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2003.11.07

ロシア政局についてまともに書けない朝日新聞

 朝日新聞社説が今朝になって、ロシア最大の石油会社ユーコスのホドルコフスキー社長逮捕に端を発する一連の事件に言及しだした。あれ?という感じだ。そして期待通り、へんてこな内容だった。朝日ってなんなのだろう、不思議な新聞だなと思う。毎度ながら啓蒙しくさりのスタンスに立つので、社説「石油王逮捕 ― プーチン氏への気掛かり」はこう切り出されることになる。


ロシアはソ連型の統制国家に逆戻りを始めたのではないか。プーチン大統領は改革者というよりも強権主義者ではないのか。ロシア経済が再び大きく混乱しないか。そんな懸念が広がっている。

 確かにそーゆー問題なので、わかりやすく書いてみせるぜということだろうか。しかし、プーチンが強権主義ということと、ロシア経済の混乱の可能性をさらっと並記する神経がよーわからん。もちろん、私も現代日本に生きているからその雰囲気からしてわかりそうな気がする。だが、気がするだけだ。この2つを並記する神経はおかしい。
 以降、この社説の展開は例によってなにが言いたいのかごちゃごちゃする。デスク入りまくりじゃないのか。それでも、ちと長いが、結論らしき部分の1つはこうだ。

 過去の国有財産の不当な取得や脱税が事実としても、株式を実質的に国有化するような手段をとれば形成途上のロシアの市場経済は大混乱が避けられない。現に、ロシアの株価は下がり、外国からの投資も手控えが広がっている。財閥の資産形成に問題があったのなら、資産の没収ではなく、課税の形で過去の補償を行わせることだ。
 プーチン大統領に期待したいのは、所有権の不可侵、自由な競争といった経済原則と改革路線の堅持をあらためて行動で示すことだ。そうしないと、ロシア経済に欠かせない外資の流入が滞り、欧米との政治的な協調路線も深く傷つく。過去に後戻りすることの危険を思うべきである。

 よーするに「脱税だったら、課税すりゃいいじゃん」ということだ。朝日はもごもごしているが、「そーしないと、資本主義諸国に見放されちゃうよ~ん」というのだ。なんだかなである。朝日新聞の社説ってのは中学生レベルの知能だなと思うが、これが大学入試に使われるのは大学のレベルが落ちているからか、と、くさしはさておき、もちろん、朝日新聞社説の執筆者もそんな低レベルのはずはない様子は韜晦からちらちらとする。その当たりに朝日新聞を読む醍醐味もあるのだがというのは冗談。むしろ、問題はこっちだ。

経済的な影響も心配だ。石油・天然ガスはロシアの輸出額の半分を占める。新しい産業がなかなか育たないこの国を支えているのが、ユコスが代表する石油産業だ。

 と、ユーコスに目を向け、結語でこう受ける。引用が多くなってしまうが、元の文章が変なのだ。

 日本にとっても他人事ではない。政府は東シベリアと太平洋岸を結ぶパイプラインの建設を望んでいる。原油の中東依存を減らすうえで大事な構想だが、そのためにも、ロシアの石油産業が信頼できるものになってもらわねばならない。

 これって、高校生が読めば、そーかぁ、「ユーコスが問題を抱えると日本に向かう石油パイプライン建設の障害になるのか」と思ってしまう。どう読んでも、そうなるんじゃないか、現代国語だと。
 だが、事実は逆。ユコス社長ホドルコフスキーが進めていたのは、中国ラインのほうなのだ。つまり、話はまったく逆。今回の事件のおかげで、日本の石油政策は有利になるのである。
 そのことを知っていて、朝日さんは書けないのだ。便秘のような苦しみだろうなと察するに余りある。
 さらに、この問題の背景については、ごく一文のみ。

プーチン政権内でソ連国家保安委員会(KGB)出身者の力が強まっていることも欧米の懸念を呼んでいる。

 これじゃわからんよな。もちろん、複雑なロシア内の権力闘争を社説で論じるべきじゃないとも言えるだろうが、それにしても日経と比べれば痴呆感が漂う。
 日経の1日付け社説「ロシアの強権政治を案じる」では、欧米のジャーナリズムを踏襲して、KGB系のサンクトペテルブルク派とエリツィン派ファミリーの対立で論じている。ニューズウィークやNHK「あすを読む」でもこの構図だ。しいていうと、日経はKGB系の経済改革派も挙げているが、そのあたりは私にはよくわからない。
 ホドルコフスキーを巡る背景については、日本版ニューズウィーク11.12「ロシア 新興財閥たたきの裏にある闇 大物実業家の逮捕がさらけ出す政権内部の亀裂」のほうが詳しい。欧米のトーンでは、政治にちょっかい出すホドルコフスキーをプーチンが叩きつぶしたということだろう。だから、強権政治だと言えないこともなさそうに見える。
 だが、私は、ちと違った印象を持っている。プーチンはそんな単純なタマだとは思えないのだ。少なくとも今回の件で、欧州側の懸念によって経済的な打撃を受けているが、ロシア国内では支持されているし、日本へもウィンクを飛ばしていると見ていい。問題は米国の動向なのだが、ジャーナリズムのレベルではなく政策側でこの事態をどう見ているかが気になる。それに、今回の事件は本当にプーチン主導なのだろうか。

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