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2003.11.21

電子メールは憲法で保護されているか

 4日前のネタなのだが、17日のZD Net Newsの「『プロバイダ責任制限法』に残る、これだけの課題」を読みながら、以前にも疑問に思ったことを思い出した。端的に言えば、電子メールというのは通信に含まれるのだろうかということだ。が、端的過ぎて、かえって疑問がわかりにくいだろう。背景を含めると、憲法21条2項の通信の秘密が電子メールに適用されるのかということだ。
 以前調べたおりは、憲法の通信の秘密が適用されるのは当時の郵政省(現在総務省に統括)スネールメールだけだった。現状はどうだろうか。ZD Net Newsを読むと、そうでもなさそうなので、少し珍妙な思いがした。
 この問題は複雑怪奇だという印象を持っている。例えば、宅配便の規制だ。現状では、法律上は宅配物に手紙を入れてはいけない。知ってましたか?と、知っていてどうとなるものでもない話だ。仮に宅急便で送る物に封書を入れておいたとする。どうなるか? これは憲法でいう通信の秘密によって守られてはいない。じゃ、開けていいものか?と、考えれば考えるほど変な話になる。
 以前考えたのは、憲法の通信の秘密とはいつでも国家権力が秘密を破れるからこそ、建前上というか権利概念としてのみ文言となっているのではないかということだ。なにせ、ポストカード(葉書)に至っては丸見えだ。見えても「黙っていないなさい」ということだ。封書もこっそり開けたらこっそり糊で封しなさい、と。
 ちなみに、憲法を読み直す。まず英文を読まないと日本の憲法は理解しづらい。原典はこうだ。


Article 21:
(1)Freedom of assembly and association as well as speech,
press and all other forms of expression are guaranteed.
(2)No censorship shall be maintained, nor shall the secrecy of
any means of communication be violated.

 現状の訳文はこうだ。

第21条 【集会・結社・表現の自由、通信の秘密】
 (1) 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
 (2) 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

 時代もあるのかもしれないが現代なら誤訳と言っていい。pressは「出版」じゃなくて「報道」だ。同様に、communicationを通信とするのは、なんだかなであるが、いずれにせよcommunicationの原義を考えるなら、電子メールが該当しないわけはない。でもそれなら、宅急便に手紙を忍ばせてもそれを見てはならないことにならないか。まぁ、そんなこと言ってもしかたないか。
 話をZD Net News戻すのだが、今回あれれ?と思ったのは、この記事では、電子メールが特定電気通信には含まれないというのは謎だとしている。謎なのか? 記事では、総務省によるプロバイダ責任制限法の逐条解説を挙げ、第2条1号の「不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信の送信」が「多数の者に宛てて同時に送信される形態での電子メールの送信も、1対1の通信が多数集合したものにすぎず、『特定電気通信』には含まれない」 というは変だというのだ。
 そうか? もちろん、記事全体の意図がわからないわけではない。いわゆるマルチメールは通常のメールじゃないよとしたいのだろう。個人的にはあれは出版だと思うが、しかし、当面は私の疑問に戻る。つまり、一人に宛てた通常の電子メールは憲法で保護されるところの郵便(通信)に該当するのかだ。
 というわけで、その資料の原文を取り寄せてみた(参照PDF)。該当箇所はこうだ。どうでもいいが下手糞なPDFだ。総務省にはまともにAcrobatを使えるやつはいないのか。

 インターネット上のウェブページ、電子掲示板等は、電気通信の一形態ではあるが、不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信(=有線、無線その他の電磁的方式により、符号、音響又は受けること(電気通信事業法(昭和59年法律第86号)第2条第1号))の送信であることから、このような形態で送信される電気通信を通信概念から切り出し、「特定電気通信」としたものである。電子メール等の1対1の通信は、「特定電気通信」には含まれない。なお、多数の者に宛てて同時に送信される形態での電子メールの送信も、1対1の通信が多数集合したものにすぎず、「特定電気通信」には含まれない。

 なにを言っているのか今ひとつわらかんのだが、とにかく、1対1の電子メールは「特定電気通信」には含まれないことはわかる。同様にマルチメールも「特定電気通信」ではない。
 で? 要するに、電子メールは憲法による通信の秘密で守られているのか?
 どうも私の以前の憶測は間違っていたようだ。プロバイダ責任制限法についての議論を見ていると、電子メールが「特定電気通信」には含まれないために、発信者情報の開示請求ができないというは、逆に言うと通信の秘密は守られているわけだ。電子メールをもし誰かが閲覧したとしても、その閲覧者は秘密を守らなくてはいけないということだ。
 当たり前すぎてつまんねー話になってしまったが、個人的にはちと腑に落ちたので良しとしたい。

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