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2004.02.22

医師の偏在はまずは金で解決せよ

 社説ということでは今朝は目立ったテーマはない。しいていうとイラク統治勧告とアナン来日に併せた国連問題だろうが、これは理想論(きれいごと)を書いても意味はないだろう。ということで話題として気になった朝日新聞社説「医師の偏在――金で釣るより知恵を」を取り上げる。幸い、サヨクがどうのいう話ではない。
 問題提起は標題のとおり、医師の偏在の問題だ。医師の絶対数が少ないわけでもないし、あまり議論されないが、これから縮退していく日本では医師は余るのだ。
 医師偏在の問題が最近一段と悪化したのは、新人医師の新しい研修制度だと、朝日は言う。


 新制度は、日常的な病気を幅広く診ることができる医師の育成をめざして、一人の研修医にいくつもの診療科で手ほどきを受けるよう義務づける。研修医の受け入れ病院も増える。
 これまでは新人の大半が大学病院の一つの診療科に所属して、下働きの役割を担ってきた。ところが新制度の下では研修医があちこちに散らばるし、研修医を受け入れる病院は研修の内容を充実させなければならない。このままでは人手が足りなくなると考えたのだろう。大学病院が地域の病院に送り込んでいた医師を呼び戻す動きが広がっているのだ。

 話が読みづらい。研修医(新人)を受け入れるために、従来田舎にいた熟練医師を都市部の病院に集合させている、ということか。とすると、その規模の実態が気になるが、朝日新聞社説にはフォローはなく、名義貸し問題に文脈を移っている。
 名義貸し問題に朝日は怒ってみせるのだが、これは無意味だと思う。この話は旧極東ブログ「医師の名義貸し問題は単純ではない」(参照)で触れた以上のことはない。
 しかし、話をごく単純にすれば、事態は金(かね)の問題ではないのか。「金で釣るより知恵を」ではなく、「小賢しい知恵より金で釣ろう」でいいのではないか。医療というのは金のかかるものなのだから。
 もっとも、それで根幹の問題(医師の偏在)が解決するわけもない。朝日はいろいろと理想論を掲げてみせる。

  1. 病院の適正な配置(県立病院と市立病院を隣接させない)
  2. 地域の中核病院や大学病院と密接なつながりを持たせる
  3. 医学部入試で地元出身者を優遇する
  4. へき地医療の報酬を増す

 悪い意見ではないし、実現可能なようだが、実際は4以外はダメなのではないかと思う。
 私は日本の医療を規制緩和したらどうかと思う。変な意見に聞こえると思う。どういうことかというと、医療相談の窓口を医師以外に広めるネットワークを作ってはどうかということだ。例えば、夜中に高熱で引きつけをおこした子供が病院たらい回しで死ぬといった事件を見るに、医療の前段となる基本介護があると思える。子供が40度近い熱を突発で出したら、まず、子供の年齢に合わせて少量アセトアミノフェンを使うといった指導は欧米の育児書には記されている。OTCで対応できる部分もある。アトピーの問題でも、それが皮膚科なのか内科なのかということは、大衆にはわかりづらい。総じて、ごく初歩的な健康問題でも、専門が違うことで対処がとんちんかんになることもある。
 と、この私の意見も、実際に運営するには組織化が必要だし、それは日本の現状を考えると無理だろう。せめて、実践的な大衆向けのガイドブックがあるといいのだが、私は知らない。インターネットにも類似の情報があるが、現実としてはこれがGoogleなどサーチエンジン系に頼るか、特定の視点のリンク集に頼るしかない。しかも、その大半の情報は「あるある大辞典」レベルの嘘情報か、正しいけれど役に立たない情報ばかりなのだ。

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「社会」カテゴリの記事

コメント

おはようございます m(_ _)m

んで、これは・・「ブラックジャックによろしく」なお話ですね?ぼくは全然知らないので質問するのみですが・・
まず、最初に「ブラックジャック~」の内容って・・信じてもいいんでしょうか?
(漠然とした質問ですが・・)

たとえば、乳幼児問題とか癌の話とか・・アレでいくつかの用語が示されていますが、あれは信じてもいいもの・・?(とりあえずいまは信じてるんですが・・)

ぼくとしては、
「あそこで示されている用語とか問題点はほんとのことだろう・・」って感覚なんですが・・

あと、規制緩和ってことに関してはやはり、去年の夜中の薬事件(名前忘れた)が思い出されます。あの・・坂口ちから大臣がクローズアップされたやつ・・
んで、こういう問題、ぼくはど素人ですが、規制緩和派です。
(というか、システム改革の関してはどの方面においても規制緩和を基本姿勢としているのですが・・)


投稿: m_um_u | 2004.02.22 08:46

m_um_uさん、ども。「ブラよろ」は、よくできているのではないかと思いますよ。以前、ざらっと2ちゃんねるでブラよろ関係の雑談を見たけど、うまく話になってない、というか現場だと2ちゃんねるですら言いづらい感じかなと。あるいは、なんつってもお医者さんはエリートです、いい意味で。作品として面白いかというと、話がマンガなので単純すぎるわけですが、そう言われてもねぇ、でしょう。悲劇性を強調しヒューマニズムをくすぐるわけですが、もうちょっとプラクティカル(役立つ)情報があるといいかなとも思いますが、それも失当な見解です。個人的には、ルポものっていうのより、一人の人間の内面に切り込む文学的な作品が読みたいなとは思いますが。

投稿: finalvent | 2004.02.22 08:53

・・なるほどー
いや、参考になります。

んで、「内面に切り込む文学的作品」についてですが・・
たぶん「ブラよろ」の佐藤 秀峰ではムリな感じがします。それは、前の作品(「海猿」)からも伺えるのですが・・(あれは原作に小森陽一がついてたけど・・)なんか・・、この人は「ジャーナリズム」とか「ルポ」ってところに興味があるみたいです。なので、今後もそういう作品を続けていくと思います。

マンガに限定した場合、ほかの作家としては・・やっぱ男性作家はそういうのはあまり強くない感じです(前に土田世紀が宮本輝の「春の夢」をマンガ化してましたが・・それほど成功していない感じがしました)。
なので、やはり女性作家ということですが・・
やはりそういう方面だと岡崎京子とか魚喃キリコ(ナナナンキリコ)、南Q太あたりが強い感じがしました。(ただ、いずれも若い女性をモデルにしていますが・・)

あ・男性作家だと木尾士目がいい仕事をする感じがしましたが・・いまは別方向に流れていっています
(「げんしけん」オタクの生態に関してです)

投稿: m_um_u | 2004.02.22 10:25

あ・すいません、付記です

男性作家だとよしもとよしともがそういうのはけっこう強い感じです。でも、30代(あるいはその周辺)の男性の心理、ってので限定されてますが・・

投稿: m_um_u | 2004.02.22 10:27

私もへき地に住んでおり、4才の娘がいます。高熱でひきつけて救急車を呼んだこともあります。

医者の偏在ですが、なんとか地方に分散させても、やはり都市部の病院に患者は集中してしまうような気がします。都市部の方が選択の余地があるんですよ。つまり、腕のいい医者を選ぶ、あるいは信用できる病院を選ぶことができるというメリットが。

本町には町立病院がありますが、常設の小児科はありません。月曜日のみ旭川から飛行機で来ていただいているのみです。また、町立病院ではあまり複雑なケガなどは対応不能で、骨折でも近くの市内の病院に救急車で搬送してしまいます。

このような状況ですと、誰が見てもわかるよっぽど単純な風邪などではない限り、本町の病院よりは市内の評判のいい病院に行ってしまいます。先に述べた救急車の件にしても、消防署では「ひきつけが収まったのであれば、朝まで様子を見て病院に連れて行った方がいい」とアドバイスされたのですが、言葉を発しない様子を見て心配になって結局は搬送してもらいました。今から考えると救急士の方の判断が全く正しかったのですが(子どもは単にひきつけにびっくりしてしゃべらなかっただけ)。

今時の保護者の中では口コミやwebで市内の小児科についてサーチし、もらった薬はピルブックで確認する、というのがわりと行われているようです。私も子どもの症状が重くなりそうで、しかも土日だという時はwebで夜間救急を探し、小児科医もいるかどうか電話で確認してしまいますし。

と、ここまで書いて思ったのですが、行動できる保護者がついている限り、地方に小児科医はいてもいなくてもいいのかもしれない、と。むしろ移動や情報収集に問題のある老人の医療の問題なのかと考えたり。しかし、ちょっと元気のいい、ある程度お金を持っている老人だと「人間ドックは信頼できる札幌の病院で」とか言っちゃうし(北海道在住なんです)。「歳をとったら市内で暮らす」とか言ってますし。

でも、この前の豪雪の時、道路も鉄道も全く利用不可能になった時に、子どもが病気やケガしたらかなり致命的な事態だったのも事実なんですよね。やっぱ一番の解決方法は都市部に住むことなのかもしれません。

投稿: jouji | 2004.02.22 15:09

joujiさん、こんにちは。私も僻地っぽい沖縄に暮らしていたので、状況はよくわかります。行政の視点ではなく、市民の視点でいうなら、一番の解決は都市部に住むこと、なんですよね。実際そういうシフトになっているわけです。と、書いたものの、どうしてもそれ以上はなにも思い至りません。年寄りについても、都市のほうが便利だと思いますね、実際。

投稿: finalvent | 2004.02.22 15:19

>してもそれ以上はなにも思い至りません。

私も結局そこにたどりついてしまいました。都市部と同じ環境を田舎にも展開しようとすれば、巨額の費用がかかります。いい医者を呼ぶにはいい住宅やいい設備やいい交通網やいい学校も必要になってきます(医者の家族のために)。それって都市と同じになれということに....

それならば都市部との交通をよくして、医療関係は全て都市部に任せればいい。それができない地域であれば離脱して都市部に住めばいい。医療リスクのある扶養家族は都市部に住んで、本人は単身赴任という手もあります(余計にお金はかかりますが)。しがらみやお金の問題でそれができないのであれば、リスクを負ってその地域で生きるしかない。

と、考えると別な意味でお金の問題である(医者を釣るのではなく、お金のある市民であれば対策のとりようあるという意味で)と、やはり言えるような気がしました。

私の方は上記リスクをふまえた上で、なるべく予防策をとりつつ、今いる町に家まで建ててしまいました(笑)。

投稿: jouji | 2004.02.22 18:47

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