新聞休刊日でもあるので、社説関連のネタはない。このところなんとなく気になっていた鳥インフルエンザ関連の話を書く。
極東ブログでの扱いでもご覧の通り。私は浅田農産を巡る鳥インフルエンザの話題にあまり関心を持ってこなかった。先行した韓国の例から考えて、日本がこの問題でヒステリックになるだろうなとは、なんとなく思っていたが、先んじて国家対応を取っていたシンガポールの状況について知っていながら、なんと大げさなという印象を持っていた。「現段階では人に感染する危険性はかなり低いから、それより、鳥インフルエンザとは関係ないが生卵を食う習慣を日本人はやめたらどうか」などと呑気なことなども思っていた。今現在でも、そうした感覚は変わらない。
だが、この事件をまさに事件として見たとき、何が起こっていたのだろうと気になって、ネットでわかる範囲で調べてみようと思った。少し調べてみると、少し変だ。そのあたりを簡単に書いてみたい。
ある事件が勃発したとき、私は最初の報道がとても気になる。最初の報道は間違いも多いのだが、後から消されない奇妙な情報が残ることも多いからだ。その点で、浅田農産関連の事件を追ってみる。
この件については、地元の京都新聞にわかりやすく報道がまとめられていて興味深い。時系列に書いたほうがいいのかもしれないが、あれ?と思ったあたりから書く。
まず、浅田肇会長(67)とその妻でもある知佐子監査役(64)の自殺についてだ。確か、切込隊長こと山本一郎のブログでは、他殺じゃねーのみたいな一言があった。彼はその件でその後のフォローはないようだ。私はといえば、あまりそういう線は考えていなかったので、ふーんと思ったくらいだ。血なまぐさい場所にいることの多い彼の感覚ではそう思うものなのだろうかと呑気な私は思ったくらいだ。が、どうもそうとばかりでもなさそうだ。いや、今でも、他殺だと疑っているわけでもないのだが、初報を読むと意外な印象を受ける。「浅田農産の会長夫婦が自殺 兵庫 迷惑かけたと遺書」(参照)から。
調べによると、2人は鶏舎の外の空き地で、高さ約8メートルの木にロープをかけ背中合わせで首をつっていた。死因は窒息死だった。浅田会長は作業着に白い長靴姿、知佐子さんはグレーのジャケットにズボン、黒い靴をはいていた。
浅田会長の長男で浅田農産の浅田秀明社長(41)が7日午後10時から11時ごろにかけ、浅田会長が本社にいるのを確認しており、その後、自殺したらしい。死後数時間経過していたとみられる。
現場近くの自宅1階のダイニングキッチンにあるテーブルの上にボールペンで「大変御めいわくをおかけしました。申しわけございません。弁護士と従業員によろしく」と書かれた縦横約10センチの白い紙1枚が置かれていた。あて名は書かれておらず、末尾には「浅田」とだけ記され、浅田会長と妻のいずれが書いたのかは不明という。
変だなと思ったのは、特に最後の文のところだ。それが遺書かぁ?である。また、「浅田会長と妻のいずれが書いたのかは不明という」なんていうことがありうるのだろうか。
他殺、つまり、誰かが吊したという可能性くらいは警察の調査でわかるはずだ(わからない可能性も高いのだが)。直接的な他殺という線は低いのではないか。が、それにしても、この状況は、私などがそれまでニュースを通してイメージしていた状況とはかなり違う。自殺現場やその関連についての続報なども聞かない。全体の印象としては、「これでヤバイこと言いそうな口を封じたな」である。もしそうなら、そのヤバイことは何だろうか? とりあえず、これはわからないし、仮定に仮定を重ねているので推理は注意深くしたほうがいい。
浅田農産事件の最初の報道に移ろう。京都新聞での最初の報道を見る。2月27日のものだ。これがなかなか面白い。「『どうすればいいのか』 丹波で鳥インフルエンザ」(
参照)である。なお、匿名電話があったのは26日である。
「1000羽以上の鶏が毎日死んでいる」。京都府丹波町で27日、匿名の電話をきっかけに鳥インフルエンザの陽性反応が判明した。現場の養鶏場周辺は物々しい雰囲気に包まれ、関係者も慌ただしく対応に追われた。
「飼育している20万羽すべてを処分しなければいけないのだろうか。どうすればいいのか」。養鶏場を経営する男性(41)は、同日早朝から詰め掛けた大勢の報道陣を前に、戸惑いをみせた。
民家もまばらな山間部。鶏舎から元気な鶏の鳴き声が響く。
なにが面白いかというと、「養鶏場を経営する男性(41)」という表現や養鶏場の場所を特定しないことだ。この時点で、京都新聞の記者はなにを考えていたのだろうか?
私の印象は、というと、この記者はそんな大それた問題になるとは思ってなかったのではないか。このあたり、浅田農産側も、それほど社会的な事件という印象は持ってなかったのではないだろうか。というか、いったいこの事件の社会的な意味は何なのだろう。もちろん、日本社会の集団ヒステリーに近い。
同日の次報も面白い。「『通報遅れは残念』と批判 丹波の鳥インフルエンザで農水相 」(
参照)より。
また、鶏の大量死亡について養鶏業者からの連絡が遅れたことについては、「19日にも立入検査をしたと聞いている。都道府県には防疫マニュアルに従い、再三、周知を徹底している。通報が遅れたのは残念」と、対応の遅れを批判した。
発言部分は亀井善之農水相だが、この言い分を単純に理解すると、19日の時点では問題なかったということになる。が、そうでもない。「丹波の農場、鶏1万羽死ぬ 鳥インフルエンザ、5羽から陽性」(
参照)にはこうある。
府は2月17日に、全国2例目の鳥インフルエンザ感染が大分県で確認されたのを受け、府内の養鶏場を立ち入り検査。府畜産課によると、2月19日、同農場の聞き取り調査では「異状は認められなかった」という。鶏舎への立ち入り検査はしていなかった。
つまり、19日には立ち入り検査はしていない。亀井善之農水相は実態を知らなかったのだろうか。私の印象では、常識的な判断だと思うが、「バックレていやがるなコイツ」だ。亀井善之農水相及びその配下は何かを知っているなと疑う。19日に立ち入り検査をしなかったポカの言い訳とは考えづらい。それは墓穴になるからだ。何をコイツらは知っているのだろう。これも、仮定に仮定を重ねるの感があるので、ひとまず置く。が、17日には立ち入り検査があったのだろうか。いずれにせよ、その時点では、鶏は死んでなかったと考えてもいいだろう。
先の報道でもう一点、重要な事実がある。
府によると、26日夜、府南丹家畜保健衛生所などに「丹波町の養鶏場で1000羽以上のニワトリが毎日死んでいる」との匿名の電話があった。同所員が浅田社長らに聞き取り調査を行ったところ、飼育している約20万羽のうち、「20日ごろから毎日1000羽、計1万羽が死んだ」と話したという。
浅田社長の言葉をそのまま信じるなら、20日から鶏は死に始めたことになる。
ところで、鳥インフルエンザの潜伏期間はどのくらいだろうか? 京都新聞の記事に答えがあった。「鶏肉や卵、毎日でも心配ない 京都市立病院感染症科部長に聞く」(
参照)では、清水恒広・京都市立病院感染症科部長の説明が掲載されている。
鳥インフルエンザはH5型もH7型も、人のインフルエンザA型と同じタイプだ。病気の鳥と濃厚な接触歴があり、迅速診断キットでA型と分かれば、疑ってみる必要がある。ただし、人のインフルエンザの潜伏期間は1-3日間に対して、鳥インフルエンザは3-4日間といわれる。少し長く経過を見なければならない。
つまり、鳥インフルエンザの潜伏期間は3、4日ということだ。
とりあえず辻褄は合う。つまり、17日時点では異常がないが、その日から3、4日で鳥が死に始めたということだ。
とすれば、浅田農産に鳥インフルエンザが潜入したのは、少しスパンを取ったとして2月15日から17日ではないのか。この疑問の意味が理解してもらえるだろうか? そう、私は鳥インフルエンザは人的に持ち込まれたのではないかと疑っている。とはいえ、まったくの陰謀論を考えたいわけではない。わざわざ悪人が鳥インフルエンザに感染した鶏を浅田農産に混入させた、などとは考えない。ただ、人的に鳥インフルエンザが浅田農産に持ち込まれたのだろうと思うのだ。そう思う理由は、先にも引いた「丹波の農場、鶏1万羽死ぬ 鳥インフルエンザ、5羽から陽性」の記事にある。
伊藤寿啓鳥取大教授の話 京都のケースが鳥インフルエンザだとすると、状況からみて山口、大分両県で鶏に感染したウイルスが来たとは考えにくい。地理的に朝鮮半島に近い両県と比べ、野鳥が運んだ可能性も低いかもしれない。海外から散発的に来たウイルスが感染を引き起こしているのだろう。さまざまな仮説を立て、考え得る感染ルートを遮断すべきだ。
記者が伝言をたらっと書いているのだが、ここで伊藤寿啓鳥取大教授は、浅田農産での鳥インフルエンザ感染について、こう指摘している。
- 山口、大分両県で鶏に感染したウイルスが感染したものではない
- 野鳥が運んだ可能性も低い
- 何らかの経路で海外からウイルスが持ち込まれた
この指摘は、人的な介入を示唆していると考えていいのではないか。
ここで、ごく基本に戻るために、「週刊こどもニュース」の「鳥インフルエンザってなに? (04/1/17放送)」(
参照)を引く。 なお、この説明事態は、山口県での鳥インフルエンザを想定していたが参考になる。
韓国でインフルエンザにかかったニワトリの近くにいたカモにウイルスが入り、このカモが日本に飛んできて、山口県の養鶏場の近くに来て、ウイルスが、この養鶏場のニワトリに感染したのではないか、という可能性が考えられるというわけです。
また、養鶏場に出入りしている人やトラックに付いていたり、ニワトリのエサについていたりした可能性がある、という専門家もいます。
まどろこしいようだが、浅田農産のケースでは野鳥説が消えているので、次の2つが残る。
- 養鶏場に出入りしている人やトラックに付いていた
- ニワトリのエサについていた
つまり、今回の事件で、もっとも真相を解明しなければいけないのは、2月15日から17日の浅田農産養鶏場の人とトラックの出入りと餌の状況だ。
だが、それが報道されているだろうか?
いないと思う。なぜなのだろう。
そう考えると、先に仮定の仮定として残した部分がすべてここに集約するようにも見える。この先は言うまでもないが、あえて言うなら、「
殺害と決めつけるわけではないが、浅田農産の老夫妻の口を封じ、カラスに社会ヒステリーを向けさせているやつは誰か? 2月15日から17日に浅田農産に何があったのか?」となるだろう。
極東ブログとして、浅田農産事件について指摘したいことは以上。
が、最近騒がれているカラスについても一言。
同じく京都新聞の記事だが、「死んだ野生カラス2羽からウイルス 船井農場と園部町」(
参照)をひく。
国内の鳥インフルエンザをめぐっては、大陸から渡り鳥がウイルスを持ち込んだ“野鳥犯人説”もささやかれているが、専門家は「船井農場には大量のウイルスが蓄積しており、今回は(養鶏場に出入りした)カラスが被害者となった可能性が高い」とみている。
環境省と共同で各地の発生地周辺の野鳥調査を続けている大槻公一鳥取大教授(獣医微生物学)は「船井農場で鶏の大量死がピークだったのは1週間以上前。もしカラスがウイルスを持ち込んだとしたら、もっと早くに死んでいるのが見つかったはず」と指摘。
約5キロ離れた丹波町内の高田養鶏場でも2次感染とみられる鶏の被害が起きたが、鶏舎は野鳥が侵入できない構造で、カラスがウイルスを媒介したとは考えにくいという。
現在となっては、カラスが感染を広める危険性は十分ある。だが、浅田農産へウイルスを持ち込んだのはカラスじゃない。
追記3.23
新しい事実から、大量死発生の時期は20日ではなく、17日より数日遡ることがわかった。それに合わせて、疑惑の日々をマイナス3日補正する必要がある。
残るなぞ、真実どこに 連載「何が起きた(6)」
鶏の大量死が始まったのは2月20日とされる。その3日前の17日、浅田農産の幹部から愛知県の飼料会社の研究所に電話があったと研究所の獣医は証言した。「ちょっとようけ鶏が死んでるんや」との電話。「鶏を解剖したら、腸がソーセージのように腫れている」。症状を聞いた獣医は「腸炎かもしれない。しばらく様子をみてほしい」と伝えた。
獣医は、のちに鳥インフルエンザで鶏が大量死したことを知り、悔やんだ。「どうしてもう1度連絡してくれなかったのか。1000羽も腸炎で死ぬなんてありえない」
なお、この間の関連ニュースを見ていても、私の考えでは、依然、人的な感染が最も疑わしい。