外交官遺体写真掲載問題について
ちょうどmuse-A-museさんからもご質問があったが、外交官遺体写真の掲載問題について触れておきたい。最初に結論を言うと非難を浴びるかもしれないのでぼやかしたい気持ちもあるが、それでも私の考えを先に言うと「掲載するなとは言えない」となる。なぜか。
それは、ロイターやAPが、世界の報道レベルで流しているものは、それに著作権の問題があるとはいえ、事実上、すでにニュースバリューとして意味があるからだ。すでにニュースとされているものを、「アレはなかったことにしてね」と言っても始まらないと考えるからだ。
では、そうしたロイターやAPの態度をどう考えるか。これもズバリ言っておこう。日本人への人種差別が潜んでいるし、そうでなくても人種差別を助長するメッセージになることへの配慮がない。なぜそう考えるか。理由は簡単で、あの写真は、日本の勇気ある外交官を、フセインの息子のウダイやクサイと同じレベルに貶めるものだからだ。
だだ、ここが難しいところだが、もし米国の高官が同じように殺されたらどうなるだろうか。もし、そこにジャーナリスト(フォトジャーナリスト)がいたなら、是非は問わず撮るだろう。それが事実だからだ。そして撮ることはより大きな含みを持つ。今回の例でも、週刊現代や掲示板転載の馬鹿者たちの意図を越えて、その写真はディテールにおいて複雑な意味を将来に持つ可能性がある(死因の真相を語るかもしれない)。繰り返すが、なぜならそれが事実だからだ。同じように、それがもし、米国の高官であっても、写真にされ、ロイターやAPが垂れ流すかもしれない。
すでに外務省から抗議を受けた週刊現代の態度だが、もともとこの雑誌はポストにためはってちょっとサヨが入っている。サヨたちは恐怖をもって大衆を恫喝するものなのだ。私としては、週刊現代のプチサヨがやっているなという感じがする。ただ、気になるのは、この写真は正式にAPなどから銭を払って転載しているかだ。
以上の流れからわかるように、週刊現代の意図は見え透いているが、それに抗議をする外務省は問題の目をむしろ、ロイターやAPに向けるべきだろう。と、いう点で外務省は、なるほど、抗議はしているようだ。朝日新聞のニュースではこうだ(参考)。
外務省によると、同省に数多くの抗議が寄せられ、遺族感情も考慮して在外公館を通じて配信した各社に異例の抗議をした。「今後は配信をしない」と答えた社もあったという。また、同省は写真を掲載した夕刊紙や週刊誌にも抗議した。
率直に言えば、この手ぬるさはなんだろう。もっと怒りをあらわにすべきだ。そうできない裏がなにかあるのだろうと思う。恐らく、報道社の力学やネットワークの問題だろう。
この手の掲載者の小物としては、ネットの掲示板などに転載されているケースだが、なんというか、ただの愉快犯のようなものだろうと思う。そうすることで自分の誇り(decency)を失うのだという感覚が無くなっているのだ。哀れよのぉ。
最後にmuse-A-museさんの質問の文脈になる。つまり、遺体写真をことさらに転載する人間について、「こういうのやる人間の精神構造」だ。muse-A-museさんはこう項目分けする。
(1)弱さを克服できないのを自己肯定するために、そういった連中が傷の舐めあいっていうか・・くっついていってる
(2)匿名性をかさに来て、親族への遠隔攻撃を狙っている(匿名性だけを理由とするギロンってのは好きじゃないんですが・・)
(3)いろいろな理由で暗いところを好むようになった人間が、そういう情報を欲したり、発することを好むようになっている
率直な意見を言うと、私は、そういうふうに見てもしかたがないんじゃないかと思う。もうちょっと言うと、muse-A-museさんの立場はわかるし、自分もそれに近い。だが、そういう立場で彼らに向き合ってもただの、ありがちな枠にはまるだけだし、さらに言えば、その枠のなかでは、彼らのほうが強い、ある意味、正義なのだ。なんでそんなのが正義かよと思う人もいるかもしれないが、実際にその枠のなかで熱くならずに議論していけば、彼らのある正義が見えるだろう(例えば、我々に潜む偽善が露呈するかもしれない)。
ちょっとうがった言い方だが、それが2ちゃんねるというものの強みだし、すでにそれを日本のネット社会と限らず、社会が必要としてしまっている現状がある。
それを打開するなら、きちんと自分の意見として拠点をもって提示できるMTベースのブログの連携が必要になる。それができれば、その枠を越えていくことだろう。2チャンネルを以前、単純にくさしたが、総合としてみれば巨大な知でもあることは確かだ。
単純な話、ネットをザップする人がその掲示板より、私のブログに目を留めるようなるか、ということが、具体的な側面では問われている、と私は考えている。といって、自分を尊大にしたいわけではない。その価値をオープンにネット社会に開こうと思うだけだ。その結果、オヤジ説教たれまくるじゃんかとなれば、それだけのことだ。
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コメント
> それは、ロイターやAPが、世界の報道レベルで流しているものは、それに著作権の問題があるとはいえ、事実上、すでにニュースバリューとして意味があるからだ。すでにニュースとされているものを、「アレはなかったことにしてね」と言っても始まらないと考えるからだ
うん。にゃるほど・・
たしかに一回(まがりなりにも)みんな見ちゃったもの消してもねぇ・・
なんか・・「臭いものにはフタ」みたいですもんね。。
で、次の議題・・
ぼくの立場ってのは別に「社会正義で2ちゃんたたき潰す!!」みたいんなんじゃないです。
なんていうか・・
あそこはある意味、日本のネットの情報ハブになってるし・・
玉石混交だし・・
そういう意味ではあそこは情報的価値は高いと思う
だから、なんとかあそことほかのコミュニティとかが融和すべきだと思ってるん
ですけど・・・・
それは「ケーモー」かつ「ゴーマン」ですかね?
たとえば、前にJanJanに投稿しようかと思ったんですが・・
なぜかあそこハンドル禁止になってて・・
なんか「2ちゃん警戒?」って思って、イヤな感じがして・・
もし、そう思って、そういうことやってると、ほんとにいい情報って入ってこな
い気がするんですよね・・
確かに2ちゃんは玉石混交で・・
バグも多いけど・・
それを選別できるだけの背景知識があれば・・
JanJanみたいなのはそのためのfilter(weblog-ecosystemみたいな)になるべきだ
と思うんだけど・・
そこまでは期待しすぎですかねぇ・・?(-_-;?
ってよく見たら極東さんも同じようなこと考えてらっしゃいましたね・・失礼
投稿: m_um_u | 2003.12.09 22:20
ええ、2ちゃんねるというのは、露骨にいうと、「どう使うか」っていう対象ですね。と、話変わって、余談なのですが、JanJanの「沖縄のここがヘン! 沖縄ヒポコンデリーを突く(1)まるで相場のような石油価格」ですが、この話ここでも触れましたが、次回がちゃんと書けているといいですね。ちゃんと分析できるかな、という感じ。
投稿: finalvent | 2003.12.09 23:09
そうですね。
あそこはなんかけっこうゆるい(あ、失言)ときもあるけど・・全体の記事の志向はオリジナルな感じで面白いから・・がんばってほしいんです。
こう・・常駐の記者たちでがんばったり、周りがうまいこと絡んでギロンが発展して・・
あ、そだ
極東さんの次回のオキナワ話も期待してますゼ(* ̄ー ̄*)
んじゃ、さようなら~(またこんどおじゃまします)
投稿: m_um_u | 2003.12.10 03:47
あ、
ちょっと勢いに乗ってJanJanに質問してみました・・
https://www.janjan.jp/user/bbs/detail.php?msg_id=145
・・さぁ、どうでますかね (*^^*)
投稿: m_um_u | 2003.12.10 06:04
おーい、まったく逆じゃあないの。これだからウヨク連中は神がかってるっていうんです。
>サヨたちは恐怖をもって大衆を恫喝するものなのだ
あなたの言う「左翼」とはそういうものなのですか?
少なくとも一般的常識的な基準とはかけ離れた独自の世界ですね。
いいですか?人様の安全や財産をあたかも自分の傘下にあるかのように偽って「お国が守ってやっている」と脅しをかけているのはあなたたちウヨ連の方。
生命や生活、仕事の基盤を努力して築いている文民の苦労の上にあぐらをかくような行為はやめなさい。
非武装の原理と国民の不断の努力の上に今の経済大国は成り立ったんです。収奪、搾取の保守系財界人はそれにたかるダニ。本当に恥ずかしいバカ者どもです。追従する一部メディア(読売グループ)もね。
それに連なる悪質政治家が跳梁跋扈しています。「三国人」発言や集英社漫画弾圧事件こそ、国民への脅しの最たるもの。
「隣の国が攻めてくるぞ」これしか言えないナントカの一つ覚えですが、実はその「ひとつ」にも足りてない。
何かというとアメリカの脅威を忘れている(ふりをしている)のです。その独善性をウヨバカ連中は誰も指摘しない。一番危険なのは赤字連発の貧乏火薬庫・アメリカです。よくあんなのにへつらう気になったものです。気が知れやしない。
つまり足りない人達だってことですかね?色んなものが。
投稿: dig | 2004.11.05 20:46