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2004.01.03

靖国参拝問題がわからない

 新年の新聞各紙社説はあまりピンとこなかった。自分の受け取り側の問題もあるのかもしれないと思う。ピンとこないと言えば、私は靖国参拝がよく理解できない。私は歴史に関心をもつ人間だし、よく寺社仏閣巡りなどもしたほうだとは思う。僧坊に泊まっていたとき、どっかの婆ぁさんに「お若いのよい信心なさいますな」と若い頃は褒められたくらいだが、かく書くように実は私には信心はない。宗教に関心を持つほうだと思うが、なにも信じていない。宗教的な苦しみはもちろん持つのだが、既存宗教にその解決を求めたことはない。ようするに音痴みたいなものだ。
 昨日雑煮にかこつけて、父のことや家系のことを書いた。それからインパールで戦死した叔父のことを思った。父なき今、叔父を追悼するのは棟梁たる私のつとめかとふと思った。彼は靖国に祀られている。参拝にいかなくてはなと思うが、そこにさして英霊がいるとも思っていないし、それほど靖国に思い入れはない。叔父は私の生前に無くなったが、どうも、亡き父や祖母に聞いたことを思い起こすに、私のような人間であったようだ。私は彼らの目からは叔父の生まれ変わりのようにも見えたのではないかと思う。叔父といっても、22、23で亡くなった青年であったのだ。
 小泉の靖国参拝もさして私の気にとまらない。彼は知覧で号泣したというから英霊への思いも強いのだろう。イラク派兵の死者を見越しているのかもしれない。
 私は英霊という問題については何年も考え続けた。彼らは犬死になのか?騙されていたのか? 私は叔父は国家に殺されたと思う。それにあらがうことなどできなかったのだと思う。私もその状況にあれば、国家に殺されるのだと思う(そして実際に殺されるときに「ああ、俺はお国のために死ぬのか」と思うだろう)。私は国への愛はあるが、あの悲惨なインパール戦は評価しづらい。だが、私の英霊問題の解決は年とともに自然に解決した。不気味なことを言うようだが、英霊の思いは私のなかに生きているのである。端的に彼らの思いは私に蘇って生きている。それだけのことだ。それはとても自然なことだ。だが、それをうまく語ることはできない。神秘的な話をしているつもりはない。そうした自分のありかたに対して、靖国の持つ地歩は、しかしあまりない。繰り返すが、こうした問題に私は音痴だからなのだろう。
 小泉が靖国を参拝した問題について、朝鮮日報はこう言う。


日本がアジアの被害国家に最低限の礼儀でもわきまえる思いがあったなら、第2次大戦の戦犯を除いた新たな追悼施設の建立論議を、あれ程簡単に放り出しはしなかったはずだ。

 私は端的に、そうだなと思う。追悼施設を作ればいいだけのことではないかと思う。対するに産経新聞社説はこうだ。

 日本における戦没者慰霊の中心施設は靖国神社である。首相の靖国参拝が中国からの抗議で中断される前、歴代首相はほぼ毎年、春秋の例大祭や終戦記念日などに靖国参拝していた。小泉首相が「年一回」と言わず、何度でも靖国参拝を続けることにより、それが慣例として再び定着することを国民とともに願いたい。

 「日本における戦没者慰霊の中心施設は靖国神社である」そう言われても、そう思う人がいるんだなというくらいにしか理解できない。大平首相や速見日銀総裁はクリスチャンだったから、日曜には礼拝に行っていただろうと思う。個人がどんな信仰を持つのもさして問題になるわけでもないし、大平首相や速見日銀総裁のような大人が国のために死んだ兵士を追悼する心がないわけもない。靖国などめんどくさいこと言うなよ、なのではないか。
 書くだけくだらないことになる。私は、英霊が犬死にだとも思わない。強い思いを私に残したのだから。あの戦死者は我々が弔っていかなくてはならない。だが、それが靖国である必要が私には理解できない。

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コメント

しばらく韓国watcher、嫌韓厨watcherやってましたが、日韓(の若者)ともに自らのアイデンティティを歴史に求めているということであるように感じました。

それぞれが求めるフィクションが、方や謝罪と賠償に、方や英霊への思いとWGIPへの気づきへと向かい、過剰に反発し合い、(特に韓国側が)ナショナリズムへ向かうと。小泉首相の動きは、どこか陰謀史観的ですが。

このあたり、私は小林よしのり氏の先見性を評価したいと思います。もっともネットでしか観察できないので、この風潮がどこまで実体を持つものかわかりません。

一言にしてしまえば、現代日本人を維持するためのフィクションとしての靖国が、フィクションの重層により価値を高め続けるように見え、そこに意味が出現し続けている、と書いてしまえば当たり前にすぎますか。

投稿: a watcher | 2004.01.03 09:40

どもです。WGIP(War Guilt Information Program)は通常、江藤が追いかけたようにGHQがらみですが、現実の日本のWGIPの名残は戦前の左翼運動の名残などもあり多層だなという印象を受けます。例えば、私などは憲法9条を改正したほうがなんぼか平和、現実にいる軍隊を成文法で規制せよ、と思うのですが、率直なところ、吉本隆明老がなんというか気になります。怖いなと。この怖いなという感じが自分でも変だとは思うけど、昨今吉本老がぼけるに及んでよってたかって叩くか賛美するかの出版の状況を見ていると、吉本に呪縛されているのは俺だけじゃないなと。気になるのは、また小熊というキーワードを出すとめんどくさいのかもしれないけど、べ平連的な運動の再評価歴史を知的と見ることで知的なエリート性を堅持するような若い人たちにも、率直なところ脱力します。べトナム反戦運動は正しかったけど、80年代の吉本の反核異論あたりでべ平連は倒錯に終わったと思ったのですが…。話がそれまくってすみません。とうの「現代日本人を維持するためのフィクションとしての靖国」というのが、なんというかわからないなというのが私の実感です。小林よしのりについては思想は別として感性として共感することは多いのだけど、この問題では逆で思想としてはわかるが感性としてわからないですね。韓国の若者については、こう言ってはいけないのだろうけど、日本より崩壊しつつあるように思います。米留組が新両班になりつつあるようだし、それと宗中問題なども錯綜しているようだし、ある意味、両班や宗中の問題を知らない日本人というのは、皇族がどうのと言っても、のんきなものかなとも思います。

投稿: finalvent | 2004.01.03 10:10

韓国のナショナリズムについては、表現がほったらかしすぎました。ハングル総督府ttp://aranchan.at.infoseek.co.jp/なんかの情報を参考にnaberなどを見る限りは、既に崩壊してます。

両班、宗中などに対する日本のネット上の若者の反応は、だいたいが祖先に感謝、ですね。そこから英霊に感謝、全共闘世代氏ね、みたいにつながるようです。

投稿: a watcher | 2004.01.03 10:47

あ・・これってぼくもけっこう気になってるんですが>日本の若者層のナショナリズム。

あまり、建設的なことをいえないかもしれないんですが・・

前に、「ゆきゆきて神軍」を見たんです。
んで、
ほかのひとたちにも見せようと思って勧めたら、嫌がるんです・・。

でも、「狂気の櫻」は観る・・、と。
(クボヅカが出ている、プチ右翼(?)な映画です)

「じゃあ、『新しい神様』(雨宮処凛)は?」、って聞いたら、これもビミョーな反応で・・


・・けっきょくどうなんだろう・・って思ってまして・・(^^;)。

投稿: m_um_u | 2004.01.03 11:15

ども。「ゆきゆきて神軍」はある意味、全共闘世代のバイブル的な存在だったように思います。その先に「神様の愛い奴」が来るのは皮肉なようななんとも絶句します。といって、どちらも私は避けているので耳学問に過ぎません。奥崎から受け取るものはある意味、あの時代のインテンシティ(強度)だと思うのです。だから、むしろ、彼の思想から大衆思想の原形へ思惟を導くのではなく、あのインテンシティ自体をどう知的に捕らえるのかというふうに、今の私は、少し間を取っています。そのあたり、意外や自分も小熊のようにひんやりしているなという感じはします。むしろ「与太郎戦記」みたいな世界から大衆の歴史意識の感覚を掴まないと、「ゆきゆきて神軍」は今のコンテクストだとエリート的な知になると思いますよ。

投稿: finalvent | 2004.01.03 12:01

あ・・別に「ゆきゆきて」に心酔しているわけではないのです・・。

なんというか・・

ぼくは生まれも育ちも広島なので、よくああいう活動をしている人を見るのですが、子供のころから「怖いな」って思ってまして・・・

そういうのの原風景というか・・
そういうひと達がどんな感じで叫んでいたのか、ってのを確かめておくのもいいかと思いまして・・
(奥崎とは背負っている背景は違うのでしょうが・・)

でも、とりあえず
ドキュメンタリーとして観るというよりは、「電波少年」の強力なやつを見るつもりで観たので・・
これはこれで面白かったです
(「あ・・ほんとに殴ってら」って感じで・・(笑))

そういう風にある程度距離を置いて観つつも、やっぱなんか・・奥崎の熱さというか、執念には惹かれるところもありまして・・

「たとえ、やり方が強引で極端にしても、あの情熱(?)の多少なりともほかの人たちにもあれば、いろいろなことが動くのかもな・・」って思ったのです・・。

(それをムリヤリにほかのひとにも期待するのは、強引過ぎるのでしょうが・・)

投稿: m_um_u | 2004.01.03 15:21

アメリカの時事週刊誌「タイム」アジア版が、アジア諸国は日本に感謝せねばならないという論旨の文をカバーストーリーで掲載し、論難が予想される。前シンガポール外交官のキショール・マブバニ氏は15日付の「タイム」アジア版に掲載された「アジアの再誕生」という題目の文で、1905年に日本がロシアを相手にした戦争で勝利したことで、インドは英国からの独立が可能だと考えられるようになった、と主張した。

マブバニ氏はまた、日本の植民統治で苦痛を受けた韓国も日本の役割モデルが無かったらこのように早く成功しえなかったはずだとして、アジアは日本に対し大いに感謝せねばならないと述べた。

同氏はまた、朝鮮戦争は韓国には苦しい事件だったがアジア繁栄に助けになったのであり、米国は朝鮮戦争のため日本の経済・社会の再建という戦略的選択をし、日本の経済的成功が韓国と台湾、香港、シンガポールなどを覚醒させたと説明した。

▽ソース:YTN(韓国語)<「アジア諸国は日本に感謝せよ」>
http://www.ytn.co.kr/news/news_view.php?cd=0104&key=200508162232004449

▽原文の該当個所の一部(第6~第7パラグラフ):
http://www.time.com/time/asia/magazine/printout/0,13675,501050815-1090825,00.html
数世紀にわたるヨーロッパによる植民地支配のため、アジア人の自信は次第に失われてきていた。将来のインド人たちは、3億ものインドの民が10万人足らずの英国人に何故易々と支配されていたのか、不思議に思うであろう。ヨーロッパ人の文化的優越性という神話がインド人の心にどれほど深く埋め込まれていたか、理解できないであろう。インドの初代首相ネルーはかつて、ロシアが日本に1905年に負けたことが、インド独立という考えを持つようになった最初の契機であった、と述べた。これは驚くべき告白だ。日本と
いうアジアの国がヨーロッパの国を打ち負かすまで、インドの知識人らは自治ということを考えてもみなかった、ということなのだ。

第二次大戦における日本の行状は災いに満ちたものだ。しかしながら、もし20世紀初頭における日本の成功が無かったならば、アジアの発展はずっと遅くなっていたであろう。日本は、アジアの勃興に火をつけたのだ。日本による苛酷な植民地支配に苦しんだ韓国ですら、日本という役割モデルを持ちえなかったならば、これほど早くテイクオフすることは出来なかっただろう。アジアは、日本に大いに感謝の言葉を送る必要がある。

投稿: タイム最新版 | 2005.08.20 02:26

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