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2003.10.08

狂牛病再発の裏を少し考える

 狂牛病(BSE:牛海綿状脳症)に感染した牛が国内で発見された。今朝社説で扱っているのは朝日新聞と毎日新聞の2紙。昨日の藤井治芳解任問題と同じ構図で、読売と産経の及び腰はなぜだろう。
 今回の狂牛病再発の問題は難しい。なぜ?という疑問に答えられないからだ。私もわからないから、ろくなことが言えない。新聞の社説としても扱いづらいだろうから、畢竟、凡庸な話になる。朝日は昔ながらの社会派にして諸問題は人災的な発想なので、こうなるのはしかたがない。


 まず確かめなければならないのは、今回の牛の飼料に肉骨粉が混じった可能性があるかどうかだ。
 BSEが大量に発生した英国でも肉骨粉の使用を禁じたあとに感染が起きている。これは農家に残っていた古い肉骨粉を食べたのが原因ではないかと疑われている。

 それ自体は間違いではない。そしてそれが確認されるなら、当面の問題は終わりと言ってもいい。ま、そうは問屋が卸すまいと考えるべきだろう。毎日社説の執筆者は朝日よりもう少しインテリジェンスが高いようだ。

 問題の牛は国内で肉骨粉の使用が禁止された後に生まれた。それを考えると、原因は肉骨粉以外にある可能性が高い。
 一方で、残っていた肉骨粉を含む汚染飼料が誤って与えられていた恐れもある。いずれにしても、詳しい追跡調査が欠かせない。
 後段はデスクの付け足しではないかと思われるが、ようは、この問題の重要性は狂牛病の感染源は肉骨粉以外ではないか、という疑問だ。

 私はこれが重要だと思う。狂牛病について、ノーベル賞は付いたものの、公平に見ればプリオン説はまだ確定していない。謎を突き止めることで、プリオン説が詳細化されるか否定されるか、いずれにせよ科学知見は進歩するだろうし、日本の学者にそれを期待したい。
 ところで、なぜこの問題が今頃出てきたのか。裏はあるのか? 私にはわからないが、案外裏はないかもしれない。今回のケースでは生後23か月、つまり2歳という若年で調査しているせいもあるだろう。しいて言うなら調査員らが成果を誇りたかったのかもしれない。
 多少気になるのはタイミングだ。カナダで狂牛病が発生したことから、米国では一時期牛肉の輸入を禁止していたが、この9月1日から解禁。日本政府はこの事態を梃子に米国に向けて、米国内で処理されたことの輸出証明書を義務づけさせた。ざっくばらんに言えば巧妙な非関税障壁だ。この問題から今回の問題を読み解くことはやや難があるように思う人もいるだろうが、この読みの線がまったく外していないことは、米国時間で昨日のロイター通信の次の記事でわかる。

Japan mad cow case may affect US-Canada trade - USDA

Last Updated: 2003-10-07 10:15:17 -0400 (Reuters Health)

By Randy Fabi

WASHINGTON (Reuters) - The U.S. Agriculture Department said on Monday it was seeking more details about a new case of mad cow disease in a young animal in Japan, which could impact a USDA plan to reopen U.S. borders to shipments of live Canadian cattle that are under 30 months of age.


 この先要領の得ない記事が続く。で、要点は以下だ。

Cattle futures traded in Chicago moved sharply higher earlier in the day, in part on worry that the new Japanese case could alter the USDA's thinking on the risks posed by Canadian cattle younger than 30 months.

 2歳レベルの牛の調査体制を国際的に強いることでさらに非関税障壁を高めるという脅しになる。この方向で各種協議はわざとらに紛糾するだろう。とはいえ、だからわざわざ今回国内で狂牛病の牛を発見させたとまでは言い切れない。
 狂牛病について、今回のニュースがあったにも関わらず、私自身の庶民感覚からしてみても、日本国内ではそれほど牛肉市場には影響はでないだろう。この間抜けさ加減は朝日新聞社説からもわかる。
 とはいえ、いたずらに不安がることはない。私たちの口に入る肉や牛乳に心配はない。危ない脳や脊髄は食用から除かれている。
 確かに、朝日新聞語で言うところの「いたずらに不安がることはない」は正しいが、より緻密に言うなら、これは嘘っぱちである。とはいえ、この話をこのブログに書くべきか多少迷う。2ちゃんねるに多いDQNに引用されても困る。ので、簡単に記すにとどめるが、牛タンは感染源になりうる。詳細を知りたい人はRapid prion neuroinvasion following tongue infection.(参照)を読んでほしい。
 余談だが、朝日新聞の「牛海綿状脳症(BSE)」や毎日新聞の「BSE(牛海綿状脳症)」という但し書きで本文ではBSEと略記する表現はジャーナリズムらしくないと思う。ロイターではMad cow disease, or bovine spongiform encephalopathy (BSE) と但し書きになり、BSEの略記も使うが朝日新聞のように見出しで「BSE ― 落ち着いてナゾ究明を」とはしない。"mad cow"だ。ロイターに習えとも言わないが、「狂牛病」でいいではないか。

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