年金雑話
また、年金の話というのも芸がないのだが、産経新聞社説「年金改革 参院選挙の道具にするな」を読みながら、なんだかわざと話を難しくしているなと思った。もやっとした感じがするので、関連して少しメモ書きしておきたい。きっかけとなった産経社説の主張は標題どおりである。なお、さすがに今回は世代間の不公平や、年金族の無駄遣いなどの話は除く。
年金改革法案が与野党の駆け引きに使われている。参院選を控え、国民に痛みを求める法案に及び腰の自民党と、徹底的に反対して強行採決させ、票を稼ぎたい野党の思惑が絡み合っているからだ。
なんでも政局絡みにする思考法なのだ。
ところで、この野党は民主党のことだろう。私は民主党の年金改革案は大筋で正しいと思うので、政治的に争ってなにが悪いのかと思う。しかも国会の盲腸、参院だ。
産経の主張は結局、与党案をなし崩し的に是認させようとするだけだ。産経はそんなに創価学会寄りだったのか少し奇妙に思える。
年金改革は、すごく単純に言えば、すべて税負担による税方式か、最低保障は決めておくものの所得に応じて払う所得比例方式の2つしかない。あるいは、現在検討されているように曖昧な折衷案になる。率直に言って、あまり議論の余地はない。
しかも、仮に税方式ですべて年金は国の保障によるとしても、実際には民間の年金がそれに上乗せになるのだから、社会的には所得比例方式に近くなる。
さらにそうなる結果を見越せば、税負担は軽減されなくてはならないのだから、国の保障は最小限になるだろう。税方式を選択しても所得比例方式に近くなる。
そう考えるなら、実質的な意味で年金らしい年金というなら、すでにスウェーデンで実施された改革のように所得比例方式にするのがいいのだろう。
それがすんなりと日本でいかないのは、これも端的に言えば、国民の所得の把握が難しいからということなのだろう。
しかし、これも考えてみればむちゃくちゃな話だ。米国などサラリーマンもきちんと税申告をしている。日本は行政のIT化とか言っているが、実際面で個人の税申告をサポートしないのでほとんど無意味だ。
つまらない結論なのだが、日本という国は、産業部門の発展に力を入れる代わりにその富みを配分するサラリーマンから自動的にお金を吸い上げるシステムを作った。これは日本の行政にとっても都合がいい。行政自体がいわばサラリーマンみたいなものだ。反面、自営業者はそのシステムのあぶれものだから、実質的なお目こぼしがあったといことだろう。国民年金が事実上補填されるのもそうした原理によるのだろう。
この根幹を改革すれば(米国のように各人の申告に変えれば)、当然、日本国民に納税者意識が高まる。行政としては、それが一番嫌なのだろうなと思う。
と、つまんない話になってしまったが、現実性はない。野口悠紀夫が提言するようにサラリーマンが個人企業になれば面白いのだが、そういう社会にはならない。「13歳のハローワーク」より「17歳の確定申告」という本が売れなくては話にならない。
余談だが、フリーター諸君は確定申告しているのだろうか。しているなら、できるだけ、きちんとやるようにしたほうがいいことだけは確かだ。
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コメント
すごい単純な疑問なんですが、日本の年金制度がいろいろな側面から見て破綻しているというのは明らかだとおもうのですが、なぜ政府はその「制度」を維持しようと必死なのでしょうか?
そこに何らかのメリットがあるんでしょうか?それとも制度を改革するのは手間がかかるから、やめとこう、と考えているのでしょうか?あるいは純粋に「国民のため」にはこの制度が一番いいと考えているのでしょうか?
もし、一番最後の思考だとすると真剣に怖いですね。
ちなみに、フリーター時代は確定申告はしてませんでしたね。
周りの人間も多分してなかったと思います。なぜか?多分面倒だったからでしょう。
投稿: らした | 2004.02.25 16:27
らしたさん、ども。この話、明日書きます。実は書いたのですが、ちょっとためらっているので明日にします。
投稿: finalvent | 2004.02.25 22:00