできねーわけじゃないけど、モンスターを緑色にすんなよとか、っていうか、なんというのか、この系譜学的な考察とか、映画評論ばりに監督がどうのだかいう説明言説って、なんなのだろう。なにも単純に批判しているわけじゃないんだけど(だからウンコ飛ばしはナシ)、橋本治とか昔、少女漫画対象に評論をやっていたころは学問的なパロディだったけど、現在では…、うーむ、よくわからん。ただ、今回の鉄人28号を見ていて、歴史感覚というのはかなり大きなポイントだなとは思う。というわけで、なんことはない、私も勝手に私なりのヲタ話になる。
 今回の鉄人28号では早々に不乱拳博士を殺してしまうのだが、不乱拳博士の懊悩は、多分に731部隊(参照)のパロディでもあるのだろう。ただ、この731部隊は遠藤周作の「海と毒薬」的な文学的な反照であり、現実の731部隊は、内藤良一がミドリ十字創立し、そして…という展開を辿る。そのほうが、戦争という不気味なものが現代まで覆っている姿なのだが、今回の鉄人28号はそこまでの物語あるいは脱物語的な射程を持った象徴でもないだろう。ただ、731部隊の多数は、その後の日本の医学界の中心を担っていくという意味で、広義に今回の不乱拳博士的な部分はあるのかもしれない。
 不乱拳博士が金田博士とライバルだったということや、敷島博士という名称にも特に過剰な読みは必要ないのだろうとは思う。不乱拳博士は漫画らしいネーミングというわけだ。が、それでも、金田姓ときいてなにもピンとこないわけにはいかない。まして、その弟子が「敷島」というのも暗示的過ぎる。あまりこの話はツッコミたくはないが、金田、新井、井川といった姓にピンとこない日本社会というのは、まさに戦後ではあるのだろう、が…と少し口ごもる。うまく言えない。そのうまく言えない暗さの部分は、今回の鉄人28号とかなり基本的なところで、重なる。敷島博士が「しかたがないとしか言えない」というのだが、そのあたりの屈曲した感じだ。
 物語はこれから冷戦の世界の枠を重ねていくのか、単に漫画的な世界を洗練していくのかわからない。奇妙なノスタルジーだし、意外に、ノスタルジーというのは、昭和32年生まれの私など、こういうふうに暗く想起すべきなのかもしれない。今でも思い出せるが、幼稚園児の私は帰りのバスを待ちながら、地面に鉄人28号の絵を描いていた。あの幼稚園は、たぶん、兵舎の払い下げだったのだろうと思う。

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「歴史」カテゴリの記事

コメント

素敵な小父様にうんこ投げではございませんが、伯父様、ですわよね。

投稿: (anonymous) | 2004.05.07 10:53

おっと、恥ずかしい。訂正入れときました(恥を残して)。

投稿: finalvent | 2004.05.07 11:01

こんばんわ。
鉄人28号の実写版を微かに覚えてますが、等身大+αだったような...。(着グルミなんだもん当然ですかねw)

そして小太郎「少年」は蝸牛(カタツムリ)の角のような「リモコン」...ってってましたよね、コードついてないのにw。とにかくその「ラジコン」のアンテナらしき蝸牛の角を両手でグリグリ操作しておメメパッチリの鉄人を動かしていたような記憶ですよぉ。あら?グリグリ操作ならあれはレバーだったのかとか今頃気付いたりw。

最初はロケットだかジェットだかのエンジンは背負ってなかったですよね。トコトコ歩いてましたわ、確か。

鉄腕アトムが放送されてから興味はそっちの方に行ってしまって、「金田博士云々」のことはちっとも気付きませんでした。この際是非そこいらの薀蓄お聞かせいただければ幸甚であります。

エイトマンの次ぎ辺りでしたか?鉄人28号のアニメ版出たのは。アニメ版からは縦横無尽の活躍で、やっと子供のヒーローになったような気がするのですが、どうでしたでしょうか?

投稿: shibu | 2004.05.07 20:53

shibuさん、どもです。実写版の世代でしたか。確かに人気が出たのはアニメからでしょうね。そして当時のアニメはコミック版ほど戦争の雰囲気はなかったかと記憶しています。「金田博士云々」は、アレです、当時、金田と言えば、金田正一を連想し、そして…という話です。「敷島」が「大和」にかかる枕詞なので、どうしても連想はしてしますね、という話です。ただ、金田正一がヒーローだったように、差別ということではないのですが、誤解されるのをちょっとおそれてぼかしています。

投稿: finalvent | 2004.05.07 21:37

鉄人、アトムより好きだったな。カラオケで鉄人の歌を唄うと、やはり最後にグリコグリコグリコーと叫んでしまうな。黄金バット(アニメ)に出てくるな、ナゾー様。部下にマゾーというのがいて(声優が内海賢二さん、笑い方がいいです)、時々失敗して消されそうになるけど、何となく生き延びるという、とても処世術に長けた?キャラクターだった。(古いエントリに感想をくっつけて恐縮です。ブログ始めてまだ2ヶ月なもので、いろいろ見て歩き中です)

投稿: donald | 2005.01.30 21:32

 いやあ~同年代なのか、妙に同感します。
鉄のつく主人公たちがアニメで活躍した頃は
「鉄は国家なり」の時代でした。
 「鉄は金を失う」とかいわれて貶められて
いた鉄の位置付けを立派に引き上げたキャン
ペーンであった。まるで子供にわらべ歌流行
らせてやるやり方と形はちがうが似ていたが。
 逆に鋼(はがね)は、刃金の地位を築いてい
たが、現金のカネやカネゴンとか金権政治と
いう言葉とともに価値はあっても、暗い影を
落とすものにしようと躍起だった。
 その反撃が、最近出てきた「鋼の錬金術師」
など。でも本来は鉄と鋼、この両者ははFeと
いう金属が持つ両面性なのであってどちらが
優れているなどといってもはじまらない。
 しかし、トライアスロンの選手を鉄人と言う
のは言い得て妙だが、料理の鉄人は料理が鉄さ
びくさくていただけない。企画がよくて盛り上
がったのだろうか?
 いずれにしても用語として鉄と鋼にそれぞれ
適したものがあり、そのお互いの守備範囲をそ
れぞれ尊重しあうのが重要と思う。
 最近、日本刀の原料は和鉄であるという人が
増えており、web上でも多く見かける。しかし
日本刀に関する文献を古今東西目を通した方な
ら分かるだろう。日本刀の原料といえば和鋼と
言う呼び方が正しいことを。その他の刃物や
鉄製品で日本古来の伝統製鉄法「たたら」でで
きたものは和鉄でもかまわないと思う。
 詳しくはインターネット上で色々しらべると
分かると思います。


投稿: 鉄鋼人 | 2005.02.09 23:04

 私は司馬遼太郎氏のファンで最近「街道をゆく」の出雲の
たたら製鉄の旅の話を読みました。朝鮮半島に比べると製鉄
の燃料になる森林の回復力が強い日本では持続可能な鉄文化を
近代まで長く保ったことも、朝鮮のように中国文明に飲み込ま
れなかったらしいです。すなわち「鉄は日本文明」みたいで
すね。

投稿: 大和米子 | 2006.05.12 01:35

こんにちは。
大道芸観覧レポートという写真ブログをつくっています。
かなり昔の漫画もとりあげはじめています。
よかったら、寄ってみてください。

http://blogs.yahoo.co.jp/kemukemu23611

投稿: kemukemu | 2007.01.06 21:14

「温故知新」
 日本史全体を眺めて考えると、鉄鋼文化発祥の地は島根県の安来地方にあります。日本の鉄の将来を考えるためにも、是非出雲安来地方へこられることをお勧めします。

投稿: ラストサムライ | 2007.12.21 23:24

 出雲地方には日本文明の底力が眠っているような、思いがなんとなくします。

投稿: ウメトクマ | 2008.11.23 23:25

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