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2004.03.10

雇用って何だということから雑談

 雑談めく。雇用って何だという話だ。米国大統領選については私はそれほど関心ない。というか、これまで日本人ってそれほど米国大統領選なんかに関心もってなかったようにも思う。ま、いいか。で、大統領選で雇用が問題になっている。そりゃね、であると言ったのもののなんか変だなという感じがする、という話だ。
 先日ニューズウィークに掲載されていたロバート・サミュエルソンのコラム「見えてきた絶好調の波(Revenge of the Old Economy)」(日本版03.12.24)だと米経済の立て直しは要するにオールドエコノミーだ、と。ま、それはいい。コラムネタだし。で、彼は確か、雇用はあとから来るのだがとお茶を濁していたような。


 生き残った企業でさえ、コストを削るために人減らしをしたり余分な工場を閉鎖する。そうなれば収益は上向き、企業は雇用と投資を再開する。今のアメリカ経済は、まさにその局面にある。
 ただし、5%台という現在の労働生産性は持続不可能な水準だ。労働生産性は通常、景気が拡大局面入りした直後に急上昇する。その理由は、企業が景気の回復を確信するまで雇用を増やそうとしないことにある。
 今回の場合、国内でも国外でも競争が激しいため、景気が緩やかに回復しはじめた2001年後半以降もアメリカ企業は人員を減らし続けた。景気が拡大するなかで人員を削減したため、おのずと労働生産性が上昇しているのだ。企業が雇用を増やしはじめれば、生産性の伸びは下降に転じるだろう。

 というのだが、さて、それから三ヶ月。どうか? どうやら、そーゆーストーリーではないような感じなのだが。
 この先、サミュエルソンはこういう話を付け足す。

 ヨーロッパや日本に比べて、アメリカの景気回復は驚くほど力強い。だが、この流れが長続きするかどうかはわからない。
 減税や住宅ローン借り換えの効果が薄れれば、個人消費は衰える可能性がある。中国製品をはじめとする安価な輸入品がアメリカの雇用を奪い取ることもありうる。

 減税についてはよくわからないし、住宅ローン借り換え効果もいまいちわからないのだが、いまだ「住宅バブル?」のせいか、不動産の資産価値は上がっているらしく、それで家計の借金は棒引き状態のようだ(大井幸子説)。ということは、個人消費はまだいい、と。
 で、雇用はどうよ?なのだが、これってなんなのか、私は以前からよくわからない。ちょっとわけあって沖縄にいた頃、最悪と言われる沖縄の失業率について調べたことがあるのだが、これがなんだかわからない。失業の定義が一応日本は国際基準だとか言われるのだが、どうも各国比較にそのまま使えないようだし、沖縄の実体もよくわからない。と、いう記憶がある。
 米国の場合は、景気動向は雇用統計がよく指標になるのだが、率直に言って、なぜなのかわからない、というか、わかるけど、それがなぜ米国だけの問題で日本には適用されてなさげななのか、と。いくつかごにょごにょした説明は読むのだが、それって、経済学かよ?っていう疑問は払拭されない。単純な話、フィリップス・カーブだとNAIRUだのが日本の現状の経済にどう適用されるのかという話もあるにはあるようだが、全然現実感がない。なにより、雇用は問題視されているようでいて、そうかぁ?みたいな状況にある。若者をがさがさフリーターにし、主婦はパートみたいにしているだけに見える。話を戻すと、フィリップス・カーブだとNAIRUだの適応が現実のわれわれを取り巻く状況と噛み合っている感じがまるでない。
 話を米国に戻す。この雑談を書こうと思ったのは、米大統領選に関連した「雇用流出」の問題だ。最近、この話をよく聞くのだが、これも日本には関係ねー感があって、嘘くさいと思っていたのだが、今日共同で「中印に一段の市場開放要求 雇用流出で米通商代表」(参照)というニュースを見た。

 今秋の大統領選に向けた政策論争では労働コストが安い中国やインドなどへの「雇用流出」が大きな争点となっている。ゼーリック代表は「米国を世界から孤立させることが答えではない」と述べ「経済孤立主義」には反対しながらも、米国内で高まる雇用空洞化の不安に一定の理解を示した。

 実態はよくわからないのだが、少なくとも米政府レベルでは問題視が始まっているようだ。
 もっとも、雇用流出というだけなら、ありげな話なもので、おなじみ「梅田望夫・英語で読むITトレンド」とかにも出てくる。ま、出るでしょう。「IT産業の雇用とイノベーションの未来」(参照)。余談だが、この記事中のこの英文和訳ってどうよ?である。

「If it is still tacit and requires a lot of unstructured discussion, then it must be done here.」(暗黙知に関わり非構造的な議論を必要とする仕事)

 この人、tacit lawは、「暗黙知の法則」とか訳すのだろうか。と、クサシじゃないけど、英語に堪能な人の語感についけてないことは多い。っていうか、語感にこだわる人間は外国語に向かないか。それと、この記事、事実上トラバもコメントもないのはなぜ?
 余談にそれたが、「雇用流出」っていうのはマジな議論なのか? ま、それが看過できないとして、それは、IT(情報産業)分野に限定されるのか? というあたりで、思うことを率直にいうと、それってIT経済法螺話の余話かよ?という感じだ。
 ゼーリック代表発言の含みだと、それって、繊維産業とかが中国にやられた、とかいう、ありげな中国脅威論っぽい。なのかよ? 日本における中国脅威論は、マクロ経済的には笑い話になっているようだが、それって米国ではどうなのか?
 というあたりで、話がずれるのだが、れいの「切込隊長BLOG ~俺様キングダム」で山本は「中国、大幅入超」(参照)を気にしていた。「誰がファイナンスするのだろう」とね。そりゃそーだ。ネタは日経からの記事「中国の貿易赤字が79億ドル――1-2月」(参照)だ。

 【北京9日共同】中国中央テレビが9日伝えた税関統計によると、中国の1―2月の輸出は前年同期比28・7%増の698億7000万ドル、輸入は42・0%増の777億7000万ドルで、79億ドルの赤字だった。赤字幅は1月の3000万ドルから大きく拡大した。

 で隊長曰く。

税関統計で伸びたという輸入(日本からする輸出)なんだが、例えばドイツの会社が中国に自動車工場を出す、地域にもよるが97年に建設した工場、2003年には償却が概ね終わる。償却が終わろうが終わるまいが工場は操業を続けなければならないが、一通り投資が終わると部品を調達する必要がある。ところが、中国では電力供給もタレパンもプレスもイマイチなので部品供給は海外に依存しなければならない。キーデバイスの大半は海外製だ。従って、やばい、眠くなってきた、まあそういうことだ。

 この話って、アレでしょ。極東ブログ「またまた米国債買いのお話」(参照)で書いたのと関連しているのでは。

 と、かく思いつつ、先日のラジオ深夜便で聞いた国際金融アナリスト大井幸子の小話がどうも気になった。この問題を別の角度から取り上げていた。別の角度というのは、Richard Duncan, "The Dollar Crisis: Causes, Consequences, Cures"に触れて、この状況を簡単に説明していたのだ。この本は昨年夏ごろ出て米国ではそれなり話題だったようだが、日本ではリファーされていないようだ。スカ本か? ついでに、ところでなのだが、この本のアマゾンのレビューだが、なんかパクリ臭いのだが、こんなのありか?
 大井の説明だと、米国債をがばがば購入しているのは日本と中国。それはそうだ。で、日本の場合、2003年に27兆ドルの米国債を買っている。これは米国の赤字5200億ドルの半分に相当する。2004年1月分でも米国赤字の13%だという。ま、そんなところだろう。そこまではそうだろうなというだけの話。そして、中国は米国に対して1250億ドルの黒字。これもわかる。で、この先、72へぇ~なのが、それを使って対日貿易の赤字分を埋めているというのだ。そ、そうなのか? かくして、大井は、日米中三者のもたれ合い、というようなことを言うのだ。なんだそれ?

 またしても、「なんだそれ?」でしかないのだが、このあたり、そーゆーからくりなのか?
 先日のグリーンスパン発言やスノー発言でも、日本がよぉ、というのもだが、中国もまぜていた。のわりに、この二国の関係を、がばがば米国債買いくさっていうのに留まっていた。
 とま、わからん。別に陰謀論を聞きたいわけでも展開したいわけでもないが、この現状って、なんか説明があってしかるべきじゃないのか。

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コメント

う~ん。。。。。でもなあ。。。。
介入すべきかどうかの是非は置いときます。
大体私は為替レートが何の要因で決まるのか未だにわかりません。株や債権だと一応理論値は出せますが(但し、人の予想が入る時点でその数値にぶれがでる)為替レートだと貿易赤字からテロリスクから景気判断からいろいろな変数が入りすぎて出すのは不可能だと思っていますから。

但し、介入したとして「その資金をどうすんだべ」と言う問題が出てきます。そのまま向こうの銀行に預けるのは無理だろうし(やったらシティバンクが運用に困って破産するだろうな)、株や投資ファンドも無理でしょう。(さあ、財政赤字解消のために思いきってバークシャー・ハザウェイを買占めましょう(笑)だとしたら残るのがアメリカ国債かフレディマックの債券ぐらいしか選択肢が残らない。

結局のところ介入やめたら買う人いなくてアメリカは金利上昇。。。のはずなんだけど、そしたら逆に金利格差で米ドル買が発生するかも。。。。
結局どうなるんだろ。。。

投稿: F.Nakajima | 2004.03.10 22:10

Nakajimaさん、ども。難しい問題ですよね。ただ、このあたり、私のような素人がぶつかってみるのも御一興かという感じで書いています。あまりにアホな点はご指摘ください。勉強していかないとと思っています。

投稿: finalvent | 2004.03.11 10:03

どうもです。

あのですね、日中が買ってるのは米の短期(満期1年以内)の国債です。で、短期の金利ってのは中央銀行が一番操作しやすいんです。

だから、日中が介入を止めて(減らして)、その結果短期国債がだぶついても、一時的に短期金利は上昇するでしょうが、いずれFRBのコントロール範囲に収まります。つまり長期金利への影響はほとんど無いと考えられます。これが先日グリーンスパンが言っていたことなんです。

例えば先週の金曜日以来、10年ものの金利が再び4%を割って推移していますが、
http://finance.yahoo.com/q/bc?s=^TNX&t=3m
これは日中の介入がどうしたとは全然関係のないお話で、単に金曜日発表になった雇用統計が予想よりも悪かったことが原因です。未だに為替介入と米長期金利の動向を関連付けて考えてるのは、日本の良くわかってないマーケット関係者と、その話を鵜呑みにしてるマスコミぐらいのものですよ。

それと、米の雇用統計については面白い話があります。失業率(=1-(現在雇用されている人の数/労働力人口))の分母となる労働力率が、現在経済が回復していることを考えると非常に低くとどまっていることが問題視されていました。

が、内訳を良くみると16-24歳区分だけが大幅に減少しており(つまり労働市場から退出)、一方24-54歳区分は平均並、55歳以上区分は逆に増加(労働市場への参入)しているとのことです。

一般に若年層は雇用条件に最も敏感で、状況が悪いと学校にとどまる/行ってしまうなどして労働市場に出てきません。そして今はpayrollの統計を見ればわかるのですが、労働市場の状況は非常に悪い。この若年層の動きが労働力人口が少ないまま推移している現在の情況を説明できるのではないか、と考えられるわけです。

現在企業の業績は回復傾向にあり、いずれpayrollも改善されるでしょう。となると近いうちに若年層が労働市場へ戻ってきて、労働力率が上昇することが予想されます。結果は失業率の一時的な悪化ですが、これは悪い話ではありません。マスコミは騒ぐでしょうが。

と言うことで「需要」や「雇用」に哲学的な意味を見出そうとすることはほとんど意味が無いと思ってますが如何でしょうか。「需要」とは単に人々が暮らす上で必要なものやサービスを購入すること、「雇用」は暮らす上で必要なお金を手に入れるための手段であり、それ以上でもそれ以下でもありません。

そして「暮らす上で必要なもの」の定義は暮らす人それぞれが与えるべきである以上、アメリカ人の消費性向について我々がとやかく言うのはナンセンス極まりないと考えます。そもそも貸した金をちゃんと返してくれているのであれば、貸し金業者にとって浪費家は上得意のはずなんですが。

あと「日米中三者のもたれ合い」ってのはひどいトンデモですね。お金に色がついてるわけじゃあるまいし、介入で使った金額がそのまま貿易統計にあらわれる必然性は全くありません。介入している政府がどんな輸入品を買うのかまでコントロールしてるとでも言うんでしょうか?馬鹿馬鹿しいにも程があります。こんなの相手にしちゃいけません。

それと隊長が言ってるのは、元は切り上げるべきだってみんな言ってるけどホントにそうか?って話です。いずれ膨大な外貨準備が役に立つ日が来るかもしれませんね。

では取り急ぎ。
また長くなっちゃってすみません。ご迷惑でしたら自分の日記に書いてリンクはりますのでお知らせください。

投稿: svnseeds | 2004.03.11 12:37

svnseedsさん、どもです。鮮やかな指摘なので、大部分は納得できます。

そして、こう鮮やかだとたしかに「需要」や「雇用」に哲学的?な意味は不要という感じがします。が、ちょっとこのあたりは、まだ留保があります。なんで?みたいでしょうが。

「需要」については、日本の問題が関連するので、ひとまず置くとして(日本ではもともと民需なんかないんじゃないか?)、「雇用」については、今、米国でその意味が変わりつつあるようにも思うのです。で、その意味変化がもしあるなら、それはなんだろう?ということです。

雇用についてsvnseedsさんの指摘はとても参考になります。

  現在企業の業績は回復傾向にあり、いずれpayrollも改善される
  でしょう。となると近いうちに若年層が労働市場へ戻ってきて、
  労働力率が上昇することが予想されます。結果は失業率の一時的
  な悪化ですが、これは悪い話ではありません。マスコミは騒ぐで
  しょうが。

ただ、この点、疑問が残るわけです。サミュエルソンの基調もsvnseedsさんと類似なので、ふむふむとわかりはするのです。

が、この点について、ブログで書いた「雇用流出」という現象が米国社会に影響しているのではないかとも思えてきたわけです。わかりやすくするためにあえて、反論的なトーンでいうと、「雇用流出」が幻影だとするのには、まだ十分な議論はないように見えます。

「雇用流出」なんてないんだよ、ということであれば、それはそれでいいわけです。

もうちょっと言うと、おちゃらけで書いたのですが、フィリップス・カーブやNAIRUの理論の変更が必要なのでは?ということです。今起きている現象は新しい事態なのではないか、と。

他、ご指摘分、自分なりに整理すると、日中が買ってるのは米の短期の国債、なので、FRBのコントロール範囲に収まり、長期金利への影響はほとんど無い、というのは、そうですね。

また、「日米中三者のもたれ合い」については、なるほどという感じで、ちょっとほっとしました、そうなのかと。

「元は切り上げるべきだってみんな言ってるけどホントにそうか?」については、ちょっと疑問が残る感じがします。

あと、内容とは別に。

コメントにするか、リンクなりトラバにするかについてですが、どちらでもいいです。話題に直接関係ないコメントが大きくなる場合は、ブログ運営上、整理することがあるという程度です。

先日のグリーンスパン発言といい、極東ブログというより、svnseedsさんの見解のほうを重視されている読者のかたが多いようなので、その点は、ちょっと、コメントという形式は、参照しやすさの点で、もったいないかなという感じもしています。

私としては、私の意見を通すという意義はあまり感じなくて、叩き台を出し、それより優れた説明で叩き、それで納得できればいいな、と思うだけです。重要なのは、まず、叩き台を出すっていうことじゃないか、と。

マスメディアの言説には各種のヒドゥンコードが潜むわけで、特に、経済関連ではそれがテクニカルにかなりある(他分野でもそうではありますが)。svnseedsさんは失笑されるかもしれませんが、れいのグリーンスパン発言をリフレ指摘だよ、と素人怖いものなしで喝破したのは、意外に極東ブログだけだったようにも思うのですよ。でも、自分を偉いとはまるで思っていません。ただ、疑問を出し、次にまともに考えるように努力する、というだけです。毎日新聞社説みたいに、考えを放棄しちゃうんじゃなくて、ですね。

投稿: finalvent | 2004.03.11 13:37

どもです。

「雇用流出」については、次のMankiwの発言を伝えたWashington Postの記事;

http://www.washingtonpost.com/ac2/wp-dyn?pagename=article&node=&contentId=A38161-2004Feb12¬Found=true

に尽きます。これが標準的な経済学的見解です。是非ご一読を(民主党よりの同紙がブッシュ政権のマンキューの肩を持つところに味わいがあります)。

で、「今起きている現象は新しい事態なのではないか」ですが、うーん、僕にはそう思えません。例えば上のWashington Postの記事の受け売りですが、製造業でなくサービス業の海外移転は確かに新しい事象ではあります。でも、より良くてより安い方向へお金が流れていくという基本的な枠組みは変わっていませんよね。

既存の枠組みで説明がつき、且つそれがシンプルなものである限り、新しい枠組みを提案する必要はないと僕は思うのですがどうでしょう。非常にコンサバですが。

それと、コメントにするかどうしようかの件、ご回答ありがとうございます。ご迷惑でなければ、このままコメントという形(で、僕の日記からはリンク)で書いていこうと思います。

finalventさんが書かれているものは叩き台だというお話、良く理解しているつもりです。僕もfinalventさんがこうして書かれていなければ、ここまで調べものして色々書いたかどうか。感謝してます。これからもどうぞよろしくお願いします。

投稿: svnseeds | 2004.03.11 19:50


svnseedsさん、ども。マンキューの件は知っていました。というか、そのあたりをもうちょっと織り込んで書けばよかったかもしれません。

マンキューが言うのだから、と、教科書的に取ることでもないのですが、ようは、自由貿易の理論面から見れば、物品もサービスも変わらないということだと理解しました。それはそうかなと私も思います。

で、ですね。実際、あの後、マンキューがへこまされたように、そういう長期的なマクロ経済学の概ね支持されそうな学説とは別に、現状の雇用をどうするという政治的な駆け引きがあるわけです。ま、そんなの関係ねーではあるのですが。

これについて、svnseedsさんの先の見解では、R.サミュエルソンと同様にもうすぐ戻るよ、ということだと思います。で、私は、そうかぁ?と疑問に思い出したというのが先のブログの話です。

まず、雇用、といっても米国雇用に限定ですが、雇用が戻るか、については、景気動向と同様、もうしばらくすると見えてくると思います。というわけで、先のブログはちょっと先物買いの意図もありました。

問題は、「しばらく」がどのくらいかです。大統領選挙のスケジュールと絡んでいる(絡ませるなでしょうけど)と私は考える(不合理な思考だというのは承知)ので、あと長くて半年でしょう。というわけで、私は、新しい様相の可能性も考えています。

というのは、これもすでに触れたのですが、そして、私がマクロ経済学を理解してねー、でもあるのですが、サービス自体(つまり雇用自体)がずるっと国を超えてしまう場合、フィリップス・カーブやNAIRUの理論って意義を持つのでしょうか? で、ですね、こーゆーのを経済学理論としてですね、経済学を知らねーとか言われると、おっと、そうかよと思うのですよ。

というあたりを昨晩ぼんやり考えていたら、吉本隆明の霊が突然やってきて、「経済学なんてものは支配者の学問だぜ」と。沈んでいた私を笑わせてくれるわけです。

ちょっとふざけた書き方になってしまってすみません。悪意はありません。もとに戻すと、新しい事象を待ちながら、それとは別に、経済学的に「雇用流出なんてないんだよ」と言えるかどうかです。

このあたり、リフレ派に自分がならない点でもあるのですが、ありがちな例でいうと、国内のタオル産業は中国からの輸入品で壊滅。でも、それはそーゆーもんだとというのはわかるのです。で、タオル産業の雇用はどうよ? と、それは他の産業にシフトするわけです、よね、理論的には。

でも、実際、社会を見ると、それって、ほんとにシフトするのでしょうか。

もうちょっというと、日本の場合、どの産業も官僚の紐がついていて、動きづらくなっているというのもあります。

「構造改革」って無内容な言葉だというのはリフレ派に賛成するものの、こうした雇用面から見た産業の構造、雇用の流動を左右する構造っていうのは、ある、としか思えない。とすると、その社会側の構造は別次元の施策が必要になると思うのです。

もっとも、この面でも、米社会と日本社会はまるで違うようにも見えます。

床屋談義のようにたるくなってしまいましたし、すべて問いかけているわけでもないので、適当に受け取ってください。

というか、この問題は、もう少しわかるまで、まだまだ考えていくだろうと思います。こういう点、自分は、ほんと頭悪りーと思います。馬鹿力ってやつですね。馬鹿の壁を破るには馬鹿力、とシャレ書いてどうするですが。

投稿: finalvent | 2004.03.12 10:05

米の雇用動向について
昨日またグリーンスパンが講演したんですが、彼は雇用動向の今後について非常に強気です。ヘタレの僕は基本的に誰かの受け売りしかできないので、同じ見方をしています。昨日の繰返しになっちゃいますが、企業の業績が上向きつつある今、雇用が改善されるのは時間の問題と思います(各種データの裏付けがあります)。それが具体的にいつなのか、はわかりませんけどね。ただ今年中とは思います。

また大統領選に絡んであれこれあるのはそういうものなのでしょうがないと思っています。もともと政治とはそういうものでしょう。そして政治とは短期やり逃げの視点ばかりが強調されやすいシステムでもあります。

そういう意味で、叩かれると知りつつ(もしかしたら知らなかった?)Mankiwや、党派を超えてそれを支持する(もしかしたら内部分裂を狙う政治的意図があるのかもしれませんが)Washington Postの存在は本当に羨ましいと言わざるを得ない。僕は別に米国を好きでも嫌いでも無いですが、こういうのを見るとあの国には本当の偉大さがあるのだなあと思います。

産業構造のシフトについて
それと産業構造のシフトについてですが、これは別に今始まったわけではなく、産業と共に(つまり人類と共に)常にあるものですよね。江戸時代の農家、戦前の養蚕業、戦後の造船業、みなどこに行ってしまったのでしょう。そして現在の日本を代表する自動車やエレクトロニクス産業に従事する人々はどこから来たのでしょうか。

比較優位が失われた産業にしがみついているとどうなってしまうか、先日カネボウが見事な例を示してくれました。あれを国全体の規模でやってしまう道が保護貿易主義です。つまり産業構造のシフトは必然だと考えねばならないと思います。

確かにタオル産業などの比較優位を失ってしまった産業の雇用の問題は、(こんな言葉を使うのは政治家みたいで嫌なんですが)痛ましい、難しい問題です。でもだからと言って、長期的な視点を無視して保護に走って良いことにはならないことを理解しないといかんと思います。

僕はこの方面は全く詳しくないので、セーフティネットの充実、ぐらいの念仏しか言えることがありません。雇用の流動性を上げることが本当に望ましいかどうか、についても深く考えたことがありません。ただ、これは市場ではなく政治の仕事なのは間違いないですね。おっしゃる通り、別次元の施策が必要だと思います。

なんかまだ読んでない本ばかりお薦めして恐縮至極なんですが、「日本再生に「痛み」はいらない」にこの辺の話が政策パッケージとしてまとめて提案されていたように記憶しています。ご興味ありましたらどうぞ。僕も優先順位上げて読んでみます。

あと、NAIRUやフィリップスカーブという概念は失業率とインフレ率との関係に関する経験則ですから、産業構造が変化していけば数字自体は変わっていくのは間違いありません。ただこの概念自体を放棄するには、相当な裏付けが必要だと思います。

例えば90年代の米国経済は、NAIRUの低下にチャレンジしたわけです。で、今までではあり得ないくらいの低失業率を見てニューエコノミーだ!という話になったんですが、ご存知のように最後はバブルで終わってしまいました。あのNAIRUの低下は、今では低インフレと生産性の向上で片付けられていると思います。この辺の話は「良い政策 悪い政策」に詳しいです。

「支配者の学問」について
それと最後に、冗談にマジレスですみませんが、「支配者の学問」について。率直に申し上げて、僕はこういうものの見方はどうかと思います。

確かにマクロ経済学はその名の通りマクロでものを見る視点を大事にするので、その主張は例えばタオル産業に従事する人々の個々人の経済状況を軽視した語り口に聞こえることが往々にしてあるやもしれません。

しかし、このことをもってして経済学は支配者の学問、としてしまうのは、民主主義では支配者は民衆だという建前は置いておくにしても(僕は大事だと思っていますが)、単なる思考停止に過ぎんと思います。

支配者と言うからには被支配者の存在が想定されているわけですが、こういった分類は何かを生み出す力を持っているでしょうか。「被支配者の学問」は被支配者を幸福にするでしょうか。僕にはそう思えません。支配者と被支配者という単純な図式を持ち込み、更に自分を被支配者側に置くことで、思考停止に対するexcuseをしているようにしか見えんのです。

生意気言ってすみません。それにまた長くなってしまいました。どうも仕事柄、網羅的に書いてしまう癖がついてしまったようです。ではでは。

投稿: svnseeds | 2004.03.12 12:58

svnseedsさん、どもです。「雇用」関連、話は、よくわかるように思います。理解という点でです。納得するかという点では、しかし、私は米国「雇用」に抜本変化が起きたに賭けておきます。様子見です。敗色濃いか? むしろ問題はそうした様子見を許さないヒステリックな行為に米国が走る懸念でしょうが。

雇用流出的なことが実際に米国で起きているか? 起きていると、それは労働市場にどう機能するのだろうか。たんに、景気の連動で調整されるのか?

「雇用流出」にひっかかるのは、もう随分前ですが、左翼のなかで世界システム論が流行ったことがあるのですよ(今でもか?)。現在社会の構造そのもののが第三世界の貧困を生み出すというのです。ほんとかよ?ものですが。これは結構WTOどたばたの背景にもなったりします。で、エマニュエルだったかの主張を自分なりの検証をしていて、あれ、これって、労働者の移動というパラメーターを入れたら単純に解けるじゃないか、とか思ったことがあったのですよ。労働力が国家を越えるなら、構造的な貧困という概念が成立せず(労働力の比較優位?)、むしろ、構造的な貧困とは民族国家に閉じていくありかたではないか、と。国際間で労働者の移動というのは、日本の左翼はあまり関心ないのですが(っていうか、左翼が硬直化していて外国労働者の問題を扱わない)、以降、ときおり考えて続けています。それが、IT関連でもっと可能になるとどうなるかと、思ったわけです。

話変わって。

Washington Post米国のああいう点の公正さは、同意ですね。公民権運動とかの歴史やベトナム戦後の話とか、きちんと正義を貫くっていう人が、一人でも立ち上がる。あの感じはなかなか昭和以降の日本人にないような気がします。

吉本の戯れ言については、もちろん、戯れ言なんですが、こう、時代の響きみたいなものがあります。ああ、俺はそれを割り切る世代にはなれないなみたいなですね。グリーンスパンなども、大久保彦左衛門みたく見えますよ。冗談です。

投稿: finalvent | 2004.03.12 13:42

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