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2004.01.28

岸和田、雑感

 この話もためらうのだが、書いてみよう。れいの岸和田市で起きた中学三年生への虐待事件に関連したことだ。この事件は、私はまるでわからないし、世間の受け止め方や新聞社説の取り上げ方も理解できない。コメントとして述べることもできないし、批判もできない。そうした点に変わりははない。
 が、気になるブログ(はてなダイアリー)を読んだ。岸和田市出身のかたの話だ(参照)。ちょっと引用をためらうのだけど、岸和田という土地からすればああいう事件は不思議でもないというのだ。私には岸和田はよくわからないのが、地元を知るがゆえに落胆する思いというのはわからないではない。昨年沖縄北谷で中学二年生が残虐に撲殺される事件があった(参照)。私は、不思議でもなんでもなかった。現地を知っているからである。そしてしょせん本土人である私はなにも言及できない。何を言っても無駄だなと思った。こういう感じってなんなのだろうか。
 岸和田の話では、そして追記もあった(参照)。だんじり関係の話だ。これは引用してもいいかなと思う。


だんじりは、町単位で一台づつ持っています。で、各町に「年番」と呼ばれる責任者がいます。年単位で持ち回りなんですが、それは2、3人の間での持ち回りです。そして、「年番」は時に行政以上の実力者になります。はっきり言うと町のボスになるわけです。今は無いと思いますが(そう信じたい)かつては、年番が土地の境も水路の流れも決められたそうです。

 「年番」は他の山車を持つ文化でも見られる。私には語感と歴史的な由来がわからない。だが、山車がなくても、こういう組織は各地にあり、そしてそのまま行政以上の実力者になっているものだ。極東ブログ「市町村議員を減らすだけでは危険なことになる」(参照)でも書いた。

 日本の地域社会は、フィリピンの地域社会のように伝統的なパトロン-クライアント関係で成り立っているのだ。パンドーレとか言うのだったか忘れたが、地域には親分がいる。ま、社会学的な話はさておき(ほら、そこの社会学専門さん、ツッコメ)、こういうボスの安定機構が市町村レベルの議員の半数以上、およびその派生の権力構造で地域社会の実質的な治安的な権力が維持されているのだ。だから、これを潰せという単純な話では地域社会が壊れてしまう。ああ、もうちょっというと、この権力構造は地域に残留させられた弱者の保護装置でもあるのだ。

 この文脈で考えるなら、岸和田の事件は、「年番」さんの機能の問題だとも言えるかもしれない。ま、言っても詮無きであるが(年番の関心は山車だけだろう)。
 もう一点、歴史に興味を持つ人間としては、先のブログにある「水路の流れ」というくだりが気になった。
 少し地域は違うが、奈良の吉野山には、吉野分水神社がある。この地域は、奈良から大阪南部は水の配分が重要な意義を持っていた地域なのだろうと思う。
 「分水」の意味は字義通りだが、「みくまり」と読む。語源は「水配り」であろう。分水神社はなにも吉野ばかりではない。枕冊子では音転から「みこもりの神」ともある。これは、「御子守神」になっているのだろう。
 古事記など平安初期にできた偽書に過ぎないのだが、書かれている伝承にまるで価値がないわけでもない。その上巻には、速秋津日子と速秋津比売の子として、天之水分神と国之水分神が書かれている。かくしてこの二神(柱)は分水神社に祀られる。
 分水と権力の関係は、日本の歴史を考える上でもとても気になるところだが、この問題についてはまだ自分でもよくわからない。
 余談だが、岸和田ではないが、大阪南部、古市には知人の奥さんの旧家があり、大きいのをいいことに、夏その家族が帰省されているときに、訪問してなんどか泊めてもらった。20代後半から30代前半のことだ。私は、休みができればぶらっと新幹線に乗り、奈良を放浪した。京都もときおり行くが、きたねー学生の町だとばかり思うせいか、好きではない。京都人は嫌いだと言ったら、大阪の人が同意していた。
 奈良から明日香をぶらつきながら古代史を思ったのだが、自然に、奈良から二上山を越えて、河内飛鳥に関心を移した。日本の古代史にとって重要なのは、こちらの地域ではないのかと思うようになったからだ。そして、古市は非常に面白い地域だった。あのあたりは、河内のまんなかのようなイメージを持っていたが、住民の対人的な関係のありかがた、西洋人のような個人の感覚をベースにしているように思えた。不思議なエレガンスがあると思った。城壁都市の文化なのだろう。
 岸和田まで南下するとわからない。文化的には楠公の伝説がまだ生きているようでもあるし、「悪党」の文化なのかもしれない。
 観光なんかどうでもよく、ぶらぶらとすべて忘れて、あの地域を数日かけて散歩してみたいなとは思う。

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コメント

江戸時代以前のユダヤ人の消息なんてのに関心があったりしますが、特に調べてるわけでもありません。

古市という地名に、ふとなぜかユダヤのイメージが重なってしまったのですが、なんでだろ~です。

語源話でごまかしますが、磯城なんてのも宿かも。

投稿: a watcher | 2004.01.28 15:39

どもです。古代ユダヤ人の問題はつい「と」みたいですが、中国までは追跡できるし、紀州の天狗伝説なども若干関係しそうな気はします。補足ですが、古市は、れいの市古墳群の古市です。大阪府羽曳野市と藤井寺市にまたがる大古墳群ですね。通称応神天皇陵などがあります。古代日本にとても重要な土地であったのですが、この文化が皆目わかりませんね。

投稿: finalvent | 2004.01.28 16:19

パトロンクライアント関係って何ですか?

投稿: 石川直幸 | 2005.07.29 16:41

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