年金と老人介護の問題
年金と老人介護の問題について、いきなり書いてみる。いきなり、というのは、書くにあたって資料にもあたっていないし、あまり考えもまとめていない、という意味だ。物書きなら失格という状態だ(失格の物書きは多いのだが)。日頃、私自身も生活人として気になっているので、そのあたりのもやっというのを書いてみる。
話の発端は、別記事に書いた私自身のコメントだ。
若い世代の立場で年金問題ついて端的に言えば、2点あるかと思います。1つは、受給は多分70歳になるでしょう。男性だと平均寿命は80くらい。その10年という問題ですが、その10年が年金で暮らせるわけもない、ということで、それ以前に若い人だと70歳は無意味でしょう。つまり、年金は無意味と結論するのは、ある意味しかたがないことです。2つめは、これをリスクの投資とみることです。この場合、相手は国家なのでケツ割れはありません。悪くない投資だと。もうちょっというと、この先、若年の不払いが解決するわけもないので、いずれ皆保険ではなくなるでしょう。すると、払っているやつのほうが利回りがいいはずです。
これをもうちょっと介護問題の側に軸足を移してみたい。で、私事を書きたいわけもないし、むしろ書きたくもないのだが、私をモデルとして書いてみよう。
私は昭和32(1957)年生まれ。父は大正15(1926)年生まれですでにこの世にない。母は昭和8(1933)年生まれ。父母の歳が7年違う。モデルとしては、母を基準に補正すると父は昭和4(1929)年くらいが妥当か(ちょっと自分としてはイメージがわかないが)。私は母が24歳の時の子供だが、このあたりはモデルとして妥当だろう。母は今年71歳になる。そろそろ年金(彼女の生活費)と老人介護の問題の渦中に入りつつある。
すでにこの問題に突入しているのは団塊の世代である。命名した堺屋太一によれば団塊の世代は昭和22~26年生まれだが、人口統計的なコアは昭和22~24年になる。ので、都合で昭和22年生まれをモデルとする。都合というのは、私より10歳上なので私が感覚的に捕らえやすい。
団塊世代のモデルはかくして私のモデルを10年シフトするといい。団塊君は昭和22(1947)年生まれ56歳。父は大正8(1919)年85歳、母は大正12(1923)年生まれ81歳、となる。ちなみに、森重久弥の相棒役とも言える加藤道子(私はファンでした)が昨日84歳で死んだ。膵臓癌。だいたいこのモデルの範囲に入る。
自分の世代意識からすると、私が小学校から中学校くらいの時期に、上の世代が暴れていたので、私にとって上の世代、というと5歳くらい上かなという感触はある。
戦後文化のコアの部分は団塊世代を中央として私の世代で消えて、私の世代から現在のオタク的サブカルの文化が始まる。私の世代は遅れてきた世代であり、先駆的な世代でもある。ま、それは当面の話題ではない。
団塊世代のモデルでみると、すでに、介護の問題は現実になっている。また、その親たちの年金問題(生活費)もだ。だが、見渡してみて、そういう風景が見えるか? 見えないことはない。だが、私の感じからすると、意図的ではなく社会システムの機能で隠蔽されているように思える。
その社会システムの機能は、(1)伝統システムが働く、(2)社会システムが働く(年金や国家の補助)、(3)家族システムが働く(端的に言えば子供が兄弟を形成している、「渡る世間に鬼ばかり」を参照せよ)、(4)労働社会システムが働く(会社に温情がある)である、と考える。
これが団塊世代に下るにつれウィークになっていき、私の世代でほぼついえる。その意味で、年金と老人介護が問題化するのは、私の世代からで、おそらく5年以内のスケールで社会に激震が走るのではないか。
それでも、現状の団塊の世代の問題、端的にいって、その生活苦が見えづらいのは、社会システムによる作用もだが、マスメディア的に話題とされないということもあるのだろう。さらにいえば、マスメディアの側の人間はエリートなので個人対応として金銭的に解決できる余裕があるのだろう。
![]() 親と離れて暮らす長男 長女のための本©角川書店 |
この二人の著作や発言を折に触れて私は読む。いろいろ共感することが多い。特にディテールが重要になる。マスメディアもある程度彼らの視点をとりあげているが、二人ともベストセラーというようなインパクトは社会に与えていない。というか、ベストセラーがそういう社会機能を持たなくなっているのかもしれない。また、ドラマもそういう意味での家族の光景を映し出さなくなってきている。
話がちんたらとしてつまらなくなってきているので切り上げようと思うが。私より10歳下の世代、つまり35歳くらいの世代はこうしたイメージを課題としていないような気がする。私自身10年前には考えてもいなかったのだから、当然だろう。だが、この世代には特徴がある。都市部に住み未婚率が多いことだ。つまり、都市民化している。都市民になるとき、一番の援助となるのは、私の常識からすれば国家システムなのだが、この世代はそうした国家のイメージをまるで持っていないように見える。
現在35歳の世代には、私の視点からすれば、(1)伝統システムが働かない、(2)社会システムもこのままでは働かない(年金はない)、(3)家族システムは働かない(兄弟の互助はない)(4)労働社会システムはすでに破綻した、ということになる。しかし、それが問題となるには、前段として私の世代が崩壊するから、それを待てばいいことになるだろう。
モデルとして見ると、私の場合、その世代の結婚年齢から計算すれば18歳と15歳の子があることになる(おぇっ?と思うが)。公務員でなければ年収は800万はないだろうから、実際にはすでに階級分裂が進んでいる。年収300万円時代を楽に生きるという冗談はさておき、社会的には私の世代は400~500万円の枠内で、5年後のスパンで子供を大学にやり、親の負担を見ることが可能かということになる。親たちはまだ70~75歳のラインで現状は意外にピンとしているが、5年後には介護の領域に入る。
そして、クラッシュ!、だろう。その時点で、夫婦関係のしわ寄せも大きいのではないか。団塊の世代から私の世代にかけてクラッシュが勃発する。
と、暗澹たる未来を描いて微笑む趣味はないが、あと5年で私の世代つまり現在45歳の世代がクラッシュするから、それを見ながら、それから5年くらいでおたおたしつつ、共通一次試験以降の世代は国家を再構築していけばいい。
それが可能だろうか。おい、若者、国家を互助組織として考えたことがあるのか?ってうオチにはしない。
私は理性的に考えるのだが、35歳を中心とした日本人はこの問題を解決できないだろう。というか、階級に逃げ込もうとする兆候が今見える。ネットの言説もすでにエリート化しているじゃないか。ナースはフィリピン人にすればいいというのが解決になるだろう(近未来に実現する)。
つまり、5年後以降は、実質の、年金や介護の問題は下層階級の互助の問題にならざるをえない。と考えてみるに、創価学会や共産党そのものか、それに類したものが社会に強く台頭せるを得ないのだろうと思う。
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コメント
ああ・・・しみじみ暗澹な感じです・・・、
でも、
現実的で分かりやすいです。
(はっきり見せられたほうがなんとかして行こうという気がわくので・・)
でも・・
なんとかならないんでしょうねぇ(笑)
(・・35歳世代・・がんばれないのかなぁ・・・
たぶんムリなんだろうから覚悟きめとこうかなぁ・・)
そしてたぶんこれって、「社会的共同体の重要性」、ということですよね?
なんとなく・・分かる気がします・・。
(ぼくらがいかに脆い世界で生きているかってことも・・)
そして・・「お金が集まってるところに頼る」、と・・。
現実的ですが・・この辺り・・・・なんとかならないのかなぁ・・
投稿: m_um_u | 2004.02.01 12:06
すみません。全部読んでないうちに、気になりました。
あの名作読本(?でしたっけ、名作劇場だったかな?)の加藤道子さん、亡くなったのですか?
それも、昨日ですか?
安心して聞けた番組でしたね。
流行りの深夜放送(オリーブ、モコw)聞いてても、あの番組が始まると、キリッとしたものです。
大人への憧れを保ってくれた、言語空間でした。
こういう時に、あぁ年とったんだな、と思います ネw
投稿: shibu | 2004.02.01 21:21
shibuさん、そうなんですよ。NHK日曜名作座です。よかったですよね。
投稿: finalvent | 2004.02.01 21:48
酔いながら書き込んでゴメンナサイ。
でも、この記事読んで、酔い、醒めましたね。
ここまで直截に現実を見せていただき、ありがとうございます。最もラク(かつ分かりやすい)選択肢は『団塊を攻撃する』ことは承知しておりますが、意味が無いのでしません。
代わりに、避けることにします、私の方法で。
(finalventさんがいる地理的な場所が気になります…やっぱり沖縄かしらん…)
(東京に居ると、視えなくなるのかなぁ…)
投稿: Dain | 2004.02.02 00:29
Dainさん、酔いさまし、すみません。でも、現実は現実だし。ところで、今は東京にいます。沖縄関連のネタはいろいろ迷惑がないくらいに小出しにします。
投稿: finalvent | 2004.02.02 13:33
社会システムも伝統システムも家族システムも、我々が都市民となる上で「重っくるしー、しばられたくねー、自由なんだー」と言って捨てたものなので、これはこれで納得できます。今更そこに戻るのはごめんですし。
で、そうなってくると社会権の保証として国家が出てくるしかないのかもしれませんが、それは社会契約的なものですよね?***というメリットがあるから、構成員はそのメリットに納得できるなら自分の権利の一部を国家に預けてくれ、という感じで。「国家システム」というと、どうしても必要以上に個々人を縛って責任はとらない、というイメージがあるのは、私がサヨ的人間だからかもしれませんが...というか、年金も現状ではわけのわからない施設の建設につかわれて赤字になっているそうですが。
で、因習からの自由を謳歌していながら、社会契約としての国家システムを構築してこなかった団塊の世代以降はキリギリスのように大変な目にあうかもしれないけど、その覚悟はあるの?ないでしょう、きっと、という意味でとらえました。
投稿: jouji | 2004.02.03 16:47
joujiさん、ども。これから日本は縮退していくのですよね。つまり、親の世代より子供世代のほうがキャパが小さい。極端な話、一人っ子なら相続は倍化。一人っ子同士の結婚なら4倍です。変な世界になるでしょうね。
投稿: finalvent | 2004.02.03 19:51
そもそも、何故、老人介護などする必要があるのでしょうか?老人医療は枯れ木に水をやるようなもの
とまでは思いませんが、老人介護は全く無意味な行為だと思います。十分に老いたら食を断って静かに死んでいけば良い、だけの話。勿論、私自身そうするつもりです。もっと率直に言えば、私は老人が嫌いです。老人になる前に死ぬ事が出来ればそれが最も幸福な事かもしれない、とさえ思うのです。
投稿: 副島貴彦 | 2009.04.10 00:40
団塊の世代、長く働いてきてやっと貰える60歳になると、年金開始年齢が5年先に延ばされた。本来60歳から貰える筈の年金が、5年間据え置きで65歳から貰えるとの国の変更決め事。 理由は、「財源がない」とのこと。誰がそういう状況をつくったのか?
その原因を多くの国民は知っているのだろうか? それとも無知?
財源が無いなら政治家と官僚・国家・地方公務員の年収、退職金を大幅に(50%)カットしてでも国民に払って欲しい。それが責任ってもんだろうが。
大手企業社員の年収が幾らかで公務員はそれを基準に合わせているのか?
中小企業社員の給与ベースで公務員の賃金を決めるべき。税金で生活する者が裕福で会社で賢明に働いている社員が貧しい生活を強いられるなんて言う疑問は国民にはないのか?
なぜ、議員年金が35年後で減額、公務員の年金も今後長年は安定、なのに、会社員の厚生年金には元小泉総理が早速4年前に手をつけて大幅減額したことを(公務員や議員は除く)なぜ国民は怒らないのか理解できない。国民一揆を起こしても良い内容なのに団塊世代は怒らないのが不思議。よほど退職金が沢山あったのだろうか?
それともバブル期にいい目をしたから駄目精神になったのか?
その団塊世代が、今の若者を育てたのだだから自己観察が必要かも。
しかし、若者も決して悪い事はないと思う。団塊世代には思いつかない素敵な発想をする場合も見られる。上手く接し、上手く育てることが後継者維持につながる。
無駄な外郭団体や不要な場所の道路整備も廃止せよ。軍事費も毎年の増額が必要か?
これでは、全く納得できない。それでも何の文句もいわず我慢我慢の団塊の世代。
現状生活に困っていないのだろうか?。。。。。。。。。心理が不思議
民主党さん、再度、厚生年金の開始年齢を60歳もしくは61歳にできないでしょうか?
60歳でも、新たな職場が常に容易に就職しやすい制度になっていれば問題ないが、病気持ちの家族を養える生活が可能な賃金ベースであればまたそのような就職先が常にあれば文句もないが今の状況では、おそらく生活困窮者が増えるばかりであろうと思う。
若い世代の雇用の場がないのも苦しい場に追い込まれることで大変な社会現象を生み兼ねない。世界がどうのこうのだけではなく、日本をどうするかを政治家は論ぜよ。
バラエティー番組に出演してる場合ではないだろうが?
投稿: 国民よ怒れ | 2009.10.12 09:31
公務員は女性が超お得ですな、何故かって?。
産前産後休暇で超期間仕事を休職していても給料とボーナスが1円も減額されません。更には、退職手当金も減額無し、正に税金泥棒で有る。
又、更に更に年金も減額無し税金さま様です。
だから近隣や近所、親類などの夫婦で公務員家族世帯は皆様の血税でお金持ちでしゅよ。金融関係の親類が良く飲んだとき口滑らすよ。
投稿: rちゅ | 2010.06.06 03:21