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2004.03.04

グリーンスパンは日本の円介入をリフレと見ていた

 また円介入話だ。このところの極東ブログの話の流れでは、「日本は米国に貢いでいるのか?」(参照)、「またまた米国債買いのお話」(参照)に続く。要点の一つは、膨大な円介入は「非不胎化介入」というリフレ策ではないのか、ということだった。
 この巨大な介入を米国はどう見ているかという点で、2日のFRB(米連邦準備制度理事会)グリーンスパン議長のニューヨーク講演が興味深かった。
 新聞系のニュースでは、グリーンスパンは「円高阻止のために多額の円売りドル買い介入を実施している日本の為替政策を強く批判した」と報じた。例えば、共同からは「米FRB議長、日本の巨額の為替介入を批判」(参照)、毎日からは「円高介入:グリーンスパンFRB議長が日本批判」(参照)、朝日からは「FRB議長、日本の大規模介入『必要ない段階に近づく』」(参照)などだ。
 だが、これらは情報が少なく、グリーンスパンの意図がわからない。そこで、ブルームバーグを見ると、もう少し詳しく、「FRB議長、日本はドル買い介入最終的に停止を-講演で(5)」(参照)というCraig Torres記者による署名記事があった。冒頭を引く。


 米連邦準備制度理事会(FRB)のグリーンスパン議長は2日、「日本政府によるドル資産の蓄積ペースを減速し、最終的に停止する必要があると認識すべきだ」と述べ、日本政府・日銀による円売りドル買い介入を強くけん制した。同議長はニューヨークのエコノミック・クラブの講演で見解を明らかにした。
 同議長は、日本の円売り介入について、「部分的な非不胎化介入は日本のマネタリーベースの拡大手段、つまり金融政策の基本的要素と認識される」と指摘。「日本のデフレ沈静化に伴い、継続的な介入による金融面に及ぼす結果が問題になってくるだろう」と、介入資金を市場に残す非不胎化介入に伴う金融緩和の行き過ぎに警告した。
 その上で、議長は「日本経済の現在のパフォーマンスは、現行規模の介入を続けることが、もはや日本の金融政策の要求に合致しなくなる水準に接近していることを示唆している」と述べ、大規模介入を修正する時期が近いとの認識を示した。

 ということで、グリーンスパンは、日本の円介入を、要するに、リフレ策として見ていたということのようだ。
 私としてはちょっと呆気にとられたという感じがした。というのは、このことは国内のエコノミストや経済学者ははっきりと指摘していたとは思えなかったからだ。わからないので、私は素人考えを重ねてきたわけだが、こういうことは、その筋では常識だったのだろうか?
 いずれにせよ、グリーンスパン側から、円介入をやめろというシグナルが出たので、過去の例から見ても、日本の介入は少なくなる、ということだろうか。次に知りたいのはそのあたりだ。ついでに知りたいのは、陰謀論めくが、そもそもこの莫大な介入は、米国主導だったのだろうか、という点だ。
 繰り返すが、重要なので同記事の別の言及も引いておく。

 日本政府・日銀による円売り・ドル買い介入は昨年初めからことし2月までに約30兆円に膨張。欧米の市場関係者の間では、介入規模の拡大と並行して、日銀の量的緩和目標が30兆―35兆円(日銀当座預金残高)に拡大されたことから、介入資金を市場に放置する非不胎化介入と受け取られている。グリーンスパン議長は「部分的」と断りながら、日本の為替市場介入を「非不胎化」と明言。米通貨当局も政府・日銀の為替市場介入を非不胎化とみなしていることが初めて明らかにされた。
 市場関係者の間では、日銀が量的緩和を拡大し、巨額の円売り・ドル買い介入を可能にし、手当てしたドル資金で米国債を購入、米国の双子の赤字をファイナンスしているとの見方が根強い。日本政府・日銀の円売り介入の結果、米国債が購入され、米国の市場金利が抑制されるため、米通貨当局も日本の介入政策を容認していると見られていた。

 ところで、このあたりのグリーンスパンの言及はどうなっているのか、ブルームバーグなので原文が存在するはずだと思って、「原題:Greenspan Says Japan, China May Trim Dollar Purchases(抜粋)」から原文を探すと、なんか変だ。対応するはずの冒頭を引く。

Greenspan Says Japan, China May Trim Dollar Purchases (Update3)

 March 2 (Bloomberg) -- Asian central banks may have to reduce their "extraordinary'' purchases of dollar assets soon, and when they do so, it doesn't mean that the dollar "will automatically fall" or U.S. interest rates will rise, Federal Reserve Chairman Alan Greenspan said.
 Japan, China and other Asian nations' central banks have purchased $240 billion in dollar assets since the start of 2002 in an effort to keep their currencies from rising against the dollar, Greenspan told the Economics Club of New York.
 "The current performance of the Japanese economy suggests that we are getting closer to the point where continued intervention at the present scale will no longer meet the monetary policy needs of Japan," Greenspan said in his speech.


 標題も記者も同じだが、日本語のほうの記事とは対応していない。どっかに別記事が存在しているのだろうか、探したのだがよくわからない。
 グリーンスパンの発言で、もう一点、気になるのは、ユーロへの配慮だ。

 またグリーンスパン議長は、通貨当局の為替市場介入メカニズムについて、「アジア諸国の通貨当局が自国通貨の対ドル相場抑制のため、自国通貨売り・ドル買い介入を実行すると、当局はドル建て資産を民間部門のポートフォリオから購入することになる」と指摘。「この結果、民間部門の手持ちのドル資産が減少するため、自然な成り行きとして、ポートフォリオのバランス調整で、ユーロなど介入通貨以外に対してもドル買いが発生する」と述べた。
 議長は「この結果、ドルの対ユーロ相場は上昇することになる」と説明。欧州諸国が非難するようなアジア通貨売り・ドル買い介入でユーロが上昇することはないとの見解を示した。グリーンスパン議長は「ドル相場に影響を与える要因は、当局の為替市場介入以外は予測不可能なため、アジア諸国の為替市場介入の停止は自動的なドル相場の下落を意味しない」と指摘した。

 このあたりの発言の真意もよくわからない。
 私は稚拙な陰謀論めいた冗談として、米国は日本と組んでユーロ潰しを狙っている、とも思うが、実際のところ、米国はユーロをどう見ているのだろうか。

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コメント

お馬鹿コメントですが、貨幣価値というのは何なんでしょう。流通抵抗(なんて表現でいいのか?)のようなもの、幻想としての電位差、あるいは位置エネルギーの比喩なんでしょうか。

日米の巨額の負債(国債)というのも、どこまで増やせるものか探ってるのでしょうか。貨幣価値を担保するということ自体が幻想なんでしょうか。なんか書いてて無知ですみません。

投稿: a watcher | 2004.03.05 08:38

a watcherさん、ども。貨幣の価値の本源というのは、私は、最近は「サービス」ということかなと考えつつあります。これは経済学のプロパーのかたからは噴飯ものでしょうか。ただ、自分が哲学・思想の側ですから、マルクスの労働価値説の見直しのように考えています。

ただ、そうした視点は現状の世界における価値の問題を考える上では迂回過ぎます。大雑把には基軸通貨との関係で見ればいいのだろうと思います。

国債の問題ですが、これも私にはよくわかりません。ばかばか発行すればインフレになるというのを歴史的に見ている程度です(現状貯め込んだ米債は外貨準備になるようです)。

通貨量については、私は勉強がうかつで、フリードマン時代の人だったので、ブログ始めて自分より下の世代がクルーグマンとかきちんと読み出しているのにちと驚いている次第です。マネタリズムというは、クルーグマンはコケにしているし、理論的にはなんだかなですが、今回のグリーンスパンの皮肉?のようにまったく効果のないものでもないようです。

クルーグマンについては、もし読まれてなければ、「クルーグマン教授の経済入門 日経ビジネス人文庫」はいいですよ。

アフィリエイト付きですが:
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/asin/4532192021/fareasetblog-22

もう一つの問題は通貨量ですね。また、マネタリストの関係になりますが。ただ、私としては、需要ってなんだよ?という素朴な疑問があるので、近くブログのほうに書きます。

あと、自分の疑問をここに書くのもなんですが、グリーンスパンの発言というのはマーケットに影響しているとしか思えないのだけど、そのあたり誰かわかりやすく解説しているのでしょうか。円介入もリフレじゃんというのも、私は見かけませんでした。

投稿: finalvent | 2004.03.05 10:34

どうもです。ご無沙汰しておりすみません。

あのブルームバーグの記事、気になりますよね!あの日本語記事の超訳(笑)はどうやら議長講演の内容を補足しながら書かれたもののようですが、やっぱり無茶苦茶だと思います。というより、新聞/テレビの日本語による報道は全部無茶苦茶なようです(読売だけは「批判」とかっこで括っており、ちょっとだけまともでしたが)。なめられたものです。

まともな経済学の教科書を読んだ者にとっては、介入とそれに伴う当座預金残高の引き上げが実質的なリフレ策だってのは明白だと思います。昨年の春や秋以降、その動きが出てきてから、例の苺経済板でもかなり話題になってましたよ(まああそこが経済学的に「まとも」かというと異論もあるでしょうけどw)。ということで、グリーンスパンが日本の為替介入をそのように見ていたとしてもそれは別に驚きではないと思います。むしろ当然かと。

【ちょっと話は逸れますが、これは中国の景気が現在過熱気味で、インフレもしくは資産バブルの心配が出てきたことを考えるとわかりやすいと思います。元をドルにペッグしているため、米国のものすごい金融緩和に付き合わざるを得なくなった結果なわけです。当然長続きするものではありません(しかし中国はちょっと前までデフレ気味だったので、むしろうまくペッグを利用したのではないかとも思いますが(つまり外圧により初めて見直しを検討しているわけではなく、当初予定通りなのかもしれない)これは別の話ですね)。グリーンスパンはこの点についても言及していますが、的を得たものだと思います。】

で、すっきりしないのは、この日本の「実質的な金融政策」が財務省主導/日銀追随という妙な動きでなされていることです。「為替介入を批判した」とされるグリーンスパンのこの発言:

The current performance of the Japanese economy suggests that we are getting closer to the point where continued intervention at the present scale will no longer meet the monetary policy needs of Japan.

が、このねじれた金融政策の動きを念頭においてなされているのは彼の講演
http://www.federalreserve.gov/boarddocs/speeches/2004/20040302/default.htm
を読めばよくわかります。この発言のちょっと前の部分を引用します。

For now, partially unsterilized intervention is perceived as a means of expanding the monetary base of Japan, a basic element of monetary policy. (The same effect, of course, is available through the purchase of domestic assets.)

これ、金融政策の道具として為替介入を使うのってどうよ?筋悪じゃない?と言ってるように読めるんですがどうでしょう?自分のところの資産を買い入れてもof course同じ効果があるよ、と(この部分、日本語訳ではカットされてますね)。為替介入なんかしないで自分のところの資産買った方が良いんじゃない?と遠まわしに言われてると解釈するのが自然だと僕は思うんですが如何でしょうか。

で、現在続いている介入の規模を考えると、買い入れできる資産は現実的には国債ぐらいなものです(資産担保証券やら銀行保有株やらを何兆円も続けて買えません)。これってリフレ派が主張している国債買い切りを増やせって主張と全く同じものですよね。まあグリーンスパンは主張はしてませんが。

ということで、グリーンスパンの発言の日本の介入に関する部分は、別に批判でもなんでもない。むしろ、問題を解決したいならもっといい方法があるじゃない、と示唆することで、日銀の仕事振りを遠まわしに批判していると取れなくもない。というのが僕の意見です。

もっとも、最初の引用の直前、2つ目の引用の直後のこの発言:

In time, however, as the present deflationary situation abates, the monetary consequences of continued intervention could become problematic.

はどうかなあとは思います。本当にデフレが終わってインフレになるのであれば、この規模の介入(つまりいっそうの緩和)を続けることはもちろん問題になるでしょう。が、デフレがこのまま終わるのかはわからんと思ってます。グリーンスパンが正しいことを祈るのみです。

また、ユーロへの言及の件ですが、これは日中アジア諸国が為替介入してドルを買い支えている結果ユーロにしわ寄せが行ってユーロ高になった、という良く聞く説は誤解だよ、と言ってるだけですね。政治的にではなく、経済学的に、米国はユーロをどう見ているか、という話であれば、クルーグマンの次のお話が参考になります。
http://www.post1.com/home/hiyori13/krugman/euroj.html

それと、今回の議長講演は(日本と中国の話題だけ取り上げたブルームバーグの記事では良くわかりませんが)そもそも経常赤字が為替に与える影響について、諸説挙げながらどれもたいした影響無いんだよと言ってるものです(ただし財政規律の緩みは問題視されてます)。日本やアジアの介入が米国債を支えてるという説もばっさり否定されてます。全文のご一読をお薦めします。

・・・って毎回長文&偉そうで済みません。これからもよろしくお願いします。

投稿: svnseeds | 2004.03.05 22:20

svnseedsさん、コメントありがとうございます。重要な話でもあり、別記事を起こしました。誤解もあるかもしれませんが。

「小さな時代の終わりと何かの始まり」
http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2004/03/post_12.html

投稿: finalvent | 2004.03.06 14:52

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