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2004.02.26

国内製薬会社再編成がようやく始まる

 今朝の新聞各紙社説はどれもヤフーBBの個人情報漏問題を扱っていたが、面白い視点はなかった。この話の関連は昨日「個人情報漏洩雑談」(参照)で書いたので繰り返さない。少し極東ブログの視点を強調すれば、固定IP化とCookieのトレーサビリティ、さらにアクセスログ集積がより実質的にかつ深刻な個人情報漏洩になりつつある。だが、社説執筆者たちにこの問題は理解させることはむずかしい。
 今朝の話題としては、日経新聞社説「大型医薬再編を加速させよ」が面白かった。結論としての、標題どおりのメッセージは違うのではないかと思うが(そうしても外資に太刀打ちできないから)、社説としてはよく書けていた。冒頭をひく。


 国内製薬会社3位の山之内製薬と同5位の藤沢薬品工業が来年4月に合併する。両社はすでに大衆薬事業の統合を昨年10月に発表していたが、国際競争の激化の中で本体の完全な合併に踏み切った。合併して誕生する新会社は連結売上高で9000億円に迫り国内業界トップの武田薬品工業に次ぐ2位になる。
 しかし、これでも世界の業界地図を見るとベストテンにも入らず、トップの米ファイザーと比べると7分の1の規模でしかない。しかも世界の医薬業界は、新薬の研究開発費が巨額になるのに対応して、このところ90年代前半に続く第2のM&A期に突入した。昨年ファイザーが米ファルマシアを買収してさらに巨大化し、今年に入っても世界13位の仏サノフィ・サンテラボが4位の独仏系アベンティスに6兆円を超える金額での買収攻勢をかけている。この買収の帰すうはともかく、再編の連鎖反応が世界的に進みそうだ。

 嘘はないのだが、背景を知らないとM&Aの嵐は一昨年前に起こったかのような印象を受ける。が、この動向は1999年あたりから進行している。むしろ、この間、国内製薬メーカーの安閑としているように見えるのが不思議なくらいだった。国内でのM&Aの動向は、ある意味、日本が経済停滞を脱出した兆候なのだろう。
 社説でも強調されているが、国内トップの武田ですら世界ランキングは低い。余談だが、武田は90年代アスコルビン酸市場の寡占化などでしょーもない利益を上げていたのはむしろ苦々しい感じする。
 M&A激化の理由は日経がいうように、開発費の問題でもあるのだが、市場のグローバル化も背景にある。なにより、国内市場は八兆円なので、とても「おいしい」。外資が目をつけないわけはない。また余談だが、ファーマシューティカルズの概念がなく粗雑にサプリメントと呼ばれている日本市場もおそらく将来的には一兆円から二兆円規模はあるだろう。粗雑に概算するのはこの市場が特定されないからだ。この問題も大きく、国内に専門家が存在しない。外資はすでに厚労省に攻撃をかけている。
 日経社説を全部引用するわけにもいかないのだが、この社説では明確にはTOB(株式公開買付け)について触れていなかった。片手落ちという言葉は禁忌のようだが、なぜお茶を濁しているのだろうか。製薬会社のTOBといえば、エスエス製薬が思い浮かぶ。ヤフーのファナンスをひくと、「【特色】大衆薬2位。ドリンク剤に強い。医療用にも展開。TOBで独ベーリンガーの傘下に」(参照)とある。歴史好きの人は参照として「日本ベーリンガーインゲルハイム」(参照)も見ておくといいだろう。
cover
メルクマニュアル
 こうした状況はかならずしも日本の市民に不利益でもない。なにより、国内だけしか流通しないしょーもない医薬品が減り、医薬品がグローバルスタンダードになることはよいことだ。MR(Medical Representative)のありかたもグローバルになる。ついでに些細な例だが、万有はメルクの完全子会社化される前からメルクマニュアルはネットで公開されていた(参照)。外資のほうが情報公開に積極的なので、市民にとって基調な情報源が増える。例えば、故小渕総理の処置が間違っていたことなどメルクをひくだけでわかる。
 と書いてみるとこの問題は錯綜していきそうだし、また私のクセとしてジェネリック薬の話でも書きたくなるので、結語もなく適当に切り上げたい。が、余談めくが、結語の代わりに、薬剤系の外資はとても慎重だという印象を受けるということを書き添えたい。
 ファイザーのバイアグラなども解禁され、一時期市場を広めようとしたが最近はそうでもないようすを受ける。低容量ピルなども売る気がなさげに見える。こうしたある種の日本社会の文化との、結果的な調整は、日本の医療体制が自動的に行っているのか、日本市民に医療知識がないためなのか。その双方でもあるのだろうが、劇的な変化が生じない。健康エコナのトランス脂肪酸含有量などもさして議論されない(それほどひどくはないのが幸い)。今後もそう劇的には変わらないのではないか。こうした日本社会の保守性はそう悪いものでもないだろう(が、個々人の選択は少ない)。

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コメント

こんにちは、

> むしろ、この間、国内製薬メーカーの安閑としている
> ように見えるのが不思議なくらいだった。

2001/09/17 大正、田辺 経営統合を発表
(2001/12/03 撤回)
2001/12/10 中外がロシュの参加に
2002/04/22 アボット、北陸製薬の完全子会社化方針発表
2002/08/09 大正、富山化学が提携
2003/01/23 杏林製薬と帝人が事業統合を発表
(2003/04/23 撤回)
(エスエスは既に言及されていますね。)

以上を見ると、私には安閑とはしていないように見えます。
欧米のメガファーマに対抗する勢力の結集という観点からは、
上記はfinalventさんのスコープ外なのかもしれませんが。

> こうしたある種の日本社会の文化との、(後略)

ご指摘の点の他に、日本でDirect To Consumer
Advertisingが規制されていることが要因の一つかなと、
米国出張でホテルのテレビをつける度に思います。

投稿: 龍蛇蟄 | 2004.02.26 21:29

龍蛇蟄さん、こんにちは。情報がありがとうございます。たしかに、この間、「安閑」というわけでもないですね。それと、たしかに、Direct To Consumer Advertisingはありますね。ED関係の動画とか見ませんものね、日本では(いや、やっていたのかな)。

投稿: finalvent | 2004.02.26 22:23

コメント有難うございます。
(中外がロシュの「参加」に は「傘下」でした・・・)

> ED関係の動画とか見ませんものね、
> 日本では(いや、やっていたのかな)。

昔ファイザーがペレを起用してEDキャンペーンのCMをやっていた記憶があります。でもアメリカで放映されているような、くすりの製品名を直接宣伝するDTC広告に比べるとおとなしいものでした。

投稿: 龍蛇蟄 | 2004.02.26 23:20

育毛関連の商品では日本製は全く効果のない物ばかり

投稿: (annoymous) | 2004.04.08 00:35

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