イラク人質事件、さらに雑感
イラク人質事件のことは新しいファクツでもでないかぎり書くべきことはないと思っていたが、事件そのものより事件の社会への反照について、なんとなく思いが溜まっているので書いておきたい。
一番気になるのは、奇妙な言いづらさ、みたいなものだ。浅田農産事件のときもそうだったが、一斉に社会ヒステリーのようなバッシングが発生したものの、事件の中心人物が自殺するとそれが急速に収束したかのように見えた。しかし、誰もが知っているはずだが、「なんか、言いづらいよね」という空気に圧倒されただけのことだった。事件の真相は、情報操作なのか、カラス騒ぎのなかで曖昧になった。普通に考えたら疑わしいはずだと思って、このブログでは、「浅田農産事件で隠蔽されている日に何があったのか?」(参照)を書き、人的感染経路への疑念を指摘したが、その解明も消えてしまったかのように見える。
人質事件も似たような経緯を辿っているように思える。そして、真相の解明はうやむやに終わるのだろうか。私は依然、狂言事件と思うのだが、メディアは産経系を除いて、こぞって「自作自演」説は政府側が意図した陰謀論ということで終わりにしようとしているように見える。変な言い方だが、それで終わりというのもしかたないようにも思う。というのは、いずれ真相解明自体がまた政治の枠組みに置かれることになるだろうし、そうした政治との関わりはなにかうざったい気もするからだ。
「自己責任」という話題には私は当初から関心はないし、それはすでに書いてきたとおりなのだが、その後なんとなく現れてきた、「自己責任」を問うべきではない、という空気には奇妙なものを感じる。これにル・モンドなど海外メディアの援軍も加わるに至り、変な感じは深まる。まぁ、ル・モンドだしな、とかいうことで、どうでもいいかと思ったのが、他にも広がりつつはあるようだ。
が、ここでも私はひっかかる。日本人人質事件の際、オーストラリアでもエイド・ワーカー(支援作業者)の女性Ms Mulhearnが人質になり、解放される事件があった。ご存じのとおり、オーストラリアも派兵について日本のように世論が割れているので、世論やメディアのありかたは類似の傾向が見られるかとも思ったが、そうでもなかった。
例えば、こんな記事"Aust hostage 'foolhardy': Howard"(参照)がある。Downerはご存じ通り外相である。前段にはハワード首相も同じように非難している。
Mr Downer told the John Laws radio program he was puzzled by Ms Mulhearn's decision to travel to Fallujah.
"She's gone into a war zone ... I'm not sure what an Australian would do wandering into that area, it was very reckless," he said.
"I think Australians have got to be enormously careful, whatever their political opinions, she claims to be a member of the Labor Party, ... to make sure that they are as safe as possible.
"Otherwise other Australians then have to go and try and help them.
"I worry about all the Australians of goodwill, who nevertheless have had to look after people who describe themselves as human shields and go into Iraq to make all sorts of political points ... and get themselves into trouble.
"Then our people have to take risks to try to help them."
Mr Downer said political comments by Ms Mulhearn concerning the Australian government were also unhelpful.
ご覧のとおり、DownerをKoizumiに、AustraliansをJapanese置き換えてもいいような記事になっている。他にもオーストラリアのABCだが"Australian government slams 'reckless' activist in Iraq "(参照)では短くこうある。
The prime minister, John Howard, has accused the peace activist of behaving in a foolhardy fashion.
"Irresponsible behaviour, whatever the cause may be, is not acceptable and should be criticised," Mr Howard said.
問題は、こうした報道がどうオーストラリア社会に受け止められていたのかでもあるのだが、在住者のブログ「オーストラリア・シドニー海外生活ブログ」の記事「人質事件で家族を考える」(参照)を読むと、拉致された女性への擁護の声はなかったようだ。
とすると、日本の場合、擁護の声も高まってエキゾチックな社会現象に見えたから、取材能力のない海外特派員などのコラムネタになったのではないだろうか。と、くさしっぽく書いたのは、少し取材すれば、人質女性が以前のイラクでの「人間の盾」のグループとの関係があることくらいわかる。だとすれば、少しは考察すべきこともあることくらいはわかるだろうからだ。
先の「オーストラリア・シドニー海外生活ブログ」では、さらに興味深い指摘があった。
でも、日本の報道姿勢と決定的に違っていたのは、拉致された人の家族については一切触れないというところではないかと思う。
最初に拉致された日本人3人のうちの1人は未成年だったけれども、後から拉致された2人も含め、その他は全員30歳以上。
今回問題になったオーストラリア人女性も34歳と、皆いい大人。
こういった場合、家族が出てきて、あれこれコメントするということは、この国ではまず見られない。
だからか、日本人の人質家族が泣いて訴える映像を流した後、ニュースキャスターの反応は冷ややかだった。
欧米の家庭では、(ほとんどの場合)高校を卒業すると同時に家を出て独立し、たとえ親が高齢になっても同居することは稀。大人になったら、自分のことは自分でする=責任を持つのが当たり前とされている社会。
自分に責任を持てる大人がとった行動に、親・兄弟は関係ない――
という欧米人の考え方と、家族は共同体というお家制度みたいなものが根強く残る日本を垣間見た気がした今回の事件だった。
この感覚に私は当たり前のこととして同意する。「自己責任」という以前に、大人のしていることに親が出てくるのは変な話だと私は思う。
私は日常テレビをほとんど見ない。この事件についてもテレビ報道は見ていなかった。人質家族の動向はほとんど知らなかった。というか、そんなものに関心の持ちようもなかった。事件とは関係ないという感じもしていた。
が、人質帰国後はテレビがどう報道するものか関心があって少し見た。そこで、一番奇妙に感じたのは、人質だった3名が自宅に入るシーンが放映されていたことだ。そんな映像になんの意味があるのかという疑問と同時に、未成年は別として、この人たち、親の家に帰るというわけなのか、と思った。
非難に聞こえてはいけないが、それって、パラサイトであり、「負け犬」であり、フリーターであり…ということで、現代日本ならではの世相のてんこ盛りではないだろうか。解放された人の恋人が抱き合ってキスをするというシーンは、まるでないのだろう。日本的だなと思う。
日本的な事件だということでは、浅田彰が「イラク人質問題をめぐる緊急発言」update版(参照)でこう言っているのを思い出した。
結局、謝罪と感謝でひたすら頭を下げて回るだけってところまで人質と家族を追い込んじゃうんだから、まさに前近代のムラ社会だね。
だが、それ以前に、親が出てくるところでムラ社会なのだろう。と、いうことを浅田は指摘もしないのはなぜだろう。
もう一点、この関連で、「善意でしたことは良いこと」という空気もあるのだが、社会というのは実際には善意の結果が重要になるものだ。この話も書きたい気がするが、そうでなくてもつまらない説教みたいになりそうなで、やめとく。
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コメント
>私は依然、狂言事件と思うのだが、
私も同じ心証を持っています。ただ、「狂言だとしたらその狂言を仕掛けるだけの必然性を持っていたのは誰か」という検証の動きが日本のネット言論には私の知る限り見あたらないのがちょっと残念です。
極東ブログさんは、イラン・コントラ事件を仕掛けた主要人物たちが現在どこで何をしているか、何か情報をお持ちですか?
投稿: 5thstar管理人 | 2004.04.24 09:05
5thstar管理人さん、どもです。「イラン・コントラ事件」のその後は知らないです。チェイニーなら知ってますっていうのは冗談です(それを言うならブッシュ・パパ)。この事件はまさに陰謀そのものなんで、これを考えるとなんでも陰謀思考になってしまいそうで、率直なところ避けているというのが本音です(そう考えると田中宇に同情的になるか)。
私としては、世界情勢の根幹は米軍が冷戦構造を脱していないという枠組みで考えたいと。ちょっと逃げかな。
ついでに、イラク情報独立調査委員会関連でちょっとネット見渡したら、Laurence Silberman周りもけっこう面白そうですね。
Ex-judge on Iraq inquiry 'involved in cover-up'
http://www.guardian.co.uk/Iraq/Story/0,2763,1144586,00.html
Laurence Silberman, a retired judge nominated by the Bush administration as the co-chairman of the commission investigating pre-war intelligence on Iraq, was involved in a major cover-up during the Reagan era, his critics alleged yesterday.
投稿: finalvent | 2004.04.24 09:55
いつも楽しみに読ませていただいています。細かいことですが、ちょっと気になりましたことを。
まず浅田彰は、普段はそういう家族的共同体性みたいなものを一番嫌ってるタイプの人ですから、今回は単に指摘しそびれたってことじゃないですか。「あれを指摘していない」「これを指摘していない」っていうのは、あまり建設的ではないように思いますが。
もう一つすごく違和感があるのは、「その後なんとなく現れてきた、「自己責任」を問うべきではない、という空気には奇妙なものを感じる」という部分です。どの情報に接してそう思われているのかよくわからないのですが、私から見ればfinalventさん的なご意見の方が今もってはるかにマジョリティであると思います。少なくとも消え去っていっているようには見えない。「メディアは産経系を除いて、こぞって「自作自演」説は政府側が意図した陰謀論ということで終わりにしようとしているように」なんてぜんぜん見えないですよ。
まあ、私はfinalventさんがおっしゃるような「狂言説」というのは、実際誘拐犯は脅迫写真やビデオなどを作るときは通常人質に演出くらいはするでしょうから、リアルな話だと思ってますけど、「自作自演説」はいくらなんでも幼稚すぎるんじゃないの?と思ってますが。
投稿: lll | 2004.04.24 10:08
興味深い記事のご紹介をありがとうございます。Laurence Silberman、ですか。記事を読む限り、なかなかの曲者ですね。この名前を記憶にとどめておきたいと思います。
"I think Judge Silberman is one of the most, if not the most, knowledgeable person on the federal bench about the intersection of law and national security."
というのは味わい深いコメントだと思います。
>世界情勢の根幹は米軍が冷戦構造を脱していないという枠組み
いつもながら、味わい深い言葉をじつにさらっとおっしゃいますね。いやほんと、その通りだと私も思います。
ヒューストンまで行かせてもらった私がこんなこというのもなんなんですが、テキサス州、というのは、ケネディ〜ジョンソンの時代から、アメリカのいろんな州の中でもじつに「もの凄い」ところだと、肌で感じます。(「凄い」というのは現代日本語ではなく古語のほうです)
今回、日本政府の対応はものすごく早かった。ある意味、早すぎるくらい早かった。私は「もしこれが早かったのではなく、決断の時間を_事前に_与えられていたのだとしたら?」という目でTV報道を見ていたので、なかなかに味わい深いものがありました。陰謀論に染まっちゃいました、ですかね? ^^;
投稿: 5thstar管理人 | 2004.04.24 10:31
> 今回、日本政府の対応はものすごく早かった。ある意味、早すぎるくらい早かった。
すでに、「邦人が武装グループに拘束される」という状況を想定したマニュアルは作られていたようですよ。
しかし、それを考えてもすばらしい対応でしたね。思わずこれなら安心だ、と思ってしまうくらいに。
投稿: naruse | 2004.04.24 23:02
naruseさん、ども。時間がたつと、さらにそう思いますね。米ジャーナリズムでチェイニー側のニュースも追っていたのですが、米国は少しはらはらした面もあったように見受けました。それほどダッカ事件の始末は影響していたのかなと思いました。
投稿: finalvent | 2004.04.25 07:16
はじめまして。数日前からちょこちょこのぞかせてもらっている、はっくんというものです。
今回の人質事件は私的になかなか見過ごせないものがあって、普段めぐらないブログとかも見て回っているのですが、みなさん意見が割れていますね(否定派が多数を占めているような感もありますが)。
私は人質側に同情的な立場なのですが、それにしてもさすがに「狂言説」はないと思うのですが。いくらなんでもそれはやりすぎだろうというか。
けどあまりにあちこちでそういった話を耳にするので、何かそれなりの根拠があれば知りたいです。もし差し支えなければ、教えていただけるでしょうか。
投稿: はっくん | 2004.04.25 08:11
以下のような情報が、人質が解放される前に流れております。参考までに、。
690 :国連な成しさん :04/04/13 22:30 ID:???
報道関連の友人から聞いた事
・報道規制有り(国内になかなか情報が伝わってこない)
・ヨルダンを出国した形跡は無い
・三人を支援するグループが行動を共にしている(しかし人質ではない)
・三人の「現在」の所在地は不明(一時は特定していた?)
・今回の事件は複数のグループ(支援団体?)が関与しており全貌を把握していない
・当初から自作自演の線は政府も疑っていた(武装勢力とは無関係?)
・ヨルダンでの捜索が始まっている(日・ヨルダン)
>三人の現在の所在地は不明
↑この部分で自演のはずが本当に捕虜になっている可能性があるらしい(他のグループに軟禁?)
265 :国連な成しさん :04/04/14 23:11 ID:???
報道関係の友人からの情報
・今夜ヨルダンを出国してバグダットに向かう(向かった?)
・ヨルダン高官とイラク聖職者が同行する
・イラク国内で聖職者協会→日本大使館に引渡し
・近日バグダットで解放される予定
・米の停戦が延長されなければこれらは不透明
・自作自演は今後一切発表される事は無い
投稿: 月からの使者 | 2004.04.25 14:56
finalventさんもなかなか人質事件から離れられないようですね。むしろ風化が始まりを感じたからあえて一石を投じたのでしょうか。...現代の世相をてんこ盛り、素晴らしい皮肉。そうですよね。。。成人の親がテレビで泣きながらの訴えというのはそれだけで違和感のあるものですが、それがある視聴者には悲壮感を喚起させるというメディアの計算(お約束)を感じるようで私は嫌いです。(メディアの計算だけであることを祈りたい。)親が出てこなけりゃ、あそこまで追い込まれないだろって話ですし。
「善意でしたことは良いこと」という空気は、日本では至るところで感じます。じゃあ成人って何なんだ?というのが私の疑問です。結果に責任が伴うから成人なのであって。「よくがんばりました」というのはせめて小中学生までにしてほしいと思います。
結局のところ、日本社会では多くの部分が未成年であり続けられることが許されるところなのでしょう。プライベートで勝手に甘えるのとはわけが違う。あれを視聴者が家族愛として受け止めたとしたらと思うと、、、そんな国であって欲しくないなぁ。
全く話は違いますが、年金についても話題を取り上げて欲しいなと思っております。
投稿: いちげんさん | 2004.04.25 15:54
私も人質事件(正確にはそれを取り巻く騒ぎですが)は少々うんざりしているのですが、話が出たついでにコメントしておくと、自作自演説に対する反論もあります。
(ここの13日の記事にリンク先を紹介しておきました。)
しかし、今回の事件はすっかり事件本体よりも、それに伴う感情的反発が中心になってしまった感がありますね。最初の家族の反応もいやですが、その後の反発も事件を検証すると言った方向に行くかと期待したのですが、結局うやむやになって単なるパッシングで終わりそうでがっかりしています。ここはちゃんとした検証や意見が出ていますが、大手BBSとかだと議論になってないですから。
投稿: エフ | 2004.04.25 16:54
いちげんさん、ども。「年金についても話題を取り上げて欲しいなと思っております」の件、あらかた取り上げてネタがないというのと、国会議員が未納ということに呆れ果てて、言葉もない状態です。タレントの未納は苦笑で済ませますが、立法に関わる人間が、では。あと、年金問題って、状況的に言うと、公明党の問題なんだなと思うと、これも空しくなります。結局、5年後にまたやり直しでしょ。それまでに景気が回復しているなら、年金はそれほど問題でもなくなっているはずなのですが…中国様のはったりがそこまで持つか…と思いが散漫になりますね。
投稿: finalvent | 2004.04.25 17:46
ども。
お話には直接関係しないのですが、ちょっとネタとして使わせてもらったのでトラバってみました
(・・長い話をダラダラとすみません...(^^;))
投稿: m_um_u | 2004.04.25 17:56
ネタ元になった「オーストラリア・シドニー海外生活ブログ」の平野です(^^;
(以下、自分が書いたコメント↓からの一部引用ですが)
http://hytn.way-nifty.com/netdekansi/2004/04/post_10.html
「子供が何歳になっても親は心配なもの」という感覚は洋の東西を問わないと、私も思います。
今回私がブログに書いたのは、“報道姿勢(報道のあり方)”であって、マスコミが家族を引っ張り出してくるのはどうか?と思う…というとこなのです。
きっと(時間的には短かったけれど)人質になったオージーの家族だって心配してたでしょう、が、それを報道すれば「感情論」になりかねないということを彼ら(こちらのメディア)はわかっているし、大人の行動に親の意見を求めるのはどうか?という感覚に基づくものだと思うのです。
--(引用ここまで)--
つまり、こういう問題(事件)を同情や感情論にもっていってはいけない…のが、報道のあり方だと思うんですよ。
このあたり、派兵しているかしていないかで(国によって)意見が違うのでは?とする向きもあるようですが、オーストラリアもイギリスも(サンなどの大衆紙を除いて)メディアのあり方としては、その辺心得ていると思います。
ですからもし、派兵していなくても、おそらく同じ見解を示すのでは?と思っているのですが、何分「派兵していない」状況はもう作り出せないので、確認はできませんが…(^^;
別にオーストラリアやイギリスのメディアを褒めそやすつもりは毛頭ありませんが、純粋にメディア=報道のあり方としてはこちらの方が普通なのではないかと思うんですよね。
反対に、他国のひとつの事例を取り上げて、とやかく言うアメリカやフランスの報道姿勢はどうなのか?と思ったり。それこそ、その国の社会背景や文化等もろもろのことなどよく考えずに、立ち入り過ぎなのでは?とも感じます…。
投稿: 平野@オーストラリア | 2004.04.25 19:57
2ちゃん情報をコピペした「月よりの使者」です。パソコンの調子がいまいちで、テスト的に投稿したので典型的コピべ張りのようになっちゃいましたが、2ちゃんの情報は決して捨てたものではないと思います。
ところで、「家族」の問題ですが、成人した男女は家を出て自立する、というライフスタイルは、「近代的自我の成立」というテーゼと絡めて主張されることが多いですが、実はこれは、イギリス古来の伝統的家族のスタイルであって、産業革命とも、近代とも本来関係ないという話を中根千枝の著書で読んだことがあります。ただ、そのイギリスが、たまたま世界で最初に産業革命を成し遂げ、近代に突入したために、そこにおける家族と個人のあり方が、近代的ライフスタイルであると、世界中で思われているだけで……。それとも、イギリス古来のライフスタイルが産業革命、そして近代を引き起こしたのか……?(それはちょっとないでしょう)
投稿: 月よりの使者 | 2004.04.25 20:36
平野@オーストラリアさん、はじめまして。このブログのオーナーのfinalventといいます。インターネットの流儀とはいえ、大変に参考になる見解でしたので、勝手に引用してしまいました。コメントまでいただきありがとうございました。
ブログなので私も個人の勝手なことを書いているのですが、自分が普通と思っている感覚と日本の空気みたいのの差に悩むことが多くあります。
この件で、平野のブログで、自分からしてみると、すっきりとして意見に会えて嬉しく思いました。
投稿: finalvent | 2004.04.25 20:37
fainalventさん、はじめまして。
「てるてる日記」というblogを始めて一週間になる、てるてると申します。
こちらでオーストラリアの人質の話を読んでたいへんおもしろかったので、引用させていただきました。
オーストラリアの人質の場合
http://terutell.at.webry.info/200404/article_20.html
Donnaと菜穂子
http://terutell.at.webry.info/200404/article_21.html
投稿: てるてる | 2004.04.25 22:13
はじめまして。こういう問題で、まず家族が前面に出てくること、引っ張り出さずにはおかないマスコミに違和感を覚える一人なので、ここを読んで非常に共感しました。特に「中傷はけしからん」と言いながらなお執拗に家族からコメントを引き出そうとするマスコミ。家族と本人を同一視することがそもそもの混乱の始まりなのに、それについての自制はないようです。
中傷は卑劣ですが、「家族カード」を切りながらムラの掟を守らない(謝らない)者に、怒ったムラビトが「家族カード」で切り返したとも言えます。どちらもムラの住人です。
面白いのは、「家族として」自衛隊撤退をためらいなく求めてしまった2家族は、人質と同居しており、息子や姉がイラク入りすることも事前に知っていたのに対し、撤退要求にためらいを見せた(あるいは要求しなかった)残り3家族の場合、息子らはすでに親元を離れており、彼らのイラク入りも親は知らなかったことです。カメラマンの母は「母親失格と言われるかもしれませんが」と言っていましたが(こう言わせずにおかないところがすでにムラ社会)、そんなことはないでしょう。離れて住む子どもが親によけいな心配をかけるだけだと黙っているのは頷けることです。彼ら息子たちに向ける親の視線も、「息子の考えることはよくわからん。しかし自分が心配してもはじまらない。あいつはあいつでやっていくしかないのだから」といったようなものではないかと思います。つまりある程度、親離れれ・子離れができている。彼らはおおむね元気です。
それに対してボランティアの女性と未成年の青年は、はっきり言えば親に養われている、親の援助を受けている身の上です。そういう立場でいくら「何かあっても騒がないで」と言ってもなかなか難しいのではないでしょうか。養っている子どものことを一人前の人間とみなすのは、口で言うほどたやすくない。旅立つ前は「18歳でも考えていることは大人と同じだと思っている」と言い、戻ってからは「将来のある身なので暖かく見守って」。簡単にぶれてしまいます。
「まあ、(親と)水杯をあげていくんだね」と言ったのは石原慎太郎ですが、水杯なんか上げなくても、家を出て自活すればいいんです。
私は、何よりも三人にとって自衛隊を撤退せずに解放に至ったことはよかったと思っています。彼らは自衛隊撤退を実現するためにイラク入りしたわけではないのですから(自作自演説はあくまで憶測の範囲)。目的ではないことに自分の命を取引材料に使われて、結果目的を果たせてよかったじゃないか、みたいに言われるのは気の毒だと思いましたので。
でも、本当のところは記者会見であらましを語ってくれなければわかりません。会見を阻んでいる本当の理由はなんなのか、
そういうことこそ報道すべきだと思いますが、まあ、場合によつてはたしかにうざったい話かもしれませんね。
実は私は、自作自演よりアメリカと日本の陰謀説を妄想しました。ちょうど「下山事件(シモヤマ・ケース)」を読んでいたところだったので。ムラ社会はあの頃と変わらないようです。
投稿: T | 2004.04.26 05:31
てるてるさん、こんにちは。ブログ拝見しました。オーストラリアの情報を丁寧に扱われて興味深く読みました。今回の海外の反応は、外国といっても多面的なことを知るきっかけにしたほうがいいにと思いました。
Tさん、こんにちは。現実は難しい問題がありますね。話は違うのですが、「下山事件」の森さんは、いつもほんと面白い視点を提供してくれます。
投稿: finalvent | 2004.04.26 08:34
みなさんの意見を見たり、自分でほかのサイトも巡ったりしてみましたが、やはり自作自演説というのは信憑性のないうわさのようですね。
それよりは他国の反応の方が興味深いです。オーストラリアやイギリスは人質事件に対してドライな態度らしいけど、フランスや南ドイツ、韓国などでは日本の反応に批判的だし、イタリアも人質事件を機に撤退の世論が動き始めているようです。
確かに国際的な反応に多面性があって、色々と比べてみるのも面白い。
それにしてもまあ………。税金もらって国民守るのが仕事の政府が、「自己責任だから知ったことか」って、お前そりゃ詐欺だろ!っと、突っ込んで突っ込んで三途の川まで突っ込みたくなります(^^;。
日本の民主主義も、それほど誇れるものではないというのが露呈した事件だったのではないでしょうか。
投稿: はっくん | 2004.04.26 13:01
すみません、先の投稿内容ですが、あとから解放された二人の場合、犯行声明はなく自衛隊撤退の要求もなかったので、家族がそれを要求しないのは当然でしたね。失礼しました。
投稿: T | 2004.04.26 13:45
僕のトラックバックに対して、平野さんから僕のほうにもコメントを頂きました。
僕は「家族観」のほうばかり見ていましたが、平野さんは「報道の姿勢」を書いておられたのですね。
どちらに対しても「自分の価値観の押し付け」は勘弁して欲しいですが、報道に対しては、各国の違いをじっくりと考えてみる必要があると思います。
投稿: 聞きかじり | 2004.04.26 15:53
小泉バンザイというわけでは決してないです。
自己責任とは何事かという声がにわかに聞こえてきていますが、結果的に政府は今回の事件をうまく処理して、つまり自国民を保護したことで、政府としての責任を果たしたといえるでしょう。これは常に果たせるような種類のモノではないと思いますが。
しかもいくら人質に対して不快感を表そうとカネを請求しようと、立法(これは事実上不可能)でもしないかぎり、これからも紛争地域に勇気ある国民が出かけていくのを阻止することはできないのですから、クギを刺しておくのは有効なのではと思います。その上で将来同じようなことが起きたら、日本政府は責任を持って国民を保護すべく行動するという意思表明なのではないでしょうか。
ちょっとパターナリズムが過ぎますかね。
投稿: 匿名で | 2004.04.27 07:52
「報道の姿勢」も、つまりは、「大人の行動」で、
「大人の行動」=自分のことは自分でする=責任を持つのが当たり前ということですね。
投稿: 平野@オーストラリア | 2004.04.27 12:36