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2003.11.22

さらに再び電子メールは憲法で保護されているか

 我ながらしつこいなと思う。別に反論があったから浮き立っているわけではないが、どうも問題意識が理解されにくいのか、いや、こんな話に興味を持つ人は日本人はいねーかもなというダブルバインドなオブセッションになってしまった。ま、いいや、また新たに、さらに書く。
 気が付くともうけっこう古い話になるのかぁなのだが、1995年のこと、あ、1996年1月か、「FLMASK事件」または「BEKKOAME事件」というのがあった。BEKKOAMEという当時格安のプロバイダーでモロ出しのモロ部にマスクかけたのをアップしていた高校生と会社員がいきなしとっつかまった。BEKKOAMEも家宅捜索。で、当局はメールサーバーを押収しようとした。ぼっちゃり顔の尾崎社長もさすがにひきつって、そりゃないっしょと抵抗したのだが、さて抵抗は通ったのだったか。いずれにせよ、メールサーバーって押収できるのか?と思って、私は当時調べた。その時の結論は、電子メールは憲法の通信に該当しないらしいということだった。まさかと思ったのだが、あれは、「信書」じゃないらしい。どうやら、憲法のいう通信は、郵政管理下のものに限定されるようだな、ということだった。それでなるほど、宅配物も手紙を入れてはいけないのかと。
 ほいで、昨日、プロバイダー規制法の流れを見て、時代が変わったな、政府も一応電子メールを信書に次ぐものぐらいに認識しているかと思った。とこで、反論もあり、その反論への応答も書いた。
 率直にいうと、なんとも腑に落ちないのだ。ので、さらに書く。すでにネット上には残っていないようだが、日経インターネット・テクノロジー小松原健記者が次のように書いていた。


 社員の電子メールのチェックは,まず日本国憲法の21条2項「検閲はこれをしてはならない。通信の秘密は,これを侵してはならない」に反するのでは,という疑問が出てくる。しかし,この憲法は,国や地方公共団体などの公権力と私人の間の関係を規定しているというのが一般的な理解であるという。したがって,社員と会社という私人同士の関係には,通信の秘密などは適用されない。電子メールは基本的に,会社の業務として会社の施設を使用してやりとりするため,プライバシの侵害にもあたらない。

 前半は昨日の反論と同じで、どうっていうことはない。ま、そういう思考法に流れてしまうのだろうというのはわからないではない。だが、そうすると、この後半が帰結されてしまう。つまり、社員と会社という私人同士の関係には,通信の秘密などは適用されない、ということだ。たしかに、会社業務の電子メールはそうかとも思うし、こじれた夫婦関係の電子メールチェックなどはそれでいいだろう。よかねーか。
 で、私の念頭にあったのは、メールサーバーどうなの? サーバー管理者は公権力と私人の間の関係? で、これについては、大筋で昨日の元の話のように、そりゃだめよ~んとなりそうだ。
 だがな、そうかぁ?はつきまとう。そこが腑に落ちない点だ。
 ちょっと法律議論めくのだが、電子メールっていうのは「信書」か? それなら、違反者は「信書開封罪」(刑法133条)の適用もありだ。が、信書ってのは、郵便法によると「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書をいう」で、どうも、電子メールっていのは「文書(書面)」じゃねーよってことになっているらしい。阿呆かとも思うが。

第五条 (事業の独占)
 公社以外の者は、何人も、郵便の業務を業とし、また、公社の行う郵便の業務に従事する場合を除いて、郵便の業務に従事してはならない。ただし、公社が、契約により公社のため郵便の業務の一部を行わせることを妨げない。
 2  公社(契約により公社のため郵便の業務の一部を行う者を含む。)以外の者は、何人も、他人の信書(特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書をいう。以下同じ。)の送達を業としてはならない。二以上の人又は法人に雇用され、これらの人又は法人の信書の送達を継続して行う者は、他人の信書の送達を業とする者とみなす。
 3  運送営業者、その代表者又はその代理人その他の従業者は、その運送方法により他人のために信書の送達をしてはならない。但し、貨物に添附する無封の添状又は送状は、この限りでない。
 4  何人も、第二項の規定に違反して信書の送達を業とする者に信書の送達を委託し、又は前項に掲げる者に信書(同項但書に掲げるものを除く。)の送達を委託してはならない

 ちと余談だが、詳細は忘れた以前猥褻画像としてハードディスクが特定されるかという問題もあり、「そりゃねーべさ、データっていうのは物じゃないからな、物だったら、おれたちわざわざラインプリンターでソースコードの納品なんてするわけねーじゃん」と昔のSEだったオレは思ったのだが、どうも判決は珍妙なことになった。
 話を戻す。信書の送達業が独占というのは宅配の問題に絡む。ま、それはさておき、いずれにせよ。電子メールは信書ではない。
 ほいで、信書ではなくても、憲法のいう「通信の秘密」は守られるかだが、くどいが守られるようだ、が昨日の話。その場合の守りは、電気通信事業法によるわけで、それが憲法に由来するということで、めでたしめでたし、かぁ?なのだが、よーするに、電子メールは「電話」と同じということなのだろう。というあたりで、どうもなんだか変だ。トリビアの泉で「電子メールは手紙ではなく電話である」と言われたとして、へぇ~ボタンを押す手が固まってしまう。
 話をわざとらに紛糾させたいわけではないが、もう一つ重要な側面がある。エッジ株式会社の「電子メール管理による防止策の提案(2003.11.13)」(参照)というコラムを読むと、何が問題かはぼわーんとわかってもらえるかもしれない。

1●メールの監視による問題の防止
 さて、電子メールによる〈問題〉の防止には、メッセージフィルタ+アーカイブツールによる監視が有効であることは前回までにご説明したとおりです。この連載の初回にご紹介したように、エアーでは、WISE Auditというメッセージのフィルタとアーカイブが同時に可能なツールを販売していますが、このようなツールを有効に利用し〈問題〉を防止するためには、運用上のいくつかのルール〈ポリシー〉を決めておく必要があります。〈ポリシー〉を持たずに電子メールの監視を行うと、無用な混乱を招く恐れがありますので注意が必要です。
 まず、定めておかなければならないことは、電子メールの監視を行うことを利用者に認めてもらうことです。一般に電気通信は法で言う「信書」の性格があるものと考えられており、電子メールの利用者もプライバシーを期待しています。しかしながら、電子メールやインターネットの構造から言って「信書」並みのプライバシーは期待できません。また、業務目的の設備であるため、会社=管理者に監督責任が存在します。しかし利用者が認めないまま監視を行うと「検閲行為」となりプライバシーの侵害等の違法行為となってしまう危険があります。

 軽く書いてあるが、「電子メールの監視を行うことを利用者に認めてもらうこと」それでいいのかぁ~!である。
 もっと重要なのは、「しかしながら、電子メールやインターネットの構造から言って『信書』並みのプライバシーは期待できません。」にある、現状の電子メールの構造の問題だ。エッジ株式会社では、信書=プライバシーとしているが、それはちょっと論点が違う。PGPとかをマストでプロトコルに組み入れればいい。むしろ、問題なのは、PGPとかをメール構造に組み入れると、「電子メールによる〈問題〉の防止には、メッセージフィルタ+アーカイブツールによる監視が」無効になってしまうことだ。
 どうする? といいつつ、現状ではSPAM Assassinとかすでに動いていて、ロボット監視になっている。ま、同意は取っているとはいえ、それいいのか?
 話が紛糾したので、まとめておこう。

  • 電子メールはメールとあるがメール(手紙)ではない
  • 手紙は日本国家が独占している
  • 「通信の秘密」は電子メールの場合、電気通信事業法によって守られるが、信書開封罪など刑罰対象にならない(やり得かも)
  • 電子メールの閲覧は会社業務という名目あれば行ってもいい
  • 「電子メールは構造的にプライバシーが組み込めないぞぉ」という風説が流れて出している
  • 電子メールにプライバシーを組み入れると、SPAM排除などなにかと困ることにもなる

 で、社会問題としてどうする? ま、どうにもならんか。従来の葉書や封書でも事実上通信は丸見えだったし、やはりそういう前提の上に通信の秘密が成り立っている。
 むしろ、電子メールは信書じゃないよ、という視点を推進して、スパム問題なども解決したほうがいいかもね(一種の「出版」概念に近づける)。

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