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2003.12.05

仏独を押さえ込む外交が必要だ

 「極東ブログ」の移転に伴う試運転や外務官殺害など目をひく話題に気を取られて、世界の動きを追うのが少しおろそかになっていたが、この間、日本の大手新聞各紙も社説レベルでは似たようなものだった。日本の新聞は発行部数が異常に大きく、読者層は大衆になる。そのため、大衆に迎合するか啓蒙するかというスタンスになりがちで、従来は読売は迎合路線だったのに、昨今では朝日とともに啓蒙路線が露骨になって嫌な気分になる。新聞の話は長くなるのでさておき、今朝の各紙社説では日経の「財政規律問題で揺れる欧州」(参考)が重要だった。日経は一応経済新聞なので、こういう切り出しになるのはしかたがない。


ユーロ参加国の財政赤字問題をめぐって欧州が揺れている。財政赤字を国内総生産(GDP)の3%以内に抑えるという約束を守れなかった独仏への制裁手続きが停止されたことが原因だ。ほかの参加国や欧州中央銀行(ECB)がこの決定に強く反発しており、ユーロの信認だけでなく、欧州統合の行方にも影響を及ぼしかねない状況になっている。

 むしろ当面の問題は後者、つまり欧州統合の行方にある。問題の根幹にあるのは端的にいってドイツとフランスの強権を他のヨーロッパ諸国が恐れていることにある。日本人の感覚からすると、歴史を顧みてもドイツの強権というのは怖いという印象があるが、フランスの強権への脅威の感性は鈍いように思われる。背景にあるのは日本の初等教育における歴史教育が近代化を進めた明治以来本質的な変更がないためで、近代化の各国史、もっと露骨にいえば、帝国主義列強史になっていてそこから世界を眺めてしまうためだ。だが、現実にはフランスという国は歴史的に見てその内部の地域の独立性がかなり強い(もともと別の国の集まりとも言える)。なのに、これを強権で抑えているのであり、その最悪たるのが言語政策だ。日本の知識人は「おフランス」な趣味が強いわりに、こうした実態にそしらぬふりをしているように見える。
 日本ではイラク問題が、悪の米国に対して理性の仏独といったフレームで捕らえられることが多い。浅薄だ。ポーランドやスペインがどれだけこれに抵抗しているがゆえに、米国との関係に苦慮しているかがあまり顧みられていない。もともとイラク戦争の問題の背景にあったのは、フランスやロシアなどがイラクと石油市場の流動性を愚弄するような態度を取ったり、兵器輸出をしていることにもあり、その意味では、世界問題の極はフランスにあるとも言える。ル・モンドの主張などに尻馬にのって喝采をしている日本の知識人は…ま、なんというかねである。
 今後の動向としては、独仏への圧力が強まれば、トルコを独仏側に引き込むという荒手の技も出てくるかもしれない。トルコ一国でヨーロッパの数カ国分の票が潰せるし、米国にも強いにらみを効かせることができる。ああ、政治なんてものは汚いかぎりだ。
 日経社説に話を戻すと、独仏の赤字問題に着目している。EUはユーロの安定のために参加各国の財政赤字をGDP3%以内に抑えることが義務となっている。だが、独仏の財政赤字は2004年まで3年連続でこの水準を超える。そこで「俺たちがルールだぁ」と言い出したのだ。冗談じゃない。もっとも、独仏にしても他に策などはない。グローバルな景気の低迷やその対応として歳出抑制をしなければならない。と、書いてもみて、ふと変な感じがする。もともと歳出抑制の発想は国家経済の発想だが、EUはこれを全体で調和する方向にもっていくのが筋ではないか。とすれば、フランスは自国からEU大統領を出して、ゴリっとやるつもりなのではないか。背筋が凍るな。
 こうした中、コウモリのようなイギリスやIT分野に強い北欧がどう動くのか、もちろん、背景には米国があるし、日本も侮れないカードなのだ。むしろ日本はそこに突破口を見つけるために、ポーランドやスペインに友好を示すべきなのではないか。

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