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2004.02.14

普天間基地返還可能性の裏にあるもの

 毎日新聞社説「普天間返還 膠着打開のきっかけつかめ」は評価の難しい社説だった。普天間基地(飛行場)返還問題を本土国民がすでに忘却しつつある状況で、この問題を提起することそれ自体にまず意義がある。問題はその論点なのだが、端的に言えば、毎日新聞は依然沖縄を日本から分離して議論しているに過ぎない。しかし、この話はそう言えばいいだけではすまされない。
 まず、毎日新聞がこの問題をこの時期に扱った背景を理解する必要がある。毎日の切り出しはわかりやすい。


 沖縄の在日米軍普天間飛行場の移設問題が動き出しそうな気配を見せている。
 昨年11月にラムズフェルド米国防長官が普天間飛行場を視察し、飛行場返還に伴う代替施設建設の条件を見直すよう国防総省に指示したという。
 普天間飛行場が代替なしで返還されるとしたら、政府にとっても沖縄県民にとっても歓迎すべきことに違いない。ぜひとも事態を進展させなければならない。
 普天間飛行場の返還は、96年12月の日米特別行動委員会(SACO)の最終報告に盛り込まれた。最終報告は同時に米側の意向に沿い「十分な代替施設」の建設を求めた。要は条件付きの返還だ。

 1996年12月2日SACO(Special Action Committee on Okinawa)最終報告では普天間基地返還には代替基地建設が条件になっていた。それはとりあえずその通りなのだが、毎日新聞社説は重要点を見落としている。
 この返還合意では、日米両政府は5年ないし7年以内の全面返還を合意し、全面返還に向けて取り組むことになっていた。1996+7=2003である。すでにそのリミットが来ているのだ。このリミットに対して、日本政府の沖縄県民への対処は不誠実以外の形容はない。そしてその矛先は米国にも向けられる。当面米国としては、沖縄問題を日本国内問題に都合のいいように蓋をする(それがいかに無責任なことか、沖縄は米統治下にあったのだから責務がある)のだが、それでも欧米の契約の考えからすれば、放置していい問題ではない。日本のマスメディアはラムズフェルドを鬼畜米兵の頭のごとく扱うが、彼は古いタイプの誠実なアメリカ人でもある。
 もう一点、毎日が見落としているのか、わざと隠蔽している問題がある。これは、左の朝日新聞でも右の産経・読売新聞でも同じなのだが、すでに沖縄の海兵隊は事実上削減されていると言っていい状態なのだ。
 この話をする前に、本土日本人は、「海兵隊」を理解しているか気になる。日本人は、かつても日本に存在した陸軍・空軍はわかるだろうが、海兵隊はわかるだろうか。団塊世代、つまりベトナム反戦世代ならわかるだろうか。そして、海兵隊という組織が米国においてどのような政治的な意味を持つか。これは非常に大きな意味だ。日本人からすると、低脳マッチョを集めているのではないかという印象を持つが、海兵隊とは米国の誇りの最前線にあるものであり、1995年の沖縄処女レイプ事件(この事件の実態は日本では事実上報道されなかったが、袋につめて拉致しレイプしたのである)が米国に与えたのは、その誇りを傷つける恥辱感でもあった(だから事件当初その主犯者が黒人であるかどうかが実は彼らの関心事でもあったのだが日本では報道されていない)。そんなこと日本人は知るかであろうが。
 海兵隊(Marine Corps:通称マリーン)と海軍(Navy)は同一ではない。海軍は海戦のための組織であり、海兵隊は陸上部隊である。白兵戦を戦う「勇士」でもあり、先鋭部隊だ。陸軍の前に機動する。通常、戦時では陸軍上陸開始前に海兵隊が上陸し、橋頭堡を築く。州兵といい海兵隊といい、日本の義務教育で教えておいてもいい事項だ。少し余談だが、イラク・クエート侵攻のあたりから、米国の戦闘は、米国戦闘員の被害を出さないようにということで空軍始動になっている。また、在沖の海兵隊はこのような性格から揚陸艦の機動能力に依存するのだが、その基軸は私の記憶では佐世保のままだ。ということは、在沖海兵隊の機動力は日本本土側に依存する。むしろ、沖縄米軍基地の意義はインテリジェンスと継続的なロジスティックスであり、あの地域の戦闘には直接寄与しない。このことは、1996年3月中共人民解放軍の老害軍人どもがとち狂って与那国沖(台湾より与那国に近い)にミサイルをぶちこんだときも、太平洋側から空母インディペンデンスを移動させていることでもわかる。沖縄に有事に備えて米軍基地があると考える産経新聞系のウヨは軍事のイロハもわかってない馬鹿者どもなのだ。まぁ、米ケツ舐めポチだからなと思う。日本国を愛するなら沖縄を正常化するように考えるべきなのだ。
 さらにもう一点、毎日社説の見落としとまでは言えないが、重要な背景問題がある。嘉手納基地の問題だ。この基地は残念ながら、現在世界の状況からして、サヨクに乗せられて沖縄撤退と叫ぶことは危険なほど重要性があるのは、空軍ということからでも理解できるだろう。この広大な基地に、あの街中の小さな普天間飛行場が統合できないわけがないのだ。SACOでも当初議論されていた。なにより、戦後普天間基地は早々に整理されるはずだったのだ。普天間飛行場は基地の見える丘とかいう公園から眺望できる。この眺望は日本国民の義務にしたらいいと思う。これを見るだけで、この基地の異常さがわかる。住民の居住区の真ん中にある。皇居が都心の真ん中にあるというのとはわけが違う。この基地の持つ潜在的な住民への被害はまともな理性のある人間なら、その維持に見合うものではないことがわかる。米軍は馬鹿ではないので、わかっているのだ。さっさと撤退したいというのが米軍の本音なのだが、思いやり予算で浅ましくなった物もらい根性と嘉手納空軍と海兵隊の仲の悪さで、膠着してしまった。そこへ、日本の土建屋や沖縄の土建屋の利権がからんで、辺野古沖の代替基地案が出てくる。あの位置なら金武町のキャンプハンセンと連携できるとも言えるのだが、ロジスティックスの面からも、また、その運営面からも最低なので、米国の本音としては、環境問題とやらであそこはやだよとごねていたいのだ。というわけで、愛すべきうちなーデブ下地幹郎が野中を裏切って統合案を出したが、自民党に潰されてしまった。週刊新潮など下地の選挙をコケにしていたけど、目先で判断するなよなと思う。
 この膠着した沖縄の状況を変化させたのが、イラク戦争と同時期に始まった米国の対外軍事戦略の変更だ。話がまどろこっしくなってきたので話を切り上げるため、多少飛躍もあるだろうが、先を進める。
 日本はイラク戦争について米軍の横暴だとか日本のイラク派兵は憲法に違反するだの、呑気なことを言っているが、そんなことは些細な問題なのだ。大きな問題は、米軍はすでに従来の冷戦下の米軍ではないことと国連をぶっつぶしてもいいと踏んだこと、この2点だ。冷戦構造変化でわかりやすいのがまさに最前線である朝鮮半島の38度線である。ここから米軍は撤退し、さらにソウルからも撤退した。日本人がこの問題に関心を寄せないのが私には理解できない。同様のシフトは世界規模で進んでいる。反面、ロシア内への駐留などの新展開もある。もう一点の、国連潰しだが、この実態は有志連合だ。この実態とは、従来なら米軍の軍人補給として州兵まで投入する事態(なおイラクには州兵が多数投入されている)に、米国民の代わりに、韓国人や日本人、
オーストラリア人を代替で投入させるということだ。これらの国が完全に米国の属国となりその国民の血が国民の意志でなく流される時代になる。この問題は、米国がイラクで国連に地歩をゆずるかに見えるので国連の目アリと読む呑気な輩も多いのだろうが、楽観できない。というのは、この夏あたりに、NATO軍がイラクに投入されると見ていいからだ。それが有志連合とどう距離を置くかが、世界の軍事構造の根幹を決めるだろう。日本はなんとしても国連を盛り立てなくてはいけない時期なのだ。
 これらの要因から、米軍の組織が変わり、すでに沖縄の海兵隊は事実上削減された。正確に言えばそこまで言うのはフライングの可能性もある。本土側ではニュースになっていないように思えるので、2月5日沖縄タイムスの記事を引く(参照)。

在沖海兵隊削減/外相「将来は補充」
参院予算委/島袋氏質問に答弁
 米国防総省がイラク派遣の在沖海兵隊約三千人を沖縄に戻さず、事実上の削減を検討していることに関し、川口順子外相は四日午後の参院予算委員会で、将来的には海兵隊が補充されるとの認識を示した。
 島袋宗康氏(無所属の会)の質問に対して明らかにしたもので、「今回の派遣後には、本来沖縄に駐留するはずの規模の部隊が沖縄に展開することになっていると(米側から)聞いている」と答えた。
 外相は同時に、「最も円滑、効果的な米軍の運用を確保するためには、派遣される部隊も本来、沖縄に駐留する必要があると説明を受けている」と述べた上で、派遣期間の今年三月から九月までの七カ月間は米軍の運用上の必要な手当てによって、抑止力の低下は生じないと説明した。

 島袋の質問と川口の回答を比べて、川口の回答を取る馬鹿はないだろう。つまり、これが今朝の毎日新聞社説「普天間返還 膠着打開のきっかけつかめ」の浮かれの裏にあるものだ。つまり、毎日新聞は問題の真相を、サヨク的な視点で矮小化しているに過ぎない。結語を引く。

 米軍の戦力再編の機会をとらえて普天間飛行場の返還問題を一歩でも前に進めてほしい。政府はそのための戦略を練るべきだ。
 政府は米国に積極的に働きかけ、膠着(こうちゃく)状態が続く普天間問題を動かすきっかけを早急につかまねばならない。

 この結語は白々しいし、問題の背景に日本全体が絡み取られていることに目をつぶっている。中国人が「福」という字を逆さにして壁にはり、幸運が降ってくるといいと縁起を担ぐ。毎日新聞および本土日本国民は同じような運頼みになってしまった。沖縄が日本であることに目を向けず、また、日本が国際世界でどう存立していいか、見失っているである。

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コメント

はじめまして。
大手マスコミ側から、お書きになっている内容の話が出てこないことを、
最近非常に不思議(かつ不安)に思います。

投稿: ひが | 2004.02.23 14:28

ひがさん、こんにちは。このブログを書いて数日後くらいから、大手マスコミ側からも多少はニュースはあります。ただ、政府主導なので、在沖米軍の縮小はない、という方向にもっていきたいようです。それに乗じて、米軍側もいろいろ交渉をはじめているみたいです。

ついでに以下のようなニュースもあまり関心をもたれませんね。

中・東欧各国、米軍基地受け入れに名乗り
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20040221AT2M1100120022004.html

投稿: finalvent | 2004.02.23 14:39

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