地方は「行政」で階級化されている?
毎日新聞社説「地方の予算 地方の首長は真剣になった」、読売新聞社説「地方財政改革 身の丈にあった予算編成が肝心」を読みながら、もどかしい感じがした。この問題はこれまで極東ブログでもなんどか書いてきたこともあり、特に新しい視点もない。また、今、この問題を扱う気力もないのでが、簡単な雑談は書いておきたい。
毎日の社説の出だしが愉快だった。
国の04年度予算が衆院を通過した。与党からも野党からも異常な過去の国債累増の厳しい現実を直視した議論はついに聞かれなかった。なぜこうした惰性の予算がまかり通ってきたのか。国会議員というのは予算を獲得する時は本気だが、肝心の財政規律は財務省の官僚に丸投げしているからだろう。
おいしいところは頂き、嫌なことは官僚にやらせていてはとどのつまり破たんしかない。マックス・ウエーバーの「職業としての政治」を読み返して「政治のあるべき志」を想起してもらいたい。
いや、ホントに「職業としての政治」を読んだほうがいいと思う。というか、この本を薦めるというのも恥ずかしいことだというのが私の常識でもあった。大学生なら文系とか社会科学専攻に限らず「職業としての学問」と並んで必読だろうと思う。毎日の社説執筆者も内心そう思っているらしく「責任倫理」という話は省略している。私も省略する。
毎日の言い分は正しい。
地方財政は国に連動しており元はと言えば政府のバラマキ財政の被害者でもある。国家公務員より地方公務員の給与レベルが高くなった要因もその一つだ。何も国家公務員より給与が低くなければならない法律はないが、その地域の民間企業の平均を大幅に上回っているのは地域住民に奉仕する公務員としては説明がつくまい。
その原因がどこにあるのか。確たる証拠はないがそれぞれの自治体の給与勧告制度が中央のように実態的に機能しているのかどうか調べる必要がある。都道府県の給与レベルがその地方の本当の財政力を反映しているのかも疑問だ。
実際にそうした地方に長らく住んでいた人間として、この問題は若い人にとってもよくないなと思う。若い人間が公務員志向をするからだ。そのための予備校なども整備される。そして、公務員になれば上がりだし、よせばいいのに若いのに豪邸を建てるものも少なくない。なんか、第三世界のような階級世界を作り出している。
資本主義の根幹は企業精神でもあるのだが、そういうエートスが根こそぎやられてしまう。反面、屈曲した地方意識はしょーもない伝統賛美のようなものになる。と、言えば悪口みたいになってしまうだけなのでこの辺でおしまい。
それでも、多数の地方においては、こういう「行政」という産業の存在自体が間違っているのだが、それがすでに既存の権力によって支持されている。この権力だけは解体したほうがいいだろうと思うのだが、そう簡単にいく問題でもない。
つならぬ話なのでおしまい。しいて言えば、地方の若い人は、やっぱ、東京に出てくるしかないんじゃないか。
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コメント
ああ...
これ関連というか...直接これ関連ではないんですが、
ちょっと今日、おもしろい(?)ことがあったので、あとでtrackbackさせてもらいます
簡単に言うと、「警察官の職務質問マニュアル」についての話です
(例の・・泉谷しげるの「警官に名前聞かれたから、“あなたのお名前は?”って聞いたら答えてくれなかった」を実践してしまいました....(^^;))
投稿: m_um_u | 2004.03.08 17:16
ちょっと長くなったのですが、trackbackさせていただきました
で、質問なんですが
こういう場合の職務質問マニュアルみたいなものってないんですかね?(^^;)?
投稿: m_um_u | 2004.03.08 19:36
m_um_uさん、ども。面白いネタですね。昔はこういうときの警察対処の仕方の本(千代丸健二とか)がありましたよ。最近はないのでしょうか。
ただ、経験的には、警察は相手にしないほうがいいです。これをごらんになっている警察のかたはむっとされるかもしれませんが、警察官の大半は地方出身者なので、独自のコンプレックスを持っていることが多いです。
ただ、交通事故やその他の事故なので、警官が無能なことがあるので、そっちのほうが要注意です。警官は全然正義の使者じゃありません。
警官と事を構える場合は、裁判起こせるように静かに覚悟して、証拠はできるだけ客観的に取るようにしたほうがいいです。警官同士のかばい合いでやられます。
tokyocatさんの次の話も面白いですよ(面白いというのは失礼なんですが)
http://www.mayq.net/torishirabe.html
あと、警官というのは、目の前にいる個別の警官と争うのはたいてい無意味です。それはエイリアスです。できるだけ、上の組織にそれなりの通路で抗議したほうがいいです。
投稿: finalvent | 2004.03.08 20:05
あ・どうも 参考になりました
千代丸氏も初耳だったし..リンク先も面白かったです
それにしても・・
う゛~ん・・・やっぱヤ○○と同じようなものなんですかねぇ...(特に○暴はそんな感じって言うし..)
そういえば、いままで会った警官ってことごとく・・(いや言うまい 笑)
あと、「上の組織を意識」ということに関して
やはり、記録器具は持ち歩こうと思います
(あと、対処マニュアルも叩き込んでおかないと..)
でもやっぱ思うのは、
なんでこんなもんに注意しないといけないんですかね?
ほんと笑っちゃいますが...(って笑いごとでもないか..)
投稿: m_um_u | 2004.03.08 21:18
finalventさん、
ちょっとはずしているかな?、あ、いやきっとはずしてますけど、トラックバックつけさせていただきました。なんか、「地方」という言葉がうれしかったので...
投稿: ひでき | 2004.03.09 22:05
ひできさん、ども。トラバの該当記事、読みました。よくわかります。自分もそういうところで暮らしていたので、顔まで思い浮かびます。って、その先はなかなか出てこないのですが。
投稿: finalvent | 2004.03.10 09:01
finalventさん、
おはようございます。さっき、子供と「ブレード」パジャマのままみていました。ちょっと昔のSF風でよかったです。
さて、自分としては懸案でありましたが「職業としての政治」を読みました。ご紹介いただいて本当にありがとうございます。素晴らしい本ですね。感想文程度ですが、記事にしました。実は、自分のまわりの政治からみの人に片っ端からプレゼントしております。
http://hidekih.cocolog-nifty.com/hpo/2004/03/post_18.html
http://hidekih.cocolog-nifty.com/hpo/2004/04/post_2.html
投稿: ひでき | 2004.04.04 09:56
ひできさん、ども。ちょっと前まで大学生とか知識人必読だったものです。ただ、この「熱さ」はひできさんも言及されているように、ヒットラー前の世界の雰囲気もあります。時代の文脈を意識するのも重要かもしれません。
投稿: finalvent | 2004.04.04 10:24