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2004.04.05

スリランカ状勢

 朝日新聞社説「スリランカ――今こそ日本の出番だ」は奇妙な後味を残した。なぜここにノルウェーは余談のようにしか出てこないのか。 「タミル人武装勢力」が同義ということなのだろうが、「タミール・イーラム解放の虎(LTTE:Liberation Tigers of Tamil Eelam )」という言葉もない。朝日には左翼・反米のイデオロギー的な肩入れがあるのだろうとは思うが、社説としては不可解に思えた。
 この問題はどう考えたらいいのか。私はこの問題の本質を理解していないこともあり、難しい。朝日から少し長めだが引用する。


 日本政府は近年、これを外交の柱に掲げ、昨年改定した途上国援助(ODA)の大綱にも織り込んだ。戦争や内戦からの復興をめざすイラクやアフガニスタン、スリランカへの支援も、この理念を実践するものとされている。
 そのスリランカで総選挙があった。選挙ではタミル人武装勢力との和平の進め方が最大の争点になり、和平を推進してきたウィクラマシンハ首相が率いる統一国民党が敗れてしまった。
 第1党に躍り出たのは、和平に慎重なクマラトゥンガ大統領の統一人民自由連合だ。日本やノルウェーなど支援国の間では「和平プロセスが停滞するのではないか」と心配する声が出ている。

 文脈からわかるように、朝日社説はスリランカの問題に直視しているわけではない。一般論のダシというか、例としてスリランカを捕らえているにすぎない。が、その一般論は朝日の毎度のきれい事の域を出ていないので説得力もない。朝日には、スリランカの個別事例に適切指針を与えることで一般論を言ってごらんなさいな、と言いたい気もする。
 朝日のお題目としては、とにかく平和至上主義なのだから、とりあえず、統一人民自由連合(PA:People's Alliance)とLTTEが仲良くやってくれということらしい。別の言い方をすれば、米国からテロ集団と名指しされたLTTEを温存せよという意味になるのだろう。しかし、この主張は識者の苦笑を誘うのではないか。というのも、今回PAが返り咲いたのも、この和平に見えるLTTEの停戦中も、LTTEは子供を兵士に狩り出すなど、むしろテロ勢力を強化するための猶予を得てしまったとも考えられるからだ。朝日は「和平の行方が懸念される今こそ、日本の出番だ」というが、昨年の日本が設定した和平会談にLTTEは参加を拒否している。朝日は事態をどう考えているのだろうか。

 スリランカ政府は2年前、タミル人勢力と停戦で合意した。その後の交渉でタミル人側は「分離独立」の要求を取り下げ、連邦制の下での自治を受け入れた。
 ところが、自治の内容をめぐって対立し、交渉は頓挫した。タミル人側は「徴税権や裁判権、沿岸の警備権限も認めるべきだ」と主張し始めている。
 多数派のシンハラ人の間では「それでは事実上の分離独立ではないか」との反発が広がった。それが和平に慎重な政党を押し上げたと見ていいだろう。

 用語が整理されていなくてわかりづらいのだが、タミル人勢力=LTTE、前政府=UNP(United National Party:統一国民党)、多数派のシンハラ人=PA、ということだ。朝日は触れていないが、PAは2001年の総選挙でUNPに政権を譲った経緯がある。
 最近までのUNP政権下では、ノルウェーが和平仲介の主体に出て、日本はそれに従うような構図だった。が、この和平工作を好ましく見てないスリランカ人も多い。対外的な介入自体を忌避する傾向もあるようだ。IMFなども帝国主義的に見えるのだろう。LTTEとの停戦はそのまま和平につながると手放しで言えるものでもなさそうだ。こうした現状で、朝日の結語はそらぞらしく響く。

 幸い、停戦が実現した後、日本政府はNGO(非政府組織)と連携して、病院の修復や避難民の帰還事業などを推進し、高い評価を得ている。
 和平の行方が懸念される今こそ、日本の出番だ。スリランカ政府とタミル人勢力の双方に和平の道を踏み外すことのないよう、いろいろな機会やパイプを通じて働きかけてもらいたい。

 冷静に見ればこのままでは停戦は危ういだろう。なのに、どうして、日本の出番だと言えるのだろうか。むしろ、日本はこの機に、問題の構図を考え直したほうがいいだろうと思う。が、私自身、どう考えていっていったらいいのか、わからない。しいて言えば、多数のスリランカ人は嫌がるだろうが、連邦制の強化と引き替えに、LTTEを軍事的に抑止する国外勢力を注入するのがいいのではないか。

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コメント

いろいろ検索してみましたが、興味深いとともに解決するには難しいようですな。

1、元来、この内戦が始まった原因は1953年にタミル語の禁止による。それまではシンハラ人とタミル人との民族摩擦はなく、交流も盛んだった。
そのタミル語禁止の原因というのも、当時の政府がシンハラ系への人気取りのために提唱したというのが真相らしい。
2、で、内戦が延々と続いているのもシンハラ人の間でも与野党間の内輪もめがあって和平案が中々一本化しないためである。
3、国外勢力の仲介も望み薄と言わざるを得ない。90年にインドが自国にタミル人がいるために軍を派遣したのだが、全く治安維持に寄与しなかったばかりでなく、当時のガンジー首相が爆破テロで暗殺される事態を招き、おかげでインド軍は撤退を余儀なくされた。政府、タミル人ともそのときのトラウマが残っているため拒否している。

で、一応タミル・シンハラ両派に人的パイプを持っているのが日本とノルウェーだけだってなわけで、もうちょっと仲介の労をとってくれない?と頼まれているわけですよ。

個人的にはスリランカ停戦を恒久化するには政府が与野党間で不毛な主導権争いをするより和平交渉を優先する態度がいると思います。

投稿: F.Nakajima | 2004.04.06 21:52

Nakajimaさん、ども。ええ、この問題はとても複雑です。この問題に私が当初関心を持ったのはノルウェーのありかたに好感を覚えたことです。しかし、その後の経緯を追うにつれ、そううまくもいかないということがわかってきました。日本はいろいろ尽力しているのですが、空振り感はありますね。

投稿: finalvent | 2004.04.07 08:25

この問題の根はもっと深いように感じます。
Nakajimaさんの1,の前にイギリスの植民地支配の定石、少数民族(ここではタミル人)優遇政策がありましたし、与党内の権力争いはガキの喧嘩程度のもので、重要なのはLTTEとその制度化だと思います。ダイアスポラの働き等々も絡んできて厄介ですが。
現実問題として境界の引き方や物理的限界など一民族一国家は実現不可能なわけで、「国民」を構築する時間や幸運に恵まれなかった民族(漠然とした存在としての)は数多く残っています。
グローバリゼーションの影響で目をつぶることが難しくなって来ている現代において、ノルウェーなり日本なりUNなりが強引に枠を作って当事者間の信頼を醸成するというのは稚拙かもしれませんが一つの考え得る方策だと思います。ほっとくわけにもいかないんで。ここにまたグローバリゼーションがうまく作用してくれるといいんですがねえ。

投稿: 22 | 2004.04.07 18:34

>22
なるほどね。植民地政策は見逃していましたな。

強攻策は。。。。
わかんね~。だれかスリランカの人教えてくれ~。

投稿: F.Nakajima | 2004.04.08 08:06

22さん、こんにちは。非難はあっても、強引な枠は必要に思います。ただ、ノルウェー(と日本)のこれまでのありかたでよかったかは難しいように思えます。

ついでで申し訳ない。Nakajimaさんにちょっとコメント。
>だれかスリランカの人教えてくれ~。
これは、ちょっと異論があります。スリランカ人がすでに大きな意見対立にあるからです。もちろん、どの位置の人からでも意見は重要ですが、あくまで限定されます。

投稿: finalvent | 2004.04.08 09:29

いただいたトラックバックが文字化けしているようです。以下がその内容と思われます。

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『Puluwan』スリランカ孤児院応援プロジェクト
Posted in books & publish, Bookfund at 15:22:08 by moho

『Puluwan(プルワン)』プロジェクトの公式ホームページをオープンしました。
http://www.eijipress.co.jp/puluwan/index.html
『プルワン』は、スリランカの子供たちを応援するために企画された応援ブックです。

スリランカは、人口約1,946万人、北海道より一回りくらい小さいインド洋の「光輝く島」という意味を持つ島国です。最近ではビーチリゾートや、アーユルヴェーダなどが注目され、癒しの楽園・・・といった印象も受けますが、一方では20年にもわたる民族紛争による貧困、そして記憶に新しいのは2004年12月に発生したスマトラ沖大地震による津波による被害による孤児の数はさらに増加をたどっています。

続き http://www.eijipress.co.jp/blog/2006/03/22/259/

投稿: finalvent | 2006.03.22 20:38

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受信: 2006.03.22 20:15

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