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2003.10.18

ヴァイコディン(Vicodin)は日本で話題になるだろうか

 今朝の新聞各紙の社説は日経を除いて藤井治芳聴聞を扱っていた。変な感じがした。なぜそれが今日の話題なのか。聴聞が行われたからだというのもわからないではないが、別段今朝書くべき内容でもない。こんな話は14日の時点で書くべきなのが、なぜこの間、各紙日和見と決めていたのだろう。その裏のほうがきな臭く感じられる。他、イラク問題についてもさして見るべき話もない。なにより、2004年分無償資金協力として15億ドルの根拠が疑問視されていない。日経ですら追及していないに等しい。馬鹿か、おまえら、という感じだ。

 今朝の話題は、多少ためらうのだが、ヴァイコディン(Vicodin)という処方薬についてだ。時事としたのは、ニューズウィーク英語版10.13のカバーストリー「Rush's World of Pain」が関係している。と、ちょっとまどろっこしい書き方をしたのは、いわゆるライター物風にこの問題を書くと、かえってわかりにくくなるからだ。問題にはヴァイコディンという側面とラッシュ・リンボー(Rush Limbaugh)という側面の2つがある。どちらも日本の風土にはなじまない話題なので、次号の日本版ニューズウィークがどう扱うか見ものだ。そのままベタで行くとすれば、日本版の編集能力が疑われる。独自記事の追加は必須だ。カバーストーリーなのに全部差し替えにするなら、それはそれで日本の知識人を舐めくさった、みごとな見識だと言っていい。
 私のブログの内容はどちらかというとヴァイコディンについてなのだが、まず、ラッシュについて簡単に触れておこう。ラッシュ・リンボーは日本でも多少知られているが、米国の右派の論客だ。日本の場合、左翼が知識人の代表だった影響が長く続き、久米宏などもその気取りで阿呆なことを言い散らしたのだが、ラッシュはあれをぐっと右寄りにしたものだ。見るからに保守という感じのでぶっりとした禿げなのだが、米国での人気は高い。フェミニズムを中絶を推進する点からファシズムだとして切り捨てるあたりが米国人には痛快だ。日本でもFEN(現在はAFN:American Forces Network)で彼のトーク番組が聞けたものだが、聞いてわかるようにあのダミ声は意外に米国人好みでもある。
 今回のラッシュの問題はざっと見渡したところ日本のメディアではほとんど扱われていない。CNNの形ばかりの日本語サイトに4日「人種差別発言で辞任のスポーツ解説者に、薬物取引疑惑」というニュースが掲載されたが、これではなにがニュースなのかわからないだろう。
 フロリダ州マイアミ(CNN) 米スポーツ専門有線テレビESPNの番組中、人種差別と見なされる発言をし、1日に同局解説者を辞任したラッシュ・リンボー氏に、闇取引を通じた薬物購入の疑惑が2日浮上した。
 この後にこの概要がフォローされるわけでもないので、日本人のイメージではスポーツ解説者が大麻などの麻薬に手を出したくらいに解釈されるのではないだろうか。と、日本でのウケを想像しながら、日本っていうのはのんきな国だなと思う。これじゃ警察がダメになっていくわけだ。
 締めはこうだ。


 リンボー氏は9月28日、米プロ・アメリカンフットボール(NFL)のフィラデルフィア・イーグルス対バッファロー・ヒルズの試合を報じた「Sunday NFL Countdown」の中で、イーグルスのQBドノバン・マクナブ選手は、黒人選手の成功を報じたいとするメディアが取り上げているなどとコメント。人種差別的な発言として物議を醸した。

 なるほど人種差別が問題なのかとしか読めない。が、そうではないのだ。右寄りのラッシュをメディアから引きずり降ろす言い訳に過ぎない。私の推測に過ぎないが、おそらく早々に薬物疑惑は押さえれられていたはずだ。こちらの疑惑をラッシュに認めさせてから、表向きの説明として人種差別的な発言などが出てきたということだろう。
 話を絞ろう。この「闇取引を通じた薬物購入の疑惑が2日浮上した。」という薬物だが、これがヴァイコディンだ(10.9追記注:正確にはリンボーが服用していたのはhydrocodone、Lorcet、OxyContinとのこと)。CNNの印象からは恐ろしい薬物のように思われるかもしれないが、米国では普通に処方される鎮痛咳止め剤の一つに過ぎない。ヴァイコディンという名称は発売元Knollの商品名で内容は、hydrocodone bitartrate 5mgとAcetaminophen 500mg。分量だけ見れば、なんのことはないアセトアミノフェンが主成分のように見えるが問題は、重酒石酸塩化合物となったhydrocodone bitartrateのhydrocodoneほうで、これはモルヒネと同等機能を持つ薬物だ(効果はその2/3)。という書き方は杜撰なのできちんと書くべきかもしれないが(参照)、いずれにせよ日本国内では昔から法的に麻薬扱いになっている。ずばり麻薬と言って法的に正しい(対象は、ジヒドロコデイノン[別名ヒドロコドン]、そのエステル及びこれらの塩類)。
 ラッシュはこの麻薬含有の鎮痛剤を常用していたわけだ。それだけ身体に痛みを抱えていたかというと、おそらく精神的な苦痛だろう。あの歯切れ良い右派発言の裏にそれだけ苦痛を抱えていたのかというのが、一般米国人の印象だろう。(追記11.21。ラッシュの利用開始時は脊髄を痛めた際の鎮痛剤を処方されてから。その後、自分でも薬物中毒はわかっていて、アリゾナ州の施設で中毒治療を受けていたとのこと。でも、その後の乱用は精神的な苦痛とみていいのではないか。)
 ヴァイコディンはすでにジェネリック(Hydrocodone: 4,5a-epoxy-3-methoxy-17-methylmorphinan-6-one tartrate(1:1)hydrate(2:5),dihydrocodeinone)の扱いになっているので、処方薬とはいえ、米国ではあちこちに普及している一般薬だ。ということで別に「闇取引」などしなくてもインターネットで簡単に購入できる。最近私のところにやってくるスパムでも「ヴァイコディン買いませんか」が、どっとやってくるようなった。
 ヴァイコディンについて国内のホームページの状況をざっとgoogleってみたが、たいした情報はない。一見しただけでは国内持ち込みと推定される形跡はない。だが、率直に言って、あるだろうな。ブロンとか一時期流行っていたようだ(これには咳止めのためにリン酸ジヒドロコデインが含まれていた)。もっとも、ヴァイコディンは日本国内では麻薬扱いなので、AMTや5Meo-DIPTのように処罰しづらいわけでもない。はてなにも「下記に挙げた薬物の中から、ニュージーランド国内ではどれが違法で、どれが問題ない薬物なのか教えてください。5MeO-DIPT、AMT、2C-T-2、2C-T-7、2C-I、2C-C」といったのんきさんが出てくるほどだ。なお、この手の「脱法ドラッグ」について知りたいかたは、「脱法ドラッグ試買検査結果について」(参照)を参照。ちなみに、日本のドラッグ系の人というのは意外なほど英語に弱く仲間内の日本語情報に頼っている。女性高校生の情報伝達とほぼ同じだ。
 ヴァイコディンについては、警察が後手に回ってニュース沙汰にならないことを願いたい。警察もいつまでも民間警察(やくざ)と55年体制やっていいわけじゃない。また、これ見よがしにインターネットは危険だぁとかいって少年を血祭りにするようはことも避けていただきたい。
 と、なぜ私はそう主張するか。理由は国内でモルヒネをきちんと医療の場で使って欲しいからだ(参照)。麻薬=危険というだけの社会であってはいけない。医療が高度化することで、返って苦しみながら非人間的に死んでいく人が増えている。この問題にきちんと対処しなくてはいけない。

追記1
 「在米」さんから厳しいコメントをいただいた。私の推測が大はずれというのは、そういう意見があるという一般論として了解する。推測というのは一般的にはずれるものだ。が、正直なところ、この件についてはずれているとまでは思っていない。ということで、あえて現状のままにしておく。ご批判されている点について私が理解できれば、書き直したい。
 一般論として「もっと勉強すべし」は肝に銘じたい。ただ、無知の諸点を教えていたきたいと思うのが率直なところだ。
 考え直してみると、Lorcetについてであるわけはないので、OxyContinについてのご指摘かもしれない。確かに、この点は不正確だったので、とりあえず本文注を追加した。
 ヴァイコディンについては、歯科の処方やbogus call-inなど補足情報(参照)を参照にしておいたが、お読みになっていたけただろうか。
 鎮痛剤の問題については、過去にも記したので、こちらにも問題があれば、ご指摘いただきたい。「幼い子供のいる家庭に必須のアセトアミノフェン 」「アスピリン喘息の患者はどう扱われているのか」
 いずれにせよ、無知の壁のこちら側には「無知だよ」では伝わらないし、他にここを読まれているかたに、具体性において有益な情報を提供できたことにはならない。私としてはこの件について、「無知を了解できない」という意味では、現状の記述でよいのではないかと考えている無知な状態だ。
 この日のブログは、日本でもしかするとヴァイコディンが問題化される際、自慢ではないのだが、googleで上位にヒットする可能性があるので、できるだけ正確な情報を提起しておきたいと考えていた。ので、より正確な知識があれば、訂正したいし、追記したい。

追記2
 日本語版ニューズウィークの最新号が届いた。表紙が全然違う。ま、それはいいがと思ってめくったが、この問題への言及はゼロ。皆無だ。この日のブログに記したように、日本語版ニューズウィークってのは「日本の知識人を舐めくさった、みごとな見識」という印象だ。今後の掲載を僅かに期待しよう。
 ところで、その後、在米の印象を与えるハンドル名「在米」さんからの再度のコメントはない。私のなにが無知だったのだろうか。

追記3
 ブログのあり方としてフェアではないのでが、「ヴィコディン」の表記を「ヴァイコディン」に修正した。うかつだったのだが、日本ではViagraは「ヴァイアグラ」または「バイアグラ」になるのだった。むしろ、「バイコディン」とすべきなのかもしれないが、とりえず、修正しておく。理由は、今後、この用語で検索される時の便宜を考えてのことだ。
 併せて、「hotsumaのURLメモ」id:hotsuma:20031031にヴァイコディン関連のリンクがよくまとまっていた。ので、この話題をサーチされているかたは、そちらも参照のこと。

[コメント]
# 在米 『リンボー報道に関する推測の部分、大はずれ。ちゃんと現地ニュースを時系列に沿って複数のソース読めばこんな風にならない。たしかにヴィコディンへの調査は以前から入っていたが、Countdownの発言とは別。リンボーのことを前から知ってる、と言いたいのはわかったが。まだバカにしているCNNのほうがマシ。あと、アメリカの鎮痛剤問題と鎮痛剤への一般認識(麻薬ではなく)についても無知がすぎる。もうちょっと勉強すべし。』
# レス> 『厳しいコメントありがとうございます。この件、追記します。』

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