« スペインテロ雑感 | トップページ | 陳水扁が勝つと信じる »

2004.03.19

イラク戦争一年

 朝日、読売、日経が、イラク戦争1年というネタで社説を書いていた。特にどうという内容でもない。私もこのブログでイラク戦争についてはいろいろ書いてきたので、新しい話もない。ので、繰り言になる。
 私の場合は、このブログを始める前に米国の開戦を支持していた。大量破壊兵器があるとも信じていた。だが、さすがにもう実際は大量破壊兵器はなかったと言うしかない。すると開戦の理由はない、ということになる。それもそうだ。では私は判断を間違えていたのか。
 そうすんなりともいかない。私はイラク戦争のミスは、戦後処理のミスであり、フセインなきフセイン体制を維持しなかったことにあると思う。しかし、そう主張することは醜いなとも思う。また、仏独露の死の商人たちや、こいつらのフセインとの裏取引を潰せとも思っていた、が、それも十分な自己主張の理由にはならない。
 では私は十分に反省したのか。そうでもない。同様な事態になったとき、私は、態度を変えるかというと、そうでもないように思う。実に歯切れが悪い。
 テロは世界に拡散し、イラク統治は泥沼化しているようにも見える(そうでなくも見えるのだがそれは今日は触れない)。だが、この戦争で世界の構成は確実に変わった。リビアは完全に屈した。イラン、パキスタンもだいぶ折れた。北朝鮮もほぼコントロール下に入った。冷戦後のならず者国家は軒並みもぐらたたきの状況になった。イスラエルを挑発する国も事実上なくなった。そして、おそらく表層的な国際テロの背景で、中露とEU(独仏)と米国の関係が、冷戦のような、それでいて経済的にはもつれ合うような事態が進んでいる。この事態に、旧来の反戦だの平和だの悲戦というような懐メロで対応できるわけもない。

cover
マクナマラ回顧録
 話をイラク戦当初に戻す。戦争自体は予想以上に首尾よく終わったのではないか、と私は思っていた。が、それは、明確に間違いだった。もちろん、短期に終わるという点では首尾良しとも言えるだろうが、戦略の内実をNHK「クローズアップ現代」イラク戦争3回シリーズの初回で知ったときは、ベトナム戦争についてのマクナラマラ回顧録より落胆した。というか、ベトナム戦争の非を認めるのはそれほど難しい問題ではない。
 NHKによれば、今回のイラク戦では、当初、要人空爆を50回も行ったものの、すべて失敗していたという。「言うよなアメリカぁ!」と思う。歴史の段階に移ったことについて米国という国は政治的な配慮はしない。この点は、糞転がしのように糞文書を抱え込む日本の外務省の歴史文書隠蔽主義と雲泥の差がある、と言えば、米国だって重要文書は同じ、ということにもなるだろうが、それでも、このあっけらかんとした戦略への取り組みは、そら恐ろしいものがある。生成文法史に置けるチョムスキーみたいじゃないか、と言って爆笑される方はいかほどか。
 この馬鹿みたいにあっけらかんと、全て失敗でした、とぬけぬけと、おばあちゃんのクッキーのレシピのように語る米国というのは、本気で怖い。そして追い打ちをかけるように、その際の民間人殺害がどの範囲なら国際法に触れないか、マクロ経済のように計算していたともいう。背筋が凍るな。しかし、これは米国戦史の反省でもあるのだろう。そうでもなければ、東京大空襲をまたやりかねないのだ。
 いずれにせよ、要人をピンポイントで殺害し、国家体制を転覆するという戦略はとんでもない失敗だったことは確かだ。ふと常識に立ち返るならそんなことはあり得ないと思うのだが、そういう常識は機能しづらい。
 「クローズアップ現代」には、「ヴァ-チャル・ウォ-」の作者マイケル・イグナティエフが出てきて、間抜け面を晒していた。コイツ、こんな馬鹿だったのか。とはいえ、イラク戦争はヴァ-チャル・ウォ-ではないと言うだけまともなのか、それとも米国世論を配慮していたのか、判然としない。だが、戦争はゲームのようだみたいな議論は、なんとも薄っぺらなものだ。が、そう私もその間抜け面の一人だよ、とされて、さしたる反論もないか。
 日本のマスメディアでは、未だ中道左翼みたいな論者がインテリめいて生き残ったようにも思う。幸いイラク状勢もそれに追い風のようになった。が、私は秋以降、そんなことはどうでもいいと思うようになった。反面、急に気になりだしたのは、有志連合と韓国、沖縄の動向だった。
 有志連合が成功すれば、日本は人的な面で米国の属国になるぞと思った。その兆候は韓国に見られた。韓国の内政は現状紛糾を窮めているところに、ブラックな皮肉を投げるようだが、あのどたばたに米国が呆れている事態は、韓国に益なのだ。米国の本音は「こーんな馬鹿、使えねー」だろう。同じく、日本についてもそう思っているに違いない。が、米国債の買い入れという身銭を切る同盟国には随分米国は配慮していた。
 現状、有志連合という悪夢が完全に消えたわけでもない。が、イラク戦争がすんなりシナリオ通りに進んでいたら、米国州兵の代わりに、韓国人・日本人・オーストラリア人が狩り出される世界になっていただろうと思う。

|

« スペインテロ雑感 | トップページ | 陳水扁が勝つと信じる »

「歴史」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: イラク戦争一年:

« スペインテロ雑感 | トップページ | 陳水扁が勝つと信じる »