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2004.03.21

イラク世論調査結果を読むと戦争は概ね肯定できる

 英BBC、米ABC、独ARD、日本のNHK、4社テレビ報道機関が共同でイギリス民間調査会社に委託したイラク世論調査結果を見ると、イラク戦争自体は概ね成功したのかと思えてきた。
 と、言うと、「あの戦争を是認するのか」とか、「おまえの意見はコロコロ変わる」とか言われるだろうか。少し整理しておくと、現在時点での私の考えでは、開戦の是非はよくわからない。つまり、こんな戦争やらなくてもよかったんじゃないかとも思う。戦争のやり方については、それほど成功だったとは評価しづらい。が、失敗とも言い切れない(これはこの世論調査を見て得心した)。戦後統治については、最低だ。フセイン体制を温存すべきだった。もともと、この戦争の有志連合側の大義は独裁者フセインの打倒だったのだから、体制にまで手を入れるのは間違いだった。このミスがなければここまでイラク社会の治安悪化もなかっただろう。
 この戦争の副作用もあるなと思う。独裁者の政権下や内乱でその国の民衆が非人道的に苦しんでいるとき、国際社会はどうすべきか? これは、概ね、ほっとけ、ということになったわけだ。北朝鮮内でいくら民衆が非人道的な立場に置かれていても、国際社会は関知しない、と。戦争反対が第一義で、人道主義は二義的になった。
 この調査を結果論として見ると、人道的な面では正当化されると見ていい戦争だったようだ。この調査を引いた18日の読売新聞社説「イラク戦争1年 国際社会の連携を強化せよ」は当初読んだときは、うさんくさいなと思ったが、調査の概要を知ってから見ると、この判断は概ね正しいことがわかる。


 米英軍のイラク進攻が「正しかった」とした回答は48・2%で、「間違いだった」とする39・1%を上回った。
 「今の暮らしは良い」「一年後はさらに良くなる」と思っている回答者はそれぞれ七割に達する。戦争前に比べ「悪くなった」と答えたのは18・6%だ。

 もっと、こうした強調はあまり公平ではない。日本語版CNN「57%が生活改善と評価 イラク世論調査」(参照)のほうがましだ。

米英軍によるイラク侵攻を正しかったと評価したのは49%で、間違っていたと批判したのは39%。戦争によってイラクが辱められたと感じる人は41.2%で、イラクが解放されたと感じる人は41.8%だった。民族別にみると、イラクが解放されたと感じたアラブ人は約30%に過ぎないが、クルド人は約80%がイラク戦争を「解放」と評価している。

 CNNニュースにはもう少し詳しい情報があるのだが、それでもわかりやすいという印象は受けない。
 そんなところかと思っていたが、探すと、BBC"Survey finds hope in occupied Iraq"(参照)に元ネタがあった。ここで、グラフや調査結果のPDF文書がダウンロードできる。つらつらと見るに、なかなか味わい深い。あえて、私の印象を書いてみたい。
 意外な印象を受けたのだが、イラクに民主主義を求める声が大きい。イスラム宗教に反対はしていないようなのだが、イスラム神政は求められていない。確かに考えてみれば、イランでも若い世代や大衆の本音としては、神政ではないようだ。宗教指導者はかなり信頼はされているが、公正という他律的な規範概念が信仰に結びついているように見える。総じて言えば、政教分離意識があるようだ。
 連想するのはフセインのバース党は元来近代化政党だったことだ(社会主義的でもあるのだが)。反面、矛盾するようだが、強権のリーダーを求める声も大きい。強権と民主主義が矛盾するわけでもないのだが、浮かんでくるイメージは、民主主義も強権リーダーも、どうやら、部族間の調停という社会機能なのではないか、ということだ。民主主義の運用面で重要なはずの政党意識は低いようだ。もっとも、政党なんてものがなかったのだからしかたない面もある。
 こう考えていくと、調査全体に貫かれている反米意識の基調も理解しやすい。日本人からすると、反米=イスラム社会なのだから、同じくイスラム圏の国家に対してイラク国民は親和性を持っているのだろうと考えやすいが、今回の調査でも、私にしてみると、やっぱりなというか、エジプトやサウジは嫌われているなという感触を得た。ある意味で当たり前でもある。反面、好まれているのは、アラブ首長国連邦(United Arab Emirates)だ。ある程度、調査からイメージがまとまると、これもやっぱりな感が出てくる。
 好悪の中間くらいなのが、アメリカ、日本、クエートだ。他データを見ても、一群アメリカ贔屓はいそうだ。クエートについてはよくわからない。というか、イラクをこうした部族の緩い統合国家として見た場合、クエートという王族支配の国がどう見えるのだろうか。これは少し考え続けてみたいテーマでもある。
 日本の評価は高い。復興に期待をかけている国としては、アメリカと日本が同じくらいのポイントで並び、他はこの二国に匹敵しない。しかも、逆に復興に参加しないでくれという調査項目でみると、アメリカを嫌うポイントが高く、日本はほぼゼロだ。日本っていうのはけっこういいイメージで見られているのだなと痛感する。もちろん、異国情緒の遠隔性や黄色人種への差別感もあるだろう。現実には、彼らは日本人、韓国人、中国人は区別できるわけはない。もっとも、私も区別できないけどね。この項目でよく嫌われてるなと思うのがイギリスだ。歴史的な背景もあるだろう。総じて、イラクはヨーロッパを評価していない。なんか、わかる気がする。
 自分のイラクのイメージがやや違っていたかなと思うのは、職の問題だ。職はそれほど優先課題ではないかに見える。むしろ、学校のニーズが高い。これは、部族内の互助システムはまだ生きていることと、対外的には、商業活動が主軸になっているということではないかと思う。
 もひとつあれ?と思ったことがある。メディアを通してみると、ひどい戦争だなと思うし、実際ひどい戦争なのだが、実際戦時に有志連合軍兵士と遭遇したかという問いに、大半がそうではないと答えている。なるほどなと思う。太平洋戦争でもそうだが、日本は戦争でひどい目にあったという歴史が語られているが、実際は本土は、長崎、広島、東京を除けば、概ね、戦時は呑気なものだった。イラク戦でも似たようなことは言えるのだろう。つまり、大半のイラク国民は、兵士と向かい合ったわけではない。もちろん、空軍戦という意味もあるのはわかるが、それでも戦地は砂漠を除けば、バグダットなどに極小化されていた。
 以上、私の印象だ。資料はBBCのページで簡単に入手できるので(参照PDF)、私の読み違えがあるかは、各人が資料に当たってもらえばいいのではないか。英文も簡単だし、これは意外に面白い資料だ。一読を勧めたいくらいだ。

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