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2004.04.28

大学非常勤講師は…

 朝日新聞社説「非常勤講師――こんな処遇ではいけない」が面白かった。大学の非常勤講師の実態の話だ。要するに、すごい低賃金なのだ。私も大学で非常勤講師をやったことがあるので、爆笑…もとい、苦笑した。
 実態を知らない人もいるかもしれないので、基本はこうだ。


 しかし、大学の先生は二つに分かれ、待遇に大きな格差がある。専任教員は月給が支払われ、個別の研究室と研究費が与えられる。一方で、非常勤の教員は講義に応じて賃金が支払われるだけで、研究室も研究費もない。

 賃金はこうだ。

 首都圏や関西の非常勤講師組合の調査によると、1コマ、90分の講義を受け持って、平均賃金は年30回で計約30万円。年齢は平均で42歳だ。講義の準備や試験の採点にかかる時間を考えれば、学生の家庭教師並みの時給である。
 専任教員並みに5コマの講義を担当しても、年収は150万円ほどにしかならない。講義のための本代や学会に出席する費用は自己負担だ。契約は1年ごとで、専任教員になれる保証もない。

 わっはっはとか笑ってしまいそうだが、これでもマシな部類かもしれない。時給6000円ならいいじゃんとかね。実際には、前後に1時間近くかかる。時給で割ると3000円くらいか。それでいいバイトじゃんとか思う? これに通勤費は含まれない。なにより問題なのは、大学によってはけっこう辺鄙なところにあるので、通勤時間が馬鹿にならない。1コマだけのために午前なり午後がつぶれるということになる。その影響のほうが大きい。つまり、その間は、生活費を稼ぐための仕事に充てられないのだ。とすると、ある程度稼ぐということで考えるとどうしても2コマ以上は入れることになる。
 と、すでに、実はボランティアだよ~んの雰囲気をただよわせているが、実感としてはそんなものだ。じゃ、なぜやるのか?というと、岸本葉子が、カルチャースクールの講師の話だが、「炊飯器とキーボード」に書いているように、断りにくいことがあったり、また、山本夏彦が、彼自身の経験ではないが、なにかのエッセイで、歳を取ると若い人に教えたいという欲望は抑えがたいと書いていたが、それもある。学生と飲むというのは楽しいこともある。
 大学講師は、ちょっとした肩書きにもなる。私の場合だと、図書館のフリーパスとかメリットだし、どうせ本でも読むなら静かなところがいいかというのもあった(専門書は自前で購入できないしな)。ま、いずれにせよ、金銭的には、わっはっはと笑ってしまうしかない。余談だが、学生たちに、「きみたちに教えているより、実仕事をしているほうが稼ぎの点ではいいんだよ」と言ったら、え?みたいな顔をしていた。
 繰り返すが、大学非常勤講師はボランティアだと思えばいいというのはある。私自身について言うと、失礼な言い方かもしれないが、大学生がつまんなくなったというのが、もうやりたくねーの最大の理由だ。私が歳を食ったからかもしれないが、もうちょっと言うと、ケースにもよるのだろうけど、講義が終わった後、「はーい、教室を出て」とか言って、ドアに鍵をかけるなんて指導込みっていうのも、どうよ?とかとも思った。
 問題はそうした賃金のことだけではない。

 文部科学省の調査によると、専業の非常勤講師は全国で延べ約6万7千人にのぼる。いくつかの大学を掛け持ちしている人が多いので実数は2万数千人と見られるが、こうしたパートタイム教員が科目の3~4割を担当しているのが日本の大学の現実である。

 ある意味、こっちのほうが問題なのだ。というと、講師の質が悪いからなと思うかもしれないし、そういうのもあるのだろう。私の立場の偏見もあるのかもしれないが、教えていることや背景知識の点で、講師は大学教師に劣るものでもない。というか、現場に近い人が多いので優れていることも多い。そういう点では問題はあまりないのだが、要は、この構図なくして大学が教育の場として運営されていないことだ。
 この問題について、朝日は次のような見通しを語っている。

 文科省は国立大学に対しても「4月の法人化後、非常勤講師はパートタイム労働法の適用を受けることになる」と通知した。法人化で教職員は公務員でなくなり、一般の労働法の適用を受ける。国立大学も専任教員の待遇とのバランスを考えなければならないというわけだ。各大学はこの通知を重んじてほしい。

 朝日は意図していないか、さらなる実態を知らないのかもしれないが、この話はさらに、わっはっはと笑ってしまいそうになる。って、笑ってどうするなんだが、笑う以外になんと言っていいのかよくわからない。極端な話をすれば、教員が今度は講師になり、講師がさらに下に落とされる。トランプの大貧民みたいな感じだ。
 私の認識は間違っているのかもしれないし、それなら幸いだ。私は、むしろ、こうしたひどいなという状況から、逆に大学を離れた場で教える・学ぶという意義が市民社会に広がる契機にもなるかと思う。
 カルチャースクールとかいうと、主婦の暇つぶしのようにも思われてきたが、先の岸本葉子でもないが、市場原理から優れた講師が教えるという場に増えてきている。語学や基礎の計算力といった勉強でなければ、優れた先生の謦咳に触れることは、人生の宝ともいえる経験になる。

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コメント

初めまして。
「芋掘り」ですが、私も三十年以上前に遊んだきりなので、詳細は忘れていますが、こういったものだったと記憶しています。
・基本的にはページ・ワンと同じ。
・ただし、「ページ・ワン」宣言のルールはなし
・自分が場に出すべきカードのない場合、ページ・ワンではペナルティとして山からカードを1枚引くのに対し、芋掘りでは、出すべきカードが出てくるまで山からカードを取らなければならない

上記三番目のルールが、ちょうど芋を掘る作業に似ているところから「芋掘り」と呼ばれているのだと思います。とにかく、カードが出るまで延々と引かなければならない。周りが「掘って、掘って、芋掘って」とはやし立てることもありました。

取り急ぎ、情報まで。

投稿: 木下信一 | 2004.05.06 11:28

木下さん、こんにちは。その、囃し立てるというのが面白いですね。なにかさらに歴史がありそうな気もします。

投稿: finalvent | 2004.05.06 14:03

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