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2004.04.02

実感薄き景気回復

 昨日エープリールフールということもないのだが、日本銀行が発表した企業短期経済観測調査では、大企業製造業の業況判断指数は、製造業・非製造業の両者ともに、昨年末より改善した。景気は回復している。もちろん、「景気」というのは産業部門のことなので、家計の視点で見て、景気がいいということに直接つながるわけでもない。生活者の実感としては、どうだろうか? そのあたりは、なんとも漠としているのではないかとも思う。
 産業部門の景気向上は、端的な話、中国への輸出効果と見ていいだろう。昔の人の言葉だと特需、神風(じんぷう)だろうか、運のいいことだ。しかし、同じ運の分け前を受けていい韓国の景気動向は暗い。韓国ももちろん中国への輸出は増え、その恩恵も受けているのだが、国内経済には反映していない。この問題はこれ以上ここで突っ込まないが、それでも、日本の景気回復には日本ならではの努力があったと見ていいには違いないのだろう。
 と、くぐもった言い方をすれば、それは結局、「構造改革じゃなかったじゃん」ということだ。むしろ、為替の安定というか、ぎりぎりまで財務・日銀が円高を抑え、間接的なリフレ政策を講じてきたことの成果だ。が、なかなかそこが見えづらい。というわけで、構造改革の偽ラッパはまだ鳴っている。毎日新聞社説「3月短観 新段階の経済政策が必要だ」ではこうだ。


 景気配慮を第一にした政策や論議の時代は終わったということだ。そこで、本当の経済構造改革をやらなければならない。
(中略)
 企業は経済全体を健康体に持っていくため、これまで先送りされてきた経営体質の強化などの手立てを打たなければならない。株価が回復し、業績も増益となれば、現状でいいとなりかねないが、過ちを繰り返してはならない。

 この手のラッパは、最近ブログの宣撫班からも聞こえるので、変な感じだ。ま、うんこが飛んで来ないようにこの話も突っ込まない、と。
 いずれにせよ、構造改革という空しい看板の裏で構造は依然改革されず、しかも、その冗長な構造のおかげで、他の国なら、すでに深刻な問題なりつつある石油高騰の話も、なんとかその冗長さのなかで日本は吸収しそうな気配だ。そ、それでいいのかぁ。ま、構造の話はやめよう。問題は、金融政策であり、為替だった。
 陰謀論的に見られるかもしれないけど、これまでの極東ブログの視点が大筋で当たっているようなのでその路線を延長すると、この景気回復の四月馬鹿みたいな話の裏で、円は急騰した。が、日本はこれに介入していないようだ。米側の「よーし、ここまで」という制御が効いているわけだ。もっとも、そこまで露骨でもないのだが、政治の視点から見れば、そう受け取る以外ないだろう。経済論理だけで見るには不自然過ぎる。本来なら、グリーンスパンの曖昧な発言も控えさせるくらいにすれば上出来だったのだが、スノーの発言まで出させた。これが限界だったかと。
 で、米側の停止信号の意味はといえば、これは、もう大統領選っていうことでしょ。なんか、陰謀論ですねと突っ込まれるだろうけど、ここで、ぐっとドルを下げるしか、ブッシュは弾除けできないんじゃないか。ま、この話を続けると本気で陰謀論になってしまうから、これもこのくらい。ただ、私の感じとしては、ケリーよりブッシュのほうが国際経済的にはマシ臭いので、これでもいいっかぁ、である。
 国内経済的には、どうでもいいけど参院選に向けて、一般家計への景気回復感がもう一声欲しい。幸い内税化もうまくいったし、じわっとインフレ誘導もしやすい。一次産品の値上げもうまくこの雰囲気に忍ばせて、さらに製造業側にエールを送るか、おっと、また製造業かよ。
 景気がよくなったとはいえ、産業別、地域別には分化も進んでいる。ま、それが「構造」っていうかだが、これは私には大きな問題だと思う。日経社説「企業景況感に春、問題は持続性と広がり」は簡単に指摘している。

 また、企業規模や業種、地域によって回復の度合いに差が大きいのも気になる。中小企業非製造業の業況判断指数はマイナス20と景気が悪い企業のほうがずっと多い。大企業でも窯業・土石(同10)、建設(同20)、飲食店・宿泊(同25)などは景気回復までになお遠い。
 長期的に需要回復が見込めないような業種には再編や事業転換などを促すような政策をとる必要がある。それを含め景気が持ち直した今こそ持続的回復に向け、企業、政府とも構造面の改革に力を注ぐ時だろう。

 日経なんで呑気なことが言えるのだが、産業の再編はいいとして、この指摘の背後には、ようするに地方を再編せーよ、ということが含まれている。地方は待ったなし状態だが、参院選がらみあり、しばらく、まだ問題は大きく露出しないかもしれない。
 地域をどうするか。わからないのだが、先日、NHKの討論会とかぼけっと見ていて、東京の一人勝ちっていうのは、国内で見ると一人勝ちだけど、国際間の大都市の競争として見ろよという指摘が気になった。国際間の大都市の競争というのはたしかにありそうだ。そしてその競争は流民をモデルにした、一種の比較優位のような状況にもあるのだろう。日本国内で見るとなんで東京が一人勝ちということになるが、東京が勝たないと国際間では負けになる。
 で、負けって何? 俺に訊くなよってオチにしておく。よくわかんないから。

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「時事」カテゴリの記事

コメント

こんちわぁ~。面白かったです。

でも、せっかく「経済」のお話を書かれるんでしたら、もうちっと突っ込んでくださいよ~。例えば為替の話なら、日銀の為替介入は今年の1月、2月だけでも既に10兆円以上やってるし(去年の総額は約20兆4000億円)、それで買ったドルの使い道はほとんど米国債なんですから、そこを踏まえてツッコミを入れるとか。あと景気回復の話なら「雇用」のことが抜けてるし、地方の話なら税制改革を含めた「権限委譲」のこともやんなきゃならないし。

やっぱまずいっすよ、一面的なお話だけじゃ~。。。いや、一個人が運営されているブログですもんね、ちょっと過剰な期待をしてしまいました。すみません! これからも楽しみに致しておりますです!

投稿: ミチオ | 2004.04.02 10:49

ミチオさん、こんにちは。それぞれツッコミどころってあると思うのですが、その日その日でちょっと違うので、またの機会を期待してください、っていうか、ま、うまく書けたらいいのですが。

投稿: finalvent | 2004.04.02 16:03

国際間の大都市の競争に意味はあるのでしょうか?
競争に勝つって、具体的には何を競争するの?
万が一、何かの面で他より勝ったとして、メリットは?デメリットは?
と、最後の文に興味がわきました。わいただけで、私の頭ではどうにもこうにもなりません。
東京はともかく、地方との落差問題が今、叫ばれていますね。
これは、一旦地方のおのぼりさんが、東京で勉強するしかないのでしょうか。


投稿: (anonymous) | 2004.04.02 23:38

慣例でanonymousとしました。国際間の大都市の競争についてですが、私もその意味はよくわかりません。でも、それがないのか?というと、現象としてはあるように思えます。連想するのは、国際貿易における比較優位です。都市間である種の比較優位のようなことが起きる(移動するのは住民)のではないかと。もう一点、大都市というと、あたかも「都市」のイメージですが、東京は実際上その周辺を含むので2000万人、つまり、オーストラリアに匹敵します。つまり、大都市は事実上、国家にも対立する側面があります。

投稿: finalvent | 2004.04.03 09:26

こんにちは。

>(anonymous)さん

残念ながら競争は存在するでしょうね。実際日本は高度経済成長期からバブル崩壊までは世界市場の中で一人勝ちしてしまっていたわけです。日本に住む人々は例外なくその大きな恩恵を受けています。

しかしその反面、世界を見回してみると、悲惨な「構造的暴力」を生み出してきたわけです。そんな現状に、日本を含めた「先進国」がどう取り組んでいくのかが今求められているということです。

またこれは日本国内で、「東京」とそれ以外の「地方」という関係においても大方当てはまります。まあそんななかで田中角栄の「日本列島改造論」なんかが出てきて、今に至る中央主導の「土建屋行政」なんてのがあるわけですが。

投稿: makotong | 2004.04.03 10:07

>今に至る中央主導の「土建屋行政」なんてのがあるわけですが。

シャープが最近三重県に新しい液晶ディスプレイの工場を建設し、その結果三重県に直接的な雇用は2千人、間接的にはそれ以上の雇用を生み出したわけです。この工場を誘致するために三重県は工場建設計画の段階からシャープにアプローチし、その結果シャープの地元である大阪や大規模工場がある奈良を差し置いて、三重県に建設することにしました。
一方、シャープの地元の大阪府では地元に建設すると高をくくっていたのに三重県にもっていかれ、失業率の高止まりもあってこの件に関して相当な罵声が浴びせられました。

これが、新しい地方間競争です。これまでは公共投資をいくら引っ張ってくるかが問題だったわけですがこれからは金の出し手が違ってくるのですからアイデアが必要なわけですよ。

投稿: F.Nakajima | 2004.04.03 21:53

>F.Nakajimaさん

要は「企業誘致」でしょ。それの何が「新しい地方間競争」なんすか。そんなの今に始まったことじゃないっしょ。

投稿: ミタマナコ | 2004.04.03 21:59

いや、お言葉を返すようですが、「今に始まったことなんです」よ。日本の常識では。
私は関西に住んでいますが、関西地方じゃ、郊外に「国から引っ張ってきた」公共投資で雑木林を切り開いて「工業団地」と銘打って開発した工場用地がごまんとあります。大阪や奈良、京都の地方自治体は「工場用地さえ作れば企業が工場を建ててくれる」と思い込んでいたんです。
結果として、その大部分の土地は未だに空き地です。それに対して、三重県のほうじゃ、計画課が接触してきた企業に対してアプローチするばかりではなく、逆に新聞などで計画を立てている企業をピックアップして訪問し、場合によっては「税金を負ける」ことまでして誘致しているわけです。
おかげで、わたしの関係業種では大阪で店を閉じて三重に移転する知り合いまで出てくるありさまです。

これまでとは違うんですよ。これまでは新規事業による工場の新設がほとんどでした。これからは企業に対して「助成金」を出したり「税金免除」を切り札にして他所から工場を移転させる時代になるんです。

投稿: F.Nakajima | 2004.04.03 22:44

地方自治体が企業誘致のための営業までするようになったと。そこが大きな進歩だというわけですね。

でもそれって「三位一体」改革の問題で地方の税収が少なくなりそうだし、失業率も上がって住民からの突き上げがひどいから、焦って生き残りかけて他の地方と限られたパイを巡って「競い合う」ようになったってことですね。

つまり、「共存」を志向するのではなく、地方同士で「潰し合い」を激化させるってことになるんでしょうかね。で、そうやって互いを消耗させあってる隙に、「国」及び東京を始めとする「都市部」が漁夫の利を得る・・・ってのは考えすぎでしょうか??

まあ、今までユルい仕事で高給むさぼってきた地方公務員の方々も中にはいらっしゃるのでしょうから(失礼! 「全員」ではないですよ!)、多少は民間同様「競争原理」を導入するのもいいかもしれないっすね。でも、とにかく税金払ってる一般市民にしわ寄せがこないように競い合ってもらいたいものですね。

投稿: ミタマナコ | 2004.04.03 23:42

>ミタさま
ええ、「企業誘致による地域振興」という手段を自らの地域発展の手段に選択した自治体間では確かに競争は激化するでしょう。

しかしながら、別のケースとしてそのような「競争を降りても」いいわけです。
企業人として言わせてもらいますが、基本は同じでも企業を発展させる方法論は一つではないと思いますし、それは地方自治体でも同じだと思います。
例えば、私がいつも関心するのが兵庫県出石町のケースです。しばらく前まであそこはJRの鉄道も通っていない、本当の田舎の寂れた町でした。ところがあるとき、そこの名物である蕎麦を大々的に名物として観光に乗り出したところ、あれよあれよと言う間に休日には観光バスが何十台もやってくるようになり、観光名所として注目されるようになりました。
あるいは完全に競争から降りてしまい、「ハイジ」に出てくるアルムのデルフリ村のようにひっそりと暮す選択肢ももちろん可だと私は思います。

これまでの地方は全て「都会化」を志向していたと思います。逆にスローライフ礼賛の村を目指す地域が出てきてもよいと思いますが。

投稿: F.Nakajima | 2004.04.04 00:21

確かにおっしゃるとおりですね。

しかしまだ問題があるように思います。つまり、「競争を降りられない」自治体が確実に出てくるだろうってことです。

例えば今まであった大企業の工場やらなにやらが他の自治体に「誘致」されて引き抜かれてしまったり。またはその地方の「売り」になるような技術、名産、観光地などがなかったり。あっても当たらなかったり。

つまり、もし幸いにも売りになるような何かがあったり、地政学的にアドバンテージがあるような場所の自治体であれば、努力すればうまくいくかもしれない。いや、むしろそう努力すべきでしょう。しかし、世の中は決して「平等」ではないので、そういう努力をしたくても出来ない自治体は確実に出てくる。高齢化や過疎化が進んだり、土地が豊かではないところ、アクセスが不便で企業も誘致できないところなどなど。そういった自治体は結局国や他の大きな自治体のいいように合併されたり、国からのひも付き補助金のジレンマから抜けられなかったりする。

あとスローライフなんかに関しては、地元の人達がボトムアップで取り組んでいくのは問題ないけど、「スローライフなんざ都市部に住んでる連中のわがままだ! もっとうちに金とセメントぶち込め!」って思っている自治体もやっぱりある。そうするしか生き残れないと考える人達は確実にいる。そういう人達は、「今まで都市部の連中はいいように金とセメントぶち込んで儲けてたじゃないか。今度は俺たちの番だ!」「他に何か名産や観光名所を作れ? そんなもんで雇用が創出できるか!」って考えなわけです。で、そういう地元の人達の考えを、外部の人間の「善意」なんかで変えるよう強制することはできない。よってまたまた「国」の既得権益層がそこを付け狙ってくる・・・って悪循環。

そのあたりのことを考慮すると、まだまだ簡単には「自助努力しなさい!」とも、「降りたら?」とも言えないってことがあるように思えます。

ああ、長くなっちまった・・・。

投稿: ミタマナコ | 2004.04.04 01:04

ミタマナコさん、Nakajimasaさん、こんにちは。ちょととだけですが、私も、地方は逃げられないなという感じはあります。そのあたり、おりをみてまた書いてみたいと思います。

投稿: finalvent | 2004.04.04 08:59

横から失礼いたします。ちょっと最近興味を持っている話なので、お許しください。以下、本当に私見です。

そもそも、地域間競争ということは、政策というよりも経済の動きの結果であると理解しております。もうほとんど経済現象であると考えます。

行政側からのこのような経済的な変化への抜本的な対応と言うのは、例えば市町村合併ではないかと思います。この背景にあるのは、移動手段、通信手段の高度化に伴い、距離の喪失がいま起こっておるということであり、必然的に行政単位が変化せざるを得ないものと考えております。

これは、ほんとうに競争なので、一定の経済的な観点や尺度から地域によって「勝つ、負ける」というのがでてくると予想しております。競争ということは、結構冷厳な事実でみんながそれぞれよいというような玉虫色の解決は21世紀にはありえないののではないでしょうか?いや、尺度をどのように持つかというのは、住民の側の価値観の問題なのかもしれません。21世紀だからこそ価値観の多様性が認められればよいのですが...

それから、そもそもの本題の「実感なき景気回復」ということですが、仕事柄少々さまざな地域を見せていただいております。そうすると本当に実感するのは、今回の景気回復こそ地域間競争の第一ラウンドの判定が明確にでているということです。500Mに及ぶ商店街がほんとうにシャッター通りになっている地域もあれば、従来の地価の数倍で取引されている地域もあります。物流の拠点となりつつあるところもあれば、中央からのショッピングセンターで一点豪華主義的な地域経済促進がされているところもあります。いずれにせよ、シャープの工場に代表されるように、今回の地域における景気回復はどのような企業がその地域に立地しているかで、明暗をわけております。大企業主導型の景気回復といわれるゆえんですね。

いかがでしょうか?

こんなところへきて(finalventさん失礼いたします!)自己宣伝していくなと言われそうですが、以下以前書いた記事です。

「地域間競争の時代がやってくる! 」
http://homepage2.nifty.com/hhirayama/area-comp.htm

「距離、時間、そして統治と戦争 」
http://hidekih.cocolog-nifty.com/hpo/2004/03/post_13.html

投稿: ひでき | 2004.04.04 09:23

ひできさん、ども。リンクなどかまいません。基本的に議論というのは、開かれるべきです。内容的な点では、地方の場合、れいの交付税と借金という制度的な縛りの実質的な効力というのを自分としてはもう少し考えてみたいなと思います。

投稿: finalvent | 2004.04.04 09:34

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