ヒト・メタニューモウイルス(Human metapneumovirus)
今朝も社説ネタはない。各紙ザップするに主要なテーマ、国連安保理問題と裁判員制度。どちらも朝日新聞社説が扱っているが、「国連と同盟――小泉流の一国平和主義」は支離滅裂。駆け出しライターが必ず言われることだが「あのさ、どこが悪いか言える文章ならまだいいんだよ」である。裁判員制度は、現状、善戦しているとしていいのではないか。
他に気になるネタはと、ザップするに、ちょっとなんだかなと思われるかもしれないが、今週のNEJM(The New England Journal of Medicine)のトップ記事がちと気になった。Human Metapneumovirus and Lower Respiratory Tract Disease in Otherwise Healthy Infants and Children(参照)である。
英文を引用しても専門過ぎてなんなので、簡単に言うと、定訳語を知らないのだが、ヒト・メタニューモウイルス(Human metapneumovirus)が、幼児の気道感染の12%を占める、というものだ。
で? なんて言われそうだが、確かに、SARSや今話題のトリ由来のインフルエンザほど、社会的なネタではない。ヒト・メタニューモウイルスについてはSARSに関連した話題もあった。気になる方はこちらを参照のこと。SARSの原因かと疑われてもいたわけだ。この問題を決着したのも、ヒト・メタニューモウイルスの発見者アルバート・オスターハウス(Albert Osterhaus)である。
NEJMが大きく取り上げているのは、背景にヒト・メタニューモウイルスってそんなに人間に関わっていたのかということがあるのだろう。というか、私は、その点に、へぇ~98点、という感じだった。ここでいきなり妄想をたくましくしてはいけないのだが、こいつはレトロウイルスで、しかも人間と事実上深く共生しているのは、なんか意味がありそうだ。似たようなウイルスもまだいっぱいいるのだろう。
日本でもこの感染の状況はほぼ同じだろうと思う。すでにヒト・メタニューモウイルスは検出されているからである。
社会問題としてみれば、日本の小児科が手薄すぎることが気になるが、実際の治療面では、この発見によって診断が変わってくるだろう。臨床面で対処に大きな変化はないのではないか。このあたり専門家のコメントが聞きたいと思うが、難しいか。
ヒト・メタニューモウイルスが話のネタとして面白いのは、これが発見されたのは、2001年とごく最近のことという点だ。私は医学というのは20世紀で終わったと考えるのだが、逆にいえば、こうしたウイルスの発見は、新世紀の医学に大きな意味をもつだろう。人類とこれだけ深い関わりがありながら、わかっていないことが多いのだなと思う。SARSについても、社会ニュース的にはなんだかわからないが、免疫になんらかの影響をしているのではないだろうか。あまりこの手のことをうかつに言ってはいけないのだが。
不埒な極東ブログなのでちょっと放談として先の妄想を書いておく。人間は幼児期に自然状態ではヒト・メタニューモウイルスの免疫を獲得するのだが、むしろ、この獲得過程は進化的に選択されたものではないのだろうか。こんなことを思うのも、SARS感染についてニュースを通して知る限り、子供の犠牲者が少なかった。子供を守るシステムが存在するのではないかと思う。ここで野口晴哉を出して「と」全開にする気はないが、子供の風邪の対処は自然な経過が重要なのかもしれない。
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コメント
いいかげんコメントですが、子供の間にかかっておくべき感染症という概念が必要なのでしょう。ちゃんと病気になっておく。特に風邪(呼吸器感染症)関係が重要のように思います。
肺癌の急増とOTC風邪薬に因果関係が・・・なんて書き出すと「と」ですかね。
投稿: a watcher | 2004.01.29 15:57
a watcherさん、ども。呼吸器感染症は重要なのかなという感じはしますね。ついでなんですが、SARS自体は違うけど、実態としてはHuman metapneumovirusの複合がありそうな気もします。OTCについては、最近FDAだったか、かなり警告を出しています。どうもサプリメント代わりにアセトアミノフェンを飲む人が多いらしい、米国って。「と」かもの部分は思うことはあるんですが、やっぱ「と」でしょうね。
投稿: finalvent | 2004.01.29 16:58