ドル安のゆくえ
気になるので素直にそのまま書いてみようと思う。現状のドル安問題だ。極東ブログの定形とすれば、日経新聞社説「ドル安、米国に赤字放置の転換を促せ」を枕のボヤキ。だが、それほどでもない。ちと関心の向きは違う。
とはいえ、その社説だが、主張自体は、先日の毎日新聞社説と基本的は同じ。つまり、G7経由で米国に赤字拡大放置をを止めさせよ、だ。なので、空しい。ただ、日経は一応こう加えている。
政策協調では当然、日本や欧州諸国も規制緩和で内需を喚起するとか、市場開放を進め外国製品をもっと受け入れる必要がある。
これはただのクリシェ。気になるのは、神クルーグマンを引いているあたり(当然、「神」なんて冗談)。
国際通貨基金(IMF)は7日発表した報告で、双子の赤字が膨らみ続けるとドル相場が急落するリスクが高まると警告した。またプリンストン大のP・クルーグマン教授は最近、米紙に寄稿し「我々は(放漫財政などで経済が行き詰まった)アルゼンチンと同じ道をたどっているかもしれない」と警鐘を鳴らした。
原文を読んでいないので曲解かどうかよくわからない。ただ、現状のドル安は警笛に値するのかといえば、私は先日の極東ブログのままの意見で、確信犯だろうと考える。
ちょっと「と」がかるが、米国は基本的にEUと日本なんか適当につぶれてしまえばいいと考えているので、そのあたりの戦略としてそれほど間違っているわけでもない。
話は散漫だが気になることを連ねる。読んでみてはと薦められたFirst Boston日本経済ウィークリーの「『円高の足枷』は克服可能か?」(参照PDFファイル)は面白かった。キモは、日本経済の非独立性だ。
円ドルレートは両国の金融政策のスタンスの格差で決まるという一般的な認識よりも、米国の金融政策と米国が許容できる円ドルレート水準を前提として日本の金融政策スタンスが決定されると考えた方が為替レートの動きを理解しやすい側面がある。
政治的な背景で見るなら、ある意味、どってことないし、そのメカニズムとはまさに政治の機能なのだが、当面の問題はその非独立性の許容だ。続けるが、こうだ。
購買力平価の天井から大きく乖離するように円ドルレートが推移するような状況が来れば、日本経済は「円高の足枷」から解放され、デフレ解消に向かうための必要条件をクリアーしたといえる
現状のドル安がその乖離の状態なのか?とまず問いを出してみたい。少しフライング気味だが、このレポート(安達誠司メイン)のように、円高自体はリフレ政策でどうにでもなるという意味で、意外に単純な問題っぽい。気になるのは、そういう経済要因が許容を越えさせるのか?ということだ。
端的な印象を書いておきたいのだが、私は現状、米国は日本に依存しているのだ、というふうに認識している。逆ではない。独立した2つの国家間の経済といった視点は無効だと思う。事実上、属国日本貢ぐ君は、どこまで女王様のケツ叩きに耐えるか、ということだ。
薄っぺらな陰謀論臭い話がしたいわけではないし、当方それほど近年の国際金融に詳しいわけでもない。だが、こう展開するのはタメ議論のつもりはない。為券は円買い戻しにならず、米国債に化けるということを思うからだ。円高介入はやればやるだけ、日本の米国債が増える。結局、アメリカを買いつづけているわけだ。米国債の利回りはいいが、どすんとドル安にすればそんな利は消える。つまり、日本の国富は消える。
ちなみに、円売り資金の調達枠97兆円は、残り1兆円近くまで減った(参考)。とはいえ、そのこと自体もさして問題ではない。つまり、お金がないわけでもない。まだまだ貢ぐことはできる。
国際的な視野でドル安が問題だというなら、ユーロが動かないのはおかしい。まだまだ米国に見栄を張っているか、あるいは内部問題のこじれを抑える見栄か、あるいは単に、米国が弱いと見ているか。
だが、日本の介入は動揺のように見えて、国内産業(特に輸出産業)向けの円高阻止というより、米国の世界戦略(最終的なドル優位)に向けて日本が参戦しているという図ではないのか。
「通貨戦争」と言った言葉を使う気はないが、これが戦争なら、日米対ユーロ戦であり、波及的に対中国戦なのだろう。こうした構図なら、しかし、日本の目などない。負け犬に決定! とすれば、現状より先の敗戦を見越したほうがいいのかもしれない。
と、書いたものの、「と」ですかねぇ? 誰かに喧嘩売っている気はまるでない。日本人の労働がこういうカラクリで米国に吸われているような気がするだけだ。
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