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2004.01.12

世の中の仕事ということ

 朝日新聞社説「20歳の君に――世界に一つだけの花」を読みながら、だるい感じがした。ああ、だるいなぁという感じだ。いつもなら次のような朝日の言い分にむかっ腹を立てるのだが、だるい。


 アフリカの西の端にある、シエラレオネという国を知っているだろうか。平均寿命34歳。世界で最も短命な国だ。
 「国境なき医師団」の一員として遠いこの国で活動した医師、山本敏晴さんが昨夏、出版した「シエラレオネ 5歳まで生きられない子どもたち」(アートン)のページを改めて開いた。

 よく言うよ。こんな時に手前勝手に「国境なき医師団」の活動を持ち出すなよ、恥ずかしいな、と思う。国際情勢といえば、アフガンだイラクだと騒いでいたころから、「国境なき医師団」のレターではシエラレオネが取り上げられていた。でも、ま、いい。というのは、先日マリのコレラの話を極東ブログに書いたが、この問題はもはや人道の問題を越えているように思うからだ。
 話を戻す。朝日新聞は成人の日だからということで仕事の話題に振ったあたりが、呑気な学生さんあがりの爺ぃの感覚だなと思うが、枕はこうだ。

 作家の村上龍さんが出した「13歳のハローワーク」(幻冬舎)という本が、発売から1カ月あまりで15万部も売れた。
 自分自身の生きる道を探し当てたい。
 そんな若い人の真剣な気持ちの表れなのだろう。
 514もの職業をやさしく解説したこの本は、収入の多さや社会的な地位の高さなどには重きを置かない。あくまで「なにが好きか」がものさしだ。

cover
シアーズ博士夫妻の
ベビーブック
 そうなのか。あれがよくわからないのだ。本屋に行けば山積みになっているから、私もこの本を手にしたが、率直言う、なんだコレは、である。もっと率直に言う、仕事を馬鹿にすんじゃねーよ、である。そういう私の感覚はおかしいのだろうか。幻冬舎もこんな本を作るのか。売れたから結果的に当たりというわけか。同じくらい分厚い本だったら、「シアーズ博士夫妻のベビーブック」を買えと思う。翻訳がところどころご都合で端折られているのだが、子供のない家庭にだって一冊あっていいと思う。
 くさしだけも良くないか。朝日新聞がいうように、仕事というのは「なにが好きか」が重要なものだ。だが、この本を読んでいないので、的はずれなことを言うのだが、なにが好きかは、27歳になるまでわからないものだ。確かに、人間の基本的な性癖や才能は三歳くらいで決まっているようには思う。だが、そのエンジンは、社会的な人格との統合を必要とするのであって、それには本格的な性の熟成が不可欠だ、と思う。話を端折り過ぎて「と」になってきているが、労働というのもは性の成熟と深い関係を持っている。端的な話、最古の職業は売春(歴史的にそうという意味では当然ない)と言われるように、売春は労働に対価されるのはどの社会の基本構造だ。なぜか考えてみるといい。そこを逃げてはいけない、とすら思う。
 27歳というスペシフィックな年齢を取り上げたのは、邱永漢がそう言う話をしていたことに、自分なりの経験を加え、そうだろうなと思うからだ。それだけだが、27歳というのは、普通、人間が挫折する時期であるように思う。それまでの人生の構成が立ち行かなくなり、自力で構成を変えていく。そのなかで、性のふんぎりも付き、仕事も見つかっていくものだ。もうちょっとお節介に、27歳になったら、いっぺん自殺してみぃ、と言ってみたい気もするが、もちろん、死ぬのはいけないし、私のように死を人一倍恐れる人間が言うのも噴飯なものだ。それでも、それまでの自分というのはもう死んでもしかたねぇな、と空を仰いでゼロから生き始めるといいと思う。赤手空拳で社会にたてついて、ぼこぼこにされながら、生きるという「礼」を知る、というか、そこではじめて「礼」が意味を持つと知るものだ。礼を知れば、五体満足ならいつの時代でも仕事はあるものだ(五体満足でなくても仕事はあるべきだが限定される)。所詮人間の社会などもたれ合って成り立っているのだ。
 残念ながら、日本の社会はまだまだそういう27歳を受け止めるように変化していない。邱永漢が親だったらいいのだがそうもいかない(のわりに彼は今でも親代わりをしている、この大人に頭が下がる)。多分に人生の敗残者になるだろう。
 もちろん、そう書きながら、人生の失敗者である自分を慰撫しているのだろうとは思う。が、そうでない人生の成功者たちが、40代で、50代で、ぼろぼろっと醜悪に崩れていく様を横目で見る。いずれ人生は苛酷なものだ。
 が、しかし、そうはいっても、安穏に27歳の腹のくくりもなく後年崩れることもない人間はいるな。傍からそう見えるだけかもしれないが、そういう人生もあるようだ。ま、いいじゃないか。関係ねぇよと思う。

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コメント

あ、これぼくも実感あります>27歳。

んで、ちょっと思うのは
ほかのひともなんか・・「27歳で持った夢が、人生一生の夢(目的)だ!」、っていうようなこと言ってたと思うんですが・・。

・・なんなんでしょうねぇ、この魔法数字は?(笑)

あと、
村上龍の例の本って・・キケンなんですか・・?
ぼく、まだ確認してなかったけど・・。

投稿: m_um_u | 2004.01.12 13:04

ども。「村上龍の例の本って・・キケンなんですか・・?」、あ、そうかも睡魔に襲われるとか。27歳はたぶん、性的成熟と関係あるように思います。精神疾患もこのあたりに臨界があるみたいですし。

投稿: finalvent | 2004.01.12 14:39

エリック・ホッファーの自伝にもそんな事が書いてあります。「多くのことを成し遂げた人物が27歳のときに初めて人生の目標を見つけたという、どこかで読んだ話を思い出す。」と1930年頃の回想です。残念ながら、誰が云ったのかは書いてませんが、かなり昔からそういう感覚はあったようです。

投稿: しばわんこ | 2004.01.12 14:58

ぼく勝手に妄想したんですがね・・

14歳ってなんかあるじゃないですか?
極東さんがおっしゃるように「第二性徴」とか・・

んで、
ウメズカズオあたりも「14歳」ってやってたし・・

(ぼくも14歳のときに自覚的な変化があったんですが・・)


で、
27歳ってほぼ倍の数ですよね?


・・・そういうのは・・・「と」?(笑)


投稿: m_um_u | 2004.01.12 15:40

しばわんこさん、ども。MOEのファンです、って違うか。エリック・ホッファーの自伝読んでみようかなと思いました(ってことは未読です)。

投稿: finalvent | 2004.01.12 16:59

m_um_uさん、ども。楳図かずお「14歳」は傑作でしたね。性器の象徴てんこもりとか、今の555(ファイズ)を連想させるような話とか。しかし、もうあのあたりが商業主義の限界だったのでしょうね。

投稿: finalvent | 2004.01.12 17:02

あ・・どういう話だったか、詳しいとこ忘れちゃいました(笑)

でも、
商業主義の限界だったってのはなんとなくわかる気がします
(いまちょっと、対象の状況があまり把握できてませんが・・(^^;)

あ、
そういえば「555」


やっぱアレですか・・
終わったらなんか書くんですか・・?

・・書きますよね?

期待してます m(_ _)m

投稿: m_um_u | 2004.01.12 18:09

ゴクトウブログさんへ

 生まれて初めて掲示板というものの書きこみをします。
あなたは どんな人?
私はあなたがむかっ腹をたてた 著者の山本敏晴さんの知人です。
あなたの鎧なき? 見識に大変興味を抱きました。
物凄く知識人でアナ―キーストな印象があるけど
第一まだこんな活動を続けていらっしゃるかもわかりません
随分古い検索でしたから…
あなたもやはりさみしいのですか
わたしはやはりさみしいです。 こんな時間だし    ひろみ

投稿: 明神 広美 | 2004.04.26 03:27

明神さん、こんにちは。少し誤解があるかと思いますので、説明させてください。私は医師・山本敏晴さんの「シエラレオネ 5歳まで生きられない子どもたち」(アートン)にはまったく反感はありません。むしろ敬意を持っています。そうではなく、私がむっときたのは、朝日新聞社説が「アフリカの西の端にある、シエラレオネという国を知っているだろうか。」という偉そうに啓蒙するくだりです。シエラレオネの状況は国境なき医師団のレターをずっと購読している私には、朝日にあの状況で言われる話ではないと思ったのです。繰り返しますが、こういう朝日の言い方が嫌いなのです。

話は違いますが「私はさみしい」か? ですが、私の実生活を知る人は苦笑されるでしょう。そして、私を10年来知る人は奇妙な孤独を抱えている人間だと知っているはずです。孤独ということは随分悩み、今も十分には解決していません。おそらく、それは「自分の死」というものをどう受け取るかという問題かとも思いますし、そういう哲学的なことを抜きにして、その恐ろしい空虚感がなければ、あるいは、明神さんが見透かしておられるように、このブログは書かなかったかもしれません。

ただ、孤独というのは、臭い言い方ですが、虚妄というか、偽物を取り払っていくエネルギーにはなります。

投稿: finalvent | 2004.04.26 08:44

私いま29歳ですが、つい最近方向転換しました。1、2歳は誤差の範囲?

投稿: jiangmin | 2005.03.27 00:29

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