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2003.12.07

アスピリンとCOX-2阻害薬

 新装開店極東ブログになってからお約束の薬学系の話がないので、ちと追加する。
 先日なにげなくNHKの「今日の健康」というような番組を見た。健康番組はあまり見ないのだが、テーマがアスピリンの新しい効能といったようなものだったので、ちょっと気になった。話は3点だった。1つ目は従来からの鎮痛作用。2つ目は血小板凝集の抑制で血栓の再発を予防する話。3つ目はCOX-2を阻害することによる大腸癌予防だった。この分野をワッチし続けている私としては特にどってことない話だし、それ以上のことをNHKに期待するわけでもない。ただ、細部で変な印象を受けた。
 まず血小板凝集の抑制による血栓再発予防だが、これに少量アスピリンが処方されるようになったのは一部の有能で良心のある医者以外はごく最近のことだ。なにしろ、この用途には薬価が決められていない。つまり表向き処方できないのだ。馬鹿馬鹿しいにもほどがあるなと思ったものだ。さすがにこの事態は改善された。余談だが、小渕総理が卒中でなくなったおりtPAではなくウロキナーゼなど使っているのを見て、ぎょっとしたというか、悪い意味で日本の医療は公平なものだと理解した。私は自分自身を冷静に見ると卒中で死ぬ確率も高いので人ごとではない。そういえば栗本慎一郎もその点ではうかつだった。彼の40代くらいの著作に自分の血は濃いのだみたいなことを自慢げに語っていたが、やばいよと私は思っていた。その通りになってしまった。彼も当時は少量アスピリンについては知らなかったようだった。
 欧米ではこの用途にバイエルの腸溶81mgを利用する。ジェネリックも多数で出ているし、歴史的経緯からアスピリンはOTCの代名詞のようでもあるので入手しやすい。日本ではどうなのだろうか。ざっとOTCを見渡してもよくわからない。詳しく調べてないので、ブログならではの放言になってしまうかもしれないが、OTCには存在していないのではないか。なお、ご存じだと思うが、小児用バッファリンはアセトアミノフェンであって、期待される効果はない。余談ついでだが、先週のSPAによくきくOTCの特集のようなものがり、薬剤師の監修が入っていたが、ちょっとこれはないなと思った。日本のOTCの状況はSJS(スティーブンス・ジョンソン症候群)問題がより健在化するのではないだろうか。といって、ようやく解禁になるドンキホーテでのTV電話による夜間OTC販売やコンビニでのOTC販売を止めろという意図ではない。
 NHKの話でも腸溶の少量アスピリンは処方薬扱いのようでもあり、人によっては安易に利用しないようにとも言うところを見るとOTCのようでもあり、判然としなかった。変な印象の一つはこれだ。
 もう一点は大腸癌予防だ。欧米ではすでに常識であり、その用途に一部サプリメント化している実態もある。NHKはそれを想定しての話なのかよくわからなかった。ただ、「そういう機能が見つかりました。その背景はCOX-2阻害です」というさらったした感じだった。そんなことだけのためにNHKで放送する意味があるのだろうか?
 話が前後するが欧米では腸溶の少量アスピリンがサプリメント化しつつあるが、卒中の再発予防よりも最初の発作の予防という用途も見られる。まして、大腸癌予防効果もある。さらにごく最近の研究成果だが胃癌予防の効果も期待できそうだ(Journal of the National Cancer Institute, December 3, 2003.)。薬学的な課題としては、これらの主要な機能はCOX-2阻害だけに由来するのかはまだはっきりとはわかっていない。
 とはいえ、ある程度COX-2阻害をうまく誘導できれば、これらのベネフィットが得られる可能性も高い。幸いにしてというか最低にしてというか、国内に存在するCOX-2阻害剤の効き目はあまりシャープではないようだ。だが、セレブレックスがOTCで解禁されれば、こうした用途に目をつける人は出てくるだろう。
 すでに厚労省側ではそうした読みもあるのかもしれない。当面は、セレブレックスは鎮痛剤だし、これを先の用途で少量利用するノウハウは確立されていない。
 と、ここで戸惑う。こんな考えようによってはヤバイ話をブログに書いていいのか? と書いているじゃないかとツコッミされるかもしれないし、あえて荒く書いたのでなんのことやらかもしれない。ただ書いているのは、これらはうまく統制すれば、国民の健康にベネフィットになることはかなり確かだと思うからだ。
 現在の、がんの健康食品の大半はアジュバントを使っているが、これと緩和なCOX-2制御を加えてはどうなのだろうか。「免疫力」(安保徹)がベストセラー快進撃だが、その結論がストレスを減らすでは「脳内革命」の二の舞だし、刺絡療法だけに絞られるのもなんだかなという感じがする。現状の医学は抗がん剤治療を志向していてアジュバントはお笑いのようでもあるのだが、まったく希望がゼロというわけでもない。
 たいした展望はないのかもしれないのが、希望がゼロというわけでもないのだ。

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