「新三種の神器」だなんてお気の迷いでしょう
日経を除いて、日本テレのプロデューサーが視聴率調査会社の対象世帯を買収していたという話を扱っていた(追記:日経扱いは翌日だった)。よくわからない。そんなことが問題なのか? 私が思ったことは、買収された世帯はわかっているのだから、その条件で統計値を補正すればいいだけのことではないのか、ということだ。各社説は「テレビ業界の倫理にあるまじき」というのだろうが、そうか。そもそも視聴率調査会社にそういうフィードバックが効いてなかったというだけのことではないか。なんでこの手の問題にはしゃぐのか、私にはよくわからない。
他の話題としては、イラク復興支援の問題があるが、批判しているつもりの朝日新聞の社説が要領を得ない。この問題について明確にしなければいけないことは、明細だよ。まったくサラリーマン・ジャーナリストって人たちは会計に苦しんだことがねーのだろうか。支援額については現状の日本ではつらい額ではあるが、すでにイラクからはしぶちんの独仏への批判が起きている。日本の外交策としてはこの期に札束で独仏の面をひっぱたいておくほうがいいと思う。洒落ではない。
今朝の話題はまたつまんねーよと言われそうだが、日経新聞社説「『デジタル家電』躍進の好機を生かせ」だ。一読してトリップしそうになってしまった。
「新三種の神器」という言葉が電機業界で飛び交っている。売れ行き好調の薄型テレビ、DVD(デジタル多用途ディスク)レコーダー、デジタルカメラを指す。これらに代表されるデジタル家電が自動車などとともに、現在の景気回復のけん引車になっている。
「新三種の神器」とはね、そんなしょーもないと思ったのだが、産業経済界の爺いどもは本気なのか。まいったなという感じだ。まず、そんな小物じゃ、経済効果なんかないだろうにと思うのだが。薄型テレビはサイズによって青天井だが、家庭用なら15万円くらいか。DVDレコーダーは10万円を切る。デジカメは3、4万円くらい。夢路師匠を偲んでズバリ買いましょーとしてだ、30万円というころか。ちょい前のパソコン価格だな。なんだよっていう感じだ。
ちょっと話がねじれてしまうが、薄型テレビはまだいいとして、DVDレコーダーもデジカメもまだまだ全然家庭向きじゃない。もっと単純であるべきDVDプレーヤー自体、全然インターフェースっていうものができていない。これほどひどい商品を放置しておいて、ユニバーサルデザインがどうのこうのって言っているやつは阿呆じゃないのか。
爺いたちがトチ狂うのは、「三種の神器」という言葉のマジックだ。
1950年代半ば、電気冷蔵庫、洗濯機、掃除機が「三種の神器」と呼ばれ、家庭電化時代を開いた。60年代半ばには、カラーテレビ、クーラー、カー(自動車)の3C時代が幕を開け、耐久消費財ブームが高度成長を加速した。今回の「新三種の神器」も、規模はまだ小さいものの大きな波の到来を予感させる。
ロートル極まるな。どうせロートルならもっときちんと当時を思い出すといい。ドラッカーがよく引く事例だが、50年代前半だろうと思うが、当時の日本人は年収を超えるテレビ(白黒)を無理してもよく買った。それほどすごい商品だった。それがあるとないとでは家庭の絵が変わった。だが、「新三種の神器」はどうかね。それの有無でどういう生活シーンが見えるというのか。こんなトンマな社説を書いているようじゃ未来の経済紙とは言えなくなるんじゃないか。
くさし的な話は切り上げるとして、この「新三種の神器」に欠けているはブレーンだ。マイクロソフトじゃないけど、メディアのセンターがなくては十分にデジタルメディア装置は機能しない。重要なのはメディアセンターと家庭のイマジネーションであり、その家庭の主要な構成はパラサイトと高齢者だ。
小物についていえば、デジカメは大衆向けはケータイに統合される。だいたい家庭用に200万画素以上は要らない。DVDレコーダーは所詮テレビの付属だ。とすると、メインの録画編集の機能はHDレコーダーが装備していなくてはいけないし、HDレコーダーはEPGと連動していなければ意味がない。このあたりの全貌を理解できているのはソニーくらいだろうが、ソニーもブランドイメージのせいか、大衆市場を見据えていない。なんだか間抜けな有様だ。
間抜けといえば、こうしたデジタルメディアの時代になっても、依然、コンテンツはテレビに依存するというのに、テレビ局たるや今でもリアルタイムの視聴率にこだわっているのだ。もう「放送」の時代じゃねーんだよ。ただ、コンテンツを送信しているだけで、再生は任意なのだ。
誰でもいいから、このあたりで、きちんと大ラッパを吹いて、メディア環境を整備すれば、その点では日本はけっこう快適になるのだが。
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コメント
自動車、家電、半導体といったこれまでの基幹産業は、市場と技術の成熟化、陳腐化で市況品製造産業化を免れないだろうから、新基幹産業のアイデアだけ出しておきます。社会的責任は取れません。それでも、従来の基幹産業にはもう、先進国経済は依存しきれなくなるのは間違いないと考えます。
何よりも有望な候補は、超伝導産業だと思います。なにも、液体窒素で稼動する高温超伝導材料にこだわらなくても、従来の液体ヘリウム冷却型合金材料でも開発と普及に熱心になるべきです。超伝導材料産業が進歩成長すれば、支援産業も成長するし、裾野も広がる。
理想的には、リニアモーターカーが首都圏、関西圏、名古屋圏に張り巡らされて、東京大阪間もリニア新幹線が開通することだと思うけれど、いきなりそこに飛躍しなくても、NMR関連産業のことごとくを超伝導磁性体にどんどん置き換えていく努力をしていくだけでも、目を見張る成果が出るものと期待しています。2次元(多次元)NMRでのいろいろな高分子の立体構造の研究とか、医療現場のMRIとか超伝導材料を使ったほうが明らかによい話はいっぱいあるはずなのです。でも、これまでは、あまりに超伝導のコストが大きかったので、そういう方面にあまり、資金と人材を回せなかっただけだと思っています。
つぎに、高速増殖炉の開発と並行して、核融合原子力発電の実用化の努力は怠るべきではありません。超伝導は既存技術ですが、核融合は果たして産業技術化しうるか不可能なのか未知数です。でも、これは、ぜひ取り組むべき研究課題です。
私自身は、超伝導と核融合の研究を根気よく続けるうちに、核化学的な希少元素や希少化合物の製造プロセスが次々開発できるようになるのではないかと、都合のよい期待をしています。いろいろなレアメタルやアイソトープを、銅とか鉄とか、酸素とか窒素とかを加速された素粒子などを使って反応させて、大量に、廉価に、高純度に製造できれば、これまでは成立不可能だった産業や装置や回路を、次々に生み出せるようになると思います。
既存の基幹産業は、自動車、家電、半導体、これからの新基幹産業は、超伝導、核融合発電、核化学工業。
馬鹿らしいかもしれないけれど、考えるだけならタダだから、ひょこっとアイデアだけ出しておきます。でも以上の「新基幹産業」が全部成立してしまったら、それらの「新基幹産業」は現在のIT革命など稚戯にしてしまいますね。
投稿: 新基幹産業(案) | 2009.01.16 13:37