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2004.01.04

そして、中国リスク

 三が日が開けたのだが、読売新聞社説などはまだ屠蘇酔いが残っていて醜い。産経も似たようもの。案外、日経も同じようなものかもしれない。金融再生について、日経新聞社説「にっぽん再起動(3) 金融再生、気を緩めるのは早い」はこうだ。


 第二に、地方経済の再建という視点が大事だ。農業や公共事業などに頼っていてはじり貧になる。株式会社による病院や学校、農業経営の解禁や自由度拡大などの規制改革や、構造改革特区を活用した外資を含む企業誘致などを進めるのが、地域金融再生の観点からも肝心である。

 それは正論である。が、現場を知らないなと思う。昨年と同じ唄を歌うのもつまらないが、なんとくこの文章からは共通一次試験世代の臭いのようなものも感じる。地方と概略せず、具体的に島根県、沖縄県、青森県といった個別のケースとして議論してみせてほしいものだ。それと、「地方」とは東京を含む。地方を強くするということは、東アジアに1千万人の新国家が誕生するに等しい。ちなみに、ニュージーランドの人口は400万人である。オーストラリアは2千万人だ。しかも移民で膨れている面も多い。なのに東京が事実上新国家化すれば、その周辺県を巻き込むからオーストラリアより巨大になる。この問題は、今年からの課題になると思うが、今日はあまり触れない。
 私は酒も飲まないがもう少し日経に絡む。

 また予防的な資本注入が、弱った金融機関の安易な救済につながらないよう、資産を厳格に査定するほか、経営の規律づけが大切だ。利害関係のない民間有識者による経営改善計画の審査なども欠かせない。足利銀のように過去二回も公的資金を投入しながら一時国有化に至った行政の失敗を繰り返してはならない。

 これは初笑なのでないか。わっはっはと笑い飛ばすための話に見える。弱った金融機関とは「みずほ」じゃないのか。また、足利銀の問題は足利銀で終わったのか。しかし、この問題もあまり今日は触れない。ただ、日経も今年も日経らしくピントがずれていくような予感にワクワクする。
 朝日新聞の社説は無視したいところだが、縁起物なので触れておこう。標題「靖国参拝――独りよがりに国益なし」が痛快だ。結語はこうだ。

 「日本の平和や繁栄」を祈ったと、参拝後の首相は語った。だが、靖国にまつられている人々の多くが亡くなったのは、アジアで日本が始めた戦争ゆえだった。日本だけでなく「アジアの平和や繁栄」を大事に、というのも戦没者の思いではないのか。そういう視点が首相にも欲しい。

 なるほどである。「靖国にまつられている人々」には韓国人や台湾人も含まれているのだ。彼らも巻き込んで日本は戦争をした。ところで相手は誰? アジアって韓国や台湾を含まないのか。コロニアルな状況に置かれた沖縄とはアジアではなく日本なのか。のわりに、沖縄を構造的に未だに差別している日本とはなにか。そもそもあの戦争は、日本対アジアの戦争だったのか。また、戦没者の思いというのは、確かに、日本だけでなく「アジアの平和や繁栄」を大事に、ということであった。これを大東亜共栄圏と呼ぶ。とま、もちろんそこまで言えば悪い冗談である。歴史の事実は朝日新聞のように短絡化できない。またその鏡像のような短絡化も許さない。
 前フリが長くなったが、今朝気になった社説は毎日新聞の「貿易構造が変わった 中国を日本の再生に生かせ」だけだ。どうも毎日新聞社説はクセ玉が多いなと思う。ブログに近いいい加減さもある。それが端的に悪いわけではないが、朝日や読売のように読まないでもわかるほど明快ではない込み入ったジョークもある。
 で、そのテーマなのだが、とりあえず標題どおりに、「中国を日本の再生に生かせ」かというとそうでもない。ようは、中国リスクだ。そう先日のアメリカリスクという発想と同じ。結語はこうだ。

 とはいえ、政治的にも感情的にも、日本と中国は複雑な関係を抱えている。簡単ではない。
 また、中国はリスクに富んでいる。貧富の格差、沿海と内陸の発展の不均衡、国有企業がらみの不良債権、不動産バブル崩壊の可能性、電力などインフラの未整備、地方政府の赤字、農業部門の潜在失業者、行政腐敗、法治社会への移行。中国を日本の通商戦略の基礎に位置付けることは、そうした中国リスクに備えることでもある。

 この結語には特に意味はない。中国リスクという言い方は訴求力があるものの、この結語はナンセンスなクリシェに過ぎない。またしても言うが、この発想にも共通一次試験世代の臭いはする。
 だが、気になるのはそういうことではない。明瞭なファクツがあるからだ。それはこの冒頭にうまく描かれている。後段は予想を含む。

 日中貿易の拡大が続いている。米国がカナダ、メキシコと北米自由貿易協定を結んだ後、日本は米国にとって第3位の貿易相手国に落ちた。他方で日中貿易は、日本にとって中国は米国に次ぐ第2の貿易相手国に、中国にとって日本は最大の貿易相手国になった。
 02年に日中貿易は往復で1015億ドルに達し、日米貿易の1761億ドルに迫った。中国は01年12月に世界貿易機関(WTO)に加盟し、国際基準を踏まえたルール作りを急いでいる。08年の北京オリンピックに向けてインフラの整備も続く。中国研究者の間には、日中貿易は05年に1300億ドル、10年には現在の米国並みの1800億ドルに達するという予測もある。

 直接関係ないが、NTFTAは日本を牽制している。米国はいざとなれば、貿易面で日本を必要としない。そのあたりをメキシコですら読んでいるのでFTAに強気で出る。ただ、金融面では日本と米国は一心同体なので、そこは米国の癪の種であり日本に無益な浪費策のようなものを講じている(MDとかね)。
 このファクツが示す問題は、いずれにせよ、中国にとって日本が第二貿易相手国となっているということだ。日本は当面は市場なのだ。が、ここには少し奇妙な構造がある。毎日も触れているが、当然のごとく、日本側は210億ドル赤字になる。だが、対香港貿易を含めると日本は21億ドルの黒字になる。これを指して毎日はトントンというのだが、そういう話じゃないだろとツッコミたくもなる。この構造は変だし、この変が巨大化するような気もする。
 それでも、メガトレンドとしては12億人が紙で尻を拭く時代になることは間違いない。それを阻止するにはイスラム教を広めるしかないというねじれたジョークはさておき(イスラム教では肛門を水洗いする)、長期的には中国の黒字が基調になるようにも思えるのだ…と、少しトーンが下がるのは、理屈ではそうだが、歴史の流れを見ているとそうなのか合点がいかない。
 毎日の社説はごちゃごちゃとしている。途中で「今はだいぶ沈静化したが、中国脅威論というのがある。逆に中国崩壊論もある」というくだりもある。この悲観論に対して、「そんなことはない」という文脈で語られているし、日本でも概ねそうなのだろう。が、私は、どちらかといえば、中国崩壊論に組している。エコノミスト的にそれを説明できないが、私の歴史感覚がそうさせていると言ったものの、勘と独断でしかない。
 毎日に引きずられて話がねじくれてしまった。なにも中国崩壊論をメインに言いたいわけではないのだが、毎日さんも結局「中国リスク」という言葉の裏で中国崩壊論の予感を持っているのではないか。日本は長期に崩壊するが、中国はどこかで短期に瓦解するのではないか。ただ、ソ連型ではないだろうし、すでに中国は社会主義国ではなくなりつつある。
 もちろん、そんな極東ブログの懸念を初笑としてくださって、多いにけっこうである。むしろ、そうされるほうが日本の健全さを示すかもしれないとすら思う。

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