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2003.10.06

住宅供給公社を潰せと煽る正義

 住宅供給公社について毎日新聞社説「取り潰しも視野に入れて」が取り上げていた。論旨は明快過ぎるほど明快で、ようは取り潰せということだ。確かにそうだろうと思う。この問題を決定的にしたのは、時価会計の適用だ。
 この問題について、私はうまく言えないある種のもどかしさを感じる。その感触の一端は、例えば、毎日新聞社説の書き出しから受ける、ある種の不快感だ。


 道頓堀の水を抜いたとしよう。ヘドロの堆積(たいせき)は言うに及ばずありとあらゆるごみが眼前に現れるだろう。まるで今回から時価会計が適用された住宅供給公社のようなものではないか。

 単なる文章術の問題かもしれないが、イメージの修辞を先にもってくるのは変だなと思う。続けてこう毎日社説は言う。

 公的な法人の中で住宅供給公社ほど多くの問題をいま露呈している組織は日本にない。思うにこの体たらくは地方自治体的な無責任、都道府県役人の天下り、地方政治と癒着した不動産業者という「腐敗の三点セット」が見事に演出したものだ。先日質流れのような安値でマンションを売って高値で買った住民を怒らせたのは東京都住宅供給公社だったが、その流れはここからきているのだ。

 確かにその腐敗の3点セットがある。だから取り潰せというのは明快だ。明快過ぎる。そして、少し考えれば、問題の時代背景となる地方住宅供給公社法は高度成長が加速する昭和40年前半の産物で、その時代には意義があったのが時代に取り残された、と言える。時代が変わったのに刷新しないから腐敗した…もちろんそうだ。だが、なにか心に引っかかる。
 先の毎日社説の引用で東京都住宅供給公社が住民を怒らせたという話は、読者が既知なものとしてさらっとふれているが、これは、八王子市多摩ニュータウンの分譲マンションの売れ残り65戸を7割引きで「たたき売り」したため、完成時に高値で買った住人が怒ったという話だろう。
 完成時に買った人にしてみれば怒るのも当然と言えそうだが、そうだろうか。公社は、周辺の中古物件の取引価格を参考にしたと言うが、そのこともそれほど誤りではない。
 値下げ幅の大きい2LDK(78平方メートル)は1995年完成時5189万円。それが、たたき売りで1312万円。90平方メートルものが1900万円。中央線沿線で立川あたりまでを視野に入れると、中古物件としても安いような印象はある。多摩ニュータウンといっても広いが交通の便は、駅に近いという意味ではそれほど悪くない。とはいえ所詮私鉄沿線なので立川レベルの街との利便性は高くはない。話が些細なことになってしまったが、お得な中古物件だと言えるし、もう少し500万円から1000万円高くてもいいようにも思える。そうだとすれば、東京都住宅供給公社は不動産屋としては、やる気がないのだ。
 多摩ニュータウンのような僻地を住宅地に一新させるだけの大プロジェクトは国ではなくてはできない。そして、これからの東京は、局所の過密を防いで全体の人口を上げざるを得ないのだから、まだそうした大プロジェクトが必要なのではないかとも思う。もしそうなら、東京都住宅供給公社をうまく経営すればいいだけのことかもしれない。
 もちろん、そんな経営者が公社なんぞにはいないのだとくさすことは簡単だ。だが、巨大な中古マンションの維持が問題になるのはむしろこれからなので、東京都住宅供給公社をたんに取り潰して無しにするより、もっと住民視点の保守体制が必要になるのではないか。そうすることで、マンションの資産価格も維持されるのだから。

[コメント]
# ただすけ 『何故、徐々に値下げを行わなかったのですかね?段階的に値下げをするのは無理だったのですかね?』

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コメント

その毎日新聞の記事は読んでないんですが、単に潰せとか悪口雑言浴びせるのは簡単だし、マスコミのお家芸かもしれません。
問題はいろいろあるんでしょうが、公社という組織のガバナンスが確立されていない点にあるように思えます。比ゆ的にいえば3セクのような無責任体制が災いしているように思えます。
経営方針を内部で決定できずに常に公共団体の朝令暮改的な方針に従わされたり、妙な「天の声」で変な土地を買わされたりしたことがつまずきの一因であるように思えます。

投稿: がりがり | 2005.04.19 14:03

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