仮面ライダー555、面白かったです
平成仮面ライダーとも言われるのだが、平成ウルトラマンの誤用ではないか。ミレニアム仮面ライダー、ま、どうでもいいけど。クウガはなんとかストーリー的に持ちこたえたが、アギトと龍騎のストーリーは破綻したので今回も怖々見ていた。が、最終回までとりあえず破綻はしなかった。表面的に見ている限り、あまり瑕疵のない作品だったかなと思う。めでたしめでたし。と、変な前振りだが、ま、面白かった。アギトと龍騎では怪人がひたすら負けキャラだったが、今回はそれなりに怪人にキャも立っていたし、クウガ以降の作り手側のオブセッションである「仮面ライダーは正義か?」も、もうこのくらいでいいだろう。
若い役者さんたちも魅力的だった。園田真理役の娘さんが途中小太りするんじゃないかと気がかりだったが、若いですねぇ。長田結花役の娘さんはハワイ二世なのだろうか。ま、みなさんよくやってました。というと学芸会ノリだが。
音楽的にはやはりクウガからアギトのほうがよかった。佐橋俊彦、やるぜ。私もロバート・フリップのファンだったのでね。ただ、初期キングクリムゾンを現代の音響でやると逆につまんない面があるのだなとは思った。初期キングクリムゾンのほうがむしろジャズ的に生の良さがあった。ファイズの音楽については、私には、率直に言って素通り。
文学的に見ると、園田真理と草加雅人にはディープなストーリーが設定されていたのだろうなとは思う。ノベライズしたら面白いのかもしれない。SF的に見ると、というか、やっぱ触れないわけにはいかないか、オルフェノク、つまり、オルフェウス+エノクという神秘思想の裏は気になった。アギトの時もけっこう凝った裏を作っていたようで、オープニング画像に奇妙な曼陀羅を描いておきながら、作品では未消化に終わった。死者の蘇りとしてのオルフェウスの裏はそれほどでもないが、エノクのほうは、すまん、ここではちと触れたくもない。不快なものを思い出させやがってと個人的に思う。幸い作品にエノクの問題はあまり反映していない。エノクの問題はしかし、いつか自分の課題にしなくてはいけないのだろうか。鬱。
神学的にというか、ま、何的でもいいのだが、人間の進化としてのオルフェノクという設定だけではそれほど面白くない。が、悲しみや人間への憎しみから進化してくるというのは、良い。これは考えるとけっこうやばい問題で、現在の人間種自体もどうもそうやって進化してきた臭い。最近の人類学の成果だと、どうも人間につながるとされてきた原人たちはみんな滅んだようだ。一部は人間種による絶滅もあるのかもしれない。人間種というのはそもそも一体なんなのかますます不可解ではある。
ファイズの世界では、オルフェノクの進化に身体が耐えられないとしているのだが、このあたり人間種はやや奇っ怪で、身体が耐えられそうにもないのに異常なほど長寿になっている。抗酸化システムの勝利かもしれない。身体でアスコルビン酸が生成できないという病気が恐らくモグラレベルの時代に起きたのだろう。が、それを人間種は逆にメリットにしている。あと、人間種の進化については白人や黄色人種の出現になにか意味があるのだろうと思うのだが、この手の話もちとやばい。意外と白人と黄色人種には人類のサバイバルをかけた問題がありそうだ。黒人とされているアフリカ人の多様なバリエーションに人間種を解く鍵があるかもしれないが、この問題もやばすぎ。
ファイズではオルフェノクを人間に対置していたが、それほど洒落として楽しめない面もある。すでに人間種も行き詰まりに来ているだろうし、生物的に見れば、新種の発芽のような現象はあるのだろう。それらは人間種と敵対する本質を持つのだろう。ふと、昔だったが、吉本隆明が人間とって本質的な問題、特に身体性は身体が進化的に変わることで解決するとぞっとするようなことを言ってたが、そういう面もある。
造形的には「王」がけっこうよかった。あれに文学的なキャラを持たせたいところだし、そもそもなぜベルトが作られたかというストーリーもあってもよかったか…よくないな。アギトのように作品が破綻するだろう。
フィリップ・K・ディックあたりだと、けっこううるさいことを言う輩は多いのだが、ヴァリスなんかより「ティモシーアーチャーの転生」あたりはあまり言及されていない。ヴァリス神学あたりで沈没してしまうのかもしれない。転生といえば、サリンジャーの「ハプワース16日」もすでに文学の破綻かもしれない。だが、こういう奇っ怪な形式を思考に強いるなにかは存在するのであり、どうもそのあたりを切り込む思索者を最近見かけない。ニーチェも実はマジで研究はされていない。この領域はオカルトに堕してしまうのだろうなと思うし、グルジェフあたりで充足してしまうのかもしれない。ちょと「と」がけて言うのだが、この界隈のSFや神秘思想の慰撫で充足してしまう程度の悲劇意識は甘ちょっろいんじゃないかとも思う。もっと痛切に、人間種の限界と超越を問うことはできなものだろうか、というか、そういう作品や作家を私が知らないだけか。
と、いう意味で、ファイズのハッピーなエピローグは愚劣なシロモノだったが、あれを持って作品の欠点とするわけにもいないだろう。王の覚醒の時点で、ストーリーは終わっていたと見るべきだ。そして、王の覚醒が意味するものは、文学や神学的に人間種自体がうまく解決していないオープンな問題なのだろう。
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コメント
あ・さっき見ました
やっぱぼくも拍子抜けって言うか・・
まぁ、あれはあれで良かったのかなって言うか・・
とりあえず、
変な不可解感は残らなかったし・・
(某エヴァンゲリオンみたいに)
そう考えると、子供に与える影響も大丈夫だろうな・・と。
子供っていうか・・
近頃だと若いお母さん方に・・ですかね?(^^;)?
でも、
若いお母さん方もそんなに真剣に・・見ているんですかね?(^^;)?
っていうと
誰が真剣に見てるかって言うと・・・ぼくらみたいなのって言うことになるのか・・・。
・・・・・・・・・
あと、やっぱ極東さんがおっしゃるように、王の覚醒以前で物語の盛り上がりは終わってましたね
そういえば、劇場版ってご覧になりました?
(ぼくはまだです)
投稿: m_um_u | 2004.01.18 14:44
漫然と見てました。アギトと通底した失敗作と感じました。表層的な物語をうまく追うことができないというか。俗な(そしてたぶんより一般的な)視点ですが、美形キャラ達をうまくフォローできませんでした。女性の方はけっこう失望したのでは。
そうですね、王の造形は衝撃的でした。これだけでファイズという物語を評価してもいいのかも。石森正太郎への回帰という動機もあったのでしょうか。
進化問題ですが、ゲノム解析で色覚についての発見があったようですね(ちゃんとフォローしてませんが)。
投稿: a watcher | 2004.01.18 15:10
m_um_uさん、ども。劇場版は見てません。今まであまりがっかりしたので。身近なものの感想はよかったみたいです。映画のストーリーで巧がオルフェノクかぁとかネタバレしたわけですが。
投稿: finalvent | 2004.01.18 15:29
a watcherさん、どうも。仮面ライダーの話はさておき、すでに察せられていると思いますが、最近はこんなところにブログなんかを書いています。ぼちぼちでんなです。
投稿: finalvent | 2004.01.18 15:30