ごく個人的な述懐
以下、つまらぬオヤジ(私)の述懐である。説教ではないがつまらなさの点で説教に匹敵するのが述懐というものである。と、冒頭に謝辞を書く。さぁ、センター試験以降の世代のみなさん、ここでバックせよ。
述懐の内容はというと、岩月謙司の「女は男のどこを見ているか」(筑摩書房)だったかに、「男は歳を取るにつれ魂が清められていく」というのがあったが、そういう話だ。もちろん、魂が清められるとか言われたら爆笑してもいいだろうと思うし、岩月謙司とか中谷彰宏とか読むなんて知性が疑われるぜというのも当たりだろう。ま、しかし、この手の読書も一種の愚行権の行使のようなものだ。
ただ、たぶん、それでも、42歳の厄年を過ぎた男なら、「男は歳を取るにつれ魂が清められていくものだ」と言われて、心のどこかで、そうかぁと思う部分があるだろう。もちろん、単純に肯定するわけじゃない。肯定なんかできっこねーよというくらい世事に汚れて生きていたなと思うものだ。が、そういう汚れたなという思いの後ろのほうに、どっかしら「魂」みたいなものが生きている。「男なんてものはしょーもない、いつまでたっても子供だなと同じ」くらいに女は思うのだろうが、そう思われたって、どうしようもない。
週刊朝日のくらたまのエッセイに、30過ぎの女の目として、子供と遊んでいる父親の男っていうのも悪くないなぁみたいな話があった。彼女に言わせると、10代、20代にはわかんなかったよなということらしい。日本の世の中はこぞってお子ちゃま志向だから、女も男も若いのがいいのかもしれない。特に男なんか老けた女なんか嫌だと思う人も表向き多い。実際は人間の魅力というのは複雑なものだ。誰だったか女のエッセイで、よーするにチンコが合わないとどうしもようないというのがあったが、そういう人間観だってある。
で、なんの話だっけ、そう中年男の魂ってやつだ。普通は仕事で磨かれるとか思うかもしれないが、多分に、子供や女との関わりで磨かれてくるものじゃないかと思う。そうかよと突っ込まれるとそれほど説得力もないのだが、で、それがうまくいかないというのは、生きてみて思うのは、端的に言って、酒と権力だなと思う。
権力のほうは、金と地位に分けてもいい。酒と権力のなかに溺れて、男は魂を失っていくのだ。なんて甘っちょろいことを言っているのだ、俺はとも思うが、しかし、酒を止めて2年以上経つ。そして、回りにぼろぼろと酒という戦場で崩れていく男たちを見ると、そう思う。男が酒で死ぬっていうのは、とてもまっとうな死に様なんだろうなとも思う。
権力は複雑だ。もともと男は権力がなくては生きられないのだ。というか、そう思い切ることが青春との別れのような気がする。すでにそれを吹っ切った人間はいくら実際の歳が若くても、オヤジの相貌になってしまう。権力の怖さはそれに麻痺していくことだ。もちろん、自分が行使する権力もだが、実際の社会の権力は自分に根ざしていないから権力の網になる。つまり、自分も権力下に置かれるということだ。そこにある種の快感を持つあたりで、男は壊れていく。
俺はそういう権力から逃げた。そして、逃げたことにすごい罪責感がある。その罪責感は権力の毒と同じだ。でなければ、こんな述懐は書かない。
![]() 暗室 |
栗本慎一郎が昔、「女は個別のトランザクションである」と言っていた。なんとも謎めいていて意味不明に近いが、男のトランザクションはルールであったり原則だったりするのだが、女のトランザクションはその場その場なのだ。で、トランザクションってなんだ?なのだが、この文脈では男女の交渉といってもいいだろう。不思議なことに、変わった男というのはどこから見ても変わった男なのだが、変わった女というのは必ずしもそうではない。女に個性なんかあるのかよと男は思いがちだが、誰も理解できないような孤立した男を女は個別にこっそりと理解する。男も女も性をタイプで見てしまいがちだ。「こういうタイプがいい」とかいうわけだ。だが、女はこっそり抜け駆けをする。原則がない。男は原則に拘束されてしまう。ロリコンというのもどういう心情なのか私にはよくわからないが、そこに男の性を拘束するようなものとして存在しているのだろうなという直感は働く。萌え萌えによって、実は、自己を拘束しているのだ。もっとも、女も似たようなものでもある。酒井順子がいまさら結婚するなら、ロイヤルストレートな男でなくちゃいやだとか言う。ま、彼女の商売らしい物の見方だと思う。だが、実際にはそういう理想は現実には存在しない。理想はただ自分を拘束するだけだ。
で、話はどうなるのか。もう終わりだ。オチもない。魂の浄化はどうなったか。ま、いいじゃないか。どうでもいいが、鴨ちゃんの「南の島で」に泣けるなぁ。
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