冬の沖縄
沖縄に数年暮らしていた。沖縄は多くの本土人のイメージだと熱帯なのだろう。正確には亜熱帯。同じく亜熱帯とされる台北のほうが冬は寒く、夏は暑い。熱帯の雰囲気が知りたいなら、台北から台南まで自強号で降り、鄭成功の館でぼんやりと檳榔でも噛むといい。あの熱帯に比べれば、沖縄本島は小さい島なので、気温も32度を超えることはない。嘘でしょと思う人もいるかもしれないが、気象観測の状況ではそうなる。気温が40度近くまで上がる沖縄の都市部が変なのだ。コンクリ作りの家々にアスファルト道路、そしてエアコンの外気を吹き出すからなのだ。それは沖縄の自然とはかけはなれたものだ。
沖縄には四季がないと思う本土人も多い。四季は温帯だけだと思っているのか、亜熱帯の気候への感受性がないのか。沖縄にも四季がある。秋の紅葉はないがトックリキワタの花が咲けば秋が深まったことがわかる。沖縄の四季の情感が見えてこなければ、沖縄が生み出す美というものもただのエキゾチシズムにしかならないだろうとも思う。
沖縄の冬の風景に欠かせないのはばポインセチアだ。庭木に植えている人が多く、けっこう巨木になる。本土ではクリスマスのイメージでしか見ないから北の地方の植物くらいに思われているのだろうが原産はメキシコ。沖縄に近い風土なのだ。鉢植えは本土にも出荷される。仏壇用の黄菊なども本土向けだ。沖縄の人は普通仏壇に黄菊は飾らない。
もう一つ沖縄の冬の風物詩といえば夜のライトアップだろう。東京の街のように計画された美しさも彩りもないのだが、普通の民家にまるでやけくそのように無数の電球が輝く。不思議な華やかさだし、それにつられて夜遊びをする沖縄の人の光景も面白い。そうそう、沖縄の夜は寒いのだ。沖縄本島には気象データ上は雪が降ったことがないというが、嘘。小雨の来そうな一番寒い晩に久茂地にぱらぱらと雪が降ることもある。
風物詩ではないがちょうど今なら沖縄でちょっと変な光景を見ることができる。道路脇にやたらと数字が並ぶのだ。82、79、76。ガソリンの安売り看板だ。本土人ならそれがガソリンの価格だと信じられないかもしれない。リッター72円なんてね。年に一度か二度、ふとしたきっかけで、こうしたガソリンの安売り合戦がまるで疫病のように広がる。利用者としては嬉しいので、ちょっとしたお祭り騒ぎになったり、「今どこが安いか」というのが話題になる。この祭りは1つガススタンドがつぶれると終わる。
ところでなぜ、沖縄のガソリンが安いかって? 米軍と関係ある? その話にはちょっとした歴史を知らなくてはいけないし、まず、屋良朝苗を知っていなくては話にならない。センター試験には屋良朝苗が出題されたことがあっただろうか。
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コメント
沖縄にも雪が降るんですか?!
憧れの沖縄移住のため、「冬の沖縄」で検索していてこちらのメッセージを拝読しました。沖縄ってハワイやグアムのような常夏の島だと思ってました。
投稿: 千葉県民 | 2005.10.24 12:31
千葉県民さん、こんにちは。沖縄の雪はほんとうにごくマレで、正式に計測されるほど振ったことはありません。ご安心を。でも、意外と寒いことはありますよ。
投稿: finalvent | 2005.10.24 12:51