日清上湯麺は「エルダー世代」に美味しいのか
昨日は中国有人宇宙船のニュースをよく見た。この件についてはすでに書いたし、書き足すほどのことはあまりないが、今朝の朝日新聞社社説「まぶしさと気がかり」は多少意外だった。諸手を挙げて中国賛美するのかと思ったらそうでもなかった。とはいえ、中国の宇宙開発は軍事と一体だ。昨年春、有人飛行計画について当時の江沢民主席は「科学技術の進歩と国防の現代化に重要な意義がある」と述べている。今回の打ち上げに関する情報も直前まで機密扱いだった。宇宙開発が米国との軍拡競争や周辺への脅威につながるなら、日本国民も国際社会も歓迎はできない。 意外にまともだね。結語もまともな印象だった。
中国の成功は日本にはまぶしい。日本の経済援助を受ける途上国の躍進に複雑な感情を抱く人もあろう。だが、ここは中国が宇宙の国際協調の流れに加わるよう力を注ぐことが、日本の役割である。
別にあんなカプセル型「まぶしい」ってことはないが、朝日新聞の社説っていうのは科学に無知とはいえ、感覚はまともなときはまともだと思う。
今日の話題は日清上湯麺についてだ。以下、実にくだらない話だ。
ことの発端は「もしもしQさんQさんよ・邱永漢」の「第1314回インスタント食品も高級化の時代に」だ。美食について語らせたら、美食家が黙り込むだろう邱永漢がこう言っていた。以下、引用の都合で改行は削除する。
それでも盆暮れになると、日清食品の新製品を届けていただいて今日に至っています。私は口が奢っていて、あまりインスタント食品に馴染まない方なので、たまにしかいただきませんが、ちょうだい物のおかげでどんな新製品が発売されているか大体わかります。
つい最近も日清上湯麺というオトナの食べる一番ダシの上湯スープで味をつけた新製品を2種類送っていただきました。ちょうど毎日ご馳走攻めで、血糖値も高くなっていた時だったので、食卓一杯の料理を一切拒否して、この麺だけを出してもらいました。一口、口をつけただけで「これは行ける」と俄かに食べる気を起し、とうとうスープの最後の一滴まで飲みほしてしまいました。私がインスタント・ラーメンのスープをきれいに平らげたのはこれがはじめてです。
へぇ~72点くらいだったのが、おりしも電車の吊り広告に宇崎竜童の広告を見かけた。さては巷間にもと思い、セブンイレブンに立ち寄ると、ある。買って、まず、食ってみた。
そんなにうまくはない。予想はしていたが、薄味の私にはしょっぱくて食えたシロモノではない。湯を足して、塩気が我慢できる程度にする。麺はノンフライ麺を改良したものか、悪くはないがインスタントの枠を越えるほどでもない。なーんだたいしたことないな、さて捨てるか、と思ったが、それでも麺とスープの絡みはよく計算されているなと思ううちに、つい、これはこれでいけるかと考えが変わり、結局、食った。負けだ。スープはさすがに飲めないが、食い終われば、なるほどなと思った。私はMSGに極力弱いタイプなのだが、舌は麻痺していない。単体のグルソは入ってないのかもしれない(いいえ、入ってます)。
「上湯麺」とはふざけた名前だ。上湯の味がするわけでもないと思い、ふと記憶が蘇る。昔、それなりの腕のある中国人コックにふざけてラーメンはないのかと訊いたら、けげんな顔をして上湯に麺を入れてくれたことを思い出す。あれはそれなりにうまかったが、そんなもの注文するもんじゃないなとも思った。
邱先生の顰みに習うわけではないが、私もかれこれ10年近くインスタントラーメンを食っていなかった。店のラーメンも食ってない。カップラーメンはいわんやおやである。が、ふと昨年あたりからたまにインスタントラーメンを食う。老人や子供がインスタントラーメンを食うのに居合わせたことがきっかけだ。驚いた。あれほどコンビニで各種インスタントラーメンが開発販売されているのに、サッポロ一番だのチャルメラだの、10年前から変わっていない(若干味は違うが)。へたすりゃ30年くらい変わっていない。どういうことなのか考え込んだが、ようは基本的にあれは老人食なのではないかと思う。くず野菜を入れてふにゃふにゃ食うのだろう。あるいは、チョコレートなどもへたすりゃ30年近く変わっていないので老人食とばかりも言えないかもしれない。どうでもいいが、日本と米国のチョコレートは最低だな。もっとも米国のハーシーは慈善NPOだと考えるべきか(参照)。
他方、ころころ変わる珍奇な新種カップラーメンもいくつか食ってみた。私が得心したのは、日清など、やる気なればどんな味でもできる体制ができているに違いないということだ。変な言い方だが味がコンストラクティブなのだ。またもくさすがセンター試験世代的なチャート式の発想で味が出来ている。とはいえ、この味のセンサーはセンター試験世代にはないので、味の研究員にはけっこう年配というか達人もいるのだろう。いずにせよ、カップラーメン開発者たちは、ある種の万能感で市場調査と流行を調査しているのだろう、と思った。そう思って、くだらねーなとも思う。この「上湯麺」にしても、まずは、マーケットの計算から出来たのだろう。メディアと市場の戦略の産物なのだ。安藤百福の直感ではあるまい。
さて「上湯麺」の味だが、予想通り構成的だった。ネギ味のほうは露骨といってほどベースの味がカップヌードルになっている。辟易としてのは白こしょうの味が際だって貧乏くさいことだ。おそ松くんに出てくる小池さんを思い出す。醤油味のほうは、醤油の扱いは悪くないが、紙くさいような臭いに呆れた。
とうだうだと書いたものの、いずれ私はこのマーケットの住人ではない。私の感想など屁の役にも立たない。そんなわけで、ネットで日清上湯麺の情報を見ると、当然ある。味よりも情報の時代だ。舌で食っているのでなく、妖怪油舐めのように頭で食っている時代だ。
「エルダー世代に向けた上質な大人のカップめん」という広報はやや意外だった。
■ 開発の意図
平成14年度のインスタントラーメンの総需要は53億食で、ここ数年は微増状態にあります。またカップめんの主なヘビーユーザーは、男子中学生、高校生、大学、独身社会人で、結婚を機に喫食の頻度が低下するという傾向にあります。そこで今回、即席麺の総需要の拡大を図るため一度カップめん離れしたユーザーを再取り込むことを狙い、エルダー世代と呼ばれる45~50才代に向けた大人のカップめんを開発しました。カップめん市場は、現在、こってり系スープが主流にありますが、エルダー世代はこってり系からあっさり系に嗜好が変化しており、これがカップめん離れの原因のひとつとなっています。弊社では、この嗜好の変化に対応したカップめんを開発し市場に投入することにより、インスタントラーメンの総需要の活性化を図ります。
「エルダー世代」かよ上等だぜと思うが、エルダー世代は「あっさり系に嗜好が変化」だとよ。この文章自体、日本語じゃなねーよな。くさしはさておき、日清上湯麺があっさり系って、なんのことだよ思い、身近な者の意見を聞くと、あれであっさりしているのだとのご託宣。そういえば、この1年間、インスタントラーメンやカップ麺を食ったといえ、付け足し油は入れないし、粉も半分にしていたから、本来の味ではなかったのか。
いずれにせよ、これが「エルダー世代」向けの味か。海原雄山を巨大化させて、説教でもたれてもらいたものだが、考えてみると、今の45~50才代も味覚がないのだ。工業化された食品か流通によって篩を通した物にしか食っていない。その上の世代は貧しくて味覚がない。そう言えば怒る人もいるだろうが、では訊いてみるがいい、ではなにがうまかったのか、と。滔々と応えがあるだろう、貧しい物か、はたまた、その貧しさを補う情報といううんちく。
追記
顧みてテメーはなぜラーメンを食わなくなったか。サッポロ一番で育てられた口じゃないか、ヤングオーオーを見てカップラーメンを食った口じゃないか。でも、遠い日の味の思いが、長ずるに及んで、こんなの違うなと思わせた。この駄文を書きながら、斎藤由香ではないが昭和30年代の軽井沢を思い出す。赤坂飯店には確か麺ものはなかったような気がする。栄林で食った中華麺は、こんなものがあるのかと子供心に思った。たいした麺でもなかったのかもしれないのだが、と、栄林が今でもあるのかネットで調べると、ある。でも、過去に戻ってあの麺を食うことはできない。ちなみに、軽井沢にはもう馬糞も落ちてないのだ。
エルダー世代ってなんだと思ったら、これは博報堂のエルダービジネス(参照)というラッパらしい。まいったね。百福さん、センター試験以降の世代のマーケティングなんか信じちゃだめだよ。
[コメント]
# tokyocat 『このような当たり障りのないネタだけに反応するのもなんですが、シンガポール土産のカップ麺を食べたとき、同じ日清製なのにスープの袋がやけに破りにくく粉末やオイルが飛び散りそうになりました。そこへいくと、日本のカップ麺はそうした心配りのハイテクがあきれるほど行き届いているように思います。中国旅行で食べるカップ麺は予想どおりことごとく無造作なものでした。宇宙船の出来もちょっと心配。』
# レス> 『まったく同感です。この行き届き状態が問題だとも言えないあたりが、けっこう変な感じです。いずれ日本のインスタント中華が中国でも売れるのだろうと思うと、笑っていいのやら…。』
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