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2004.04.21

国連期待はさらなる間違いかもしれない

 18日のNHKスペシャル「イラクの復興 国連の苦闘」(参照)を見ながら、「これはプロジェクトXじゃないんだよな」と思わず、一人ツッコミを入れて苦笑した。後味が悪い。話は嘘だとは思わないが、しばし考え込んだ。このNHKの番組はおかしいのではないか、という印象が自分の心の中で濃くなってきた。と同時に、その他のNHKの報道や解説全体に奇妙に国連幻想のバイアスがかかっているようにも思えてきた。人質事件の際、NHKがアルジャジーラを垂れ流していたのも疑問を感じていた。
 番組「イラクの復興 国連の苦闘」を見ながら、極東ブログ「石油・食糧交換プログラム不正疑惑における仏露」(参照)にも書いた、れいの国連疑惑について、番組の流れでいつか触れるのだろうと思っていた。が、なにも言及がなかった。ずっこけてしまった。それはないだろう。
 国連疑惑はなぜか日本で議論されてない印象がある。だが、アメリカではけっこうマジな問題になっている。アナンもそれゆえ、ポール・ボルカー(Paul Volcker)を不正疑惑の独立調査委員会の責任者とした。マジだぜ、ということだ。シラクだって炙り出してやるぜ、とまではいかないかもしれないが、期待はできる。ル・モンドは人質問題で日本をおちょくる暇があるくらいなら、自国の不正を晴らすことを先決にしろよという感じもする。
 こうした国連疑惑を巡る動向は、イラク復興の枠組みが連合国暫定当局(CPA)主導から国連に移ったことの政治的な駆け引きにも関連はしているのだろう。が、それだけの線の読みで済む問題でもなさそうな雰囲気も感じる。つまり、国連とアメリカの双方で小突き合うという構図より、もっとたちの悪い根がありそうに思える。というのも、私もイラク戦争を肯定した背景には、国連なんて機能もしないお間抜けと考えていたことを思い出す。
 そんな思いで、ネットをザップしていて、ゲッという話をNational Reviewでめっけた。もとより、「National Reviewって右派こてこてでしょう」という偏見で読むのだが、Michael Rubinの"Unwelcome U.N."(参照)という記事が面白かった。内容は、端的に言えば、標題どおり、国連なんてやめとけ、である。
 筆者のMichael Rubinは、CPA内部の政策に関与していたようだ。


Michael Rubin is a resident fellow at the American Enterprise Institute. He spent 16 months in Iraq, most recently as a Coalition Provisional Authority governance adviser.

 この紹介を読むだけでも、Michael Rubinなんてダメじゃん、という印象も持つが、考えてみると、私はCPA側の言い分というのをまともに検討したことはない。ある意味、Paul Bremerの代弁かもしれないが、と思って記事を読むのだが、けっこう説得されてしまった。
 まず驚いたのだが、昨年夏の国連事務所テロについてだが、私は「イラク混乱中の国連事務所爆破テロ」(参照)で書いたように、問題の一番の誘因は、国連事務所が米軍と距離を置こうしてその保護を求めなかったことと考えていた。また、犯人は、反米意識によるシーア派かと考えていた。
 Rubinはこう指摘している。

While L. Paul Bremer, Coalition Provisional Authority administrator, expressed outrage over the bombing of Iraq's U.N. compound last August, Iraqi reaction was more subdued. "It was an inside job," a Shia doctor insisted as we sat in a restaurant the next day. The U.N. had not only refused Coalition protection but had also retained guards employed under the former regime. "Didn't they know that their guards reported to the Baathists?," the doctor said. Iraqis watched in disgust as the U.N. subsequently fled to Jordan.

 こういう言い方は極端かもしれないが、国連事務所テロを、イラク人は、フセイン残党とつるんでいたからで、いいざまだ、というふうに見ていたというのだ。Rubinの話ではこの前段に国連が如何に無慈悲でフセインの悪事に荷担していたかというくだりもある。
 私はそういう見方はしてなかったので、少し意外だったが、先の国連疑惑の大きな構図のなかに置いてみると、Rubinの言っていることは、ただの怨念とも思えない。日本人の大半は私も含めて反米にかたまっているので、それ以外の勢力の問題性に疎い。
 この記事では、国連側の責任者となるブラヒミについても酷評しているが、案外イラクではそういう受け止めかたもあるのだろうと思う。もっとも、この指摘はブラヒミを持ち上げて事足りるとするケリーへの八つ当たりもありそうだが。
 率直なところ、この記事は、どう評価していいか難しいのだが、ある種、ヴィヴィッドなイラク状勢を伺い知ることはできる。
 Rubinの結語の皮肉はかなりきつい。

United Nations involvement will hamper, not help. Militant Islamists and remnants of Saddam's regime interpret our turn to the U.N. as sign of weakness, while Iraqi democrats see the U.N. role as a sign of abandonment. Both associate the U.N. with corruption. Ironically, while administration officials and senators seek greater U.N. involvement to pacify Iraqis, their calls have the opposite effect. Washington's hand-wringing is a sign of weakness welcomed only by those we fight.

 国連の関与は、イラクの造反者や海外テログループから弱腰と見られ、もっとろくでもないことになるよ、と読んでいいだろう。アフガニスタンの現状を考えると、私もその可能性はあると思う。もっとも、その可能性に無知な米軍でもあるまい。善意とかの通じない世界だ。
 そういえば、れいの人質事件から私がかいま見たことだが、日本人の多くがイラク人全てを善意の人のように見ている。また、善意が通じる相手だと確信している。そう思うことで自分が善人だと思われたいのだろう。そう思いこみたい心性は実は無意識的な恐怖を抱えているからではないかとも思うが、話がそれたのでおしまい。

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コメント

国連創設の意義は「世界が話し合いをする場を設けた」というだけで、その機能や、常任理事国の存在、不参加国家の存在などがありますから、元々懐疑的なものだと思っています。
国際紛争には強くても、その根っこである地域紛争にまったくもって無力というか、やる気の無さが…(苦笑)

投稿: バカぽん | 2004.04.21 18:30

まあ当たり前の話でしょうね。国連は元々第2次大戦の戦勝国を中心にした集まりでしょ?

だから、アメリカ一国に追随するのか、それとも曲がりなりにも合議制で、アメリカとともにイギリス、フランス、ロシア、中国が拒否権を持っている国連を利用するのかってのが、フリーハンドのない日本の「究極の選択」なんでしょう。

投稿: こここ | 2004.04.21 18:48

> 人質事件の際、NHKがアルジャジーラを垂れ流していたのも疑問を感じていた。

映像は、(1)アルジャジーラと(2)バクダットのパレスチナホテルと(3)アンマンからしか入らず、しかも、後者2つは東京からの情報エコーでしかなかったのでは。東京からの情報も、オープンにしてよいものはアルジャジーラ情報だけだったですね。

アンマン情報は、あったとしても情報機関筋などの非公開情報だけでしょう。東京から行った大勢の記者は、東京ソースを読み直す副外務大臣を取材しただけでしょう。

したがって、NHKを決して弁護するわけでなく、アルジャジーラ情報の垂れ流しは止むをえなかったと思います。湾岸戦争で、米軍司令部映像を垂れ流しせざるを得なかったのと同じです。

映像のあるものの贔屓になってしまうのが、TVの恐さですね。

投稿: late_mhk | 2004.04.21 19:53

 こんにちわ。
 あの、Aljazeeraの伝言ゲームのような状況はなんだったのでしょうね。垂れ流しはどうかと思う一方で、変なフィルタリングをせずに例のCD-Rの内容を全て見せて欲しいとも思ったりします。日本語でもAljazeeraが見れればいいのでしょうけれど。
 国連ってある種‘共同幻想’のような感じがします。全ての人間が、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼」することで初めて機能する、と。現在の国連はとても完全なものとはいえませんが、信じ、変えていかないと。いつか国際連合でなく、世界連邦に変えないといけないのかも。
> 日本人の多くがイラク人全てを善意の人のように見ている。
そうですか?わたしや、わたしの周りの人間を見ている限り、イラク人は目に映っていません。映っているのは日本政府と人質およびその家族かなと。イラク人なんか天気や活断層くらいにしか思っていないように感じます。

投稿: naruse | 2004.04.21 22:06

Oil For Fodd program(OFF)というのですか?国連のサイトによると、去年CPA管理に引き継いだ時点で$8.1billionというのですから、8000億円以上になるの残高を持っていたのですね。すごいですね。国連官僚たちの不正の温床だったのでしょうか?年に何回にも及ぶ里帰りの費用負担とか、彼らはすんごい厚遇されていると思うんですけどね、そんなことしなくとも...

投稿: ひでき | 2004.04.21 22:25

バイパスじゃなくてバイアスですよね?

投稿: チャーリー校正 | 2004.04.21 23:16

チャーリー校正さん、ご指摘ありがとうございます。修正しました。

(ついでにといってはなんですが、ひできさんへ。その観点、つまり国連官僚のことは、とても重要だと思っています。)

投稿: finalvent | 2004.04.22 09:00

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ひできさんの視点から大きな啓発を受けた。感謝。 極東ブログさんのところでも、国連官僚が大きな利害を持っているらしいことが指摘されている。ユニラテラルからマ... [続きを読む]

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