« イラク世論調査結果を読むと戦争は概ね肯定できる | トップページ | アハマド・ヤシン殺害 »

2004.03.22

世界市場の穀物価格は急騰するか?

 社説ネタはないので、先日来気になっていたテーマとして中国の穀物生産の話を書く。ニュースとしては、共同系で流れた11日の「中国の穀物生産が減少 輸入増で世界価格高騰も」(参照)がある。


【ワシントン11日共同】中国の穀物生産量が、急速に進む砂漠化や水不足の影響で1998年をピークに減少を続けており、今後は中国の輸入量の拡大によって世界の穀物価格が急騰する可能性が高いとの報告書を、米国のシンクタンク、アースポリシー研究所(レスター・ブラウン代表)が10日、発表した。

 ニュースとしては、この先、レスター・ブラウン説を垂れ流して、世界市場の穀物価格急騰が発展途上国での政情不安や国際紛争を招く危険があるとしている。
 そのあたりの詳細が気になっていた。ざっと国内での情報を当たってみたのだが、やはりというべきか皆目わからない。石油についてもそうなのだが、こうした問題は専門家がわかりやすい言葉で現状を説明してくれるといいものだと思う。私もこの問題について特に知見はないのだが、気になる話題でもある。が、レスター・ブラウンはただのエコなので、なんか法螺臭いなとも思い、それ以上は考えていなかった。
 さて、考えみるか、それには、どっかに原文があるはずだと思って探すと、ある。"CHINA'S SHRINKING GRAIN HARVEST.How Its Growing Grain Imports Will Affect World Food Prices"(参照)。こった言い回しのない英文なのだが、主張に修辞が多すぎてわかりづらい。読みながら、アホちゃうかこのおっさんとか思ったが、エコ(環境問題)の人はエコノミー(経済)に詳しくないことが多いので、そんなものかもしれない。それでも、指摘されているファクツは興味深いものだった。
 なかでも、共同ニュースでも指摘されていたことだが、中国での穀物減産の比喩は面白い。

After a remarkable expansion of grain output from 90 million tons in 1950 to 392 million tons in 1998, China's grain harvest has fallen in four of the last five years - dropping to 322 million tons in 2003. For perspective, this drop of 70 million tons exceeds the entire grain harvest of Canada.

 この5年間の中国の穀物減産量は7000万トンで、これはカナダの穀物収穫量を越えるというのだ。よくわかんないが、比較されるカナダのほうは年間だろう。カナダは農業国なので、修辞的には、「おや、ま、びっくり」という意図なわけなのだろうが、実際のところ、5年にわたり進行していて、その間というか、近年にドラスティックな変化もないし、また、当面はそうした変化もなさそうなので、何が問題だよ?という気にもなる。後段読み続けても、今年あたりになんらかのカタストロフが来るという意味でもなさそうだ。
 が、当然ながら、この状況は現状の世界構造の変動の大きな原因であることは間違いなく、それらは、ある時点でカタストロフを起こす可能性があるのかもしれない。レスター・ブラウン的に言えば、それが途上国問題として噴出するだろうというわけだ。
 レスター・ブラウンはこの減産は、中国の農地の水不足や都市化による環境破壊だと言いたいわけなのだが、爆笑していいのか苦笑していいか迷って苦笑する。そんなものは、経済学の基本である比較優位の問題だ。あまりも単純な経済学を無視してエコの倫理を主張しても無意味なことになる。
 となると、問題は、端的に、穀物価格を巡る国際間の経済ということになる。もっと単純に言えば、中国には外貨がじゃぶじゃぶとしているからそれで米国から穀物を買えばいい。で、何が問題?ということになる。レスター・ブラウンもそれはわかってはいて、ホラーめいた修辞を使う。

When China turns to the world market, it will necessarily turn to the United States, which controls nearly half of world grain exports. This presents an unprecedented geopolitical situation in which 1.3 billion Chinese consumers who have a $120-billion trade surplus with the United States - enough to buy the entire U.S. grain harvest twice over - will compete with Americans for U.S. food, likely driving up food prices for the United States and the world.

 これで米国の食料が枯渇するがごとき表現だが、阿呆くさい。ついでなので、もう少しつきあう。

Moving grain from the United States to China on the scale that is needed will likely involve loading two or three ships every day. The long line of grain-laden ships that may soon stretch across the Pacific will bring these two countries closer together economically, but managing the flow of grain to optimize the benefits for people in both countries will not be easy. It could become one of the major U.S. foreign policy challenges of this new century.

 というわけで、頻繁に巨大タンカーが太平洋を行き交うという光景を困ったことのように描くのだが、これも、で?、みたいな問題だ。エコ的には、ポストハーベストとか遺伝子組み換えとか楽しい話題もあるのだろうが、当方はこの文脈では触れない。
 「問題は」という以前に、これは、ただの現状のファクツでしかない。そして、これは端的に比較優位の問題だ。つまり、中国の経済状況が変化していることだ。で、それは何かというと、1つには、農政問題に手がつけられないということだ。もちろん、レスター・ブラウンの記事も冒頭で中国の対処について言及しているが、そこは中国、政治家の面子さえたてばいいのである。からして、実際の対処になんかなっていない。つまり、これは中国国内の農政、あるいは農民の問題でもあるし、ようは中国国内の貧富の問題でもある。むしろ、こちらのほうが大きな問題だろう。
 もう1は、いずれにせよ穀物価格はじわじわと高騰する、か、あるいはどっかでカタストロフ的に高騰するかだ。これも避けられない。そのあたりの反射が、どう国際経済を襲うのだろうか。単純に考えれば、以前極東ブログでも触れたように一次産品の価格上昇という問題かもしれないし、石油を含めて、中国発デフレが中国発インフレになるか、ということだが、どうもそこまで話を進めると実感はない。
 日本はどうなるかも気になる。これだけ大きなシフトがあるのに日本が無傷なわけもない。どうなるのだろう? 考えてみてよくわからない。まず、直接、穀物問題として衝撃が来るのか、「中国発インフレ」で来るのか。後者で来ると、けっこう、僥倖ってことになるかもしれない。前者の場合は、まず家畜肥料の高騰として反映するのだろうか。
 そのあたりは農水省のまた陰謀臭い臭いがしないでもないが、当面、陰謀ストリーを練り上げる気力もない。まぁ、ぼちぼち、畜産と穀物に対する農水省の動きを警戒しながら見ていく必要はあるだろう。

|

« イラク世論調査結果を読むと戦争は概ね肯定できる | トップページ | アハマド・ヤシン殺害 »

「環境」カテゴリの記事

コメント

こんにちは。
ちょっと、気になったので、たいしたこと言えないかもしれませんがいちお・・

「砂漠化とか水不足が問題」っていうんだったら、これって環境問題ってことですよね?
だったら一番の責任ってアメリカとか・・そういう開発先進国にあるはずなのに・・。

そのあたりは気にならないんですかね、エコな人たちは..

投稿: m_um_u | 2004.03.22 16:56

m_um_uさん、ども。このあたりは、私もよくわからないです。というのは、レスター・ブラウンは穀物輸入は水不足の帳尻併せだみたいなことを言っているのですが、なんかよくわからないというか、わかることは不可能かも? 

あと、環境問題はアマゾンとかの問題で顕著だけど、先進国の問題っていうスキームは壊れつつあるんですよ。このあたりは、ブログのメインで書いたほうがいいかもですが。ただ、フェミだのエコだの、話が通じないっていう経験が多いので、ちょっと、な、っていう感じです。

投稿: finalvent | 2004.03.22 18:05

このブログ、おどろきました。
中国の環境問題の深刻さも、農業問題の深刻さも
ほとんど何もしらずに、ただのエコぎらいでレスたーブラウンを感情的に批判する。
地球におこっている事実をまったく見ずに、わけのわからない「経済理論」をわかったふりして、何か意味があるのでしょうか。

投稿: Q | 2008.06.10 14:41

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 世界市場の穀物価格は急騰するか?:

« イラク世論調査結果を読むと戦争は概ね肯定できる | トップページ | アハマド・ヤシン殺害 »