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2004.01.06

景観が問題ならまず標語の立て看をはずせ

 本題前にちと横道。朝日新聞社説「ちょっと元気に――跳んでみよう団塊世代」がすごい話だった。高齢化を向かえる団塊の世代に頑張れというのだ。もちろん、それ自体はどうっていうことではない。


 「ぬれ落ち葉」なんて言葉がはやったのは、バブル景気のさなかだった。定年後の亭主は、ほうきで掃き出そうにも、女房にへばりついて離れない、と。
 バブルがしぼんで、気がつけばサラリーマン受難の時代。定年後どころか、まずは会社にへばりつくことが先決、といった気分が世の中を覆う。

 え? 団塊の世代って男を指すのかとまずツッコんでおこう。そして、「挑んでみよう」として新たに事業を起こしたい人たちはどうすればいいかについて、杉本さんというかたのアドバイスを4点挙げているのだがこれがすごい脱力もの。

  1. 1、2年分の生活費を準備
  2. 生活費と事業資金を分ける
  3. 家族の理解を得る
  4. 何事も楽天的に考える

 杉本さんというかたはそれでいい。がこれを社説の記事として書いた執筆者を早期定年させて娑婆の空気を吸わせろよと思う。この話題はこれで終わり。
 今日社説であれ?っと思ったのは、日経新聞社説「にっぽん再起動(最終回)子孫に誇れる美しい国土をつくろう」だった。といっても、この社説の内容自体は標題から連想される以上のことはなにもない。私が変な感じを受けたのは例えば次のようなくだりだ。

議事堂の景観問題は日本の都市計画の貧困を象徴している。日本人は欧米の街の美しさに驚く。古城や教会などはもとより普通の商店街や住宅までが美しいのは、都市計画に基づいて質の高い景観を維持しようと地元が努力を続けてきたからだ。

 私は欧米の街に深く馴染んだことがないので、嘲笑されてもかまわないのだが、端的に問う、「日本人は欧米の街の美しさに驚く」か? 普通の商店街や住宅までが美しいか? なにか勘違いしていないか。もちろん、感性の問題かもしれないのだが。
 関連してこれも私は変だと思う。

日本もかつては美しい風景を誇る国だった。家々の落ち着いたたたずまい。緑あふれる街並み。日本の情緒を映す風景は戦後、次々と姿を消した。街はコンクリートで固められ野山を公共事業が蹂躙(じゅうりん)した。無計画な東京一極集中と、地方の過疎化に拍車がかかった。

 本当か? この文章を読むと戦前の風景は美しいというのだから、執筆者は何歳だ。戦時の国土を美しいというわけもないとすれば、昭和15年以前か。すること執筆者は70歳。老いのたわごと? もし、経験者でないなら、その風景とやらはどこから来たか? メディア? すでに現実と幻影の区別が付かないのか。
 と、皮肉るわけでもない。こうした日本の景観論はおかしいのではないか。つまり、欧米は美しい、日本の戦前は美しい…。
 私としては、率直に言うと、そんなこともどうでもいい。新潮「考える人」連載中島義道を真似るわけではないが(参照)、日本の景観が美しくないのは、まず、街に溢れる標語の立て看などはないのか。ドイツ人の若いお姉さんだったが、「目の侮辱」と書いていた。
 美観というのは、多様なものだ。比較的最近のニューズウィークの日本語版だったが(と探す手間を省くが)、日本の都市の夜景の美しさを賛美している外人がいた。他になんだったか、日本の文字に埋め尽くされた繁華街に奇妙な美観を感じている外人もいた。なるほどと思うかよけいなお世話と思うか。
 個人的な思いを少し書いて、今日は終わりにしたい。中央線で荻窪あたりから新宿までの高架で街を見ていると、私は東京というのはスラムに見える。だが、あの赤さびのような家々とその路地には、舞い降りて見れば、奇妙な秩序が存在していて不思議な宇宙を形成している。次の震災で一掃されるのだろうが、火災と流言飛語がなければ、このスラムのほうがはるかに安全なのかもしれないとも思う。美しい光景とは思わないが醜いとも思わない。ある生物のある最適な生息の形態かなと思うし、それには関心を持っている。いつもあそこを電車で通るときは、昔の子供のように、私は電車のガラスに額を押し付けて飽きもせず見ている。

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コメント

渡瀬さんの「似非と現実の日記」にリファーがあり、参考になりました。ども。
http://d.hatena.ne.jp/yasai/20040106#1073357839

投稿: finalvent | 2004.01.07 12:51

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