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2004.03.20

スペインによるイラク派兵撤退の余波

 イラク派兵を巡るスペインの政策変更の影響は一見多様だが、ある志向性をもった奇妙な軋みのようになりつつあるようだ。それに対応して、米国の世論のトーンが、大統領選挙にも関連して少しずつ揺れているようにも見える。やや意外な印象も受けるのだが、ブッシュにしても、またジャーナリズムの言論でも、いずれにせ米国側から、「スペインの変化はテロに屈したものだ」という非難は少ないようだ。むしろ、米国の立場を理解してもらい、派兵の政策に戻して欲しい、という呼びかけに聞こえる。私はここに至って親米化せよという意図はないが、日本を取り巻くマイルドな左翼的な言説には短絡した反米の虚像があるかなという警戒感を持つ。
 こうした弱い変化のなかで、面白いと言ってはなんだが、ポーランドが米国に騙されたと言っているらしい。朝日系のニュース「ポーランド大統領、『大量破壊兵器ではだまされた』」(参照)を引く。


 ワルシャワからの報道によると、大統領は仏記者団との会見で「大量破壊兵器に関する情報でだまされたことに、不愉快さを感じている」と述べ、別の記者会見で「これは米英と、他の多くの国々の問題だ」と指摘した。

 朝日臭いニュースだなということを差し引いても、ほほぉとも思う。が、これで早期撤退したとしても来年のことになる。スペインに並んだ変化があると見るよりは、ポーランドという小国が生き延びるための賢さと見るべきだろう。ポーランド国内ではイラク派兵反対の世論は高いが、仏独帝国化するEUに飲み込まれたいわけがない。
 このあたり、逆にスペインが今後どうEUと対峙していくのかちょっとした見ものだ。今回イラク派兵撤退に転んだスペインだが、このままEUに調和していくとも思えない。ちょっと気になるのは、世論の流れとしては今回のテロはアルカイダ説ということになっているみたいだが、バスク説はただのガセなのか。スペインとフランスはバスク問題で協調する部分もあるので、いずれ変なストーリーが出てくるかもなとも、ちらとだが思う。
 スペインの変化では、玉突きのように韓国側にも影響が出ている。これも朝日系のニュース「韓国軍、イラク追加派遣延期へ 治安悪化で派遣先再検討」(参照)を引く。話の流れは、標題どおり、韓国軍のイラク追加派兵が頓挫しつつあることだ。表向きの理由は、予定されていた北部キルクークの治安悪化だ。

 韓国軍は新たな派遣先選定へ向け米側と調整中だが、4月7日に予定された先発隊第1陣の出発は事実上、白紙に戻った。韓国メディアによると、先の総選挙を機に軍撤退を表明しているスペインの部隊が駐屯する中部が有力候補に挙がっているという。

 このあたりの朝日の報道はちょっとバイアス入っているんじゃないかと思える。韓国側のメディア朝鮮日報社説「やって良かったと言える派兵に」(参照)では、こうある。

 韓国政府はキルクークの代わりにスペイン軍が撤収した地域に向かうこともできるというが、そこはポーランド師団の管轄地域だ。米国との共同作戦さえ断った韓国軍が、ポーランドの指揮を受けるはずがない。
 よって、極端に言ってしまえば、結局行くと言っておきながら行けないか、もしくは行かない状況まで想定しないわけにはいかなくなった。

 なるほど、スペインやポーランドは小軍ながら、危険地域にいることがよくわかる。そして、韓国はポーランドの指揮は受けないというのだ。日本人の感覚からすると、その印象は、30へぇくらいだろうか。
 同社説はこう結んでいる。

 このような流動的な状況で韓国政府の判断と決定はいつも以上に増幅され、同盟国米国に伝わるほかないだろう。韓国政府の出方次第では、いっそのこと派兵しない方がましだったという事態も招きかねない。政府の高度な総合的判断が要求される時だ。

 ある程度国内世論を踏まえているらしく、韓国軍派兵の決断せよ、とまでは露骨には書いていない。が、そういう意図だろう。それは韓国の一部の主張に過ぎないのだろうが、そこまでして米国との連帯を重視しているわけだ。その点、裏返しになるとはいえポーランドも同じだ。こういう事態を見ると、日本は安閑としているなと思う。陰謀論めくが、日本の円の威力はすごいな、国防だな、とやけっぱちで思う。
 韓国側の名目的な世論としては、「平和と復興」の派兵だ。おっと、それってどっかの国と似ているじゃないか。というか、安閑とした日本が恨めしく見える部分もあるだろう。EUの小国からもそう見られているだろうし、また、はっきりとは聞かないが、他のアジア諸国やオーストラリア・ニュージーランド(この二国を分離する理由が最近わからなくなってきたぞ)からも、そういう視線があるのではないか。
 とま、だから日本もしっかりせよ、なんてことを言いたいわけではない。1000人規模の、比較的安全な地帯で「何かやっている」自衛隊以上の軍事的な貢献は難しいだろう。それでも、日本の世論は、米、仏、懐かしの左翼といった視点で大入り状態に見えなくもない。
 しかし、イラク復興で重要なのは、本当に軍という視点なのか? 冗談を含めて言うのだが、日本は経済力で米国から防衛しているだけじゃなくて、もっとイラクの経済復興に遠隔的に働く施策はないだろうか? ちょっと暴論めくが、イラクの国政は石油の利益をサービス産業として再配分していたのだろうから、どかんと一発禿げ頭じゃないが、外貨をじゃぶじゃぶ送って、輸入を促進すればいいのではないか。暴論すぎるかなとは思うが、視点の変更はありえるように思うのだが。

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