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2003.12.21

同性愛が理由の難民について

 こんな話題に鼻をつっこむのもどうかなとは思うし、特に自分になにか決まった考えがあるわけでもないのだが、無意識にひっかかる感じがするので書いてみよう。話題は、同性愛が処罰となる国から逃れることは難民かということだ。もちろん、難民だという判決がこの9日オーストラリアの連邦高等裁判所で出た。認定されたのは、バングラデシュ出身のゲイのカップルだ。バングラデシュでは同性愛は犯罪とされるらしい。毎日新聞によると、「9年前から交際している2人は警察ややじ馬に殴られ、仕事をクビになるなどして、99年に豪州に移住した。」(参照)とのこと。
 些細なことだが今から9年前ということなのだろうか。この4年はするとオージーたちとハッピーに暮らしていてそこで権利意識というか、政治意識を高めたのだろうか、とも思うがわからない。記事を書いたシドニーの山本紀子記者は「シドニーでは同性愛者の全世界的な祭典『マルディグラ』が毎年開かれ、豪州は同性愛に寛容な地とみられている。」というが、祭典はいいとして、この推定もそれでいいのか、どうも判断に苦しむ。
 裁判では、国連の難民条約にある難民の定義「人種、宗教、国籍もしくは特定の社会集団の構成員で、政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがある者」にこのような同性愛者が該当するのだと判断したわけだが、判決は4対3と僅差だったようだ。毎日新聞の記事には書かれていないが、確か、この裁判の判事自身がゲイであることをカミングアウトしている人だったはずだ。もちろん、それが判決に直接影響するわけではないが、多少驚きの感はある。関連して気になるのは、オーストラリアはコモンウェルスなので、確か法体系もそれに従っているはずなのだが、そのあたりの波及的な影響はどうなっているのだろうか。
 この問題は、現在社会の文脈では、イスラム圏諸国の同性愛者を難民と認定すべきかとなるだろう。ふーんと言ってはいけない。日本でもイラン人のゲイであるシェイダさんを難民と認定すべきかが目下争われ、近く結審する。この話題については「チームS・シェイダさん救援グループ」(参照)に詳しい。特に、「彼をイランへの強制送還から救うには、日本の多くのレズビアン・ゲイの力が必要です。シェイダさんに暖かいサポートをお願いします。」ということだそうだ。
 私はこの問題をどう考えるか? 実はよくわからない。なにか無意識に錯綜している感じがしてもどかしい。一般論的に言うなら、そういう特殊ケースより日本はもっと広義の難民をなんとかしろよとも思うし、このようなケースを突破口に全体の改革を求めるべきだというのもわからないでもない。
 話の文脈がずっこける。私は若い頃、ゲイに襲われかけたことがある。こりゃやばいぜという窮地に陥ったこともある。飲んでいて、相手にカミングアウトされたころもある。と書くと苦笑するなぁとごまかしたくなるが、一面ではけっこう真剣な問題でもあるはずだ。というのは、それぞれの局面で結果としてその愛に応えない私は彼らの内面を傷つけたようでもあるし、彼らはそういう傷に慣れながら活きているのだろうなというつらさはわからないでもない。そのつらさを切なく描いたマヌエル・プイグの「蜘蛛女のキス」は美しい小説だった。映画のほうはちと趣向が違うが美しい映像だった。
 話を少し戻す。もちろん、同性愛者の難民問題はそういう私的な経験の問題じゃないだろというのは理屈ではわかるし、すっかりオヤジの自分に迫るゲイは、たぶん、もう、いないだろうからのんきでもいられる。また、一般的なマイノリティの問題でいうなら、ここには書かないがもっと深刻な問題のほうが自分に近い。
 マイノリティであるというのは、その内側に運命付けられてみると、どうも世界はしっくりとこないのだが、「さあ、各種のマイノリティ同士が連携し、多様な世界を求めましょうとされても」、それもなんだか違うような気がする。というのは、社会とはそういう差異をある程度捨象して成り立っているように思うからだ……「私」の本質的なことは「あなた」はわからない。あなたの社会で「私」は苦しみ傷つけられているのだが、「私」はそれを隠して活きている……その隠蔽力のありかたが社会の水準だろうとは思う。
 別の言い方をすれば、そうした他者の苦悩への「察し」が社会にこもるなら、基本的には制度だけの問題になるだろうし、そうなれば、イラン人同性愛者も基本的に同性愛者であるがゆえの問題ではなく、その特定の人の政治状況によって制度的に解決されるものではないかと思う。

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