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2003.12.24

たばこという社会福祉(もちろん皮肉)

 各紙社説からはとくに取り上げるべき話題はない。ふと思ったのだが社説というのはなにかを取り上げないための饒舌なのかもしれない。社説ネタではないが気になっていた、たばこ税のことで雑文を書いてみたい。
 ニュースにならなかったわけではないのだが、どうもマスメディアの問題の扱いが軽いように思えるのはJTがCMに影響力を持ちすぎているからなのだろうか。喫煙反対の市民運動も多いはずなのだが、たばこの税の問題には沈黙しているように思える。私の感性がずれているのかもしれない。、
 話は15日のことだ。国と地方の税財政改革、通称三位一体改革で、首相諮問機関である政府税制調査会は「2004年度の税制改正に関する答申」をまとめ、この15日に小泉首相に提出した。答申では、個人住民税が応益性や自主性の要請に最も合致しているとしたものの、委譲は2006年度とし、その間の暫定措置としては、次年度のたばこ税の移譲が現実的だとした。そんなところだろう。ところが、翌日16日に、政府税制調査会の答申したたばこ税は、所得譲与税に切り替えられた。なんだそれ。これが民主政治なのか。自民党税調なんてものは、国の機関じゃない。自民党の党組織上の、政務調査会の一つの調査会に過ぎないはずだ。
 その晩にミステリーがあったわけではない。読売系の「『たばこ税』一夜で葬られ『所得譲与税』」(参照)では次の軽くまとめている。


関係者によると、政府税調が小泉首相に「たばこ税」を答申した15日夕、すでに自民党税調はたばこ税の不採用を決め、16日昼に幹部が「不採用談話」を発表する段取りまで整えていた。政府税調がこれを知ったのは答申直後で、答申はすでに小泉首相の手に渡っていた。

 本当か? もちろん、このストーリーに嘘があると言いたいわけではない。この文章からでは、ちょっとスケジュールミスっていうトーンになっているのだが、それは本当かと疑いたいのだ。なにしろこの読売系の話には山中貞則の「や」も出てこない。現代版枢密院自民党税調とナベツネの結託は恐ろしいものがある。産経は、「理念より参院選意識 首相の指導力不足指摘も」(参照)もう少し掘り下げている。

 この日の党税調で所得税への移譲を提案したのは片山虎之助前総務相だったが、税源移譲問題は最後まで迷走した。
 「かつてたばこ税導入を苦労してまとめ上げたのは山中(貞則・自民党税制調査会最高顧問)さんだぞ。そのたばこ税を『つなぎ財源として地方に譲ります』と誰が山中さんに言うのか」
 十二月初旬、財務省幹部とひそかに会談した麻生太郎総務相は、自民党税調の“ドン”と呼ばれ、財務省にも強い影響力を持った山中氏の名前を出して、基幹税の地方への移譲を迫った。

 誰が猫の首に鈴を付けるのか、大の大人が爆チュー問題やってんじゃないよと笑いたいところだが、その醜態に泣けてくる。なんなんだよ、山中貞則って爺ぃは。
 山中の思惑もわからないではない、おそらく内心、「馬鹿ども」と思ったことだろう。たばこ税がねらい打ちされたのは、税収の偏在が少ないうえ納税者全体への影響が少なく、しかも手続きが楽だからだ。要するに弱い者いじめである。酒税だとめんどくさいし、納税者に負担が大きい。産経の記事にあるように、もともと地方からの反発も強い。そしてなにより、「馬鹿ども」の思惑は、税を小手先でいじる政府税制調査会の態度だったことだろう。そう思うと、山中貞則は国の税の根幹と地方を守っている守護神ようなものか。
 今回のスラップスティックはいただけないが、たばこ税だけの問題に絞れば、私は原則は山中が正しいように思う。だが、たばこ税自体は上げてもいいのではないかとも思っていた(過去形)。理由は簡単でニューヨーク右にならえである。ニューヨークのたばこは高い。1箱7.5ドルだよ。800円くらいだ。20年くらい前、発展途上国に行くときは、ボールペン、100円ライターなどにならんでたばこをお土産にするといいと言われたものだが、今やカートン必須はニューヨークである。そして、今やたばこ増税は健康面でも良い効果を出している。ファイザーの調査では、7月1日のタバコの増税をきっかけにした禁煙は効果が高いとしている(参照)。調査項目を見るとこうだ。

禁煙を始めた理由として、「健康のため」が50.0%と、「小遣い節約のため」(33.6%)という増税による金銭的負担を上回りました。タバコの増税による金銭的負担がきっかけでも禁煙挑戦者の健康に対する意識の高さが伺えます。また禁煙して良かったことは、「小遣いが節約できたこと」(28.8%)が最も多く、「体調が良くなった」(21.4%)、「家族に喜ばれた」(17.7%)、「食事がおいしくなった」(14.9%)と続きました。

 これも泣けてくる。小遣い節約か。マイルドセブン一箱270円。一日一箱吸うか。二日に一箱くらいか。月額で4000円くらい。たしかに、小遣い節約という線だ。それにしても、この小遣い額で「家族に喜ばれた」のだから、きっと純正オヤジからSPA世代の若オヤジども、みんな便器に座って小便をしていることだろう。という話を書いていると、むかつくので路上でほかほかと湯気たてて立ち小便でもしたくなるな、というのは冗談、としておこう。
 以前は、宮内庁では皇居を清掃する勤労奉仕団(あれはなんの宗教だろう)への恩賜たばこ支給していた。止めて久しいから、ヤフオクで高値が付くが、出品できない。今では菊の紋章を焼き付けたお菓子になったらしい。時代だ。それでも、感謝の意はたばこだったのである。たばこというのは、日本の社会制度的にみれば、一種の福祉なのだろう。これ以上、増税して庶民を苦しめるものではないなとも考えをあたらためる。が、かく言う私は、街中の喫煙者をどなりちらすオヤジでもあるのだが。

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